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[うるさい機械の警告音は、遠く彼方から聞こえてくるよう。
黒くなった彼女の名前と、まだ続いている悪夢の世界に残っている友の、仲間の姿を見つめながら。
もうすぐ開くであろうカプセルの隣でじっと待つ。
まだ開かないことに焦れて、無理やり爪をたてて開けてやりたいけれど。]
[ぼそと彼女の名前を呟きながら、その目が開くのを待っている。]
メモを貼った。
― 自室 ―
では……どうぞ、こちらに
[ベッドと和箪笥。化粧台に机。本棚に少しの本。
必要最低限しかない部屋。女の子らしいのは、化粧台の
簪やベッドのうさぎのぬいぐるみ程度だっただろう。
緊張した様子に小さく笑みを漏らして、椅子を勧めた。
着替えた着物を片付けて、部屋の片隅に置いたままに
なっていた胡弓を手にして、ベッドに腰掛けた。
弦の調子整えれば、深呼吸。]
唄……なんでも、良いんでしょうか?
[ナユタの返事を聞いてから、弦に指を掛けた。]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
―実験室―
[アラームの音が鳴る。煩い、煩わしい。一体何なんだと、閉じられていた瞼がゆっくりと上がっていく。
カチリ、と何か鍵のような物が、外れる音がする。
…………外れる、音?]
……………、どこ、ここ。
[一番最初に耳にしたアラームは、どこか実験終了のあの煩いアラームに似ていた気がして。
カプセルの蓋が開けば、意識が覚醒しないまま外へと。]
メモを貼った。
メモを貼った。
―志乃の部屋―
[あまり部屋を見るのは申し訳なくて、
ただ、可愛らしいうさぎのぬいぐるみが目に入り僅かに和む。
結局、志乃を見つめていれば
胡弓を手際よく構えていく様子に、
見慣れははずの姿なのになぜか新鮮で。]
志乃の、好きな曲を・・・。
[お願いすれば、弦が音を奏で始める。
響く音に耳を澄まし、
目を閉じるとその音か心の中に染み渡る。]
[答える声に頷いて、弦を弓で撫でる。
どこか雨音のような旋律を奏で。
静かに歌い出す。
感謝と願いを込めて。
貴方が幸せになれますように
貴方がいつまでも変わらずにいられますように
その優しい音が、好きだから。
貴方だけは―――…どうか、変わらないでと]
[着ていたはずの青の軍服では無く、研究所に居た時の服装になっているのに気がついて、小さく首を傾げる。
床に足をつけてぼんやりと状況を確認するように視線を走らせれば、
会いたかった人の、姿が目に飛び込んでくる。
……夢、なのか。
[目を丸くしながら、それでもゆっくりと近づいていく。]
![]() | 【人】 楽器職人 モニカ−青の拠点へ続く道− (6) 2013/07/03(Wed) 00時半頃 |
リッキィ。
[名前を呼ぶ。最期に呼びかけた名前を、今度はしっかりと届くように。
手を伸ばしてふらりと歩く
その視線はこちらへを向けられただろうか。
名前を、呼んでくれただろうか。]
ごめんな。
[ライジのことを告げなかったこと。
置いていってしまったこと。
泣かせてしまったこと。
側にいれなかったこと。
それから。]
……っ、
[たくさん言いたいことがあるのに、伝えたいことがあるのに。
リッキィの顔を見たら何から言えばいいかわからなくなって、掴んだ手を引いて近くへ寄せて、彼女の身体を抱きしめる。
拒まれなければ、少し長く。]
メモを貼った。
[一曲歌い終わった頃だろうか。
遠くの方で微かに鳴り響く、あの電子音。
誰かが、また……夢の中で、死んだことを悟る。]
……っ、
[兄が、目覚めたのか。
それとも、ソフィア? それとも、それとも。
脳裏に浮かぶ生き残っていた"家族"たちの顔。]
不安げにナユタを見つめていた。**
メモを貼った。
[名を、少し前までは当たり前のように聞いていた声で自分の名前を呼ばれる。
紺色を、見上げようとして、掴めなかった手を掴もうとして]
ヤ、ニク?
なん、で……だって、死んだんだよね?
私、ちゃんと…………やっぱり、夢?何、これ。
………夢でも、いい。
[自分の幻想か妄想が、ヤニクの姿を作り上げて言葉を紡がせているのか、それとも何なのか。
混乱した頭では上手く物事が考えられなくて。
夢だと思い込んでいるから、ヤニクの行動は拒まない
寧ろこちらからも力をこめて。小さな声が聞こえれば、さらにその力は強くなっただろう。]
[その旋律に、志乃の声が重なる。
3年ぶりに聞いた優しい唄。
戦場の音とは違う、懐かしい旋律。
目を開けて、志乃を見る。
念願の、目の前で歌う彼女の姿は
想像していたよりも、ずっとずっと美しく、
少し眩く感じて、瞼を細める。]
[名前を呼ばれる。
やっと――何だか、実感がわく。]
夢じゃねぇよ。……夢じゃない。
俺は死んでない――ちゃんと生きてる。
[夢はあちらの世界の方だった、とリッキィに伝える。
こちらの世界の方が本物。これはただの悪趣味な実験。
そう説明しながら、小さくて少し冷えている彼女の身体を抱きしめる。
その腕にさらに力が込められれば、こちらの腕は少し緩めて、宥めるように背中をさすって、小さく微笑む。]
……夢でもいいとか、言うなよ。
覚めたら終いな夢でもいいとか、言うな。
[夢でも会いたいと思ってくれたのか、とは尋ねず。
そうであったら良いなと思いながら。]
― 皆とは違う実験室 ―
[鳴り響くビープ音に眉を顰め、薄らを目を見開くと殺したはずの研究員が顔を並べていた。
研究員は実験の結果に満足していたのか、互いを讃えあい、中にはグラスを仰いでいる者も存在した]
……なるほど。
[――全ては夢だったのか。
カプセルは顔だけが覗けるようで、傍らの存在。
ロックが外れて開けば彼らは大慌てとなるだろう――]
[音がやみ、彼女の様子に異変を感じる。
その様子に、もしや、という思い。
でも、それ以外に思い当たる節がなくて…。]
………
[ちらりと扉の方へと視線をやる。]
メモを貼った。
![]() | 【人】 楽器職人 モニカ …ぁ…。 (11) 2013/07/03(Wed) 01時頃 |
―――いき、てる………?
[あの戦場での感覚も、銃の感覚も……雷の痛みもナユタを撃った感覚も。
匂いも痛みも全部覚えているというのに。
苦しそうな声も、焼けた匂いも、全部が全部。
………あっちが、夢だったとしたら現実味がありすぎるし悪趣味だ。
悲しんだ感情も、苦しんだ感情も、……別の、感情も。
全てが実験内でのことでした、と言われても簡単には納得できなかったけれど。]
………誰も、死んでない……
ヤニクも、生きてる………そっか。
あぁ、うん。そしたら……覚めない夢なら……
[段々と俯いて声を小さくして。
自分の行動に恥ずかしさを覚えたのか、耳は真っ赤で床と睨めっこ状態。
……それでも、腕の力は緩める事はなかった。]
―― 実験室→別室の実験室 ――
[一人だけ隔離されている被験者。
オスカーが目覚める時間となったので、
会話をしていても打ち切ってそちらへと大股で向かう。
近づけば祭り騒ぎの音が聞こえたか。
オスカーの能力は予想以上だったらしい。]
……めでたいこったな。
[彼はここから出るのか、
それとも飼い殺されるのか。]
おい、邪魔だ。
おねんねさせられたくなきゃ静かにしろよ。
[中に入って一言。
ミナカタと力を防御する方法などないから
彼らは一応おとなしくはなるだろう。]
……おはようオスカー。
暴れるなよ。
[彼の気性はモニターで十分理解したので
カプセルから覗く顔に向かって話しかける。
続きは小声で。彼にだけ聞こえるように。]
[信じられない、と言いたげなリッキィの声
あまりに現実的で、今のほうが夢ではないかとすら思っていた。
それぐらいリアルな夢。]
生きてる。俺も、お前も――他の奴らも。
ここにはいねぇけど、志乃とナユタも、――きっとオスカーも。
誰も死んでねぇよ。
[腕の中、俯いていくリッキィを不思議そうな顔で眺めていたが、彼女の耳が赤くなっているのに気がつくと、じわりじわりとヤニクの頬の温度もあがっていく。]
っ……! は、離れろっ。
こ、こっち、来いっ!
[抱きしめていた腕を解こうとするも、彼女が解いてくれなければ一瞬ためらってからそのまま抱きあげる。
腕が解かれればぐいぐいと引っ張って、実験室を出て行った。]
――実験室→ヤニクの部屋――
[抱きかかえて、あるいは手を引いて。
先ほど一度戻った自分の部屋へと足を向ける。
部屋に入るまでは完全に無心に近かったので、リッキィに何か言われても問われても、ほとんど返せはしなかった。]
……約束、一つあったな。
[ようやく少し落ち着けば、それでも鼓動の音がうるさい中。
果たせなかった約束のことを。]
メモを貼った。
メモを貼った。
[全てはまやかしの産物だった。
"オリジナルのオスカー"は死んではいなかった。
掌から大凡30cmの球状。
それがオスカーの接触感応能力の効果範囲だった。
触れる機械、人の思考や感情を自動的に読み取る――。
オスカーの前で嘘は通用せず、隠し事をすることもできない。
だから――いつも柔らかな微笑みを浮かべていた。
己の精神が病んでしまわぬように――]
別に暴れはしないよ。
[
小声には小さく頷き――]
先生は苦労性だね。
[苦笑交じりに口にする]
……すまんな。心配性で。
[お前は優しいから、とは続けず。
真っ直ぐだから、とも言わず。]
一人だけ別室なのは――こういうことか。
[視線で研究員に問いかければ、
説明は貰えただろうか。]
[離れろって、私の手を掴んで抱きしめたのはヤニクの方じゃないかと反論しようとして手を解かずにいると]
う、っわ、ぁ!
[視線が、高くなった。
状況を理解するのに18秒。理解したと同時に]
ちょ、ヤニク………!!!
[ヤニクに連れられて実験室を後にした。]
――ヤニクの部屋――
[リッキィはどんな反応をしているだろう。
一呼吸だけ置いて、あの時言えなかった事を告げる。]
言いてぇこと、ちょっと違うんだけど。
……最初は、側に居てぇと思って――皆の、リッキィが、一番必要なのは誰だろうって思って。
[みんなを支えられる人は誰だろう、と思って最初に思いついたのはライジだったから、彼のようにならないと、とずっと思っていた。
兄と離れ離れになってしまった彼女の側にいて、少しでも支えられれればいい、としか思っていなかったはずなのに。
偽物は本物がいれば必要がなくなるから。
彼女の隣にいる理由も――無くなってしまう。]
あの時は、ライジの代わりでもいいから、側にいたかった。
皆に、能力以外でも役に立ちたかった。
[でも――と声を落として。
そこから先は小さな、弱弱しい声で。]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
[
曰く
――3年前の事。No.4の親和性が高すぎ、異形となって忽然と姿を消した。
曰く
――その所為で研究費が削減され、クローン体での研究が行き詰まりオリジナルの記憶を改竄してクローンNo.4として実験を継続することにした。
曰く
――調整に調整を重ね、最も危険性が低い部位に異形の移植を行った。
曰く
――記憶の改竄が原因なのか不明だが、能力の変化は見られたもののそれ以上の進展はなかった。
曰く
――更に3年の仮想実験を行うために本試験に参加させた]
[研究で得られた成果は大きかった。
年月を掛ければある程度は親和性も自然と高まり、聲が聞けるようになること。
薬により親和性を高めた時の作用と副作用の検証。
何よりも、調査していた異世界の生物の本質――]
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