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― 病室にて ―
[目を覚ます。夢を、見ていた気がする。
まだ、感覚を失いながらも動けていたときの。
文化祭が終わってほどなくして、
ある日、とうとう、歩くことも覚束なくなって
入院してのリハビリと検査の毎日が始まっていた]
……あれは、夢、だよな。
[携帯を使うのもリハビリの一つ。
さすがに通話は病室では難しいけど、
目が覚めたのでSNSやメールをチェックしようとしたら
電源がつかなくなっていた。
そういや雪の中に落としたんだったかと考えて、
夢の中ではなかったかと首をかしげる]
[仕方なく起き上がり、
暇つぶし用のノートパソコンを引っ張り出し
そちらでメールをチェックする。
水野から連絡が入っていた]
理一……。
[あいつが、俺たちを閉じ込めていたのか。
青白い光を眺めながら、考える。
誰かの中に閉じ込められてたなんて。
三流小説にもなりはしないだろうに、
あれが現実だったって、夢ではないと
なぜかそう思えて]
To:昴
From:堆
Subject:聞いたか?
-----------------------------
水野からの連絡見たか?
俺のいる病院に運ばれてるらしいから。
様子見てくる。
-----------------------------
[
深夜の道だから、ちょっと警戒して振り向いてみる。半回転。
ちょうど、こちらに声をかけてくるその子と、向き合う形になれた。]
……莉緒ちゃん。
[ほんの一瞬だけ、不意を突かれたように間を空けて。
あの冷たい校舎に向かう道で、最初に合ったときのことを思い出した。
ふっと、硬直した表情が崩れる。]
うん、よく寝た、というか……
あそこにいた、というか。
[あの世界のこと。
彼女も知っているなら、あれは現実だったんだと思えるから、
どういう風に確かめよう。そう考えて]
[少し待ったが返事は来ない。
まだ、あの世界にいるんだろうか。
手すりにつかまりながらベッドを降り、
電動車いすに座り、
まずは様子を伺いに、ロビーへ行ってみようか**]
かまくらでパンケーキ、だめになっちゃったね。
なんて。
……おかえり?
[もしくは、ただいま、かな。わたしも一緒に。
おそるおそる、手を伸ばして彼女に触れようとする。
半分は、あれは夢じゃなかったんだと確かめたい気持ちで、
もう半分は、指先が冷たいから暖まりたい、の気持ちで。*]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
![]() | 【人】 保安技師 ナユタ ── 4度目の、その前 ── (18) 2017/03/16(Thu) 00時半頃 |
![]() | 【人】 保安技師 ナユタ
(20) 2017/03/16(Thu) 00時半頃 |
![]() |
メモを貼った。
――自宅――
……ん、……?
[どうやら机の前の椅子に座ったまま寝てしまっていたらしい。手には編み棒が握られていて、膝の上には黒い毛糸玉があった。
ああ、そうだ、今持ってるのはピンクのマフラーくらいで学校にはしていけないから、黒いマフラーを編めばいいと思ったんだった。
まだぼんやりした頭でとりあえず続きをやろうかとしたところで、机の上に置かれた携帯がチカチカと光っているのに気が付いた。
こんな時間に誰からだ、と疑問に思いつつメールを確認して、そこに記された内容に目を見開く。]
っ、あ、の、馬鹿……!
何が「俺じゃねェよ」だ……!
[一気にさっきまで見ていた夢……いや、夢のような現実か?ともかく、閉じ込められていた校舎でのことを思い出し、勢いよく立ち上がる。
橘が屋上から飛び降りた……ということは、つまり、あの世界のホストは橘だったということだろう。
共に寝袋を取りに行った時は、俺じゃない
悩みなんて勉強のことやCD返してないことくらいだと、そう言っていたのに。
まさかCDの延滞料金払いたくないから自殺するなんて馬鹿なことするわけないだろうし、それなら――]
……っくそ!
[あの時、もう少し踏み込んでおけばよかったのだろうか。
いや、でも、無理やり踏み込んで踏み荒らすのは……。
ともかく、今は病院に急ごう。
せめて近くで、あいつの帰りを待っていてやりたい。
……きっと、帰ってくるはずだから。]
親父!クラスメートが病院に運ばれたらしいから行ってくる!
[いつもの黒いコートだけ羽織って、携帯をポケットに突っ込んで、玄関へ。
親父の返事を聞くよりも早く、家から飛び出した**]
メモを貼った。
[夜中の路上、
わたしにとっては通学路からは外れたその場所で、
振り向いたささらちゃんと向き合う。
―――これって、あの校舎に入る前と逆だよね。
あの時はわたしがささらちゃんに先に声をかけられてたから。
最初の朝のことを思い出しつつ、
不意をつかれたみたいな表情をささらちゃんが見せてた一瞬、
いきなり変なこと訊いちゃってまずかったかな、とは思ってた。
実は全部わたしひとりだけの夢だったのかな、って、
悪い想像も過ぎってたけど]
やっぱり、……いたよね。
[確認するみたいに呟いた声は震えていた。
別に寒くはないんだけど。走ってきて身体は温まってきてるし]
[もし、最初のチャイムが鳴る前にいた職員室で、
帰るでも教室行くでもない第三の選択肢として、
“かまくら作ってパンケーキ焼いてわいわい食べる”を提案してたらどうなってたんだろう。
りーくんは見慣れた笑顔で提案に乗ってくれそうな気がした。
で、そのノリで古辺くんも誘ってしまいそうな気がした。
でも、もうかまくらでパンケーキどころじゃない。
りーくんが――クラスメイトが死んじゃうかもしれない。
それは分かってるんだけど。
目の前にわたしと同じように帰ってきた子がいるってことに、
まず、ほっとしているわたしがいる]
ダメだね。こっち、全然積もってないもん。
なんか変な感じ……。
[だけどこっちこそが現実。だから]
うん。ただいま。
……それと、ささらちゃんもおかえり。
[一通り挨拶を済ませた後。
ささらちゃんの手が頬に触れて、
冷たさのあまり思わず「ひえっ」って声が出たけど、
ちょっとの間はささらちゃんの好きなようにさせておこうと思う**]
[――うん、いたよ。
あの奇妙な出来事を共有したということ。
それが確かめられたなら、安心するように微笑もう。]
うん。
わたしも、ただいま。
[ここにいるふたりと、つばさ氏は無事に現実に帰還できた。
生きていくには息苦しい現実に。
まだあの世界に残っている人たちは、いつ戻れるんだろう。
つばさ氏が手当たり次第連絡をしているみたいだから、みんなきっと気付くとは思うけど。
わたしにはもう、後は祈るしかできないらしい。]
[
冷たいだろうけど、遠慮せずにそのまま、ほっぺたを縦に横に、ふにっふに。
なんだか、安心できる。
少し堪能したら指を離して、ごめんねと微笑みつつ。]
大丈夫だよ。
きっと。みんな。
[それは、あの世界のホストのこともだけど、
彼女にもし心残りがあるのなら、それも意味に含めよう。
相変わらず根拠なんてない、ただの勘だけど。**]
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![]() | 【人】 保安技師 ナユタ── 現在:2階 教室 ── (61) 2017/03/16(Thu) 19時頃 |
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(63) 2017/03/16(Thu) 19時頃 |
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