281 緋桜奇譚−忌−
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[気が付けば、地面に仰向けになって倒れていた。 まだ霞みがかる意識のまま空を眺めていると、青空に黄金の欠片が吸い込まれるように消えていくのが見えた。
さらさら、さらさら。
幻想的な光景にしばらく目を奪われていた。]
「おい、いつまで寝てやがる」
イテッ。
[聞き慣れすぎた声と共に、頭を小突かれて。 ゆっくりと体を起こせば、薄緑色の鬼が居た。 その体は出会った時のような半透明ではなく。]
(14) mikanseijin 2020/10/11(Sun) 15時半頃
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あれ……?
「おう」
……体、ある?
「おう、おかげさまで」
[生命の源である稲穂を吸収し、どさくさに紛れてこの鬼は肉体ごと復活したらしい。ちゃっかりしてるなー、と京助は感想を述べて。]
そうか。 じゃあ、俺に憑いている理由もなくなったんだな。
「おう」
(15) mikanseijin 2020/10/11(Sun) 15時半頃
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[いつかは来るだろうと思っていた日ではあるが、あまりに唐突でどうコメントするかしばし悩んでいれば。]
「世話になったな」 「いや、世話してやったか」
何だそれ。 こっちのセリフだろ。
[恐らく妖怪やたちの悪い人間に絡まれた際に撃退してもらった時などを言っているのだろうが。
体を貸してやったのはこっちだろうと京助も反論し、笑った。]
(16) mikanseijin 2020/10/11(Sun) 15時半頃
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これからどうするんだ?
「あん。俺様は変わんねえよ」 「好きに食って寝て呑んで、暴れて生きて死ぬ。 それだけさァ」
[そう告げると、鬼は風に乗って宙に浮かぶ。 体格は大きいのに重さを感じさせず、一応風神の仲間であることを思い起こさせ。]
行くのか。 やれやれ、やっと肩の荷が下りたなー。 ……まあ。時々は遊びに来いよ。 大福の一つでも用意しといてやるから。
[見かけによらず、甘い物好きの鬼に片手を上げれば。]
「ふん、気が向いたらなァ」
[そうして、鬼の姿はそのまま遠ざかり。]
(17) mikanseijin 2020/10/11(Sun) 15時半頃
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「あ、そうだ」
「その体、俺様が力使いまくってたせいで、若干鬼化してるからな。良かったな、強くなれて」
[完全に姿が消える前に、声が風に乗って届いた。]
(18) mikanseijin 2020/10/11(Sun) 15時半頃
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…………………は?
(19) mikanseijin 2020/10/11(Sun) 15時半頃
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ちょ、おい、ふざけんなー!? 元に戻せよ!? 若干ってどれくらいだよ!?
「うーん、半分よりは下かねえ、多分」
多分って何だ、結構変わってるじゃないか!! 戻せーーー!
「ははは。覆水盆に返らず」
うがーーーーーー!!!!
[地上で訴える人間など気にもかけないとばかりに、鬼は消えてしまい。残された青年は、呆然と空を見つめて立ち尽くしていた。平凡で平穏な生活はまだ遠そうだ。**]
(20) mikanseijin 2020/10/11(Sun) 15時半頃
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