172 ― 恋文 ―
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時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
ナナオが無残な姿で発見された。
現在の生存者は、ホウイチ、ワタヌキ、イスルギ、キルロイ、マユミの5名。
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[本日のおすすめ:焼きリンゴ シロップの量はお好みで]
(0) 2015/10/23(Fri) 07時頃
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――ある日のアトリエ――
[秋の空気はどこへ行ったのか 少し暑いのです。 眩しい太陽のおかげか、洗濯が捗ります]
[郵便屋の音がしました。 手紙を受け取った頃に、キツネがやってきました]
(1) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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[一通目は、美しい直角の黒い封筒でした]
[まるで印刷したかのようなモノクロの便箋に、目を透します]
[不思議な感覚になりました] [自分の絵が、何か些細な影響を与える事が出来たのでしょうか]
[どんな夢を、見るのでしょうか]
(2) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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[石動。イスルギと読みます。 「黒い四角が沢山描かれた図」がイスルギという人の名の由来だそうですが 残念ながら彼には、何故こうなったのか、よく分かりませんでした。 首を傾げながらも、部屋に戻りました]
(3) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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[もう一通は、胸が熱くなるひらがなでした。 大人びた文章と、しかしそれに似合わない崩れた文字があります。 彼女の“冒険”は、確実に進んでいるのでした。]
(4) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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――ラブ・レターにて――
[また、ここに来てしまいました。 絵の依頼について、店長と話をしに、という名目でしたが それはやっぱり、家に残してきた 椅子のミニチュアの上の手紙達のおかげなのかもしれません]
[焼きリンゴを食べながら、驚きの話を聞いていました。 絵の依頼主は、作曲募集の人と同じであるということ。 「まゆみさん」は、いつも絵を送っていた少女であったこと]
[世間は狭いものです]
[剥がされていた作曲家募集の場所に、残されていた絵。 それを剥がし、手に取りました]
(5) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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[彼からの依頼の返事は、何はともあれ店長の元を経由します。 下絵に関するアドバイスも、コメントも、店長から貰います]
[その意見の中に、店長の考えも混じっていたかもしれません]
(6) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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[画材が、足りないかもしれません。 本格的に、作品の制作にかかるのです。 ここ数年は、絵本も出していませんでした。 久しぶりの大仕事になりそうです]
[そういえば。 この間届けられた名刺には、文房具メーカーの名がありました。 折角ですから、そこで購入しましょう]
(7) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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[自分が使っているものと同じ薄茶色の封筒も受け取りました。 中に入っている、謎の生物の絵。 上手いものではありませんが、とても微笑ましいものでした]
(8) 2015/10/23(Fri) 14時半頃
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— 恋して今夜も眠れnight! —
-- こないだね、高校生のお芝居をたまたま見たの。 都大会だったかな? 最優秀賞をとったところのお芝居、すっごく良くって〜!
「愛してる」って言葉を、あんな風にいわれてみた〜いって あたし、すごくそう思いました〜。
全国高校演劇大会って、テレビでもやるんでしょう? 楽しみ! 高校時代って青春だよね〜。 思い出すなあ、あの頃の恋♡ --
(9) 2015/10/23(Fri) 20時半頃
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— 喫茶店「ラブ・レター」 —
マスター、ここだけの話だ。 僕にはなりたいものがあった。
(10) 2015/10/23(Fri) 22時頃
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ひたむきな何かになりたかった。
(11) 2015/10/23(Fri) 22時頃
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何かに取り組もう取り組もうとするたびに、何らかの障害あるいは幸福が発生し、取り組む必要がなくなっていった。
僕は何かを成し遂げることができずじまいだった。ずっとこのままで終わるんだと思っていたんだ。
だけど、成し遂げなくとも僕は否応無しに変化を続けているのかと、ようやく自覚したよ。
(12) 2015/10/23(Fri) 22時頃
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自分の力だけでは完成しなかったものを、誰かが僕の思いを引き継いでくれて、完成させようとしてくれることもある。 ……これ、どうだいマスター。どう思う?
僕は確かに「情熱」そのものだと感じて……感動したよね。 でもの文章を読むと、そうだね、僕は恋する前に失恋させられたと感じたかな。
返事をどうするかは、まだ考えているけれど……。 マスター、あなたの想像通りだと思うよ。
(13) 2015/10/23(Fri) 22時半頃
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ひたむきといえば、僕は非常に非常に後悔していることがある。 僕は自分のやってみたいことを優先して、彼女に嘘をついてしまったんだ。 さて、どうしたものやら……。
正直になったところで、きっと相手は許してくれるんだと思うよ。 でも僕は許されなくていいと思うんだ、もし相手が怒っているなら。 謝罪を受けた人間は、許すか許さないかの判断に迫られるものだ。 できることなら、そういう状況におしやりたくない。
(14) 2015/10/23(Fri) 22時半頃
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ところでマスター、僕の下の名前を知っていたっけ?
連だよ。れんれん。 歩み続けるようにと……名字とあわせた意味だとさ。
ん?名字かい? 地震の多い地方の地名だって聞いたことがある。それはそれで不吉な気もするけどね。
(15) 2015/10/23(Fri) 22時半頃
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謝罪をして許されたいわけじゃないから、感謝することにしたよマスター。 本当に伝えたいことも、感謝の言葉だったから。
(16) 2015/10/23(Fri) 23時頃
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マスター、ちょっと僕は旅行にいこうかなと思う。 おみやげ何が良い?
しかし、先輩の姿をついぞ見ることはなかったなあ。 わっと後ろから驚かせてやろうと思ってたのにな。
特別な珈琲はまだおあずけかな、さてさて。
(17) 2015/10/23(Fri) 23時頃
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……マスター、僕は僕自身を恋愛に向く人間と思ったことはないと言ったね。覚えてる?
向いてなくとも、恋愛をしてはいけないなんて、そんなことあるもんか。 恋子ちゃんだってきっと同意してくれる。そうだと思わないかい?
(18) 2015/10/23(Fri) 23時頃
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――アトリエにて――
[画材を買い揃えました。 依頼の絵も、イメージが固まりました]
[後は、ひたすらに形作ってゆくだけです]
[窓際の、椅子のミニチュアと手紙達が 陽に照らされてきらめきました]
(19) 2015/10/23(Fri) 23時半頃
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[今日も今日とてラブ・レター。 部活に所属してないので、バイトの無い日は直ぐにここへ足が向いてしまう]
…焼きリンゴと、それにあう紅茶。
[する事と言えば『今日のおすすめ』を飲み食する事と、店内に流れるラジオや音楽を楽しむ事。 日によっては読者だったり勉強をしたりする事もある。
ただ、いつもと違って今日はそれだけじゃなかった。 お勧めメニューと一緒に差し出された、一通の手紙。
早速開封して一読。 手紙に踊るひらがなに、知らず頬がゆるむ。
その返事をしたためてマスターに渡すと、機嫌良く店を後にする。 返事を貰った日の帰り道は、必ず上機だった]
(20) 2015/10/24(Sat) 01時半頃
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[帰り道、先程貰った手紙を思い返してふと思う。
結構、手紙の内容しっかりしてるよな。
何か自分は盛大な勘違いをしてるのでは無いだろうか?]
(21) 2015/10/24(Sat) 02時頃
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[また別の日、定位置になりつあるカウンターの一席。 コーヒーを啜りながら、店内のBGMに耳を傾ける。
この店は、自分に手紙のやり取りの面白さ、返事を待つワクワクやドキドキ、人と繋がる喜びを教えてくれた。
今はその逆。 繋がりを切られてしまったのではないかとい言う恐怖。 そういった気持ちを押し付けてくる。
待てども返事が返ってこない手紙がある。 同時期に出した手紙には返事が来たのに。
友達だと言ってくれた人。 返事を待っていると言ってくれたから、嬉しくてその気持ちをぶつけるように返事を書いた。 最後には自分も返事を楽しみにしてると添えて]
…マスター、お勘定。
[支払いをすまして、落胆を隠せぬままラブ・レターを後にする]
(22) 2015/10/24(Sat) 02時半頃
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同じ日に出した手紙でも、人によって返事が届く日が違うのは当然だろう。
じゃ、何故自分は返事が来ないことにこんなにも落胆しているのか。 何故こんなにも返事を待ち焦がれているのか。
……もしかしたら自分は、たった一通の手紙に恋をしたのかもしれない。
(23) 2015/10/24(Sat) 02時半頃
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―病室―
[ベッドの上の彼女が、今日は一人きりで窓の外を見る。 台の上のラジオからはイヤホンが伸びている。そのラジオの横には折り紙で折られたメダルの中心に、まゆみちゃんまたね! の文字。
仲良くなった子が退院するのはいつもの事。 今更それで落ち込むほどではないけども。]
……せいしゅん、かぁ。
[呟く言葉は、ラジオから流れてきた甘酸っぱい台詞。>>9]
(24) 2015/10/24(Sat) 03時頃
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こうこうじだいといえばせいしゅん、れんあい……。 [高校、と言われて想像できるのは小説の中の様子くらいで。 なるほど、あれが「せいしゅん」か、と言葉の意味ではわかる。
言葉の意味ではわかる。]
できることがふえて……ふぅ。やっぱり、よくがでたのですね。
[輝くものを知らなければ無欲でいられる。 でも知ってしまったから。 退院する友の移り変わりに離れているのに、こうして手紙を書いて、その返事を待つこんな短い間が人恋しい。]
(25) 2015/10/24(Sat) 03時頃
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ひとこいしい、のも こいなのでしょうか。
[電子辞書に文字をうちこみ、表示された漢字を宙に指で書く。
ちょん、すー、すっ、すーぴょん、ちょんちょん、 ちょん、ぐーっぴょん、ちょんちょん。]
こい……恋。
(26) 2015/10/24(Sat) 03時頃
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[そういうかんじょうが、わたしにもあるのでしょうか。]
(27) 2015/10/24(Sat) 03時頃
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