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【人】 営利政府 トレイル[どれだけ丁寧に装ってみても鍍金はやがて剥げるもの。車掌としては観光案内にもクレーム対応にも長けるが、一人の若造としては相手が悪い。 (30) 2019/08/01(Thu) 01時頃 |
【人】 営利政府 トレイル[抜けてしまった毒は元には戻らない。 (37) 2019/08/01(Thu) 01時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル
(38) 2019/08/01(Thu) 01時半頃 |
─0時過ぎ─
[途切れない夜の侭に日付だけが変わる。
深藍の空には星。先週よりも増えた流星が、背中を押すように降ってくる…ひとつ、ふたつ。]
…ッと こっちか…?
[生魚の入ったビニール袋をぷらぷらと引っさげて。
今まで足を踏み入れたことのない店の裏手に回る。
細い石畳の道がほんのり街灯に照らされている。
人通りは殆どなく、マーケットの喧騒が嘘みたいに…此処だけは時間を切り取られて静寂と落ち着きの中にある。
息遣いさえも伝わってしまいそうな、ひっそりとした小道を奥に10歩ほど。
其処に、────彼が居た。]
[オレンジに近い赤毛が暗がりの中の街灯に縁取られ、明るい店内で見るよりも仄かに淡く。
ラフな普段着にリュックという出で立ちは、普段の制服姿よりもずっと年若く感じる。
初めて見る私服姿は、プライベートを垣間見た心地になって。少しだけドキドキした。
彼
弧を描いて前方に落ちたそれを猫が咥える。
ムシャァという咀嚼音。
そして。]
…ン? べたべた… が、なンだって?
[よく聞き取れなかった言葉を訊ねる台詞を口にしながら、待ち人のいる奥へ向かう。]
あーーー …お待たせ?
[こちらは先程と格好は全く変わらない。オール私服。
ビニール袋を持っていない方の手を、挨拶するようにゆると挙げた。]
お。ブチ猫じゃン。
おーおー 食ってるくってる。
[ニヤニヤ笑いながら、魚肉ソーセージをぱくつくブチ猫を観察する。自分のあげた餌ではないものを食べている姿を見るのは、ちょっと新鮮だ。]
餌やるってこたァ…
アンタも猫好き?
[と。そこまで口にしてから、────不意に首を捻る。]
あーーーー そういや、
アンタの名前知らねェな オレ。
[あえて名前を呼ぶ関係ではなかったから当然だけど。
今は、こうして…プライベートで会っているのだから、名前くらい、欲張ってもいいだろうか。]
オレは… シーシャ。
…アンタは?
[小首を傾げて相手の顔をじっと見つめる。
薄い色素の髪が、さらと揺れた。**]
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【人】 営利政府 トレイル― 幕間・時計屋 アリババ ― (52) 2019/08/01(Thu) 12時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル[そこに我が友、サイラス画伯が居たのなら。彼の忌憚ない意見も頂戴しよう。 (54) 2019/08/01(Thu) 12時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル
(55) 2019/08/01(Thu) 12時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル ― 三週目のマーケット……の、数日前 ― (79) 2019/08/01(Thu) 22時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル[一介の鉄道員が一晩で使う遊び金にしてはやや多い。 (84) 2019/08/01(Thu) 23時頃 |
【人】 営利政府 トレイル ― 三週目・マーケット ― (94) 2019/08/01(Thu) 23時半頃 |
― 店の裏手 ―
[分かってるのかー、と愚痴った時、ぶち猫がにゃああと鳴いた。
あれ、通じた?と思ったその時、自分の背後から声が聞こえ
うわ。
いや、待ってないです。
遅くにすみません。
でも、やっぱり、この猫ですよね、お客様と一緒に居た猫。
[言う傍から、ぶち猫は魚肉ソーセージのかけらを食べ終わると、彼の足元へと寄っていく。
間違いない、彼の連れていた猫だ。
しかし、にやにやしながら、あんたも猫好き?と聞いてくる彼には、返答に困った。
まあ可愛いといえば可愛いが、正直ふつうとしか言いようがない。
自分にとっては好きなのも可愛いのもよほど…
と、言葉に詰まったところで、彼が声を上げる
そして、自分の名前を名乗った。]
シーシャ、さん。
[思わず小さく笑みを浮かべながら俯いて繰り返す。
名前が分かった。
いつも一人で来て、あまり喋らないから、名前を知る機会もなかった。
今日、絶対に聞こうと思っていたら、彼から教えてくれた。
それにしても綺麗な名前だ。
立ち振る舞いや口調は一見街のチンピラだ。
でも名前やその髪は他の人にない流れる様な綺麗さで、
ふとした仕草や挙動は子どものように愛らしい。
全部が全部ちぐはぐだ。
だからこそ彼から目が離せないのだ。
彼が小首を傾げて自分の顔を見つめる。
街灯の光を映す細い髪が、さらりと下へと揺れた。]
【人】 営利政府 トレイル[辿り着く待ち合わせ場所は、マーケットの中に在る広場。 (110) 2019/08/02(Fri) 00時頃 |
…ヒイラギです。
[彼がじっと自分の顔を見るから、自分も目が離せない。
そのまま、黙ったまま、思わず彼の細い髪へと手を伸ばす。
その指が触れるか、触れないか、というところで、遠くで別の猫の喧嘩する激しい声が路地に響いた。
彼の足元に顔をこすり付けて甘えていたぶち猫がばっと顔を上げると、声のした方に向かって駈け出す。
思わず猫の走り去っていく方角へと視線を向けた。
しかし、ぶち猫は振り返りもせず走り去り、路地には自分と、シーシャだけが取り残されていた。]
…行っちゃいましたね。
[暫くののち、呆気にとられたまま彼の方を見て呟いた。]
どうしましょうか?
帰ります?
シーシャさん、明日は仕事じゃないですか?
[問いながらも別れがたく、未練がましい事が勝手に口から出てくる。]
それか、猫、探してみます?
もし、帰るにしても…少し、マーケットへ寄ってみますか?
もう、大分閉まっちゃったところも多そうですけど、今日は大きな市も立っていたようなので。
楽しいかな、と思います。
[あなたと一緒なら、という言葉は飲み込んだ。]**
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─店の裏手─
────ッ、
[お客様
今見ている景色がモノクロから色彩豊かな世界に変わったような心地がした。
よく見かける暗い路地の筈なのに。
たった一人が其処に立っているというだけで、
彼が自分の名を呼んでくれるというだけで…
素敵な場所に見えてしまう。
幼い頃に両親を事故で亡くしてから、
この街で独り、なんとか生きてきた。
名前を呼ばれる機会がそもそも少ない。
アイツやテメエで済む環境──それが日常だった。]
ヒイラギ、…
[教えてもらった名前を声でなぞる。
柔らかいけれど強く耳に残る響き。
やっと知ることが出来たと思うと、にやけてしまいそうで。
どうにか悦びを飲み込んで、口の端を薄っすら緩めるに留める。
綺麗だなと思って。
目が離せなくなって。
初めて店の前で姿を見かけて以来、幾度も店に通った。
そうして今。
互いの名前を知って、呼び合って……
近づく彼の指先
!! あッ、いや…
[我に返り、慌てた。
その直後に始まる、猫たちの喧しい喧騒。
猫たちが去り、夢から急に引き摺り起こされたような呆然とした心地でいたら、相手からのお誘い
どうやら────まだ、夢を見ていてもいいらしい。]
いや… 明日は別に 仕事じゃねェよ。
[さすがにスリを生業にしているとは言えない。]
アイツらは放っとこうぜ。
猫は好き勝手動くもンさ。
[傍に居たい時にはいて、居ない時には去る。
そんな身勝手な関係だから、追い掛け回す存在でもない。]
あァ… 舶来市だっけ。
よし行こうぜ。
[相手の気が変わる前に出発してしまいたいと、頷いてすぐ歩き出し────躊躇いがちに隣へ手を差し出す。]
えッと、 …ほら、 ヒト多いからよ、
はぐれたら ヤだし…
[ぽそぽそと言い訳して、照れ臭さごと強引に相手の手を掴んだ。]
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