15 ラメトリー〜人間という機械が止まる時
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[声音は響く、優しげに。
ただ、彼女の耳だけに――]
穢いなんて、そんなこと、あるはずない。
ヨナは綺麗だよ。
だって、君の中には 泉が見えるもの。
[語尾に柔らかな笑みが混ざる
気配はヨナに触れようとそうっと腕を伸ばして]
ボク みたい?
ねぇ、どうして気付いてくれないの?
どうして?
[そうして、ただ受け入れられない現実を見る。
撫でられたネコミミトカゲは不思議そうな顔を見せる。
見えない少女の傍らで。]
そう。
私が視えないのね。
ソフィアも、アリーシャも。
[泣き出しそうに潤んだ瞳。]
[眠る少女の躯に咲いた花は色を段々と褪せさせていった。
涙が毀れ落ちる直前。]
アリーシャ…。
[微笑むアリーシャと、瞳が合った。
そんな気が、した。]
アリーシャ。
私の初めてのお友達。
一番に大好きよ。
私の精霊さん。
[たった一粒零した涙。
けれど、少女は笑顔であった。
それは幸せそうな、安らかな。]
[ 約束という呪いが影を動かす ]
[ 気配の手は冷たかっただろうか、温かだっただろうか ]
[ それは彼女の望む通りに ]
[そして]
[ 背後から伸びたその両腕は、
薄い肩を交差して、ヨナの両目を覆い隠そうとする ]
――……泣かないで、ヨナ
私が視えていなくてもいいの。
ソフィアも大好きよ。
私のお友達、大事なお友達。
みんな、みんな、大好き。
[やっぱり花《ポーチュラカ》の微笑みを携えて。]
視えてなくてもいいの。
慣れているもの。
誰にも見られず、相手にされず。
そうやって生きて来たのだから。
[淡く淡く、胸元の花が褪せていく。
淡く淡く、胸から落ちた記憶が戻っていく。]
[ ふりかえれば、
影は彼女が望むように、そこにあるだろう ]
[ そして ]
ヨナ、俺は死んでいないよ……
君がそう言わなければ、死なない。
――……だから、泣かないで
俺は死んでいない。
[ 声音は 囁き 再びその腕を伸ばす ]
驚かせること、好きだったわ。
怒られるなら、怒られたかった。
お話したかった。
遊びたかった。
手を繋いで欲しかった。
だいすきって
抱きしめて欲しかった。
呪われた、この躯がいけなかったの。
[触れるのは自分の冷たい躯。
動かず冷たい、呪われた躯。]
[その影は微笑むヨナに、優しげに微笑む。
伸ばした両腕は彼女を包み込むように抱きしめて]
[ 視界を、世界を閉ざす ]
――…うん、泣かなくていいんだよ。
あんまり泣いたら、涸れてしまう。
もう大丈夫だから。
ずっと傍にいるから。
ヨナ、辛いことは全部忘れてしまえばいい。
嫌なことがあったら俺に教えて、君を護るから……
[ その左腕の影は一度刃の形をなして、
けれど、決して彼女だけは傷つけない ]
[ ヨナの望むように、
その影は振舞うだろう ]
[少女の冷たい躯に誰が触れるだろう。
きっと、誰にも愛されない少女は
動かなくなったら触れられることもない。
花は枯れれば愛されない。
気付かれることはないのだろう。
少女は“少女でない”ことに**]
うん、ずっとずぅっと傍にいる。
[ 一度刃を為した腕は、その髪を撫でおろす。
涙の滲む眦にそっと口唇を寄せて、ささやく ]
たくさん、辛いことがあったね。
だから、
君はもっと望んでいいんだ。
[そう、彼女が“天使”との決別を望むのならば、
それは彼女を傷つけぬように、叶えられるだろう]
―生命の泉―
[ ――そして ]
[ ぽちゃり ]
[ 大樹から零れた露が、水面に落ちる。
臆病な青年の透き通る姿は、幾重にも割れた ]
[ それもまた一瞬の幻影 **]
[ 眦に触れた口唇は、
温かかっただろうか、冷たかっただろうか]
――君の望みを叶えたいんだ。
なんでも、いいから。
[恥じらうようなその仕草に、
影は慈しむような眼差しを落として、その手を取った]
……こんなところには、
あまり長くいないほうがいいよ。
[ここには“死んでいない”ことを、揺らがせるモノがある。]
あ、うん、この部屋は……あまり
――…街から出るの?それは少し大変だね。
でも、君が望むなら……
きっとここから、解放してあげられる。
[ 沈んだ意識 ]
[ それは、一度だけ過ぎった 形にならない自問 ]
[ どうすれば、よかったのか ? ]
[ 殺すことしか出来ない自分 ]
[ 救う方法はそれしかなかった ]
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