15 ラメトリー〜人間という機械が止まる時
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[振り下ろした無骨な刃は、少女の長い髪を半ば削ぎ、
けれども、ただそれだけ。]
…ターリャ……… [刃物を振り下ろした勢いのまま、ふらりと傾ぐ身体。]
(0) 2010/07/22(Thu) 00時頃
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ベネットは、どさりと床へ倒れた。
2010/07/22(Thu) 00時頃
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[床に倒れたまま、周りの声に我に返る。]
…僕は……、なにを。 [取り落とした山刀が、からりと床に転がった。]
(13) 2010/07/22(Thu) 00時半頃
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[ただ微笑みながら、手を差し伸べる。
“それ”には、気がついていたのかもしれない。
けれど、避けることは出来なかっただろう。
その為には ころさなく ては、
いけなかったから。
焼けるような熱が、幾度も幾度も躯を貫いて。
左腕は鈍色の砂となって零れ落ち、
砂の混じった血を吐きながら、倒れ伏していく。]
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/07/22(Thu) 00時半頃
[ 見開く青、濁りない水の色 綺麗な色 ]
[「泣かないで」]
[ 言葉は音にならない ]
[左肩から斜めに裂いたように、砂と崩れて半壊した体は
けれど一度だけはっきりと
その青を見つめて、首を振った。]
[ 「いずみが みえる から」 ]
[ ゆっくりと口唇が動いて、そして意識は遠ざかる ]
[ 当たり前に頷くだろう問い ]
[ けれど ]
[ その肉体という機械に、言葉は既に届かない ]
[闇に飲まれ落ち込んだ自我は、どこへ向かうのだろう
――かつて、心は脳に宿るのだと、言った学者がいた。]
[ならば滅び行く肉体と共に、
自我は消えるはずなのに]
[それはどうしようもなく囚われて]
―城内の一室―
[アリーシャが起きて部屋を出た少し後。
少女の瞳もぱちりと開かれる。
いつの間にか寝かして貰っていたベッドを降りて。]
あら?
[そして、ベッドに横たわるままの自分の姿を見つける。]
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[身体の震えが止まらないのは、取り返しのつかない事をする所だったからか。]
だって、うたが。 うたが聞こえるんだ。
[頭を抱えて、微かな声で繰り返す。]
(29) 2010/07/22(Thu) 01時頃
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[様々な場所で多様な声。
穢い思いか、醜い争いか。
血生臭い惨状が繰り広げられていることなど、少女には関係の無いことであった。
純粋な翠はただ、横たわる自分自身を見つめて黙っている。
まるでこの壊れた世界に取り残されたような感覚。]
…………。
[自分自身の傍に、大人しく座っている少女の姿。
六感のあるものになら見えるのだろうか。
普通には、目に映ることはない。]
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…僕は、罪を犯したから。 許せなくて赦されないから。
ターリャが、赤ちゃんが、責めるんだ。 だって、うたが聞こえるんだもの。
[半狂乱のうわ言は支離滅裂で。]
うたがずっと終わらないから、ぼくか彼女かどちらかが、死ななきゃいけないんだ。
(35) 2010/07/22(Thu) 01時半頃
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あなたは誰?
私はポーチュラカというの。
あなたはなんだか私にそっくり。
あなたは私のお姉さん?
そうだったら素敵なのだけど。
[くすくすと笑う声だけは、空気を震わせて城の中を舞い響く。
その冷たい躯が自分のものだとは思っていないようで
お友達になれないかしらと、無邪気に少女は少女へ微笑んでいた。]
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それに…
[鉱石瞳の右の目が、意識の無い少女の姿を映して震える。] きみは、寂しがりやだから、一人で死ぬ事も出来ないんだね。 でも…ぼくを連れて行ってはくれないんだ。 きみは、ぼくじゃない誰かのものなんだ…
(37) 2010/07/22(Thu) 01時半頃
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ねえ、私にそっくりなあなた。
あなたは昔を……。
ごめんなさい、なんでもないの。
いいわ、いいの。
あなたが知っているはずがない。
もし知っていても。
私は知りたくないのだわ。
―泉―
―――…なかないで、
[ぽちゃり]
[泉に水滴が落ちる、
それは大樹の葉から零れ落ちた露]
[薄れた青年の姿は、大樹に重なるように佇んでいた。
瞳のあせた砂色は本来の樫色を取り戻し、
左腕も生身の人の形をしていた。
――最も、その腕が何をも為すことが出来ないのは変わらない]
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[差し出された手を不安そうに見つめ、]
…痛いよ、チャールズ……。 [赤い血を流し続けるそこを、鉱質の右手と生身の左手とでそっとつつんだ。]
(42) 2010/07/22(Thu) 02時頃
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[まだ少し茫洋としている。
身に残るのは、漠然とした無力感と罪悪感]
――……、ぁ
[少女のくすくすと響く笑い声が、
随分とはっきりと感じられた――その名前を知っている]
……ポーチュラカ?
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/07/22(Thu) 02時頃
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…ガストン。マーゴをお願い。 何処か安全なところに隠して。
[警戒するくまへと、必死な目で頼む。]
じゃないと僕は…きっとまた彼女を…
(45) 2010/07/22(Thu) 02時頃
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―泉―
フィル……
[泉に見入るフィルの姿、
それはかすかに見覚えのある記憶に重なる光景―――
彼はいつも何を見ていたのだろう。
さわり、と枝葉を震わせた大樹から、葉の一片が落ちた]
翠の葉は、泉の水面に、幾重も幾重も波紋をつくる――**
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[その手を流れ落ちる紅。その穢れへとそっと唇を寄せて舐めとる。 代わりに背負うことは出来ずとも、ただ一時でも和らげてあげられたらと。
生きて欲しいとの願いには、答えを返すことが出来なかった。*]
(55) 2010/07/22(Thu) 03時頃
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[唇拭うその指に、ひくりと瞳の奥を揺らして。 咎める言葉に、ゆっくりと首を横に振る。]
僕の裡の方が、よほど罪に穢れているから…。
[体の奥が軋む、軋む。 無数の声なき声達が、産まれてきたいと呻くから。
胎を裂かれて殺された、産声上げぬ子のように。]
(96) 2010/07/22(Thu) 13時半頃
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…ねぇ、フィル。 血の匂いが、するよ。
[ぽつりと呟いて、彼を見上げる。]
だれか、死んだの?
僕も、あの子も、まだ生きてるのに。
(97) 2010/07/22(Thu) 13時半頃
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…ラルフ…… [目を伏せる。]
彼も、痛くて苦しい人だから、せめて楽になっていてくれれば…いいね。 [何処か近しいものを感じていたから。
フィルにかけられた言葉に、どんな顔をすればいいのか…わからなかった。 だから、ほんの少しだけ笑顔を作る。]
(100) 2010/07/22(Thu) 14時頃
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―泉―
[竜の少女が虚空を見上げる。
その時、泉の水面に映る大樹の枝は、青年の形に揺らいでいた。
水の中に手を差し入れたその幻影は一瞬のこと]
――……なかないで
[青に触れ、青に囁く]
[竜の少女に気づけば、
小さく笑みを浮かべたけれど、
それはただ揺れる枝葉のざわめき]
竜の少女が泉を見れば、水面は再び一瞬の幻影を映すだろう
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[ふと見上げた、窓の外。]
…きみが、シィラ? [異様な、一つ目の瞳。
鉱石の瞳の奥、ぴしりと割れる音がした。 凍りついたように、動けない。*]
(105) 2010/07/22(Thu) 16時半頃
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[ ――泣かないで、
泣かないで、 と ]
[ゆらめく水に、幾度も幾度も
繰り返し、手を差し入れるのだけれど、
水の雫をすくうことも、触れることも出来ない。
その腕はやはり無力で]
―――……、
[名を呼ぶ声に、姿なき気配は
少し困ったような表情を浮かべて消える]
―語られなかった“約束”の話―
[果たされなかった約束が、ある]
[友達は今も、人を喰らっているのだろうか
せめてその自我が、残っていなければいいと思う]
[あの日]
[青白く光り輝く空は、とても綺麗だった。]
[それは水の中から太陽を――本物の太陽を見上げたような色。
物知りの友達はチェレンコフ光みたいだ、と言っていた。
その空からふる灰は、風花のよう。
溶けることなく街を白く、白く埋め尽くして]
[――そして終焉が訪れた]
[その灰の微細な粒子を体内に取り入れた人々は、
異常なスピードで、異形へと変化していった。
朝には談笑していた相手が、夕方には異形となって襲ってくる。
異形となった者は、必ず人を――そして同じ異形をも襲った。
元が人だからなのか、あるいはその灰のせいなのか、わからない。
住人全てが異形化して、街が滅んだ例を他に知らない。]
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