253 緋桜奇譚・滅
情報
プロローグ
1日目
2日目
3日目
4日目
5日目
エピローグ
終了
/ 最新
1
[メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
視点:
人
狼
墓
少
霊
全
|
― ある時代のある村で ―
[京より北の小さな村。 富士の噴火の噂が伝わるなか、女がひとり蔵の中から小さく切り取られた空を見ていた。 女は父親の言いつけで蔵で暮らし、度々村を訪れる旅の青年に思い耽ていた。
この村から少し歩いた所に大きな池がある。 昔、村の娘がこの池まで逃げてきた龍を看病したという。 村が飢饉に襲われた際に、龍はその娘を妻に貰う代わりにこの村を救った――そんな伝説がこの池にはあった。
ある時、蔵の女が妊娠したという。 女はいいこ、いいこと大事そうに腹を撫でる。 青年が夜に来たと女は言うが、誰も蔵の扉を開けた音を聞いていない。 村人は山賊か妖怪にでも食われたかとうとう頭がおかしくなったかとしか思わなかった。
これ以来青年が村を訪ねる事はなかった。 小さな青空を見ながら青年の事を想う。 そして青年への不安で頭が満ちたとき突然腹が痛んだ。]
(69) Enk 2018/11/21(Wed) 23時頃
|
|
[産婆が介抱するなか、胎から我が子が出ていくのが女にはわかった。 それに安堵し産婆の顔を見るが、なぜかその顔は引きつっている。 女は不思議に思うも疲れでそのまま眠りについてしまった。
朝、目覚めると我が子がどこにもいない。 まともに動けぬ体で村中を走り回り我が子について尋ねが、相手にする者などいない。 茫然自失で蔵に戻り、寝床の上で腹を撫で続けた。
いいこ、いいこ。 どこへ行ってしまったの。行っちゃだめよ。 もうどこにも行かないようにお腹に戻してあげるからね。 いいこ、いいこ…
そしてついに村が飢饉に襲われ、村人たちの恐怖が狂気に変わっていく。 龍神様にまた助けてもらわなければ。 龍神様の“妻”を捧げなければ。]
そうだ、あの女を龍神様に捧げよう。
(70) Enk 2018/11/21(Wed) 23時頃
|
|
[飢饉で苦しむ里を守れるのは龍神様だけ。 お前は龍神様の妻になるんだ。
女は村人に言われるがままに池の前へ立たされる。 綺麗な着物、手足には鮮やかな装飾、小さな祭壇には貴重な米や海の物。 女の父親が祝詞をささげ、そして、 女は池に突き落とされた。
水が冷たい。着物が重い。息ができない。 嗚呼、我が子がいない。
揺らめく青空は徐々に小さくなっていき、まるであの蔵で見る小さな空のようだと女は思った。 その空も消え、無音の暗闇に包み込まれる。 だが池の底は僅かに明るく、そこには鱗の山があった。 土ぼこりを立てながらゆっくりうねるそれは、胴径が人間の身長程ある巨大な蛇のような何か。 これが龍神様なのか。]
(71) Enk 2018/11/21(Wed) 23時頃
|
|
[あまりに巨大で向こう側にある龍神の顔を見ることはできない。 龍神が低くしゃがれた声でお前は誰だと問いかける。 私はあなたの妻だと答えるが、私にもう妻などいないと声が響く。 それでも私はあなたの妻にならなければならないと言うと、しばらくの沈黙の後、龍神は名前を尋ねた。]
私の名前は、いえ、です
[龍神はそうか、と呟きそれ以来声を発することはなかった。無理やり押し付けられた妻だが、龍神はおいえをそばに居ることを許した。龍神にはもう村を守れるほどの力も無く、おいえが来てもただ眠り続けるだけ。 いつか消える日まで、おいえに加護と居場所を与え続けるのだった。
そして、ある日池の底で龍神へ信仰が途切れた音を聞く。 龍神の身体がひび割れ始め、おいえはそれを繕おうと必死で龍の身体を撫でる。 おいえは龍神を通して外の様子を視ていた。 村人は都合のいい時ばかり龍神を頼り、自分勝手にものを押し付け。今では文明開化により信仰がうつろい、古きものは悪とされ、ついに誰からも龍神は忘れられた。 主の消えた池に鱗が舞う。
神は死んだ。女は怨んだ。変わりゆく人を、時代を、すべてを。 恨み、怨み、憾み。鬼へと落ちたのだった。]
(73) Enk 2018/11/21(Wed) 23時頃
|
|
― 一年後 六道珍皇寺・地蔵堂傍 ―
[広い青空。目を覚ますと地蔵堂の横で倒れていた。 身体は濡れ、着物は所々破け、腰のあたりで上下に分かれてしまっていた。]
なぜわたし こんな所にいるのかしら
[たしかいつもの通り蔵の中にいたはず。 身体を起こすと帯がほどけ胸元があらわになる。 その時地面に二つの黒く薄い物が落ちた。 もとは一枚の鱗のようだった。 片方は青黒く輝き、もう片方は黒ずみ、触ると砕けてしまった。 それを見るとなぜだか悲しくなった。それと同時に思い出す。 自分の身体が融けていくような感覚。 ぱきりという音。 揺らめく小さな空。 上へ引っ張られる浮遊感。]
(74) Enk 2018/11/21(Wed) 23時半頃
|
|
[未だ形ある半分の鱗を握りしめる。 思い出した記憶の欠片が意味するものは分からない。 だが全てを失い、だからこそ自由になれたのだと悟った。
おいえは立ち会がり、手で服を留め歩き出す。 何も知らない都で弱い自分は生きていけるのだろうか。 生きていけないかもしれない。 でも暖かな空気が包み込むこの都ならもしかしたら―――
―――そして新しい時代は進んでいく。**]
(77) Enk 2018/11/21(Wed) 23時半頃
|
1
[メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報
プロローグ
1日目
2日目
3日目
4日目
5日目
エピローグ
終了
/ 最新
視点:
人
狼
墓
少
霊
全
トップページに戻る