15 ラメトリー〜人間という機械が止まる時
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[自分は竜だった。 自分は人だった。
俺を起こした身勝手な人間達 争いのために私を創った大人
俺は人の子に身体を借りて 私は竜から力を借りて
住んで居た町を、もろとも焼き付くした記憶――]
(1) 2010/07/23(Fri) 04時頃
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[歌に混じり、異形の声が頭に響く。 一声聞く度に、記憶が補完され]
………っ!
[そちらに辿り着いた頃に、間に合っていたか否か。 シィラは刺の姿で、その場にたたずんでいた]
(2) 2010/07/23(Fri) 04時頃
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― 廊下 ―
[待って、と声がする]
『いやよ、すぐに終わるって言ったじゃない』
[待って、と声がする]
『いやよ、わたしと一緒に行くんでしょう?』
[待って、と声がする]
『いやよ、立ち止まらないで』
『わたしだけのセシル』
[異形の声がする]
[異形を共食(たべ)るのに飽きたのか]
[宿主を喰らおうとする異形が]
[それに突き動かされるように、マーゴの追う声が聞こえても。
立ち止まらない。
立ち止まれない]
[妹を、連れていかなければいけないから]
[狂った機械は]
[嗚呼、それでも少しだけ人の心を残していたのか]
[妹が機嫌を損ねることを知りつつも、一度だけ、立ち止まった。
長い廊下。
そこに、よく響く声で問う]
――では、
貴女も一緒に逝きますか…?
マーゴ。
マーガレット。
[共に生きるという選択肢は、もう、どこにも無いのだけれど――]
[共に死ぬという選択肢なら、まだ、選ぶことができるはずで――]
[歩いてきた道を引き返す。
妹は、異形はそれに怒り、すぐにでも内側から宿主の身体を喰らおうとする。
内側から破壊されてゆく、機械は。
完全に壊れてしまう前に、マーゴの手を取ることができたのだろうか*]
─回廊─
[ぼんやりと。ぼんやりと。
視界に入るひとたちと。
棘を揺らすシィラを見ていた。
紅が落ちる毎に、自分を構築するモノが崩れてゆく。
『糧』がほしいと何かが啼く。
けれど]
……ダメ。
[小さく呟く]
……『ボク』が、さいごって、決めたんだから。
[そう、声に出して。
ああ、ダメだなあ、と思う。
その瞬間までは、と思っていたのに]
……最後に、私、戻っちゃう……ね。
[浮かぶのは苦笑、そして──紅が、散る]
[紅の羽が膨れ上がって乱舞した後]
[残ったのは、紅い羽の山と]
[翡翠色のペンダントが、ふたつ]
[そして、その傍らに佇んで。
紅の山をほっとしたような面持ちで見つめている。
白い翼の少女がひとり]
……ごめんね、ソフィ。
私、最後まで、あなたでいられなかったよ。
もう少し、だったのに。
[そう言って、わらう。
それから、コリーンの方を、見た]
……違うよ。
『ソフィア』は、ずっと前に消えてしまっていたの。
今、羽になったのは、ただの残骸なの。
[死したものの死を受け入れらず。
宿した異形がなした事が認められず。
映す事で、偽る事で。
仮初にその存在を維持しようとしていたものの、骸]
[こちらに駆けてくるホリーの姿が見える]
……そう言えば、まだ、怒ってる、かな?
[ついからかってしまった事を思い出し。
もしそうだったなら、それだけは]
……失敗しちゃった、かな……。
[小さな声で、そう呟いた**]
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[その場に着いた時、 そこにいるのは。
はかなく壊れた二人と。 歌う女と。 銃を持つ男と。
誰かを壊そうとする、異形]
(9) 2010/07/23(Fri) 08時頃
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―永い時に埋もれていた記憶―
[むかしむかし、ある国は2つに分かれて戦争をしていました。
肌の色が違うから。 宗教が違うから。 何となく、気に食わないから。
最初は些細な喧嘩だったのに、 気がつけば町は戦場になっていました。]
(10) 2010/07/23(Fri) 08時頃
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[ある大きな町には、 研究所と呼ばれる施設がありました。 その建物では、戦争のための兵器をつくっていました。
ヒトという機械を利用した、殺戮兵器。 異形の力を借り、使役する、機械。 けれどもなかなかうまくはいかず、 沢山の子供が―何故か対象は全て子供だった―内側から異形に食われ、死んでいきました。
少女がそこに連れていかれたのはある日のこと]
(11) 2010/07/23(Fri) 08時頃
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[少女に名前はありません。 だから大人はこう呼びました。
コードネーム“Holy”と。 聖なる、機械。 その名前は、左腕に刻まれています。
やはり少女も同じように、 異形の力を注ぎ込まれました。 それはとても難しい原理と方法だったので、 ここに書くような事はしません]
(12) 2010/07/23(Fri) 08時半頃
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[それはぴしりとひび割れて、キラキラ壊れていきました。
鉱石の身体は無数の塵となり、キラキラ大気に消えていきました。
残ったのはただ、大事な手帳に書き連ねた、彼の生きた記録だけ。]
[いえ、もう一つ。
左手首の腕時計。自動巻きの古いアンティーク。
時を刻み続けるそれを、飛蝗鼠が拾い上げます。
銀色のバンドを首にかけ、飛蝗鼠はぴょんぴょんと、目指す場所へと跳ねました。
大事な大事なお願いを、かなえてあげるためだけに。]
[ぴょん
ぴょん
かちゃり
時折コケて転がりながら、ヨナの居場所を探しています。]
飛蝗鼠の姿で、出てきたヨナにぴょんと飛び乗ろうとしました。(偶数なら失敗ころころ93
…ヨナ。
[呼ぶ声が届くかは判らないけれど、腕時計をさし出して見上げます。]
きみのお願い、まだ覚えてる?
[クスリと小さく、笑う声。]
そう…全部食べられてしまわない方法。
…ちゃんと、考えていたんだよ。
ソレに耳を当てて聴いてごらん?
ぼくの、しんぞうのおと。
全部食べられてしまわないように、半分その中に隠したんだ。
[時を刻み続ける機械に寄せて、僕は優しい嘘をつく。]
ずっと君の傍に居させてくれたら。君の手首に居られたら。
僕はずっと、止まらずに、そこで生きていられるんだ。
[腕時計は自動巻きのアンティーク。半永久的に時を刻み続ける。
手にしたものが、止まらぬ限り。]
うん。
辛いことも、苦しいことも、
楽しかったことも、よかったことも。
みんな、聞かせて?
半分、食べてあげるから。
[耳元でカチカチと、機械は時を刻み続ける。]
君の望む限りずっと、そばにいるよ。
[その重みが、刻み続ける音が、一緒に生きていられる証。]
だから、泣かないでとは言わない。
泣きたいときは、僕に聞かせて?
うん、辛いことや嫌なこと、苦しいことは半分に。
いいことはきっと倍になるかもね。
[クスリとまた、小さく笑う声。
抱きしめてあげることは出来なくても、きっとそばにいることはできるから。
飛蝗鼠はぴょんと、ヨナの肩へと乗りました。]
―生命の泉―
[ ぽちゃり ]
[割れる] [割れる]
[水面に映る姿は、割れる]
[溢れでる清らかな源、生命の泉]
[異形の大樹は、泉に与えられ生かされ、泉を護り生かす]
[それは命を繋ぐ水]
[ ここにあることが彼の願いの証 ]
[触れることができなくても、
想いを伝える言葉がなくても、
抱きしめる腕がなくても、
傍にいられなくても]
[けれど、
そこに生じた矛盾《バグ》、相反するもう一つの想い]
[ ―――銃声が響き、水面を揺らした ]
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