146 demi-human... 『亜人の住まう街で』
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−マリオのお家・vsママ−
いーやーだーっ! お外に行くんだー!!
[いつも通りの、しかしなんだか街に活気がない朝。とある民家から、騒がしい物音が響き渡ります。 じたばたと手足を振り回して、マリオはママの腕から逃れようと暴れていました。 いつものように遊びに行こうとしただけなのに、何故か今日のママは、外へ出てはダメだなんて言うのです。]
トニーと約束したの!行くのー!
[力任せにもがいていると、ふとした拍子に上手く腕からすり抜けることが出来ました。 そうなれば、あとはしめたもの。運動が苦手なママなんて、駆けっこ自慢のマリオの敵ではありません。 素早くテーブルの下をくぐり、げんかんへとまっしぐら。行ってきますも言わずに、表へ飛び出してしまいした。*]
(@0) 2015/01/11(Sun) 17時半頃
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−中央・ひそひそ話と暗い街−
[しかし待っても待っても、トニーが約束の場所に現れることはありませんでした。きのう声をかけた、他の友達も。 彼らもママの妨害に遭って、家を出られずにいるのでしょうか。 つまらなそうに唇を尖らせ、浮いた足をぶらぶらさせて。マリオはベンチの上に、一人ぼっちで座っています。]
ちぇ…
[影のお化けがこの街に出た>>#0ことは聞こえていました。 それなら、例えひとりでも"ぱとろーる"するしかありません。 よし、と気合を入れて立ち上がろうとした丁度そのとき。 少し離れたベンチ、視界の端っこで、何かが起き上がりました>>35>>36。]
…!!
[亜人に対してさほど抵抗がないマリオも、さすがにその姿を見て固まります。ガスマスクが口元を覆ってはいますが、表に出ているところは酷い怪我をしているようで。 側にはトカゲ男>>38の姿もありました。彼に話しかける男の人>>43の姿もありました。 いつもなら、興味津々で駆け寄って行くところですが、今はベンチに寝転がった男の人に完全に気を取られています。 視線を外すこともできず、ベンチの手すりを握りしめて、少年はじぃっとふたりのやりとりを眺めていました。*]
(@1) 2015/01/11(Sun) 17時半頃
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[息を潜め、瞬きすることも忘れて。 穴が開きそうなほど、ふたりの男の人を見つめていたマリオですが、その片方が動いた>>50のに気づいてビクッと肩を震わせました。 別に悪いことをしているわけではないし、彼を怒らせた覚えもないのですけれど。こちらにまっすぐ向かってくる男の人は、何だかぴりぴりしているようにも見えて、彼から目が外せません。]
……なぁに、お兄さん?
[そうこうするうちに、男の人はマリオの目の前まで来たでしょうか。 真っ黒な髪と、褐色の肌。 変わった耳も羽も尻尾も見当たらないその姿は、ぱっと見ると、自分と同じ人間に見えます。 ただ、真っ赤な眼に見つめられると、不思議と小さな身体は竦んでしまいそうになるのです。 辛うじて搾り出した声は、とても小さかったでしょう。 けれど真っ直ぐに男の人を見つめて、問いかけました。]
(@2) 2015/01/11(Sun) 21時頃
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[向けられた声>>61は、思ったより優しいものでした。何か怒られるわけではないようで、まずは一安心です。 影のお化けのせいで外に出る人が少ない中、ひとりでベンチにいる少年を不思議に思ったのでしょう。 それを説明しようと、あのね、と口を開きかけた時。お兄さんの腕が、素早く動きました。]
…っ!
[からん、と硬い音を立てて、なかなか大きな石が足元に転がります。 続いて浴びせられた罵声に、目をぱちくりさせて。石の飛んできた方向と、目の前のお兄さんを交互に見比べてみました。 この人が、影のお化け? そんな訳がありません。 この人には足もあるし、ちゃんと姿も見えます。トニーの言っていた、もやもやした黒い影とは全然違います。]
(@3) 2015/01/11(Sun) 23時半頃
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お兄さん、手… 大丈夫?ケガ、してない?
[だから次に出たのは、彼の身を心配する言葉でした。 口元にチラリと見えた牙>>62は鋭くて、噛まれたら痛そうだなぁとは思いましたが、それだけ。自分が噛まれることなんて、全然考えてはいないのです。 だって、自分は彼に悪いことをしていないのですから。]
えっと…痛いの、とんでけ!とんでけ!
[残念ながら、マリオはお薬も絆創膏も持っていません。 なので、自分にできること…いつもママやパパがしてくれるお呪いを、かけてあげることにしました。 いつもしてもらうばかりなので、上手くできないかもしれませんが。お兄さんの痛みが飛んでいきますようにと、石がぶつかった腕に触ろうと手を伸ばしてみます。]
(@4) 2015/01/11(Sun) 23時半頃
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[小さな手が近づくと、 男の人の腕は不自然に離れてしまいます>>78。 野良猫さんを撫でようとして逃げられたことを思い出し、マリオはちょっぴり寂しそうな顔をしました。 けれど、何ともないという返事を聞くと、ホッとしたように頬を緩めます。大人でも子供でも、痛いのはない方がいいに決まっていますから。]
へへ、よかった! …ちがう?おなじ?
[その後に続いた言葉の意味は、よくわからなくて。首を傾げ、うんうん唸っても答えが出てこないので、すぐに考えるのを諦めてしまいました。]
ぼく、マリオ お兄さん、は……
[代わりに名前を教えてあげて、相手にも尋ねようとしたところだったでしょうか。 ぬっと影が差し、他の男の人の声が空から降ってきました>>80。 思わず話しかけるのをやめて、声の方向に顔を向けます。]
(@5) 2015/01/12(Mon) 14時半頃
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[クリスと何とかさん、と聞こえたのに、人はひとりしかいませんでした。 深い色をした瞳の周りは、人間と何も変わりありません。でも、厳しそうな顔の下半分くらいは、硬そうな鱗に覆われています。 どうやらマリオに声をかけたわけではないようで、お兄さんの方を眺めています。 ぱちり、と瞬きひとつ。 ため息をつくように大きく息を吐いて、そして思い切り吸い込んで。]
わぁぁっ!ドラゴンだぁっ!
[大歓声。マリオの声は、そうとしか言い表せないでしょう。 これ以上ないくらいに、感動と興奮に顔全体を輝かせて、クリスと何とかさんという男の人を見つめます。 正確にはドラゴンではなくドラゴニュート、もしくはリザードマンなのですが。そんなことは、マリオにはどうでもいいのでした。]
すっごーい!初めて見た! かっこいい!!
[ただ思ったことを言葉にして、頬を真っ赤に染めています。 ひとつのことに心を捉われると、他のことは目に入らなくなってしまうのは、マリオの悪い癖でした。この年頃の男の子なんて、みんな大体そんなものなのですけれど。*]
(@6) 2015/01/12(Mon) 14時半頃
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−束の間の交流−
[自分が周りの大人たちを驚かせた>>87>>93なんて、本人は全く思ってはいませんでした。 ただ、声量を落とすよう注意する声には気づいて、慌てて両手で口を塞ぎます。顰めっ面で人差し指を立てて、こくこくと何度か頷けば、反省していることは伝わるでしょうか。]
…いいの?
[しばらく擽ったそうな顔をしていたドラゴンのおじさんは、こちらに手を差し出してくれて。 鱗がてらてら光る手の甲に、マリオは恐る恐る手を伸ばしました。黒い爪を指先でつんつんつつき、ぺたりと小さな掌を彼の手に重ねます。 伝わってくる体温は、マリオより幾分低いようです。変温動物、という言葉を少年が知るのは、もう少し後の話。 少年の気が済むまで、おじさんは付き合ってくれたでしょうか。]
(@7) 2015/01/12(Mon) 19時半頃
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[そうして、少しだけ声は控えめに、ふたりの大人とおしゃべりをしていました。 もしかしたら、話していたのはほとんどマリオだけだったかも知れません。かっこいいドラゴンのおじさんに、聞きたいことは山ほどありましたから。]
おじさん…?
[不意に、クリスと何とかおじさんの目が泳いで。路地の方に留まったかと思うと、その瞳に宿る光が鋭くなったような気がしました。 小さな呼び声は、彼には届かなかったのでしょう。 そのすぐあとに、彼はさよならも言わずに駆け出してしまいましたから。]
……どうしたんだろう、おじさん
[マリオの目には、彼に見えていたものは映りません。なので、彼がどうして急いでいるのかも、わかりません。 その姿が路地の奥に消えてしまうのを、ベンチにかけて呆然と見送ることしか出来ませんでした。*]
(@8) 2015/01/12(Mon) 20時頃
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―夜が来る前に―
[どれくらい、おじさんが去って行った方を眺めていたでしょうか。 何かご用があったのだろう>>116と言われれば、それを疑うこともありません。そっかぁと残念そうに呟いて、足元に視線を落としました。]
あ、いっけない …うん、ぼく帰る。帰らなきゃ
[アルゼルドに促されて、初めて辺りが暗くなっていることに気づきます。 ただでさえ、ママを振り切って家を出てきているのです。早く帰らないと、叱られてしまうのは目に見えていました。 慌ててぴょこんとベンチから飛び降り、一度だけお兄さんの方を振り返ります。その奥にはもう、モスキートと怪我をしたお兄さんの姿はなかったでしょう。]
ばいばい、アルゼルドさん
[普段よりは控えめに手を振って、マリオは走り出しました。 明日はお外に出られないかもしれないな、なんて、心の中で溜息をつきながら。**]
(@9) 2015/01/12(Mon) 23時半頃
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