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ワクラバに1人が投票した。
エスペラントに5人が投票した。
エスペラントは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
ワレンチナが無残な姿で発見された。
亡霊
今夜、人狼に殺された人は人狼になる。また、襲撃を実行した人狼は命を落としてしまうだろう。人狼となった者は報復行動を行わない。ただし、命拾いをしたならば人狼にはならない。
一匹狼は亡霊を作らない。
現在の生存者は、ミツボシ、イースター、ワクラバ、アシモフの4名。
エスペラントの声が宇宙の暗黒へと遠ざかり、ワレンチナが目を覚まさなくなって……2週間が経つ。
次元航法装置は修理の目処がついていた。ワクラバやイースター、ミツボシの努力によって部品の代替を作り、チェックし、失敗し、それを繰り返してやっと何とかなりそうだった。
食糧の備蓄や酸素を作り出すためのエネルギーは、次元航法装置のエネルギー充填を考えると……人数が減ったため予定よりもっているが、限界は見え始めた。
(#0) 2016/05/20(Fri) 00時頃
【人】 重層培養 イースター― 2週間前 / 自室 ― (0) 2016/05/20(Fri) 00時頃 |
[『親父』と呼ぶその声が。
エスペラントにも届いていた。]
ああ――
ははは ははははは。
[己は宇宙の藻屑になると理解した以上に泣きたい心地がした。
しかし、涙声も涙も、この機械の体には無い。
幸せな一生である。
長い命だった。
通信が圏外となったか、皆の声が途絶えた。
それでは、おそらくこちらの笑い声もまた届かない。]
[気がつくと、薄桃色の水の中にいた。
周囲には無数の白い星が漂っている。]
(ああRemdaだ)
[どくん、どくん、と脈打つ音がする。
自分のものか。それとも、この海の。この星の――Pavr=opetyそのものの?
いずれにせよ、心地良かった。熱くも寒くもない。あらゆる重力を感じない。目を閉じる。何もかもが遠く懐かしいような気持ちになって、自然と涙が溢れた。]
(――、誰?)
[心の呼びかけに応える声はない。少なくとも、今は。
ワレンチナはわずかの心細さに薄く目を開き、再び薄桃色の宇宙を見た。
遠い水面の編み模様は、あたかも張り巡らされた血管のようにも見えた。もしも、産まれる前に見える世界があるならば――子宮の内側から見る風景は、きっとこんな感じなんじゃないだろうか。そんな事を考えながら――
ワレンチナは再び目を閉じると、深い無意識の中へと沈んでいった。]
夢を見ている。
[――もしも、ワクラバがワレンチナの端末を開いたなら。
まず、『ワクラバへ』というタイトルで、中身もまた『ワクラバへ』という一行のみが記載されたテキストデータが、最前面に開かれたままになっているだろう。
ファイル一覧の一番目立つ位置には『Remda』と名付けられたフォルダがあり、その中にはRemdaを始祖としたPavr=opetyの生態分布及び進化過程の仮説論文等がまとめられている。
整然としたそれらファイルの中に、ひとつ、手描きの画像メモが残されている。
字はひどく汚く、走り書きといった体の文面。
所々妙な図などを交えながら、つらつらと連ねられている。その内容は。]
・雌雄及び生殖器官を持たない水棲生物が繁殖期になると自然にほぼすべての個体が雌型となり妊娠出産する→その変異の核となるのは経口摂取されたRemdaである
・クラゲで検証済み。一応。要再検証
・少なくとも一定のPavr=opety水域における生態系において、remdaは全ての生物に共通する完全な受精卵としての機能を果たし、母体(下線。矢印が飛び、その先に『雌雄は問わないが形式上こう表現する』の補足)のほぼ完全なクローンとして成長する※視認したのみだが
(白い球体を食べる魚、その隣には小さい魚の落書き。
あまり上手とは言えない)
→RemdaがPavr=opety外で作用することが認められる場合
クローン生産の効率化
性染色体との掛け合わせによって性別その他特性を付与した新時代の生体を誕生させる等遺伝子工学に大いに貢献する可能性←倫理にうるさい連中はどう言うか
生体だけでなく例えば原子炉等に投げ込んだ場合、非常に効率的なエネルギー循環装置となる可能性
『こう在ろう』とする種の本能に呼応する?
あるいは子の成長を願う母親のように?
→繁殖期ゆえに『種を残せる』雌型への変化を呼び起こしたか、単純に雌型にさせるだけか?
(ぐるぐるとペンを動かしたらしい渦状の筆跡。)
(狭い範囲に無造作にトントンとペンを打ち付けたらしい筆跡。)
・ともかくRemdaの成分分析 精細な検査が必要
・Remdaが星の核ならば、何故星自身が生物を繁殖させる?
・我が星における進化論の一説――宇宙からきたバクテリアが海に落ちて変異を起こし、現在の生態系を作った――の、バクテリアは、Remdaである可能性?
・生殖機能を持たない人間もまた妊娠可能か?定着するのは内臓のどの部分か。
・僕の場合は?きちんとした男が産まれるのか それともまた成り損ないか?
(下手なクラゲの落書き。)
[他、端末には。
膨大な量の過去の進化論の研究データ。
今回の探査で撮り溜めたであろうRemdaを中心とした映像、画像、その他分析結果等の研究用データ一式。
ワレンチナを含め、複数人の学者達が整然と並ぶ写真。
そのうちの二人と、ワレンチナ。三人だけの写真。
数人の男女――友人達あるいは恋人達か――の写真。
船員それぞれの簡素な経歴と、顔画像の入ったデータ。
が、入っている。
ワクラバがこれらの一部、あるいは全てを確かめることがなくとも。]
【人】 鉱滓地区 ワクラバ― 2週間前:倉庫 ― (1) 2016/05/20(Fri) 01時半頃 |
【人】 鉱滓地区 ワクラバ― 2週間前:ワレンチナの自室 ― (2) 2016/05/20(Fri) 02時頃 |
【人】 鉱滓地区 ワクラバ[首元に手をあて、フェイスカードを取り外す。 (3) 2016/05/20(Fri) 02時頃 |
【人】 鉱滓地区 ワクラバ― ワレンチナ搬送の翌日:ワレンチナの自室 ― (4) 2016/05/20(Fri) 03時半頃 |
【人】 鉱滓地区 ワクラバ― レクリエーションルーム兼食堂 ― (5) 2016/05/20(Fri) 04時半頃 |
【人】 鉱滓地区 ワクラバ― 医務室 ― (6) 2016/05/20(Fri) 15時頃 |
【人】 お散歩隊長 アシモフ― 医務室 ― (7) 2016/05/20(Fri) 16時頃 |
【人】 お散歩隊長 アシモフ……なんだったらリーマスかジプレキサでも出しとこうか、安定薬さ。 (8) 2016/05/20(Fri) 16時頃 |
【人】 お散歩隊長 アシモフ[だが、彼にそれを告げてはいない。意味が無い。 (9) 2016/05/20(Fri) 16時頃 |
【人】 お散歩隊長 アシモフ(ぼくは感染の拡大を防ぐんじゃない、こうなってしまっては……) (10) 2016/05/20(Fri) 16時半頃 |
【人】 鉱滓地区 ワクラバおぅ、もらってくぜ。ありがてぇ。 (11) 2016/05/20(Fri) 20時頃 |
― 生物学系雑誌『Foundation』XXX号 ―
[『特集:不思議な隣人たち』ボムビークス種研究の第一人者、Vanallen教授へのインタビューより]
――ボムビークス種の特徴についてお話しいただけますか。
はい。大きな特徴として『繭』と呼ばれるものにて出生、成長していく事と、性別が後天的に決定される事が上げられます。
『繭』は二つありますが、まず彼らが出生する小さな繭の話から。
半径20mほどの楕円形で、表面は保温性の高い繊維で覆われています。内部は培養液のようなもので満たされていると考えられ――ああ、何と言っても宇宙に一つだけしか存在しないものですので、内部を開けて見るわけにもいかないため外部からの分析結果による予測となりますが――まず、繭の中に一定の周期で核が発生します。それは中央から外側へ向けてゆっくりと移動しながら細胞分裂を繰り返しhuman型を形作り外周部に到達する。そうすると、表面の繊維に包まれるような形で出生されるのです。
そうして出生された後、三年が経過すると表面から繊維が自壊し始め、ようやく彼らは小さな繭の外へと出ることが出来るのです。
さて、小さな繭から出てもまだ彼らは外の世界に触れる事はできません。次に彼らは大きな繭と呼ばれる施設で生育されることになります。
小さな繭を中心として建てられた、人類がボムビークスを育てるための施設。徹底的に管理された環境で彼らは成長していくこととなります。なぜそこまでするかというと、大きな繭から一歩でも外に出ると彼らはすぐに病に侵され死んでしまうほど体が弱いのです。育成の過程で免疫をつける処置をしなければ、大きな繭の外に出ることはできませんし、大きな繭がなければ彼らは繭が自壊した後に死滅する運命でしょう。
彼らの育成には多大なエネルギーを必要としますが、それに消費したものよりも多くの物を返してくれます。その脆弱な肉体と引き換えに彼らは高度な知性を持っています。我々がいわゆる天才と呼ぶ者達と比べてても遜色のない知性を持っており、科学者として名を刻んでいる者も多く居ることはみなさんもご存知だと思います。
【人】 鉱滓地区 ワクラバ― コンソールルーム ― (12) 2016/05/20(Fri) 21時頃 |
彼らが我々にもたらした研究結果や技術はそれこそ金額に換算するのも馬鹿らしいほどの物となっています。差別主義者や彼らの能力に嫉妬する者は『人類に庇護されなけれ生きることもできない寄生虫』などと言ったりもしますが、共生や互恵関係と呼ぶのが正しいと思いますね。
また、彼らは我々人類にとって非常に美しい、愛らしいと感じさせる容貌をしています。色彩の薄さも彼らの神秘性を増すのに一役買っており、『生きた芸術品』と呼ぶものもいるくらいです。もちろん、それが良いことばかりではなく、誘拐されて出生数の少ない希少性も相まって、特に成人前の場合は高額で取引されたり、宗教団体に神代として祀り上げられているなんて事もありますが。
過去の彼らは現在ほど肉体が脆弱ではありませんでした。人類の庇護を受けるに従って、より庇護を受けやすい形に適応していったのが現在の彼らです。
もっとも、彼らがより人類からより手厚い庇護を受けられるように適応していったのか、それとも彼らが人類の庇護なしには生きられないように人類が適応させたのか、どちらなのかはわかりません。当時の記録にアクセスする権限がありませんので。
――教授はどちらだと思われますか?
それを公の場で言っちゃうと大変な事になりますからねー(笑)
さて、話は変わりますが彼らが性別を持たずに生まれてきて後天的に性別が決まる、というのはよく知られた話ですね。
彼らは同種では交配することが出来ず、外部にパートナーを求めるわけで、その過程でパートナーに合わせて性別が定まるわけです。具体的に何が性別の確定に影響をあたえるのか、その際心身にどのような変化が起こっているのかは現在も研究中となっておりますが、彼らは子供の遺伝子にあまり影響を与えない事がわかっています。知能が高かったり、外見が良かったりなんてことはありますが、基本的にはパートナーの種族特性を引き継ぎます。ボムビークス自体は『繭』から出生するわけで、自らを繁殖する必要がないのかもしれませんね。
では、なぜ彼らは性別を選択するのか。彼らは、繭の情報の一部をバックアップとして他種族に刻んでいるのでは、という仮説が立てられています。彼らは、性別も生物としての本能も関わらない真実の愛を求めているのだ、なんてロマンチックな説もありますね。僕もこの説嫌いじゃないです(笑)
ああ、そうだ、僕独自の研究ですが。彼らの恋愛観についてお話しましょうか。彼らは年上をパートナーに選ぶことが多く見られ、これは彼らが繭から出生し両親が存在しないことに起因して……
・・・
・・
・
(ページ上部に、Vanallen 教授と彼に肩を抱かれ恥ずかしげにピースサインをする白衣を着た小柄な女性の写真)
【人】 鉱滓地区 ワクラバおっと、そうだ。 (13) 2016/05/20(Fri) 21時半頃 |
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