266 冷たい校舎村7
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──………──
[ 寝返りを打つ。痛い。
じわじわと響く痛覚で目が覚める。
目の前に映るのは見慣れた自宅の天井で、
端っこにある顔みたいな木目と睨めっこ。
そんなものも一瞬だけ。 ]
……
[ 痛むのは、真ん中ではなく。
寝心地の悪い床の所為で身体の節々だったけど。 ]
[ 相原からの連絡は、律儀にも俺にまで届いており
カーテンの閉め切った薄暗い部屋の中じゃ
ちかちかと光る端末が嫌にうるさかった。 ]
ほーん、
[ 病院に運び込まれたという人物の名前を見れば、
ただ、それだけの声しかでない。
毎日のように来ているであろう、
似たりよったりの真っ赤なパーカーの上から
ブルゾンを一枚羽織って。
あの吹雪く風などない。
深い紫の広がる空の下へと踏み出した。 ]
[ もちろん、向かう先はひとつ。
養拓海という男が搬送された場所。
大きな門構えをずずい、と見上げながら
中に入るのを少し躊躇っていた。
細めた眸は外にある喫煙所へと向き
私服ならバレないだろ、と自然と其方へ。
一度休憩が必要だ、と。
カチ、カチ、とライターの火を点けようと。 ]
……くそっ、こんな時に
[ しかし、何度押しても火は灯らない。
火のない煙草を片手に悪態をついていた。 ]**
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──回想・保健室── [ 性格悪いって、鼻を鳴らす。 1日前もこんな風だった気がする ]
それって、罪悪感?
[ 養くんが言ってたのを思い出す>>4:69
罪悪感、感じたくないから どうにかしてやりたいんでしょ? ]
(63) 2019/06/16(Sun) 09時頃
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だって………… あの頃は成績が一気に落ちて、 本当にそれどころじゃなくて。
幻想の恋人だったの。夢から醒めたの。
聞いてないって言われても、 私だってここに来てから気付いたんだから 仕方がないじゃない。 逃げ道なんて、私に聞かないで……
[ いっぱいいっぱいなの。 彼の逃げ道を用意できるくらいなら、 先に私が逃げてるわ ]
(64) 2019/06/16(Sun) 09時頃
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[ 顔を真っ赤して叫ぶ、まるで捨て台詞 ]
好きって言われて気になるなんて、 子供の幻想だよ。
性格悪いなら突き通して、 手酷く振ればいいじゃない。 あの時みたいに、 ポイッて捨てればいいじゃない。
それとも ……──────
[ 鎖骨の傷に目をやって、黙る ]
(65) 2019/06/16(Sun) 09時頃
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[ 痛みの中にいたい?
それとも 逃げ出したい? ]
(66) 2019/06/16(Sun) 09時頃
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………… ホント 馬鹿。
[ 目を潤ませたまま踵を返す彼を止めることはなく 去りゆく背中に小さく呟いた ]
(67) 2019/06/16(Sun) 09時頃
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助けたく なるじゃない ──**
(68) 2019/06/16(Sun) 09時頃
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──8:50──
[ 変わっていく止まった世界で チャイムの音だけは変わらずに時を報せる ]
(69) 2019/06/16(Sun) 09時半頃
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[ この場所で2度目のチャイムを聞く。
前回のチャイムから動いていないから 知らないだけで、体育館のマネキンは 増えているのかもしれない。
そして 今、また ──── ]
─────── !?
[ ガシャン 何かが割れる音がして 視界が暗くなる。怖い…………
ついに私がマネキンになる番でも きたのだろうか? ]
(70) 2019/06/16(Sun) 09時半頃
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[ 復旧した灯りにおそるおそる目蓋を上げる。
誰もいない場所で、私の顔が窓ガラスに写る ]
なん、で…………?
[ 5回目の8:50。 数え違えてなければ、今は朝だ。 昨日まで見ていた雪景色はもう、映らない。
恐る恐る立ち上がって保健室から外に出る。 ああ、なんでこんな時1人なんだろう ]
(71) 2019/06/16(Sun) 09時半頃
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[ 足を止めたのは食堂前。 そういえば結局何も食べれていなかった。
机に並んだ食事。 作られてそんなに時間は経っていない。
ハムを敷いた目玉焼きに、 簡単なサラダに、焼いたソーセージ。
「朝飯」というメモの字は、見たことがある ]
(72) 2019/06/16(Sun) 09時半頃
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三人分 ──────
[ 誰と、誰と、誰のもの? ]**
(73) 2019/06/16(Sun) 09時半頃
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[嫌だったのかな。
宇井野はなんとも言えない顔をしていた。
肯定でもなく否定でもなく、
帰って来た問いに紫苑は微笑む。]
正直、見える訳じゃないけど、
ネコちゃん、嬉しそうだったからね。
[嘘。女心すら分からない紫苑に、
ぬいぐるみの気持ちが分かるわけない。
でもまぁ、良いんじゃない?
少なくとも、紫苑はあのネコを可愛いと思った。]
良いよね、ネコちゃん。
俺も好きだよ。
[猫か犬かと言われたら犬派だけれど、
まぁ、それはさておき。]
[話の腰を折られてか、
突然の宇井野とネコの取り合わせに驚いたのか。
呆気に取られていた灰谷も
飲み物を買いに行くらしい。
そっちの方向、自販機あったっけと思いつつ
紫苑は彼女の向かった方向とは
少し逸れた場所へ向かう。
あったかいコーヒーか紅茶が飲みたいなと思う。]
[ガコン、と自販機が音を立てる。
飲み物が勢い良く落ちてくるこの音を
紫苑は余り好まなかった。
びっくりするし、容器凹んでたりするし。
閑話休題。
コーヒーを冷ましつつ
紫苑はスマホを取り出した。
通話アプリが大量の通知を告げていた。]
[その相手が誰かだなんて言うまでもなくて、
自分を引き留めるような言葉が並んだ通知を
紫苑はふぅんと感心したように眺める。
振られた時には、
これくらい泣き言を言ってもいいらしい。
自分の過去を省みつつ、
別段気が重くなることは無かった。
吹っ切れた、ってやつなのかもしれない。]
悪い子だなぁ。
[度のない眼鏡の下で、紫苑は笑う。
生憎と、国語の教科書と同じで、
文字を並べられてもピンと来ない。
むしろブロック忘れてたなぁって、
親指を画面の上で滑らせた。
薄情?はて、どちらがだろう。
雑音は未だに耳から離れないのに。]
……バイバイ、はるちゃん。
[光る画面に紫苑は告げる。
多分、言葉とは裏腹に
チャシャ猫のように口角が上がっていた。**]
撫でて欲しいのなら撫でてあげた。
痛みが欲しいなら痛めつけてあげた。
愛でないと言われても、
罪であると言われても、
私には理解できないの。
[ 傘に、手を伸ばしかけたのは
夢の中の大雪が、印象深かったからかしら。
でもね、もう必要ないんだもの。
あの世界でだって、持っていなかったし。
玄関から一歩出た私の手に、青い傘は無くて
夜の風の冷たさに、冷え切っていくだけ。
やっと、あの子が死んでしまった実感を
得たけれども、どうしましょうか。なんて、
考えても、飼うことをやめる気はないの。
悩んでいたことに踏ん切りがつけれたって、
私が私なのは、変わらないんだもん。 ]
[ 明るい道を選んで、夜を歩いて行きます。
怖い人に襲われたら、病院に着けないし。
足取りは重くって。重くって。
誰かを飼っているときよりも、重くて。
立ち止まりました。独りきりは、息苦しいので。
公園の街頭が、私の影を創り出していて
不意に消えたりするのを、眺めていると、
不意に、腕を掴まれて、驚きました。
ええ、ああ。貴方は。
いつかの、公園の小学生。
ついさっき、マネキンを見たから分かるわ。 ]
……背、伸びたね
[ 受験の時、だから三年前かあ。私は笑います。
まだまだ伸びるんだろうけれど、十分。
彼は、腕を、振り上げて。
あら。殴るのかしら。何て眺めていたけれど、
結局力なく、降ろしてしまいました。 ]
[ 俯いて、顔を上げて、また俯いて。
彼は、小さな声で話し始めました。
その後保護されたこと。今は親戚の家に居ること。
そこでは良くして貰っていること。
あの日、私が二度と帰らなかった家で
どんなに寂しくて、辛くて、憎い気持ちになったか
……という、ありふれたこと。と、
それでも、あの親から遠ざけて、助けてくれて。
一生忘れられないほど、感謝していること。 ]
[ まだまだ拙い、何歳も年下な子供の話を、
私はふんふん と聞いてあげました。 ]
それだけ?
[ それだけ……と、力なく返す彼の声を聴いて
にっこりと笑いながら、腕を振り解きました。
だって私、貴方に用は無いんだもの。
足はね。相変わらず重いけれど、歩き出して。
公園を置いてけぼりにしちゃいます。
彼もきっと、すぐ帰るわ。ばいばい。 ]
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