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[ ねぇほら、声が聞こえる。
わたしを呼んでくれる
聲が聴こえる。>>=0
だから、起きないと。]
……どうして今朝は、こんなに鴉が煩いのかしら。
[ 扉のある方向を一瞥した わたしの耳に
突然降り注いだ おと は。
嗚咽 と 嗚咽。
喉が潰れるような サイラスの声。
………サイラス!? どうしたの……。
[ わたしの問に返事はなく
こんなこと、一度だってなかったのに。 ]
ねえ、サイラス。どうしたの? どうしたの?
どうして、泣いているの?
[ 声の場所へと手を伸ばしたが、扉の開く音
は、と振り返り、 ふたつの足音 4つの爪音。
そしてわたしの名前が呼ばれたことに
小さな胸を撫で下ろした。]
ジョス! エルも!
ねえ、サイラスの様子がへんなんです!
どうしたんですか? 何があったんですか?
[何が起きているのかわからない。触れるのすら恐ろしい。
”生きているのか”
喉の奥がきゅうっと締まり 両足がただの棒になったよう。]
[ 「俺は、 俺だけは 生きてるさ」
[ ジョスも、エルも、返事をくれない。 ]
[ ねぇ。 ]
…ねぇ。
わたしを、視て……
[ ――おねがい よ。 ]
[ 糸の切れた人形のように、床を打ったふたつの膝も
物音ひとつ たてることなく。
わたしは わたしのかたちすら わからなくなって。
その場に座り込んだまま
目の前で繰り広げられる声たち
川に流れる無数の笹舟を 見送るような
そんな諦念で 聞き続け ]
サイラス………。
[ 何度目かわからぬ名を 自分の手の中に落とし
わたしはようやく
抱けなかった背中
せんせ………。
[ 此方の聲なら届くかと、そんな微かな期待も闇に溶け*]
メモを貼った。
![]() | 【人】 本屋 ベネット―― 本屋 ―― (151) 2015/05/16(Sat) 00時半頃 |
[サイラスとジョスが「今日のため」にわたしの家を発つ。
その会話を、足音を、すっかり力の入らない足が折れたまま
唯ひとつ 生白い腕を伸ばして]
…………。
[行かないで、と 叫ぶこころを黙らせるだけで精一杯。
バタン
扉が締まる音と共に、わたしの腕も膝に落ちた。 ]
[ それからどれだけの時間、2人が消えた扉を
「みて」いただろうか。
ベッドの支軸を頼りに立ち上がって
恐る恐る 手を伸ばす。
たぶん きっと ここに わたしが。
わたしを覆う上掛けの 端を探して指が滑る。
そうして辿り着いた 肉のない場所。
周囲を埋め尽くす死臭も、乾き切らない血のぬめりも
わたしを穢すことはないのに、そこに在る死体。
怖くはない。
「伝わらない」「届かない」恐怖にくらべたら
死んでいるなど 何て些細なことなのでしょう。]
……あぁ。 ……。
[ わたしのコエは
[ ”だから” エルも せんせも 返事がなかった。
でも、 そのおかげで
あのひとたちはまだ 生きているんだと
喚んでしまったら。来てくれてしまったら。
わたしのせいで死んでいたかもしれないと
―――そう思った。 ]
[ 覚束ぬ足を友に わたしはふらりと家を出る。
だって、やくそく
[なんども競争した、互いの家と家とを繋ぐ小路の向こう。
ぱた、ぱた、ぱた
いつも行く先から響いていた春風のような彼女の足音は、
今日はなにものかに抑圧されているような
さみしい音。
メアリー!
[そう言って、わたしは ”いつも” 通りに両手を拡げ、
返事もない 足音の速度もかわらないその影を
――― 抱きしめ ――― ]
[ わかってた。 わかっていたのに。
背中から聞こえる足音は よどみなく。
彼女はまっすぐに”わたしのいえ”を目指す。
(やったー!今日はわたしの勝ち!)
そう聞こえるはずなのに
(メアリー!昨日はどうしたの?元気になった?)
そう応えるはずなのに
ざあざあ ざあざあああ。
流れ続ける噴水の音だけが わたしの両腕の中にある **]
メモを貼った。
![]() | 【人】 本屋 ベネット[泣き出されたなんて言葉がドナルドの口から出れば (222) 2015/05/16(Sat) 17時半頃 |
![]() | 【人】 本屋 ベネット[そうしてクラリッサの口から語られるのは (266) 2015/05/16(Sat) 21時半頃 |
![]() | 【人】 本屋 ベネット[魔女裁判、異端審問――。 (307) 2015/05/17(Sun) 00時頃 |
─ 回想 ─
ああ、そうだな。
じゃあ、今夜は秘蔵の蜂蜜酒をあけてみよう。
味見をしてみようと思っていたんだ。
…付き合っておくれ。
[傍らを歩むグレッグを見返して微笑んだ。
確かに、甥はもう随分と成長をした。
幾ら当時の少年の姿を思い出してみたとしても、
今では充分立派な、一人の男だ。
時折、若い頃の兄に似ているなと思うことがある。
けれど兄より自分より、もっと快活で良い男になったと見えてしまうのは”親の欲目”か]
(そうだろう?兄さん)
[もう一人の息子、もう一人の子ども。
もう長いこと、そんな風に過ごしている甥の姿に目を細める
「処刑先は──」
[琥珀の双眸が、レンズ越しに向けられる
凍りつく空気、息を呑む音。
その中で、男は”ついにこの時が来た”と思っていた。
冷ややかな瞳が向けられる。
それを見返す胸のうちに、満足のようなものがある。
心密やかな願いの叶う時。
琥珀にちらつく、微かな迷いと恐れ。
それを、今は色を隠すことをしない鳶色が見つめ返した。
男の頬が上がりかける。
どうしたというのだろう。笑い返そうとでもいうのか]
……っ
[乱暴な力で押さえられ、手を戒められる。
自由を奪われれば抵抗のしようもない。
今更抵抗しようとも思ってはいなかったが。
ただ、気掛かりは確かにあった。
ざわめく面々、それらには目も遣らずに振り返る。
蒼白な顔をしたグレッグと、信じられないといった顔をしたメアリーを]
「どうしてお父さん“まで”殺すの!?」
[娘が叫んで、スティーブンにしがみつく
その姿に、心が痛んだ。
”願い”に、彼女のことは考慮されていない。
ひどく我侭で、自分勝手な望みなのだから。
…けれど。娘を愛しく思う心は、それとはまた別のものだ。
少しずつ狂っていた男に残されてた、確かな…──ひかり。]
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