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[天ヶ瀬の推測
知ってほしかったから。
確かにあのおかしな校舎は
時間を追うごとに変わっていく校舎は
理一が何を思い悩んでいるか伝えようとしていたのかもしれない]
そんなら。
残ったやつらがそれに気づいて、
理一をひきもどしてくれりゃいいな。
理一のやつ、さっさと戻ってこねーかな。
んで戻ってきたら
一発ぶん殴る。
[今の自分は手加減なんてうまくできないから
腕ひしぎされたときよりも
もっと力を込めてしまうだろうけど。
心配させたんだから、それくらい
諦めて受け入れてくれるだろ*]
メモを貼った。
……大和……?
[遠くから歩いてくる、見慣れた帽子を被った人影
橘、は……助かるかどうかは五分五分で、あとは本人の気力や体力次第、だそうだ。
[一瞬だけ見えた大和の目元が、赤かった、ような気がして。そんな彼女に橘の容体を伝えるのは少し躊躇われたが、でも、隠すべきではないだろうと思ったから。
先ほど水野から聞いた容体をそのまま伝えた。]
ああ、俺も、ついさっきな。
……大和も、帰ってこれて良かった。おかえり。
[そう言って少しだけ笑ってみせれば、彼女の表情や気持ちは、多少は和らいでくれただろうか。
目元が赤い理由は分からないし、橘のことを思えば、気が沈んでしまう気持ちはよく分かるけど。
落ち込んでばかり、というのも、あまりよくないんじゃないかと思うのだ。
勿論、無理して笑ってほしいというわけではないが。
多分、アイツは……俺達が笑って、おかえりと言ってあげた方が、喜ぶんじゃないかと思う。
眉間に皺を寄せていれば、物理的にでも伸ばしてくるような奴だから
[それは、それとして。俺が帰ってきていることを大和が知らない、ということは、少なくとも彼女には、俺のマネキンは見られてはいないんだろう。
三星や天ケ瀬に似たマネキンも見つかった、というのはあの朝食の時に知ったし、俺もこうして帰ってきている以上、
マネキンが残されているのだろうとは思う。そして、そのマネキンがどんな状態なのか、だいたい予想はつくけれど。
見られてなくて良かったと思う。
いや、今は別に、自分の趣味を知られるのが怖い、とはそれほど思わないし、あの文化祭を共に過ごした仲間達相手になら尚更、なのだが。
それでも、やっぱり。ただの自分に似たマネキン、とはいえ、ぬいぐるみを抱えている姿を見られるというのは、ちょっと、その、恥ずかしい。]
というか大和、外でその格好だと寒いだろう。
俺達も、中に入るか?
それとももしここで誰か待ったりするようなら、俺のコートで良ければ貸すが……
[大和はどうやら着の身着のままで飛び出してきたようで、その格好は見るからに寒そうだったので、風邪を引いてしまわないようにと、そう声をかけた。
確か、あの校舎に迷い込む日の朝、その格好で寒くないのかと言われたのは俺の方だったな
メモを貼った。
[――はたり、と一度、二度、瞬いた。]
……あれ……―――
[眼を開いて、
見回せば、其処は、
電灯の明かりが照らす公園のベンチ。
――真夜中抜け出した、一つの逃げ場所。]
……っくし!
[くしゃみひとつ。
遅れてやってきた寒さに自分を抱いた。
いつもの白いコートを着込んでいる。]
……学校じゃ、……ない……?
[自信なさげに吐き出した息は白い。
なんだっけ、どうしたのだったか。
窓から飛び出して、
それから、――それから。]
帰って、……きた……?
[吸い込んだ空気が冷たくて、
意識がはっきりしてくる。
――いま、何時だろう。真っ暗だ。
携帯電話を取り出して、
幼馴染からのメール着信に気づいた
……たかし、
[――よかった。
帰ってきてた―――と、
ほっとした息が漏れたのも、つかの間]
……理一……?
理一が?……っ、え、……うそ、
[勢い、立ち上がる。
自殺未遂。――あの世界を作ったのは、理一だっていうのか。
矢も楯もたまらず駆け出した。
向かう先は病院だ。]
[――動転して、
能久昴はすっかり忘れていた。
何も言わず、
書き置きもなく、
家から出てきてしまっていること。
――それを、両親が、どう思うか、なんて*]
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Subject みた!
TO たかし
いまからいく!
あと、たかしぶじでよかった
----------------------------------
メモを貼った。
うん……。
[
同意するように返事だけして、軽く俯く。
複雑な胸中。
残った人たちが橘くんを死の淵から引き戻してくれることを、
期待する気持ちと、重荷を背負わせてしまう申し訳なさ。
それと同時に、わたしにはできないことだから、やっぱり残らなくて良かったという心の逃げ。
この状況下でいまいち緊張感が持てないのは、
わたしは、他人に重みを託している、いや、人任せにしているから、なのだろう。
卑怯なわたしは、それに気付けば歯がゆくて、もどかしい。]
そうだね。
戻ってきたら、殴ってあげて。
わたしはカメラを準備するから。
[
それでも笑顔を浮かべていた彼の写真を、拡散した時みたく。
何気ない日常の一部として、戻ってきてほしい。
どこか薄情なわたしでも、それを祈るのは自由だよね。
って。
図々しいでしょうか。]
……あまり気を張るのも疲れちゃう、し。
コンビニでも行って来ようと思うけど。
上須賀くん、何か欲しいものある?
[莉緒ちゃんもまだそこにいれば、彼女にも目配せして。
暗く行き詰まりそうな思考を晴らすように、ロビーを出ようと。*]
…………そっか。
[それ以上に、なんて返すべきなのか
いけないと思いつつ、沈んだ声音になってしまいます。
当然の事ながら、
外に居る私達に出来る事なんてありません。
解っていた事ではありますが、
もしかしたら、そう重傷でもないかも なんて
必要以上に落ち込んでしまうのは、
そんな希望を持っていた所為でしょうか。
……けれど、軽い言葉で誤魔化されるよりはマシで。
一度、深夜の病院へ視線を向けてみたり]
ただいま。……ありがとね。
[おかえりって言ってくれた事と、
笑いかけてくれた事
その二つに小さくお礼を言って、
つられたみたいに、私も唇を持ち上げました。
ついつい、帽子を直してしまうのは、
此処最近出来た癖みたいなものですが。
これは、今となっては、顔が見られたくないとかじゃなく
ただちょっと照れくさいというか、そんな感じで。
……本当なら、帽子なんて要らないのかもしれません。
でも、大っきなガーゼを晒すのも、
それはそれで、気不味いですしね]
[彼のマネキンが見られなかったのは、残念ですけれど。
見たって多分、特に何も言わなかったでしょう。
彼が可愛い物好きって知ったって、
そっか って、そのくらいの反応で。
可愛い物好きが高じてお裁縫が得意というなら、
それは寧ろ、長所なのでは?とも、思ったり。
隠し事は、まあ、お互い様というか。
今なお健在の私の母の事を思えば、
責められるわけも、ありません。
……そう、謝らなきゃいけないんでした。
小さく、口を開閉して、
言い淀んでいる内にかけられた言葉
漸く寒さを、自覚したでしょうか]
そうだね、寒い……全然気付いてなかったや
うん、中に────……、
[腕を擦りながら、白い息を吐き出して。
困ったみたいに笑いつつ、院内に入ろうとしたんですが。
ふと、何気なく。手に持ったスマホを見て]
ちょっとごめんね、
[目の前に立っていた健士郎とつばさに断りを入れて。
どうせだから、中に入る前に一度、
返事の確認をしておこうと思ったのです。
院内でスマホを使っても怒られはしないでしょうが、
何となく、マナーとして]
[見れば、莉緒から返事が来ていて
どうやら無事帰っているらしい莉緒に、ささらに、
安堵を深いものにするのです。
もし、万が一、先に消えた誰かが
帰っていないなんて事になったら……
そんな恐れは、無くなっていませんでしたから。
一日二日話さないの、無くもないんでしょうが
こうして莉緒からの返事が返ってくるのが、
何だか、すごく、懐かしくって。
彼女を傍に感じられる事が、心強く思えるのです。
伏せた濡羽色で、じ っと、暫し画面を見詰めてから
返事を書かずに彼女の姿を探そうとした所で、
二通目のメールに気付きます
[たった一言、切実めいたその言葉に
大きく目を見開いて、私は顔を上げるのです。
莉緒はどうやら、病院に着いている様ですが
さて、何処に居るのか
中に入れば会えるかしらと、上げた視線を彷徨わせ。
視線の先、偶々彼女の姿
駆けていく前に、もう一度、健士郎と向き合い]
ごめん、私行かなきゃ。
えっと……健士郎。
中に入るなら、お言葉に甘えて
コート借りても良い……かな?
[病院の中って、
深夜でも、空調は効かせているんでしょうか?]
[そんな疑問も湧きましたが、
今回はお言葉に甘えさせてもらう事に。
少し図々しいかしら なんて思いつつ、
健士郎の表情を窺ったりして。
もし貸してもらえたのなら、
「後でちゃんと返すね」って、そう伝えて
莉緒の方に駆けて行ったでしょう*]
────莉緒!
遅くなってごめん、来たよ!
[彼女はまだ、此方に気付いていない様子。
こんな時間に外に居たら寒いでしょう? って
着の身着のままで出てきた私が言う事じゃ、
ないのかもしれませんが。
風邪をひいたら、事ですよ。
走って、走って、莉緒の傍に。
コーヒーは、まだ暖かかったでしょうか?
私には、解りませんけれど
兎にも角にも、駆け寄る勢いそのままに
自分と同じくらいのその体躯に、*抱きつこうと*]
はは、そうだな。
その時はカメラ係頼む。
つっても水野みてーに綺麗な右ストレートで
殴れる自信はねーけど。
[
そんじゃ、レジ横のドーナツとコーヒー。
入院してると食事が味気ないんだよな。
あ、くいもん制限はかかってないから。
買ってきて怒られるってことはねーと思う。
[ほしいものと聞かれて
― 病室 ―
[待ってる時間が長くなりそうだと、
ロビーにいる人がいれば断りを入れて、
一度病室へと戻る。
ノートパソコン取り出して、メールをチェックする]
携帯ないと不便だな…。
でも父さんも母さんもショップあいてる時間に帰れねーだろ。
どうしたもんか。
……と、帰ってきたか。
[届いていたメール
手早く返事を送ると
膝の上にノートパソコンを乗せて
もう一度ロビーへと*]
To:昴
From:堆
Subject:おかえり
-----------------------------
わかった。ロビーで待ってる。
-----------------------------
[
入院患者にドーナツって大丈夫なのかなと一瞬過った考えは、本人の言葉がすぐさま否定した。]
そっか。
確かに病院って食事が楽しくない、イメージ。
入院したことはないんだけど。
能久くんのパンケーキとか、
食べられそうなら、みんなで食べたいね……そのうち。
[彼の幼馴染の作る料理の味を、あの校舎で食べられなかったわたしは、
羨むようにその一言だけ残して、踵を返す。
もしそういう機会があったとして、わたしもご相伴に預かってもいいでしょうか。
なんて、幼馴染ではなく本人に聞けという話だけど。
わたしは、なんとなくしか知らない、彼らのような身近な関係が、とてもうらやましい。*]
[——結局のところ、天ケ瀬ささらという人間の本質は、
どうしようもなく自分勝手で、ただの寂しがり。ということ。
それが本当の自分。
誰かに甘えたくて仕方が無いだけで、究極的には、それは誰でもいいとさえ思う。
ただ、気を許せる相手が欲しかった。
何も取り繕わなくていい、ハダカの関係を欲していた。
それができないことが息苦しかったから、
我慢して大人になるのが嫌だったから、
そうなるくらいなら、一人きりでいいとさえ思えたこれまでの自分。]
[結局のところ、わたしが欲しいものを手に入れるには、
わたしが自分から、手を伸ばすしかないってこと。
それに伴う痛みに耐えられるかどうかは、自信がないけれど。
天ケ瀬ささらは、例え一人きりでも生きていかなければならない。*]
— 病院・夜間出入り口 —
[外に出るまでに、帰還したクラスメートとすれ違うことはあったかどうか。
あれば、無事に戻ってきたことを喜ぶ挨拶を交わしただろう。
足取りは、そのまま近くのコンビニへと向かう。*]
メモを貼った。
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