278 冷たい校舎村8
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―― 現在:体育館→ ――
[ チャイムが鳴った。>>#1 喜多仲のマネキンを覆う毛布をぼうっと眺めたまま、 誠香はそれを聞いていた。
朝と夜、一日二回鳴るチャイム。 ああそうだ、そのたびに、何か起こっていなかったか。 校舎が増えて、クラスメイトがマネキンになる。 もしかして、また?
誠香は立ち上げる。 誰かがマネキンと代わったのを確かめに行くんじゃない。 みんなが無事なのを確認するつもりで、 体育館を出た ]
(29) 2020/06/20(Sat) 00時半頃
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……なんだ、これ。
[ 体育館から校舎に戻ると、 赤い足跡が目に飛び込んできた。>>3:851 だってそこは、 心乃が掃除して綺麗になったのじゃなかったか。 あんまり汚さないようにねって、>>3:653 心乃は言っていたのに。 不届き者は誰だ。足跡小さいから女子みたいだけど。 そんなことを考えながら、足跡を辿った ]
(30) 2020/06/20(Sat) 00時半頃
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―― 現在:昇降口 ――
うそだ。
[ そういえば、誠香はきちんと昇降口を確認するのは これが初めてだった。 真っ黒なインクがぶちまけられた昇降口。 そこに、たくさんのマネキン? と ]
…………まな、っち?
[ 違うよね? と確認するように、声をかけた* ]
(31) 2020/06/20(Sat) 00時半頃
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―― 現在:昇降口 ――
[ マネキンに埋もれるように、 まな、のようなマネキンが見える。>>3:879 近づいて、恐る恐る触れてみれば、 たくさんのマネキン、のようなものは、 柔らかくて、マネキンに似て非なる人形のようだ。 ぶちまけられているインクにまみれて 汚れている人形たちに埋もれて、 まなに似たマネキンだけは、 なぜか綺麗だった。>>3:880 血も出ていないし傷もない。 それは、喜ぶべきこと、なのだろうか ]
(46) 2020/06/20(Sat) 01時頃
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…………またあとで、って言ったのに。
[ 就寝時間になったら、みんな保健室に集まって。 そこで、千夏にメイクを教えてもらおうって 話をする。 そうなると疑っていなかった ]
僕さ、ここで、どんな風に死んじゃうのか、 考えると怖いけど……、 もし、僕が死んだら、 まなっちは、黒板になんて書いてくれるのかなって、 考えてたんだ。
[ ざかざかと誠香はマネキンもどきの人形を掘る。 ちょっと苦労する程度なら、それくらいする。 まなの代わりのマネキンを掘り起こしながら、 ぽつりぽつりと言葉を落とした ]
(47) 2020/06/20(Sat) 01時頃
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それなのに、先に帰っちゃうんだ。
[ そうして、やっと掘り起こした まなのマネキンをじっと見て、 誠香は書けるべき言葉を考える。 ここは高校で、先に帰るクラスメイトに、 かけるべき言葉は ]
(48) 2020/06/20(Sat) 01時頃
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……また、明日?**
(49) 2020/06/20(Sat) 01時頃
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夢はいつか覚めるものだって、そんなのずっと知ってるよ。
[ 夢から覚める瞬間が嫌いだった。
でも、あたしは、あんまり怒るってしないから、
天井を見上げる顔が不機嫌とか、
そういうことは、ない。
ぼんやりしていた視界と、頭と、
そういうものがだんだん綺麗になっていくような感覚。
ベッドの中でのびをしたあたしの脚も、腕も、
至って綺麗なもので、
部屋の中の寒さをちゃんと伝えてくる。 ]
[ ……二度寝しよう。とか、思ったんだけど、
寝返りを打った目線の先、ぴかぴか光ってる。
何がってほら、
あたしたち現代っ子の文明の利器ですよ。
あたしは映えに弱いにんげんで、
歩きスマホもできないけど、まあ、見るよね。
そういう風に生きてきました。フツーに。 ]
はーい もしもしあたし。
フツーじゃない日常なんて最高だと思いませんか?
クラスメートの事件だよ、びっくりだね。
[ 通信切断。やめよう。
あたしは作品が好きだけど、
ひとの死に様を笑う趣味はちょっとない。
ましてやついさっきの、リアルすぎる夢で、
一緒にシチューを食べて、隣で寝てたあのこが、
"そう"だったなんてちょっと処理が追いつかない。
文化祭みたいな浮かれ気分に、
すぐなれたら苦労しない。 ]
[ 綿津見さんちがそこそこフツーでよかったのは、
お父さんもお母さんも、
夢のマイホームを建てるときに、
交通の便を考慮し尽くした ってとこにも、
あるんだろうな。
病院までも徒歩で行けるそこに、あたしは、
……ちょっとふたりに説明する時間がありながらも、
すぐ、そこに向かっていたと思う。
防寒対策はしっかりね。
返しそびれた夢のマフラー、
今度はあたしのをしっかり巻くよ。
赤いそれは、血なんて物騒なものじゃなくて、
ついさっきまで話していたあたたかい色だ。 ]
これから会いに行こうと思えるほどには
あなたがすきだよ。ほんとう。
……フジュンでは、あるかもしれないけれど。
拝啓 しおりちゃん
あなたは夢に逃げたかったの。
それとも 現実でなければどこでもよかった?
─── おかけになった電話番号は
現在電波が ……… *
─── 病院前 ───
[ 完全に息があがっていた。運動不足ですね。
勉強してばっかりだからしょうがないんですよ。
現実世界ってほんとなんなんだろうね!
ぜえはあ言いながら、冬の冷たい空気を吸い込んで、
冷たすぎて噎せてる。あまりにつらい。
長めのマフラーはちょっと絡まっている。
ホラーはめいっぱい怖がった後楽しむのが良い、
なんて感じのあたしは、
そのまま入り口に入ろうとして、 ]
…… きたなかきゃくほんだいせんせー。
[ やっほーって、手を振る……
って、気分ではなかったから、手をあげた。
マフラーが首に絡まったまま言う台詞じゃないって?
真夜中の病院へようこそ、こんばんは。
また会いましたね。
かっこわらいは付けられなかった。
夢から覚めた後って、どうしても、
元気出ませんから、あたし。 ]*
TO:紫織さん
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おーい、早く起きれー!(-"-)
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[ 夢の世界じゃない世界なら
こんなに簡単に送れるのにな。 ]
[ ぴぴぴ。 ]
[ 通信良好。 ]
[ (笑) ]
[ あーちゃんの親と、ワタリさんと、
あーちゃんが死んでくれたおかげで
幸せになって喜んでるおれはクズ。
ケロっとした顔でおれに優しくする
兄と母と父もゴミ。
あーちゃんももっとクソガキだったら
今も平和に生きてたのかなぁ? ]
[ いま、ウソつきが一人死にかけてるし
そんなに簡単にいかないか。(笑)。 ]
── 現在:病院前 ──
[ 送信。……送信成功。
あの校舎の中とは違って、
メールを送るのは簡単だった。
あ、ここ病院だからまずかった?
まだ入る前だから許してほしい。と思う。
一酸化炭素中毒。っていう手段で、
紫織は自殺を図ったらしい。
漫画とか映画とかで結構聞く死因だった。
メールを打つ指先は冷たい。震える。 ]
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―― 現在:昇降口 ――
[ よく知っている声が、誠香の名前を呼んだ。>>77 ぽんと肩を叩かれて、ぼんやり誠香は振り返る。 よく知っているのに、なんだかまだ見慣れない 整った顔立ちが誠香を見ていた ]
氷室。
[ 怜に会ったら、話そうと思っていたことは色々あった。 いきなりイメチェンするからびっくりしたじゃん! とか ちゃんと眠れた? とか。 けれど、どの言葉も今は出てこない。 ただ誠香はもう一度、氷室、と繰り返した ]
……まなっち、帰っちゃった。
[ 腕に抱えた、まなによく似たマネキンに視線を落として、 ぽつりと言う ]
(171) 2020/06/20(Sat) 19時頃
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