人狼議事


193 ―星崩祭の手紙―

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【人】 地下軌道 エフ

[ その日の、暗闇の朝は。
 誰に起こされることも無く、迎えた。
 自室の扉を、相も変わらず乱雑にノックして、
 男の元へ、少女は歩み寄る。 ]

 「手紙、来てるよ」

[ 何時もなら。
 この空に紛れてしまいそうな黒のワンピース。
 その裾を踊らせて、少女はカプセルを手渡した。
 
 ふたつの、カプセル。
 ふたつの、返事。
 宙から届いた、誰かの声。
 
 柄にも無く、
 少女と揃いの黒のスーツを着た男は、
 椅子に腰掛け、カプセルを開いた。 ]

(9) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ ひとつめ。
 白い、シンプルな便箋。
 黒のインクで綴られた手紙。 ]

[ 男の手紙を想起させるそれだが、
 記号めいた筆跡と、
 まるで彼女や少女の様な様子で意思を伝えてくる文面は、
 男のものとは異なっていた。

 そんな 彼 ―― ピート からの手紙。
 直接頭に響くような文字列を、読み進める。

 開拓調査。数え切れない星。
 きっと、話せる故に発達した、動画やコンバーター。
 ピーチシロップにミルクを注いだ、空の色。
 手紙だけでは無い、何もかもが異なるものに、
 眼鏡の奥の瞳が、物珍しげに瞬く。

 同時に。 ]

(10) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ ―― 彼女のことも、思い出すから。
 
 硝子体に入れられた、
 見たことの無い、透明な花弁の花を認めれば、
 ますます過ぎってしまう彼女の過去に、
 眉を 下げ。
 
 苦笑を浮かべ。 ]

(11) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ


 "これ、あいつに"

[ 片手で肩を叩いて、少女へと。
 丁寧に硝子体を差し出す。 ]

 「名前で呼んであげなよ。恥ずかしい?」

[ 茶化すような口調には、もうひとつ肩を叩いて抗議。
 
 さて、少女の瞳の中。
 星が輝いた気がしたが、きっとそれは真実だろう。
 だってこんなにも、彼女に、似て。
 嬉しそうな表情を 浮かべていたから。 ]

(12) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ


 「―― 母さん、喜ぶよ。絶対」
 「娘の私が保証する」

[ 硝子体を抱く少女の 声 は。
 真っ直ぐだ。 ]

(13) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ ふたつめ。
 古いのだろうインクと、同じく、古そうな羊皮紙。
 
 この星においては、
 "こういうものがあった"という、
 言い伝えで残っている特徴の 手紙。 ]

[ かわいらしく、まあるい、
 しかし、バランスがとれずにいる小ぶりの文字列は、
 途中で書き直したような跡がある。
 
 キカ というらしい…彼?は、
 彼の住む、星は。
 男や少女の住む星とは反対に、白くて。
 それでいて 星の見えないところは同じで。
 
 ―― 今 家族のいない、ところは。
 大きく異なって、いた。 ]

(14) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ 同封されているもの。
 袋がふたつと、また別のものと。
 もう一枚、チップ。
 
 <らくらく惑星育成キット>

 そんなタイトルとともに、
 チップから映像として出てきた女性が、
 育て方を説明しているのを、
 少女とともに、聞いていた。

 説明が終えるまで、
 女性の声が途切れるまで。

 見つけ出して と。 さようなら と。
 そんな 思いを残した相手の星に思いを馳せて、
 ただ 静かに。 ]

(15) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ


 「―― 父さん、水槽、帰りに買おう」
 「ねえ、空、綺麗だよ。星が沢山」
 「あの子の星、見つけられるかな」
 「…ちょっとでも、見える?」

[ 男の隣に立つ、彼女に似て、強い少女。
 こうして時折見せる、臆病なところは。
 
 きっと、男に 似ている。 ]

(16) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ


 "買おう"
 "…写真も撮って、お前に送るさ"
 "あいつにも、どうにかして見せよう"

[ それから、きっと、もうひとつ。
 少女の頭を柔く撫で、
 あやすように、自身の思いを伝える男は、 ]

(17) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ


 "―― きっと、大丈夫だ"

[ ずっと見ていた彼女に、似たのだろう。 ] 

(18) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ 地下の星。暗闇の星。 
 
 その全てを照らす大きな星の波は、
 暗闇で住んでいるだけだった、
 死者の魂を呼び寄せる――、らしい。
 
 故に、この星の星崩祭は。
 通り過ぎる大きな星の波の元で、死者と生者が会える日。
 生者は歌の代わりに星すべてを飾り、彩り、
 やって来る魂を迎える。

 そう"伝わり"続けて、行い続けて、はて。
 どれ程時が巡ったのだろう。 ]

(19) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ 何時か、男と少女とともに。
 大きな星の波を見たがっていた彼女は。
 
 一年前。
 迎える立場では無くて、
 やって来る立場と なってしまった。 ]

(20) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

   [ 今日は、星崩祭。
          たった一日 家族が、揃う日。 ]

(21) mayam 2016/07/21(Thu) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

― 墓碑 ―

[ 写真と、小瓶に詰まった星の飴と、透明な花と。
 それから、多くの手紙を土産に。
 
 暗闇、地下の星で、たった一日。
 星の波に照らされたある墓碑前で、
 男と少女は並んで祈る。 ]

(123) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ "話したい"ことが、沢山あった。
 
 少女がよく似た彼女に触れて、
 その場所から、声なるものを伝えて。

 ころころ変わる彼女の表情を見て、
 外の世界の話を、してみたかった。 ]

(124) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ



  [ 君の声は、此処にあるのだろうか。 ]

.

(125) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ 半ば 縋るように、
 朝聞こえた 彼女の声を手繰るように、
 墓碑に触れて、男は伝える。

 今まで興味のあまりなかった、外の世界。
 暗闇ばかりでは無い空。
 自分たち以外の家族の存在。
 そもそも地上ではない星。
 
 それら全てを、冷たい石に。
 その向こうにいてほしい、彼女に。 ]

(126) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ 「悲しい顔しないの」と。
 
 そう、何時もよりゆっくりと、
 腕に触れた少女が伝えてきたのは、
 どれほど経ってからだったか。
 
 一方的に伝えたところで返事が無いのは当然で、
 伝えたいことを全て彼女へと伝えれば、
 大人しく、手を離した。

 今度は少女が触れる番。
 瞳を伏せ、暫しじっと動きを止めた後、
 やがて男へと振り返る。 ]

(127) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ


 「父さん」
 「もう大丈夫?」

[ 迷ったように問いかける少女は。
 外見も仕草も、彼女と男に、よく似ていた。
 
 空の向こうへ行った彼女が遺した、
 男にとっての、生きる理由。 ]

(128) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

 『ねえ、エフ。そんな悲しそうな顔をしないで?』

 『私は空の向こうへ行くの。もっと広い星へ』
 『だから、お願い。貴方もきっと、そう思って』
 『死んじゃうなんて―― 思わないで?』


 『…寂しいなんて言われたら、私、きっと泣いてしまうの』

(129) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ ―― 問いかける少女の 向こうに、
 彼女が見えた、気がした。
 
 男の瞳に一瞬だけ映った彼女は、
 穏やかに笑んで、


    そうして 消えた。 ]

(130) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ


 『―― ありがとう』

[ 少女の手を取り 墓碑を背にした。
 
 去り際 ふわり 頭に響いた声は。
 間違えようも無く、愛した彼女のものだった。 ]

(131) mayam 2016/07/23(Sat) 00時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[ それから きっと。
 男の家には、星を抱いた水槽と、写真が増えた。
 
 贈り物として増えたものは、
 動画再生機に、ディスクに、
 この暗闇の星でも淡く光る植物。 ]

(161) mayam 2016/07/23(Sat) 02時頃

【人】 地下軌道 エフ

[ もしかしたら。いつか。

 機械仕掛けの踊り子を写した一枚が。
 "海"で祈る彼を写した一枚が。
 水の中の星々を写した一枚が。
 崩れる星を写した一枚が。
 散った星の残る空を写した、一枚が。
 
 そうでなくても。
 彼女が望んだ外の世界が写る一枚が。
 男と少女の部屋にある日が、来るのかもしれない。 ]

(164) mayam 2016/07/23(Sat) 02時頃

【人】 地下軌道 エフ

[ 男は今日も、声の代わりに思いを残す。 ]
 
[ 何時かまた出会う、空の向こうの彼女のために。 ]

(170) mayam 2016/07/23(Sat) 02時頃

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