人狼議事


279 宇宙(そら)を往くサルバシオン

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さっっっっむうううううううい!!!!!

[ あたたかかった宿主が急激に冷え込んでいく。こごえる。いてつく。刺胞がもげる。いやだ。

 まったくあっさりと、宇宙を漂うクラゲは、考えるのをやめた。]


メモを貼った。


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メモを貼った。


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やあやあ、オレオレ。オレだよ。ちょっと風邪ひいちゃって顔の形とか刺胞の具合とか、見違えたと思うけど、オレなの。じつは黒塗りの移民船と事故っちゃってさ。示談にお金が必要だから百万ほど貸してほしいんだ…

[ かつて別の船で犠牲者に呼びかけたときの手口を、記憶に新しい猫にしかける夢を見る。冷たく凍りついた知能は夢の続きを見ることもなく、やがてまた、ノンレム睡眠に移り変わって行くだろう。]


メモを貼った。


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メモを貼った。


メモを貼った。


[宇宙をいく船の中で、
 小さく青石洗剤が擦れる音がある。]


[それらは、夜に入っていた洗濯機を壊され
 負荷に耐え切れずに変色したものだった。

 それらは、部屋に来たものに拾い集められ
 談話室に運ばれた。

 それらは、一度
 浮遊種と言われる者の手にとられ
 また、別の義体の少女に受け渡された。]



[それらは、一晩、談話室においてあっても
 清掃ボットに片づけられることはなかった。]
 


[それらは、青色洗剤と呼称される存在に
 生命があると定義した場合、
 「死体」と呼べるものであったが

 その青石洗剤らは、
 ヒト種に近いものと同じ扱いは受けなかった。]


[青石洗剤の「死体」は、
 片づけられるべきもの、
 遠ざけられるべきものとしては
 扱われなかった。

 それは、やはり、「人」と姿があまりにも
 大きく異なるが故であっただろう。]


[その結果として、集められた動かぬものは、
 浮遊種や少女と、共にあることになった。]
 

[もはや、その選択をした理由は
「心」は、青色洗剤に届くことはないけれど。]


[いくら、そこに身体(いれもの)が存在しようとも、
 変色した小石に、何かが届くことはない。

 元々、翻訳を通さなければ、
 小石にとっては、
 理解不能の存在だった。

 そして、翻訳機能は失われている。]




[誰にとっても、正しく意思なき「物」が、
 そこには転がるだけだった。]
 


[ある意味でそれらは、人扱いされないことで
 この船の中で役目を果たす機会を
 与えられた、ともいえるだろう。


 "寄り添う"機会を。

 その身体は「遺品」になった。]


[それは、もはや意思を持った存在としての
 対等な扱いとは言えないだろうけれど、

 洗剤になることで、健康を守れるように
 香りを出すことで、精神を安らげられるように。


 話さなくなったことで、
 以前との差異を比較できるものになった。
 
 比較することで、「失われた」ことを
 認識することができるものになった。]


[結局意思を伝える術のないモノを
 どう使用するのかは、
 結局のところどこまで行っても、
 断絶を隔てない、生存者たちにしか
 できないことだった。]

[もはや説明もできない青石洗剤の死亡理由を推測し、
 それを、推理のてことして誘導に使うことも。]

[その行いを否定することも肯定することも、
 もはや、転がるだけの石には不可能なことだった。
 伝達の方法は、もはや失われている。]




[そこには、ただ、
 断絶だけが確かなものとしてある*。]


― 回想・三日目の朝 ―



[一体どこの基準なのか知る由もないが、この船の『朝』の時間に自室のドアが勝手に開いた。護衛型ヒューマノイドが押し入ると、キンジン星人はベッドにはおらず、透明なドーム状の入れ物の中にちょこんと入っていた。いつものように。]

わたしじゃないです。

わたしじゃないです。

わたしじゃないです。

わたしじゃ……

[だって起きていたのだ。
 宇宙クラゲは夜に現れるのだから。
 誰も傷つけたくなかったから。
 だから談話室にもいかなかった。
 しかしそれが、間違いだった。]


わたしじゃないんです。

[電子音が無機質ながら、精一杯に悲痛な音を上げる。
 それ以外にろくな抵抗もできず、透明なドームごと、ひょい、とヒューマノイドたちに抱えられた。]


ガシャン。

[透明のドームはヒューマノイドによって呆気なく割られた。
 キンジン星人のために環境を整えるドームだ。このまま冷凍ポッドに入れてしまっては意味がない。
 彼ら、または彼女らはドームの中にアームを手を伸ばし、スライム状の生き物をつまみあげる。

 翻訳機がなくなれば言葉を発することもない。

 そう、ほとんど、大きなクラゲだ。]


[キンジン星人にとって、護衛用ヒューマノイドも、客室の乗客も、何も変わらない。

 ただ、恐怖。

キンジン星人は捕食をしない。捕食をされない。
人を貶めるということをしない。
人を見捨てるということもしない。
だから、人に犠牲になれと言われることもなかった。

芯石は細かく振動している。
そんなこと、ヒューマノイド達は知るよしも、知るつもりも、知る必要もない。
この生き物が、本当に宇宙クラゲに寄生されているのかも。

冷凍ポッドに押し込まれ、あっという間にキンジン星人は氷漬けになった。]


[ただ、冷凍されるだけ―……

誰がそんなことを言ったのだろう。
優しさのつもりなのか、それとも罪悪感を薄めたいだけか?


芯石は冷凍のせいか、ぱきり、と真っ二つに割れた。


元キンジン星人だったものが入ったポッドは、宇宙のどこかをただ、漂う。

流れ星のように。**]


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