270 「 」に至る病
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[中てられた、と言うのは責任転嫁。 されども彼女を見送った後から疲労がドッと降りてきた。
眷属の依存度を計る制度であるが、対応する側にも一定の安定性が求められるらしい。自身にその資格があるかは―――、身体の消耗が答えを出している。 待合室のソファから立ち上がるのも億劫で、首の裏までソファに凭れた。
仕事柄、不安定な患者は少なくないし、医者として二百年以上の実績がある。だが、今回は良く効いた。
外には夜が迫りつつある。
彼の帰宅の時間は聞いていない。 見た目は幼いが、中身は大人だ。 それに外で取り乱したなら、連絡が己に入る。
眷属に深く干渉出来るのはその主だけ。]
(25) 2019/10/12(Sat) 12時半頃
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[目を細めて視線を窓に向ければ、薄暗い丘が見えた。 人影が見えるなら、彼に違いない。 己が“ケイト”に告げたように、彼もまた己の傍ら以外では生きられぬのだから。
帰宅を待つ反面、それが彼の本意であるかを自問する。 もうずっと、自らが穢してしまった彼の心を探している。
彼が夜になっても戻らなければ、怠惰な身体に喝を入れ、街中を探し回らなければならない。細い路地も、小さな店舗も隈なく。 それを少し何処かで望むのは、従順な隷属より彼の意思を感じる所為。 溜息が散らばるように零れる。]
フェルゼ。
[帰宅を望まぬ内心と、目が離せない窓辺。 この感情は、血に縛られている訳ではないのに。*]
(31) 2019/10/12(Sat) 12時半頃
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山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/12(Sat) 12時半頃
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[遅いと感じ始めて一時間。 子供の帰宅時間としては遅いが、大人なら未だ許容値。 彼の影を宵闇に探し、瞼が僅かに下がる。
思い出すのは飛び出していった彼女の背中。>>35 振り切ってでも走り出すなら、留める術はない。
電話越しにも、悲鳴が届いていたかもしれない。>>34 思わず咎める声を電話口に注ぎそうになったのは同族嫌悪が故。>>24 留められたのは、彼女への憐みを恥じたが故。
やはり、眷属を得る吸血鬼など。と、偏見は増す。
未熟なれど同じ立場の相手へは自然と批判的になる。 本来、自らが所属するカテゴリーには寛容になるものだが、己には当てはまらない一般論。
あやまちであることも疑わず。 ――――― 許されたいとも、思わない。]
(69) 2019/10/12(Sat) 14時半頃
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[辺りが暗くなるほどに焦燥する。 そして、同じくらいに期待する。
彼を按ずる心があっても、またエゴが顔を出す。
少しずつ乗り出す身が、窓辺に添った。 もう身体を起こしてしまう方が楽なのに。]
………、
[街灯の途切れた丘の上で、唯一灯る診療所。 北極星を目指すように彼が帰りつく場所。
しかし、その明かりを灯す己にとっては蝋燭の揺らぐ火よりも心許無く。]
(70) 2019/10/12(Sat) 14時半頃
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っ、
[闇に揺らぐ白銀。 それを見つけた途端に、伸びていた肢体が跳ね起きた。
足裏が床につくと同時に、玄関を目指し走り出す。 老朽化も見え始めた建屋に厳しく当たり、 閉めることも忘れたドアは夜気に揺れた。
なりふり構わず駆けつける長躯は、 彼の体幹が崩れる前に、逞しい両腕で支えようか。
浅い呼吸は何十年かぶりの全力疾走の所為か、 倒れかけた相手に不安を煽られた所為か。
二十年前と同じ危機感が胸を占めて。]
(71) 2019/10/12(Sat) 14時半頃
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……随分と、遅かったな。 歩けないのか?
[なるべく平静を装ったが、闇に紛れ冷や汗を掻いていた。 声が揺らさなかったが、動揺は隠しきれない。 彼の来訪先は信頼の置ける知識人だったはずだが。 確かめるように肩に、腰に触れてしまう手が止められず。 最後は彼の頬を包むように掌を添え。]
――― 無事に御使いが出来たようで、安心した。
[こんなに長時間外出するのは珍しいことだ。傷つき、疲労して帰路を辿ってきた彼を深く労わなければならないのに、言葉を上手く紡ぎ損ねた。
ちらりと脳裏を掠める昼間の来客。 深く、深く、主に依存した症例。 彼の頬をなぞりかけて、躊躇うように指先が震えた。*]
(73) 2019/10/12(Sat) 15時頃
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[支えた身体は軽いが、生きていた。 元々危険などなかったはずだから当然だ。 無意識に走り出したこの脚が可笑しいし、伸ばした腕が可笑しい。しかし―― 、窓をじっと見つめていた双眸と同じように、腕も足も、彼の傍を離れたがらない。]
もうすぐ夜が来るなって、 たまたま窓を見たらお前の姿が見えた。
[彼の下まで息を切らして走った癖、言い訳は往生際悪く。 その上、即席の嘘は安っぽい誤魔化しも色で響き。
失言を払うように首を振って、視線を彼の足元へ。 白皙の肌に朱が滲み、斑を描く傷が痛々しい。
思わず片目を眇め、]
(81) 2019/10/12(Sat) 16時半頃
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……ああ、そうか。靴か。 俺も出不精だから気が回らなかった。
[視線を彼の足元から引き剥がし、視線を重ねる。
微かに揺れ続ける瞳には雑多な感情が渦を巻いていた。
退廃しながらも、彼と薄暗く平穏な日常に慣れた身。 それが今日は今朝から満員御礼。 彼との別離と、彼女の来訪と、今も。 何もかも、己の安定を妨げ、理性を揺らす。]
良い時間が過ごせたなら良い。 教授は話し上手だから、楽しかっただろう?
[告げながら、掌の中に感じた呼気に背筋を震わせた。 竦むように靴裏が土を詰り、半歩退いて。]
(82) 2019/10/12(Sat) 16時半頃
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その足じゃ、歩けないだろ。 ほら、おぶってやるよ。
帰ったら手当―――、より先に風呂か?
[慌てて言い繕って、腰を屈めて背を見せる。 大人になり切れなかった彼にはない、広い背中。
誤魔化し、隠し、偽る、悪い大人の。*]
(83) 2019/10/12(Sat) 16時半頃
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[彼の眼差しひとつ、彼の物言いひとつに構えてしまう。
彼はきちんと執着を隠している。 外で如何だったか知らないが、意識しているのは己の方。 自意識は一方的に上がっていく。
内心の警戒は焦燥を生み、腹の底では律することが出来ない感情が暴れていた。]
……次。
[鸚鵡返しに呟くのは無意識。 極自然と彼の口から出た言葉は、恐らく血の執着とは何ら関係ない。彼自身の本心だ。
それなのに何故―――、]
(108) 2019/10/12(Sat) 18時半頃
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[首に回った腕の気配に肩が跳ねた。 自分から勧めておきながら、彼の体温が背中に添えば落ち着かない。彼を背負って運んだことなど一度や二度ではないのに、今日は動揺を流しきれずにいる。
媚びるように寄りそう癖、その自重は軽くて物足りない。 唆されていると感じるのは、きっとこれも自意識過剰の成せる業。
彼と己は同性であるし。 血の契約関係を結ぶ、逆らえない立場にいる相手。
主である己が強権を振り翳し、 彼の尊厳を踏みにじるなど恥ずべきことだ。]
(110) 2019/10/12(Sat) 18時半頃
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[彼を背負って歩き出す。 蹈鞴を踏まぬ足取りは力強く。 丘の緩やかな傾斜も、少し前屈するだけで難はない。 己の背で楽し気に、報告を告げる声を聞きながら。]
(111) 2019/10/12(Sat) 19時頃
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[一緒に家に戻ると、部屋の空気が和らいだ気がした。 ゆるく吐く呼気は、坂道を昇って少し温まっている。
彼が持ち帰った土産を手ずから受け取り、一旦卓へ。 そのまま血判の足跡を刻ませることなく、浴室に連行。 素足で室内を歩かれたら、被害を受けるのは己だ。]
何を―――、話したんだ?
[床を舐めさせる趣味が?と、揶揄半分に笑おうとして、温度のない声が出た。絞り出した声は彼の安定を喜び、称賛する暖かいものではなく。]
(113) 2019/10/12(Sat) 19時頃
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教授は俺よりもずっと年長の吸血鬼だ。 眷属も持って長いんだろう。
話なら枚挙に暇がなかったと思うが……、
で?
なにを?
[浴室の前で下せば、彼を見下ろすのは鋭い眼差し。
冷たい炎を瞳孔に灯したような、 理性を手放したがらず冷静を繋ぎ止めるような。
危うい色。]
(116) 2019/10/12(Sat) 19時頃
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[彼は冗句は言うが、吸血以外で誘惑はしない。 だから、浴室への誘いも、冗談なのだろう。]
……そう、だな。 それも、そうだな。
[けれど、ゆっくりと持ち上がった右の五指。 掴んだ肩と、踏み込む足。
冷たいタイルに二人分の足音が踊った。**]
(119) 2019/10/12(Sat) 19時頃
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山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/12(Sat) 19時頃
山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/12(Sat) 21時半頃
山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/13(Sun) 00時半頃
山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/13(Sun) 14時半頃
山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/13(Sun) 20時半頃
山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/13(Sun) 22時頃
山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/14(Mon) 00時半頃
山師 グスタフは、メモを貼った。
2019/10/14(Mon) 02時半頃
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