231 自由帳の中で、僕たちは。
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─ 朝・自宅 ─
[鞄のなかに読み終えた一冊の本をいれようか迷って、二冊とも読み終えてからでいいか、と結論付ける。結局いれずにそのままだ。
今日も朝は寒い。 昨日の夜は降り積もりそうになかったけれど、今日はどうだろう。窓をあけた。]
あー。
[雪はやんでいる。でもふりだしそうだ。つまり、くもり。 ふりだしにもどるの気持ち。そういえば、昨日はみかけなかったけど、また天気予報はしてたんだろうか。
朝食時、昨日は自転車ですべりかけたという話を妹がしていた。あぶねーなーと相づちをうちながら、雪が降りそうな時は電車で行く案も出ているようだ。すきにしろすきにーと思いながら、もしそうするなら一日くらい自転車通学に復帰するのもありだな、とも思う。 準備万端、今日は弁当の日。雪は降っていないとはいえ、まだまだ外は寒かった。]
(14) 2017/12/22(Fri) 05時頃
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─ 朝・駅 ─
[電車にゆられた先、見えた姿にまた、げっ。という顔をする。元カノだった。気づかれませんように、と思ったとたんに、目があった。
お互い瞬いて、彼女がふいっと視線をそらした。 お? そして、ててて、と小走りで向かった先には一人の男。
し、新彼…!いやそろそろ良い頃合いでしょうよ、わかります。でもいま明らかに見せつけたな?あいつ。べつにいいんだけど。ほら、雪ふってないのに相合い傘。よくやる。よくみたらその男うちのガッコの制服じゃん。はいはいはい…。
─── なんか、ほんとうに。 べつにいっかあ、って気持ちだな。
おつかれ。そんな気持ちだ。何にかはわからない。 でもショックは微塵もなくて、ああ、あらためて。
改めて、おれは彼女の事、すきでもなんでもなかったんだな、と思う。]
(15) 2017/12/22(Fri) 05時頃
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[その彼女だけじゃない。 いままで付き合った何人かに対して、皆そんな気持ちでいた。 実際の、ほんとうにすき。がどんなものかは解らないけど。 きっとこんなものじゃないんだと思っている。
だいたい押しまけて付き合う事が多かったけど、 だいたい別れるときはふられる側だった。
理由はわかるようなわからないようなわかるような。 予測はつくけど真実はわからない?ってところか。
だいたいこうだろ? ── わたしの事すきかわからない。 ── わたしって友達とどうちがうの?
はいはいはい。ごめんって、ごめんって。 だって、そんな気持ちにならなかったんだ、なんて言い訳がましいか。だったら付き合うなって話?でも言い寄って来たのは向こうだし。 ふられ文句として一番面白かったのはあれだな。
「友達がほしいんだったら男にでも告白してろ」
たしかちょうど、入江の噂が流れた頃だ。だからあんなことを呟いてしまったのかもしれない。誰にも届かなくって、あるいはそのまま流されて、少しほっとしたけど。]
(16) 2017/12/22(Fri) 05時半頃
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[── ふ、と思い出す。
入江が恋人と別れたといっていたときの事。>>1:33 落ち込みっぷりがすごくて、見てられなくて。
でも、おれは自分が自分だから、 積極的に問い詰めることも、ブーイングをすることも控えめだったんだけど。その理由を聞いたとき、れーるくんはすごいなあ、と思って。
そんなに落ち込めるほど、好きな相手ができるのは、 羨ましい。
どんな気持ちなんだろう。どんな相手なんだろう。と、嫉妬じみた気持ちを抱いてしまった。だから相手の問い詰めにはそっと加わったりもしたけど、思い出したくないと言われたらそれまでだ。 自分本意な問い詰めにまた緩く自己嫌悪を隠しながら、必要以上に問い詰めない優しいバカたちの一人に何食わぬ顔をして居座って。
そのあとは、いつもどおりに馬鹿話だ。
おれもいつか、あんなふうに。 誰かを好きになれるんだろうか。]
(17) 2017/12/22(Fri) 05時半頃
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[結局鞄にいれなかった本のことを思い出す。
好きな本もない、好きな人もいない。 好きな教科だってない。
天気だって、食べ物だって、 特別好きだというものが見当たらない。
このまま一生好きなものなんてできないんじゃないか。 そう思って、いや、と少し目を伏せる。
─── 友達は、好きだ。]
(18) 2017/12/22(Fri) 05時半頃
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[それだけじゃない。
佐藤に選んでもらった本。 だってあれは面白かった。 たぶん、すきだろ?
好きじゃない、好きなものがないと思っているだけで、 きっと好きなものなんてどこにでもあるんだ。
理屈ではわかる。理屈では。 理屈では、わかってる……、…。
ひとつ、いきをはいた。白い。 もう学校が見える。 図書館にいこうかまよって、朝はやめておいた。
今日のホームルームも、きっと自分は浮かない顔をしているんだろう。*]
(19) 2017/12/22(Fri) 06時頃
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─ 朝・寮 ─
[ 本日の天気。くもり。
完全に習慣と化した動きでカーテンを開け、そういやあの後も天気予想書きに戻るの忘れたなあと思い出す。
そして窓から放たれる冷気に寒気。閉めましょうカーテン。眩しくは無いんですがね。
スマホに表示されるのは今日も早い時間。
目が覚めてしまった俺は起き上がってぼけっと宙を見る。
良かった。冬子さんはまだ俺を殺しに来ないらしい。五体満足だ。左右の手も足も、耳もあるぞー。うおー。
もそりとした動きでガッツポーズを作ってみるも、テンションが上がることは無い。残念無念また来週。
いや来週までには冬子さんが成仏してることを祈る。 ]
[ 毛布を被った怪物クルマリモウフの姿のままベッドから下りる。床のひんやりさを感じない為に勿論スリッパも着用。
そして、ジャン。見てくださいこの圧力鍋。
昨夜サンタさん(実家)から届いたプレゼントである。
圧力鍋はすごいんだ。大体何でも作れるし美味しくなる。
半年前位からずっと欲しくて送ってくんね?とコールしてたんだがどうせすぐ飽きるとか使わないでしょとか言われ却下アンド却下。
今回クリスマスプレゼントでも誕生日プレゼントでもいいからと泣きついた結果、新品新型ぴっかぴかのものが送られて来たわけです。
あー、俺これで豚の角煮作るの夢だったんすよ……へへ。
とは言っても朝に料理に凝る暇は無いので、昨日のミルフィーユ鍋の残りを食う。これもうまい。楽だし。
飯食って身体あったまってぼけーっとテレビ見てたんだが、そういや先輩からメールの返信着てなかったなあと思う。
あの人大抵返信はやいのに。女子かなってレベルではやい。いっそ入江という存在は電子にしか存在してないのか?というはやさで即レスされることもある。 ]
[ 焼きそば作るんならいつが良いか聞かなきゃだし。
と、着替えた後に向かったのはお隣さん。 ]
先輩ー、三笹ですケド
起きてますー?
[ 扉どんどこどん。遠慮は無い。奴は死んだのだ。完。
この人あんまり早くは出てるイメージないし、もう既に出て行ってるとは思っていない。
だがしかし外泊の可能性はある。
外泊って言っても他の寮生んとこ泊まる程度カナーと思いますけど。
さて、出てくれますかね。* ]
─ 朝・寮自室 ─
[意識は大分前から覚醒していた。
重い身体を沈めたまま目も開かずに
額に当てた手は熱を伝えてきた
頬に滑らせる、同じく。
その割に布団の中でも寒気を感じる
季節と時間帯だけのせいではあるまい。
紛うことなく、風邪。
サボれると喜ぶには三年生として時期が悪く
体調もまた深刻だった。
連絡とか入れなきゃいけないかな。
テストが悪かった後に休みなんて、怒られるかな。
ぼんやりと巡らせる思考はそれ以上広がらず途切れる。
静かな部屋の中、浮かされた頭にもちゃんと届いた
それは扉越しの遠慮の無い音と聞き慣れた呼び声。]
三笹……
[呟きは鼻に掛かって聞こえた。
まだ声に出る程は喉は傷んでいない。
手をついて起き上がり裸足が床に降りる
ドアまで向かうだけでいつもより時間が掛かり
少し待たせてしまった後、ドアノブを回す。
さっきまで明らかに寝ていたくたびれた部屋着
髪は梳かしてすらいない。
だらしがないことは今日は許してもらいたい。]
…… どうしたのまよまよ。
オレを起こせとか、言われた?
[そこにいたのはいつも通りのお隣さん、しかし、朝。
視線を彼の顔から手元へと下ろす
お裾分けを図々しく朝から欲していたりはしない
しかし、あれは分かりやすい用事ではある。
お願いの件をわざわざ聞きに来てくれたとは思いつかず。
常より大分抑えられた声量で問いかけた。]*
─ 朝・お隣さん ─
[ 扉の向こうでがたがた、やんわーり音がしたと思えば、ゆっくりと開くオープン・ザ・ドアー。 ]
うわ寝起き極まってますね
ん?てか風邪引いてます?
めっちゃ鼻声ですケド
[ ドアの先は雪国でした、なんて展開は在り得ず、普通にDKのお部屋が広がってる訳だけど。
現れた先輩は随分着慣れた感のある部屋着に無造作が過ぎるヘアー。
顔色はいつもより幽霊みのある透け感に眠たげな瞳。
更に極めつけにはこっちが鼻かみたくなるみたいな鼻声。
見事だ。明らかに体調不良。お疲れ様です本当にありがとうございました。 ]
いや、言われてないです
焼きそばいつ作ろって
聞きに来たんですけど
てか寝てていいですー
んな薄着だから風邪なるんじゃないすか
[ 先輩の装備。
頭:芸術的な寝ぐせ
体:よく着た部屋着(ふつう)
足:はだしon冷たい床
寒いぜそんなの。今の寮を舐めたら駄目だ。此処は戦場なんだ。
マジレスを加えつつずいと歩み寄れば、そのまま玄関へと押し切る。
元より踏みつぶしていた靴をぽいぽいっと脱ぎ捨てれば、先輩の背を押しベッドにどーん。
はい〜、病人は寝ててください〜。ぐっすり〜。 ]
[ お布団ふぁっさ〜。どうぞお眠り下さい。
としつつ、この人飯食ったかなと思う。
てかご飯いります?にNOと断ったことが無いように思うのがこの先輩だ。
食ってなさそう。多分食ってないだろ。めっちゃ寝起きだったしな。
しかし俺の飯おすそ分けするにしては、昨日のミルフィーユ鍋は先程食べきってしまってました。完。
ううんと悩みつつ、時計を見ては。 ]
あ、おかゆなら作れますよ
いります?
[ って首を傾けるのでした。
早起きはこの為だったのか。成る程。** ]
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― 一時間目・休み時間 ―
[朝のHR、担任は普通の表情だった。 何となく眺めながら、色々と考える事は多いのかもしれない、と思って、でも、もしかしたら考える事なんて少ないのかもしれない、と矛盾させる。頭の中はすっきりしてなくて、一時間目もあんまり身に入らなかった。いつものことか。どうせ解るからいいんだけど。 そして休み時間―――、]
ん? ――― ああ?
[届いたメールを確認し、目を眇めて緩く首をひねった。]
どういう、…。 どういう、うーん。
う〜〜〜んん………。
[馬鹿にされてる? わけじゃないよな、そういうやつでもないだろうし。おれのためにそこまで考えてくれてる?とうぬぼれるほどの文章でもない。
どういう感じ。……自分の中にある、言葉にできないものを言語化しようと、文面とにらめっこする。できるだろうか。かたちになるんだろうか。 真剣に考えすぎて、絵文字を入れるのも忘れてしまった。]
(37) 2017/12/23(Sat) 10時頃
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[最後の疑問符は書くか迷って、結局書いた。 かかなくてもよかったかな、いやでもな。一応ね。
送信した後に見返してみると、恥ずかしい自己分析の長文だ。 はずかしいな?いやほんとうにこれはずかしいな。 なんでおくってしまったんだ。
じわじわごうごう、はずかしくなってきたので、メールを閉じて、スマホをしまった。]
(38) 2017/12/23(Sat) 10時頃
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― 昼休み・入江たちのクラス ―
[さっき送った文面が恥ずかしすぎたので、佐藤がいるか居ないかを窓から確認する。いないな?よし、いないな?おーけー。 佐藤がいないタイミングでそちらの教室に顔を出すと、いつものメンバーに挨拶をする、が。]
えっ、れーるくん休みぃ?遅刻? まじでえ?なんで? えっ風邪?
まじかー。
[昨日の様子はどうだったん、みたいな雑談をしながら、入江の椅子に普通に座った。]
こーしてるとこのクラスの一員みたい。 ちがうんですけどね。
[言いながら、座ったあと机に向けて写真を構える。友人たちの手が映り込んだ。そして適当な文面でメールを送る。]
(39) 2017/12/23(Sat) 10時半頃
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よしっと。 あ、そういや寮生だったよなー?
[と、友人の一人に話しかける。 今から差し入れ買ってくるから、部屋にもってったげて、という魂胆だ。おーけい、割り勘な。じゃあ適当に選んでくる、と席を立って教室を出る。]
(40) 2017/12/23(Sat) 10時半頃
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― 昼休み・学校近くのコンビニ ―
[購買にはうってないものを買いに行く。 たとえばポカリのウィダーだったりゼリーだったりプリンだったり。あけるのめんどくさそーな果物の缶詰のつけておいた。放課後買いに行くのもありだったなと思ったけど、まあもうきちゃったし良いだろう。]
お。
[途中に見えるのはペットフードのコーナーだ。 思わず手を伸ばした。いろいろ見て、ワゴンで半額になっている猫餌にきめると、一緒にレジにもっていった。今日は弁当なので自分のを買う必要はない。あ、飲み物だけは買っておこう。今日はペットボトルだ。 と、レジに持って行くときに。
見えた姿は朝と同じものだ。]
うわっ、でたっ
[その反応に元カノは不服そうだ。]
(41) 2017/12/23(Sat) 11時頃
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[でも冗談めかして少し笑って、元気そうで何よりだとか軽い雑談をする。こちらはなんとなく居心地の悪さを感じる。
「これで友達になれるじゃん」
と言う言葉を聞いて、――…確かに。と納得してしまった。 だからいろいろ相談にのってよ、といわれると、えっそれはめんどくさい。と返しながら、でも確かに付き合ってた頃よりは自然な雑談が出来ている。
雑談をしながらレジをぬけて、コンビニの外。 ところで彼が浮気してたんだよね、と切り出されると>>1:74だからめんどいってぇと言いながらも、少しの間話を聞く事になってしまった。]
(42) 2017/12/23(Sat) 11時頃
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[相談ごとという愚痴、そこからの惚気へ華麗に転化した会話と言う名のマシンガンから解放されると、入江の教室に戻った。友人に、袋をがさっと渡す。 結局中身は ・ポカリウィダー ・マスカットゼリー ・桜桃の缶詰 に落ち着いている。]
え、そんなに疲れた顔してる? 大丈夫大丈夫。
こういう時に、生徒指導室とかいけるといーよねえ。 冷蔵庫とかなかったっけ。
[あの場所に呼ばれる事は滅多にないから適当に言う。住処にしてるやつの姿は、今日はなくて。昨日のメールの文面を思い出しながら。]
……たしかに、いないとさみしんだなぁ。
[ほんとほんと、と肯定が返る。 今日はここで食べてくか聞かれたけど、ちょっと寄るところがあるから〜、と挨拶して教室を後にした。長居をすると佐藤に会ってしまうしね。あのメールに対しての、時間をおうごとの恥ずかしさがものすごい。ものすごい。]
(43) 2017/12/23(Sat) 11時頃
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[ご覧の有様、じゃなくてご覧の通りです
そんな意味を込めて問いには苦笑しておいた。
体調管理の出来ていない姿を後輩に見られ
情けない限りである。]
あー、メールのことか。
まよまよの気が向いた時で良かったのに
なんだかごめんな。
いやあ、てっきり馬鹿だから引かないとおも……
……お、おおっ?
[会話の最中、距離が近づいたかと思ったら
押し切られた身体は部屋の中へ
あれよあれよという内にベッドに逆戻り
ご丁寧に布団まで掛けられた
なんという手際の良さだろうか何も出来なかった。]
[朝っぱらから大胆ね、とか
普段ならほざいていたかもしれないが
口から出たのは戯言ではなく咳だった
病人は大人しく布団の中から斑頭を見上げるばかり。]
……いいの?時間、大丈夫?
[質問に質問を返したのは遠慮と少しの驚きで。
さっきもお大事に、でドアを閉めても良かった筈
あまり人と関わりたがる印象が無かったのだけれど
……意外と世話焼きなのだろうか?
そもそも自炊の時点で自分よりずっとしっかりしているか。]
じゃあ、お願いします。
あっ、あったら梅干しが乗ってたら嬉しいな〜?
[どっちが先輩なのか分かったものじゃないけれど
弱っている時に優しくされて嬉しくないわけもなく。
口許を緩め一言、お言葉に甘えることにした。
付け足しが図々しいのはオレなので仕方ない。
いい奴だなあこいつ。そう改めて思う
もっと皆そのことを知ればいいのに。
今度何かお返しを考えなきゃならないな。
それは治った後、今は大人しく寝ていよう
眠らないまま、目だけを閉じる。]*
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─ ちょっと戻って:休み時間 ─
[振動が伝えるのは佐藤からの返信だ。 見るのがこわい。やっぱりよく分からない、とか、言われたらどうしよう。可能性はわりとあると思う。 もっているかもっていないか、でいえば、佐藤は間違いなくもっている。おれはもっていない。だからこそ、わかりあえない部分があるような気がしていて。
ひとつ深呼吸、返信を開く。よみすすめて、…。]
………、 ……
[なにも、いえなくなってしまった。 今佐藤の顔を見たら、泣いてしまいそうだな、と思うくらいには。その返事は優しくて、まっすぐで、真面目で、劣等感を刺激したうえで、それでも許してくれるようなものを感じる。
ああ、これだ。たぶんこれだ、これを感じ取ったんだ。 佐藤に話しかけにいかなくなった理由。たぶんおれは佐藤がこわかったんだ。言葉は少ないけど真摯で、だけど別に彼が大人だとか成熟しているとか、そういう意味じゃなくって。 そういう、意味じゃなくって。 メールにおいた自己分析のように、佐藤のことを。佐藤に対する自分の気持ちを考える。]
(58) 2017/12/23(Sat) 22時半頃
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[メールからただよう本気の気持ちは、まずこれが自分にはないもので。それをまっすぐ向けられるのが怖かった。実際今向けられて身がすくんでいるのだから予感的中といったところだ。
入江達といるのが気が楽な理由と恐らく真逆なんだろう。 何をいってもいい気がおけない友人。真面目な雰囲気なんてなくて、ふざけあって、楽しくて、居心地がよくて、変わらない空間。 でも、佐藤との一対一は、どうしても気をおいてしまう。 それはたぶん、彼は真面目で、ふざけてはいけない空気があるように感じて、自分も真面目にならなくては、自分が変わらなくては対等になれないような、そんな気がしていたからなのだろう。
だけど、それは、きっとこれだ。この部分だ。 佐藤のメールにある、 ── 他の人が持つ「自分と違う部分」── という文字列を親指でなぞった。 佐藤への感じ方は、きっとこれに集約する。]
(59) 2017/12/23(Sat) 22時半頃
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[でも、佐藤は佐藤のままで、こうやって近付こうとしてくれている。おれもできるだろうか。おれもいままで、わからないままだったけど。もっと。本当に。
もっと仲良くなれそう、という文章に、苦笑みたいな表情になってしまう。自信って。なんだそれ。くそお、めちゃくちゃうれしい…。どう返事をしようか迷って、でも、今はちゃんと返事ができる気がしない。 少し心の整理をさせてほしかった。
返事が遅くなると変に気遣わせるかな、とも思いながら。── 昼休みになっても結局、返信はできていないままだった。佐藤と顔を会わせたくない理由は、自己分析のはずかしさだけではなかったけど、それでもそのうち、顔をつきあわせて話したいな、という思いは胸に置いた。
それにしても、メールだけで泣きそうになるなんて。やっぱり最近、メンタル面がやばいのかもしれないな、とまたひとつ。自己分析を。*]
(60) 2017/12/23(Sat) 23時頃
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─ 昼休み・図書館 ─
[コンビニで捕まってしまったのでご飯を食べる場所を探す時間があんまりとれず、結局自分の教室で食べることにした。クラスの友人はほとんど食べ終えてたし、スピード重視で食べるならお弁当なんて一瞬だった。
そういや、と思う。 図書館のノート、今日はまだ見に行ってないな。あと少し時間もあるしいってみようか。
正直本を借りたまま、他の本を借りもせず何度も図書室に足を運ぶのは後ろめたい部分もある。浅見せんせが、おっ今日は返却かな?という顔で毎回見てくるのをへらへら笑ってごまかすのもそろそろ申し訳ない。 いや、一冊ならもう返せるんだけど。まだ返したくないというか。
そんなこんなで今日もどーもどーもと挨拶だけを残した。]
(69) 2017/12/24(Sun) 00時半頃
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─ 昼休み終わり間際・図書館 ─
[適当にふらふら歩いた後に向かうのはノートの場所だ。 その閉じられたノートを見て思い出す。 そういやここにも黒歴史を残してしまったんだった。
そぉ〜〜〜っとノートを開いてみる。その辺りにあるのは、土岐からのありがとう、の文面。 なんだか誰かを思い出して、少し笑って、同時になんだか安堵した。
雪だるま8体は、ひとつだけペンが違ったようにみえた。あとから誰かがかきたしたのかな?と思って、じゃあおれも、と9体目の雪だるまを追加した。よーしかわいいヤツをかいちゃうぞお。バケツをかぶせてマフラーをかぶせてハートもとばしておいた。じみに器用だ。
にしても、最初の雪だるまのわっかが、何重にもなっていて、これだけ少し違った印象に見える。不規則というか、他のは輪を書こうとしているように見えるのに。 あ? ペンの書き味とか、丸とか、テストでたくさん丸をもらっているからか僅かに既視感を感じたけど、さすがに直結はできなかった。でも、]
(70) 2017/12/24(Sun) 00時半頃
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