198 冷たい校舎村4
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この村にも恐るべき“人狼”の噂が流れてきた。ひそかに人間と入れ替わり、夜になると人間を襲うという魔物。不安に駆られた村人たちは、集会所へと集まるのだった……。
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…そっちじゃないよ、こっちだよ。 ここ、秘密基地なんだ。雨もへいきだし暖かいよ。
(0) 2016/09/11(Sun) 21時半頃
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──9月某日──
茹だるような暑さは過ぎて、季節はもう秋になる。
季節がいよいよ切り替わる頃の切なさ滲む空気も、
今日という日に限って言えば、感じることはできない。
なんせ、朝、目を覚ました君が知るのは、
大荒れの天気。窓を叩く雨と風。
とても散歩日和とは言いがたいが、どうやら学校はあるらしい。
君のもとに、休校の連絡は届かないし、警報の類は発令されていない。
君は、しぶしぶと、或いは、模範的に、制服に着替えて、
身支度を済ませて、ざあざあ降りの道を学校へと向かう。
(#0) 2016/09/11(Sun) 22時頃
君たちは、進学校と名高い若月高校に通う、高校3年生だ。
つい先日、高校生活最後の文化祭を終えて、
教室はいよいよ、受験ムードが色濃くなる。そんな頃。
(#1) 2016/09/11(Sun) 22時頃
察しのいい君ならば、気づくかもしれない。
悪天候の中、ただでさえ人通りは少ないが、
いくら学校に近づけど、君と同じ制服が見当たらない。
やっと出会えた、と駆け寄ってみれば、
それは同じクラスの、見知った顔ぶればかりだろう。
不思議に思ったところで、校舎は目前に迫っている。
勤勉な君は、学生の務めを果たすべく、
その校舎へと足を踏み入れるだろう。
(#2) 2016/09/11(Sun) 22時頃
ようこそ。冷たい校舎は君を待っている。
(#3) 2016/09/11(Sun) 22時頃
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血よりも濃い私は何処にいる。
(1) 2016/09/12(Mon) 01時半頃
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── 朝:自宅 ──
[ BGMにしていたニュース番組の途中で、テレビの電源を切る。 今日の天気のことを考えて、早めに家を出ようと思うと、 番組の最後まで見ているわけにはいかない。
制服姿でキッチンを動きまわって、 朝の片付けが終わったら、冷ましていた弁当の蓋を閉じる。
きんぴらごぼう。プチトマト。たまご焼きは甘め。 ピーマンのおかか和えに、豚肉の野菜巻き。冷凍のグラタン。
一つだけ用意したお弁当の中身はそんな仕上がり。 私はあの、冷凍食品の冷凍グラタンが大好きで、 きっと、母の手料理を差し置いて、 好きな食べものベスト3に挙げてしまう。
いわゆるバリバリのキャリアウーマンたる彼女は、 高校生になった娘のお弁当作りを日々のタスクから外したし、 娘の手作り弁当なんて必要とはしていない。]
(2) 2016/09/12(Mon) 01時半頃
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[ きれいに片付いた家の中は、 なんだか私の性格そのもの、みたいで、 私は玄関から、ピカピカの廊下を眺めて、 ほっとしたような声で、つぶやいてしまう。]
いってきます。
[ 母と二人暮らしの家。見送ってくれる人はいない。
彼女は酔って帰ってくるたびに、 「猫でも飼おうか」なんて言うけれど、 絶対に動物の世話なんて向いてないんだから、やめてほしい。
玄関の扉をくぐっても、雨はまだ私を打たない。 真新しい、きれいなマンションの一室。 廊下側、外界に向けてかけられているのは、 おしゃれな筆記体で「KAMEI」と記された表札で、
私は一度、自分の名前をまじないのように唱える。]
(3) 2016/09/12(Mon) 01時半頃
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夏休み中に両親が離婚して、 私は、御堂遥から、亀井遥になった。 字画はどちらも良いと言われたって、 私の心模様はそうもいかない。
(4) 2016/09/12(Mon) 01時半頃
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[ エレベーターで、1階まで降りる。 エントランスの向こうが霞むくらいの雨に、 少し、怯んだのは事実だけれど、 もう一度確認した携帯電話にも、連絡はなかったし、 こういうのは、躊躇ったって無駄。
近づけば、自動ドアはするりと開いて、 私は大ぶりの傘を構えて、雨の中に飛び込む。
ローファーの底が地面を叩くたび、 ぴしゃん、ぴしゃん、と、水の跳ねる音がする。**]
(5) 2016/09/12(Mon) 01時半頃
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いってきまーす!!
(6) 2016/09/12(Mon) 01時半頃
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― 朝:通学路 ―
[ドアを閉める前に家の中に向かって放った声は、ちょっと元気が良すぎた。わざとらしかった。 あー、失敗した。やりすぎた。
ため息をつきながら、私は傘を開く。傘の内側は、白い雲がふわふわ浮かぶ、青い空が広がっているのだ。 どしゃぶりの雨の中、私は小さな青空の下を歩く。 打ちつけるような横殴りの雨の前に小さな青空は無力で、守ってくれるのは私の頭だけ。制服はみるみる雨に打たれて濃い色に変わっていく。 だけど、今日が臨時休校になるなんて連絡はなかった。 学校からも。 あいつからも]
(7) 2016/09/12(Mon) 01時半頃
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[私には、幼馴染がいる。絵に描いたような幼馴染。 同い年で、家が隣同士で、きょうだいみたいに育った。
喧嘩らしい喧嘩もしたことがなかった。揉めた記憶といえば、どっちが上のポジションかってくらい。 私はあいつを弟みたいなもんだって思ってたし、あいつは私を妹みたいなもんだって主張した。その決着はいまだについてない。
登下校もいつも一緒だった。こんな天気の日なら、間違いなく「どーする?」ってメールが来た。 文化祭まではずっとそうだったし、これからもずっとそうなんだって思ってた。思いこんでた。
変わってしまったのは、私の耳に届いた一つの噂がきっかけだった。 あいつが、文化祭の日、告白されたらしい。 しかもそれを、断ってしまったらしい。 そんな噂を聞いたら、いじるネタゲットー!って思うに決まってる。 私は早速突撃取材と決め込んだ]
(8) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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激しく打ち付ける雨の音。 それだけでも、うんざりした。 .
(9) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[ 雨は嫌い。 6月も9月も嫌い。梅雨も台風も嫌い。ゲリラ豪雨も。 嫌なことは、雨が降る日にやってきます。 だから、きらい。嫌い。 キライ。
見て、今日も雨。*]
(10) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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─ 朝 ─
[ 朝起きた瞬間、聞こえた音に、 今日はロクデモナイ日なんだとわかった。 起き上がる気力もないまま、伸ばした手は目標を掴んで。 ひく。 太陽は、ありません。そのうえ。 確信が確固たるものになりました。 視界は不良。雨のせい。大嫌い。]
──…… ん"ー。
[ 半分唸り声です。抗議の。 誰に抗議してるんでしょうね?天に? きっといつまでも、届かない抗議。
手を外したら、カーテンはゆらゆら揺れた。 それをぼんやり見て、枕元の時計を引き寄せ見て、 起きなきゃ、って。]
(11) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[ 立ち上がる気力もないので、ずるりと落ちましょう。 ベッドから床。 部屋から廊下へ。 手で這って、這って、気がつく。 ドアが開けられない。 なんで、うちは自動ドアじゃないでしょうか。 何度だって、そう思う。
仕方ないから、膝立ちでドアノブに手をかける。 廊下に上半身はみ出して、行き倒れておきましょう。 おやすみ、セカイ。 次起きたときは、雨が止んでますように。]
(12) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[ ずんずん床が揺れました。 この歩き方は、二番目の兄です。 好き勝手歩くし、一番床が揺れる。 踏まれました。 背中に足を乗せて、うりうりってされました。]
なー、にすんのぉ、ばかー。
[「馬鹿はお前。」 そうです、おにーさま。知ってました。 でも私、おにーさまより頭良いんですよ。 知ってました? 返答の代わりに、ずりずりと匍匐前進して。 力尽きた。]
(13) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[ 親愛なるお馬鹿なおにーさまは、 案の定好き勝手に歩いて行ってしまう。 私のことも連れて行ってくれればいいのに、ばか。
今、全身で触れ合う床にどう愛を伝えるべきか。 触れ合えば、気持ちが伝わるとか、 そんなのはおとぎ話ちっくなことは信じない。 メールは宛先に困るしー、 愛を囁くにしても囁き場所はどこなの。 …そもそも床の感覚器官は何処にあるんでしょう。 余程暇な時にでも考えることへ思考を飛ばそうと、 目を閉じました。 ちょっとしたら、一番目の兄の気配。 おにい、おにーさまに聞いて迎えに来てくれたの?]
(14) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[「時間、いいの?」 その言葉に続いて聞こえた刻に、耳を閉じてしまう。 もう準備をしなきゃいけない時間じゃない。 イヤイヤ、なにもかもイヤ。 そんな気配を察したのか、兄はまた口を開く。 「母さんが送ってくれるって。」 お母様お兄様、私、今すぐ準備します。]
おはよ。
[ 肘を立て、顔を上げ、 ようやく兄の方をみて、挨拶しましょうか。]
(15) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[ 今日の朝食は、トーストでした。 林檎のジャムをたっぷりつけた、トーストを、 若月の制服に身を包んだ私は、さくさく、さくさく咀嚼。 ニュース番組に、目は釘付けのまま、さくさく。 スカートの上にパン屑落ちるなあと、思いながら。 ゴミはゴミ箱へ。 食べ終えた私はスカートの裾を持って、ゴミ箱へ。 パン屑を放り込むためですよ。もちろん。]
(16) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[ 身支度も、食事も、終わらせる。 こんな雨なのに、ニュースでは警報もなくて。 携帯を覗いても、休校のお知らせもなくて。 外に、学校に、行く覚悟を決めた。
最終チェック、わん、つー。 鞄の中を点検して、忘れないものはないことを確認。 教科書、ノート、筆箱、参考書、財布、 他には何かありました? 濡れた時のためのタオルも、お忘れなく。 濡れた時のための替えの靴下も、お忘れなく。]
(17) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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「ねーねー!告られたんだって? しかも断ったって?」
[ひゅーひゅー、なんて効果音つきでそんな話をしたのは、あいつの部屋だった。あいつの部屋は私の部屋の延長。あの日までは、そんな感覚だった。 あーそーだよ、なんて。ぶっきらぼうに言ったあいつは、その時はいつも通りだったと思う]
「ねー、なんで断っちゃったの? もったいない!!」
[なにしろ私はそんな経験が全くない。興味津々で首を突っ込んだ。好奇心が7割、冷やかす気持ちが3割くらいだったんじゃないかな。 わくわくとそう聞いたら、あいつが私の方を見た。
見たことのない顔、してた]
(18) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[「そろそろ行くよ。」 母に声をかけられて、さっと鞄のチャックを閉じ、 鞄を肩にかけて、ローファーを履いた。 とんとんと、地にノックして玄関をくぐる。]
いってきます。 運転よろしくお願いします。
[ 家への挨拶。 それから、車を運転する母へ。 一緒に車の後部座席に乗り込んだ一番目の兄と口を揃えた。 駅まで送ってもらう算段。 玄関にかかっていた傘の柄をいじりながら、 目的地までのんびりと揺られる。**]
(19) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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[多分、私は、ぽかんとした顔をしていたと思う。
ぐいっと肩をつかまれて。
無理やり、キスされそうになって。
――――――突き飛ばして、逃げた]
(20) 2016/09/12(Mon) 02時頃
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