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メモを貼った。
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― 実験室 ―
[耳に痛い電子音が鳴り響く。
バチリとカプセルのロックが外れる。
その記憶にない音に、薄く目を開けて、
ゆっくりと覚醒した。]
…………っ、ん?
[明瞭としない思考。
確か、チアキと戦って、殺されて、うさぎになって。
彼の傍に立っていた気がする。
その次の記憶はない。]
ここは、……どこ、なの?
[ぽつりと呟いた。
ふらふらとカプセルから出て行けば、衣服が
3年前の椿模様の紅い着物になっていて、首を傾げる。]
[声が聞こえて
ケイトがいれば彼女も反応したかもしれない。]
……志乃。
[名前を呼べばこちらの存在に気がつくだろうか。
視線が合えば、多分微笑みは作れたはず。]
ここは、研究所。
……アレは、悪ぃ夢。
[疑問の答えになったかどうか、ヤニクもそれ以上はよくわかっていない。]
―― 実験室前 ――
[部屋のすぐ前まで来て、足が止まる。
そこから一歩も動けず溜息を。
元々自分は弱い人間だったけれど
どうやらさらに弱くなっていたようだった。]
…………はぁ
[情けなさやら気の重さやらで溜息。
扉の向こうではもう起きているだろうか。
後数歩が進められないまま、
出入り口のすぐ前で、立ち止まっている。]
[懐かしい声に呼ばれて、視線をやればヤニクがいた。
確か彼は、モニカとケイトと戦って……
ソフィアがあの場にいたと言うことは、
終わって、それ以前になぜ。
思考を巡らせていると、研究所、そして悪い夢と言われて
モニターの存在に気が付いた。]
……っ、なに、?
[モニターに映る懐かしい顔たちに、息を飲んだ。
そして、周囲のカプセルの存在にも気づいて]
なるほど、実験ということかしら
[酷く、冷えた音を発するとため息ひとつ。]
……そ。
ご丁寧に俺達のデータとか、調べ、て。
[そこから先は口を閉じた。
これ以上は言わないほうがいいと思ったから。
そのデータを集めたのはミナカタだった、とは本人の口から聞いていたけれど、志乃には言ってはいけない気がした。]
だから、俺もケイトも、ナユタも生きてる。
[安心しろ、と溜息をついた志乃に慰めにならない言葉を。]
メモを貼った。
そう……、そうね
[データを取る為に、あんな悪夢を見せたのか。
眉を寄せて、露骨に不愉快そうにしていたが。
生きている。
その言葉に、表情を和らげた。]
……生きているのは、良かった、
[ケイトの方も、ちらり。
二人を見つめる瞳は柔らかい。
"家族"が無事だと聞いて、嬉しいのは確かだから]
それじゃ……父様は? 父様も、生きて?
[少しの期待を込めて、問いかけた。]
…………ミナカタ、は。
[志乃の嬉しそうに輝く眼
ミナカタは生きている。そう伝えれば喜ぶだろう。
だがミナカタはこの実験を知っていて、一枚かんでいた。
そう伝えたら――それを知ったら志乃はなんて思うだろうか。]
生きて、る。
[迷ったけれど、ヤニクには決められなかったし、そもそもミナカタが生きているか死んでいるかなんてすぐにわかってしまうだろう。
だから素直に真実を告げた。]
そう、良かった……
[安堵の息を吐く。
失った時の痛みを思い出して、
ライジにつらく当たってしまったことも思い出して、
複雑な想いもあったけれど、生きている。
それだけで嬉しかった。
ヤニクが何かを躊躇っている様子には、僅かに首を傾げて]
どう、したの? 何か、あったかしら?
それとも、どこか辛い?
[ずっと離れていたと認識しているせいか。
昔よりもやや過保護に、心配そうにヤニクの目を覗き込む。]
[耳がいいのは健在。
実験室の前で止まる足音に気付く。
……誰か、きた?
[扉の方を振り返れば、ぽつりと]
[志乃が嬉しそうにする
言うべきか、と迷って。
心配そうにじっと見つめられて、久しぶりな気がするその表情に視線を伏せる。]
……何も、ねぇよ。
俺様がどっか辛いとこあるわけねぇだろ。
[怪我してもすぐ治るだろ、と言って両手を広げて見せた。
志乃が尋ねた言葉はそういう意味ではない、と今のヤニクはわかったのだが、あえて知らないふりをした。]
……あけてこれば。
[志乃の小さな呟きには
― 実験室 ―
[まだ遠い意識の中、何か、響く音が聴こえる。
その音は、徐々に激しくなり、ガンガンと頭のなかに鳴り響く。]
(なんだ・・・煩い・・・煩い・・・)
[ビーッ … ビーッ… ビーッビーッビーッ]
(頭が、痛い・・・。痛い。)
[ハッと目が覚めた。
目の前のガラス扉がひらく。
朦朧とした意識のまま、身体を起こそうとするとギシリと痛み顔が歪む。]
(ここは・・・どこだ。天国――いや、地獄か。
俺は・・・リッキィに撃たれ・・・それから―――――。)
無理、しないでね?
[ヤニクは、大丈夫だと思う部分もあるけれど。
自分がなにもしなかったせいで、チアキを苦しめていた事。
それが胸の奥で蟠りになっていて。
もう一度、じっと見つめれば、気になる扉の向こうに
行ってみればと返されて、少しの間をおいて頷いた。]
…………
[躊躇いながら、手を伸ばして扉を開く。
そこには、ミナカタが立っていて、最初は驚き。]
……父様、?
[死んだと認識しているせいか。
先程、ヤニクから無事を聞いたのに、実感がなくて
確かめるように、呼びかけた。]
……っ、
[何もしていないのに扉が開く。
ああ向こう側から誰か開けたのか、と
そう考えることができたのは一瞬。]
――志乃……
[驚いた顔をした志乃は、
次には何か不思議そうな顔。
その表情に嫌悪がなかったことにただ安堵するが、
彼女が「何も聞いていない」という可能性に思いあたって
一歩進もうとした足を必死に止めた。]
……ああ、俺だ。
――おはよう、志乃。
[最後になるかもしれない言葉を。
出来るだけの愛しさをこめて呼ぶ。]
― 実験室前 ―
[再び鳴り響く、電子音に振り返る。
ナユタが目覚めたのだろう。
雨が止んだ時に彼の死を感じていた。
だから、彼もまた、同じように目覚めたのに
やはりほっとする。
自分が、あの戦場に連れて行ってしまったせいで。
彼を死なせてしまったと、思っていたから。
あとで、ちゃんと言葉を交わそう。
そう思いながら、またミナカタの方に視線をやった。]
[志乃が扉の方へ行くと
そこからナユタが顔を出せば近づいて声をかける。]
……よぉ。
[彼がリッキィに殺された瞬間はみていないから、何も知らず。
ただここで起きているということは、向こうで死んだということなのだろう、とそれだけを認識して声をかける。]
[記憶が混乱している。
ここは・・・何か、懐かしい匂いがする。
拠点でも、戦地でもない・・・ひどく、懐かしい・・・。
身体に鞭打ち起き上がれば、志乃と、ヤニクに
・・・ケイトもいるだろうか。]
志乃・・・無事・・・。
ヤニク・・・ケイ・・ト?
お前ら、死んだって聞いて・・・生きて・・・・?
[どういうことだろう。ライジから、聞いた情報は・・・。
モニターが視界に入る。
先程まで、自分たちがいた、戦場が写しだされていた]
どういう・・・ことだ。
[扉が開き、ミナカタが入ってくるのが見えた。]
――――ミナ・・・カタ?
ああ、死んだ。
でも死んでねぇ。
[お前もだろ、と混乱しているナユタに
……コレも実験、らしぃぜ。
俺達がどうするかみるもの。
誰も死んでねぇし、ミナカタも生きてる。
[アレは生きてる、とミナカタをちらりと見て告げた。]
おはよう、ございます父様
[懐かしい声。
愛しげに呼ぶその声は、確かにミナカタのもので
嬉しさに少しだけ涙ぐんで、そっと手を伸ばした。]
生きていて、良かった……父様
[生きていた事、ただそれだけを喜ぶ。
実験のことを考えると、複雑な思いが浮かんでくるから
彼が研究者で、生きていて、ここにいて。
いくつか想像できることはあったけれど。]
……ずっと、ここで見ていてくれたんですか?
[全部、見ていたのかと問いかける声は、穏やかだった。**]
ケイトにも手伝ってもらって、ナユタに説明を試みたかもしれない。**
メモを貼った。
メモを貼った。
[手を伸ばされても同じように手を伸ばすことも
頭を撫でることも、抱きしめることもできない。
彼女の眼に浮かんだ涙に気がついたのに
これまでのようにぬぐってやる資格もない。]
志乃、俺は、――
[自らを告発しようとした唇は
彼女の穏やかな問いに再び閉じられて。]
…………ああ、みていた。
[なぜだろう、気がついてもおかしくない。
頭のいい娘だから勘づいてもおかしくない。
それなのに色々飛ばした問いかけをされて、
思わず腕を伸ばして抱きしめた。]
[ヤニクが語る現実を、呆然と聞く。]
――――これは・・・実験。
[では、こっちが現実なのか――――。
あれが・・・あの戦場が実験の見せた悪夢だというのなら、
リアルすぎた夢に、一体どこからが夢で、
どこからが現実なのか分からなくて。
今は、いつだろう・・・。俺は25歳の自分だろうか・・・。
ひどく、不安になる。]
生きてる、なら・・・良かった、のか?
[先程まで、戦場で生きていることを実感していたが、
今は生きていることを、まだ実感できないでいる。
説明された現実を、ただ淡々と受け止める。]
皆、生きているんだな・・・。**
メモを貼った。
メモを貼った。
[
まだ、実験室から出ようとする意思は無くて。「先生」が立ち去ってから、…は壁にもたれ掛かっていた。
そこからは、幾つかのモニターが見える。
私とヤニク君の名前が黒くなっているのは、死んでしまったからなのだろう、と推定してから。パッと見に2人足りない、とふと気がつく。
…それは、志乃さんとナユタさんだった。
モニターを注視していたわけでもなく、ヤニク君と話してしまっていたので、…には2人が死んでしまうところは見ていなかったのだった。]
[それを極力何も考えないようにして…はモニターの方を見ていると、ヤニク君が一つのモニターの前に駆け寄るのが見えた。
そのまま、呟いている言葉が聞こえて。]
…ヤニク、君。
[そこであったことは、勿論…には分からない。
だけど、何かがあったこと位は流石に理解できて。
…には、何も声をかけることが、出来なかった。
彼の手が、画面をなぞって。そのまま、立ち尽くしているのを。]
[ヤニク君の様子を、暫く見ていると。ん、という音が聞こえる。志乃さんが、起き上がった
…慌てて、駆け寄る。]
…志乃、さん。
[言おうとしたことは、言葉にならなくて。]
[ヤニク君の様子を、暫く見ていると。ん、という音が聞こえる。志乃さんが、起き上がった
…慌てて、駆け寄る。]
…志乃、さん。
[言おうとしたことは、言葉にならなくて。]
メモを貼った。
― 少し前 ―
[
見上げれば、ケイトがいて。]
ケイト……さん?
[なぜ、死んだはずに自分の前にケイトがいるのかと。
戸惑う声をあげて、ケイトに手を伸ばした。]
どう、して……ここに?
[頬に触れれば、温かい。
不思議そうに覗いて、ここはどこなのだろうと
呟けば、ヤニクが声を掛けて。
実験なのだったのだと認識した。
幾つか言葉を交わせば、扉の前の音に気付き
二人の傍を離れて行っただろう*]
― 現在・ミナカタの傍 ―
[
少し驚くが、そのままその胸に頬を寄せて。
いくつか言葉を囁いた。
あぁ、見られていたのだと。
人を嬲り拷問し、大人の欲に塗れて生きてきたあの日々を
すべて、見られてしまったいたのだと。
何度も謝る声に首を横に振った。
この研究所において、ミナカタに与えられた
権利の少なさを思えば……怒りは湧いてこない。
それに、遅かれ早かれ、研究所を出れば
同じような道を自分は辿る事になるのだろうから。]
ねぇ、父様……みんなが目覚めるには、……
[夢の中で、死ななければいけないのかと、
言いかけて言い淀む。
自分よりも悪夢から醒ましてあげたい人たちは
まだ、夢の中。
緩く視線だけを背後に向けて、悲しげに呟いた。]
[悪夢から、救ってあげたかった。
傍にいてあげなくちゃいけなかったのに。
ちゃんと伝えなくてはいけなかったのに。
できなかった代わりにやったのは、呪うことだけ。
またきっと、傷ついてる。苦しんでいる。
最後に見ていた光景を思いながら、瞳を揺らしていた。**]
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