266 冷たい校舎村7
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[ 冷たい手の中のココアが、段々と
丁度いい温度になったから、開けるの。
甘ったるい匂い。眠くなっちゃう。
イヤホンの無い姿を褒めたら、
惚れた?なんて。流石ひいらぎ君だね。 ]
そうね
好きになっちゃおうかな
[ 今までずっと、ペットの事で手一杯だったもの、
恋愛なんて、してこなかった。
好きな人でも作れば、変われるかしら? ]
[ 缶がカラン となった時にね。
いろはちゃんがやってきました。 ]
おはよう、いろはちゃん
無事出れて、良かった
[ ひるの君の話は、正しかったみたい。
校舎の中で夜を超えた時の記憶……あるいは
夜を超えなかった記憶は、最早遠くて。
二つのボタンを押していたのですから、
私はびっくり、不思議な顔をする。 ]
ふたつ飲むの?
ようこちゃんの分?
[ ふたりは、仲良しですから。
首を傾げながら、尋ねます。 ]*
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[帰る、って言った時に、 ヨーコねーさんはまたやっぱり、ぽろぽろ泣いていた。 また女の子を泣かせてしまった。
ごめんなあ、って苦笑することも、 傷ついてしまう肌をいたわることもできなくて
俺はただ、優しい言葉にこくこくと頷いた。>>344]
……うん、 みんな、おんなじ。
…………うん。
[みんなで帰ろ。 一緒に帰ろう。 その言葉をかみ締めて俺は生きることにする。>>346]
(354) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[たくさん、酷いことをしたし 恐らくはなんにも解決しちゃいなくって いたずらに、巻き込んだ皆に 辛い思いをさせただけかもしれなくて……]
(355) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[俺は少し後悔するように暗くなりゆく校舎を振り向いた。 文化祭の面影は、まだ廊下のあちこちに残っている。
ぱちぱちと瞬いて消えていく蛍光灯の光に 少し、追われるようにして足早に その葬列めいた行進は進んでいった。>>335
きっとずっとお別れだ。 ここに二度と来ることはない。
だから、最後に、 俺はこの場所に切れないシャッターを切って、]
(356) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[終わっちゃうなあ。 って そういう言葉だけ飲み込んで、前を向いた。 ちらちらとこっちを向いてくる悟に、 なんだよ、って笑いかけて>>338>>339>>340]
( 帰ったら、もっとちゃんと話せるのかね )
[明日の事は何にもわからないから、 悟にまた会うことを楽しみに、歩を進める。]
(357) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[弔うような、あるいはただ祈っているような 不思議な時間は、どれだけ続いただろう。>>349
初詣の神社でそうするように 「何願ってたの」って聞いたら、 キョースケのお祈りは聞けたんだろうか。>>351
どんな願いであっても、 それが叶いますように。
隣でお祈りをしながら、そう思った。]
(358) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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……は、はいって…… 入ってるよ、たぶん
[俺はヨーコねーさんから降って来た言葉に、>>348 ぱちぱちと瞬きして、思わずそう返した。 あんまり自分を勘定にいれるのが得意じゃない俺だ。
少し頬を掻いて、言い直す。]
俺を含めて、みんな。いーことありますよーに。
[これで大丈夫、と立ち上がって、 帰ろう、っていうキョースケと悟に頷く。
それから、ヨーコねーさん、と呼びかけた。]
(359) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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あのさ。
[ちょっと体を寄せて、小さく耳打ちをする。]
(360) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[耳打ちを終えると、
わざとらしく悟に笑いをくれてやり、 内緒話を明かすこともなく歩きだす。
こっちこっち、ってキョースケの手を引いたりして]
[少しずつ、少しずつ、世界は暗くなっていく。]
(361) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[校舎裏の出口に向かおうとして、 ぴくり、と俺は逆の方向を見た。]
(362) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[…………鳴き声が聞こえる。]
(363) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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…………、 こっち。
[皆を別方向に促しながら、
そんなに追いつくのが難しい速さでもなく 俺は一階の昇降口に辿り着く。
シャッターは開いていた。 真っ暗になった校舎に光が差し込んで その中で犬が一匹、丸い尻尾を振って、わん、と鳴くと 光の中に消えていった。]
(364) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[幻が消えた後には、ただただ、出口がある。
真っ暗な中ぽっかりと開いたガレージのシャッター。 冬であるはずなのに、昇降口に射しこむ陽射しは夏のよう。 外に見えているのは――――……]
(365) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[……そこが正しく出口であると、 俺は理解しているのだけれど やっぱり、少しは怖さも残っているので。
俺は振り向いて、皆に笑いかけて両手を伸ばす。]
(366) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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悟。ヨーコねーさん。キョースケ。 帰ろう!
(367) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[冷たい校舎の外に見えていたのは――
――――…………どこまでも蒼い、快晴だった。*]
(368) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[ こっち。>>364と君が言って、]
(369) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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──現在──
[ 導かれるがままに、僕は歩いた。
先に聞いていたのと別の方向。 裏から帰れると言ったのを覚えていたけど、 ……でもまあ、君が言うなら。
ここに来てほんのすぐの頃に、 確認をしに来た昇降口。
その場所を閉ざしていたはずのシャッターは、 今はもう開いて、光が射しこんでいる>>365。
思わず目を細めた僕の視界を、 掠めて消えてったまあるい尾っぽ>>364。 わんと一吠え。聞き間違いじゃあないはず。]
(370) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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[ 君のことを何もかも、 知っているわけじゃあ勿論ないから、 それが君にとってどれほどのことか、 今は、わからないこともあるけど、
けれど、これでおしまいじゃないんだから、 そのことを悔やむ必要がどこにあるだろう。
重苦しい白色から深い闇へ。 移り変わっていった空が今は、 底抜けに青く、明るくて、
振り返って手を伸ばした君>>366に、 きっと僕は目を細めていたけれど、 眩しいだけじゃなく、確かに笑っていた。]
(371) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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[ 光に、手を伸ばした。]
(372) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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君が笑っていたから、僕は怖くないよ。
(373) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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君に続くようにして蒼に飛び込む。 どこまでも晴れやかな、夏を思わせる空だ。 また。またあとで。また明日。またいつか。 きっと、そんな言葉を紡ごうと、 溶かされてしまいそうな光の中で、僕は笑った。
(374) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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さよなら、冷たい校舎。 ……またね、僕の友達。 *
(375) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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[「おはよう」だって。
―――うん、その挨拶は何だかしっくりくる。]
まあ、ね。無事だね。
ルリちゃんこそ無事で何より。
[ふだんの挨拶みたいな調子でさらっと、言った。
無事に帰れる事例は多い……らしいけど、
生きて、動いているクラスメイトの姿を見るとちょっとはほっとする]
[重々しい音とともに吐き出される缶の数はふたつ。
それを見届けていたらしい宮古から疑問が飛ぶ。]
あ、 そう、じゃなくて……蛭野くんの分。
学校に行く前に奢られちゃいましてね。
で、いつか返す、って言った手前とりあえず買っておくかー……って思って。
[ようこちゃん、と。なんだかんだ気がかりにしている人の名前が出てきたから。
苦笑を交えつつ正直なところを話す。
奢られたことすら養の世界での一部にすぎなくて、
蛭野の財布には1円たりとも損失がないにしても。
イロハはおごってもらったミルクティーの缶の温かさをおぼえていた。
だから借りを返そうと思った。それだけのこと]
[宮古が言っていた賭けの報酬は。
ちゃんと宇井野の手にわたったのだろうか。
そんなことを考えたから、イロハは訊ねてみたくなった。
ハッピーエンドを信じるかどうか]
ね、みんな、ちゃんと帰ってくるかな。
養くんも。
あたしは、……なんとかなるって思うんだけど。
[そうしてまた賭け、という言葉を思う。
イロハの言ったことのあたりはずれをその対象にすることは、
……外れた時にもやもやしそうだから、
話はいったん終わりとばかりに曖昧に笑う。
右の手の中には、自販機から取り出した小銭のじゃらじゃらとした感じが残っている*]
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