24 ロスト・バタフライ
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― 墓地 ―
[どうしたの、と問う子供に、わたくしはただただ困ったように眉尻を下げました。 声が出ないの、と。伝えたいのに、その術がないのです]
…………。
[ぎゅ、と。 鳥を抱きしめます。
ああ。代わりにこの子が私の言葉を伝えてくれたらいいのに、と――]
(3) 2011/01/26(Wed) 02時頃
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[まるで声を無くしたわたくしの代わりに、囀る鳥に頬を寄せます。 柔らかな羽毛は優しくて、頬を伝う涙をそっと拭う様に吸いこむのでした。
見上げる小さな眸には、 ありがとう、と。 唇を動かします。 声にならなくても、せめて想いだけでも伝えたいと願って]
(6) 2011/01/26(Wed) 02時頃
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[子供のはしゃぐ声に驚いてしまって。 鳥を抱く腕が、緩みます。
離してしまえば、鳥は、子供の元へと向かうのでしょうか。
ようやく出会えた、心を許せる存在。
その鳥が、この腕から居なくなってしまうのは、寂しいと。 俯けば、銀の髪がさらりと垂れて泣き顔を隠すのでした]
(10) 2011/01/26(Wed) 02時頃
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[寒い、に。首を一つ振ります。 お腹すいた、にも。首を一つ。
教会に、には、良く判らなくて。 困った顔の侭、首を傾げました]
…………?
[か、け、る……?
見上げる子供へと、ゆっくりと唇を動かします。 唇の動きを読んで察して欲しいと願いながら、もう一度ゆっくりと]
(14) 2011/01/26(Wed) 02時半頃
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[靴と、謂われて。わたくしは初めて自分が素足で在る事に気づきました。 だからこの墓石の上から下りられないのだと、頭の片隅でぼんやりと思うのでした]
………。
[鳥が自分のものかとの問いには、ふるりと左右に振る首。 本当にそうならどれだけ良いでしょう。 でもこの子の主人はわたくしではないのです。 ただわたくしを憐れんで、この子は傍に居てくれるだけなのですから]
(16) 2011/01/26(Wed) 02時半頃
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[欠ける、とはどういう意味なのでしょう。 わたくしの身体に欠けた部分など……いえ、この声が。 でなくなってしまった声が、この子供の言う様に欠けた部分とやらになるのでしょうか。
悲しさと恐ろしさに、ふるりと身体が震えます]
…………。
[マーロゥと、囀りを残して飛び去っていく鳥を悲しそうに見送って。 わたくしは唇から声にならない嘆きを紡ぐのでした]
(23) 2011/01/26(Wed) 02時半頃
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[脚……。 鳥を失った手で自らの足を撫でます。
この二つの足がなくなるなんて、そんな恐ろしい事を想像するだけで、心が恐怖に押しつぶされてしまいそう]
…………っ。
[固く眸を閉じ、銀の髪の下の耳を、両手で押さえます。 楽しげに語る子供の声から、まるで逃げるかのように]
(24) 2011/01/26(Wed) 02時半頃
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コリーンは、新たな声に、ふるりともう一度大きく身を震わせました。
2011/01/26(Wed) 02時半頃
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[眼鏡をかけた少年をちらりと見て、ふるりと首を振りました]
…………。
[この足ではいけない、と。 素足を見せて、眸を伏せます。
素足では歩く事も侭ならず。 だからこの場より離れられないのだと、声を無くした綴るのは胸の裡で]
(33) 2011/01/26(Wed) 03時頃
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コリーンは、片足が不自由な少年に、わたくしを抱える事はきっと無理でしょうから。今暫し、この墓石の上から、離れる事は*叶わない*
2011/01/26(Wed) 03時頃
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[ぱちぱちと爆ぜる暖炉のそばに、わたくしは座っていました。 ロバートと名乗る少年の背負われて来た小屋には、幾つもの人の姿が見えます]
…………。
[重かったでしょうに、ありがとう、と。 ロバートさんに言葉を伝えようとするのですが、まるで唇は封されたように、音を紡ぐ事ができません。
感謝の言葉を伝える事も出来ない自分が悲しくて。そして申し訳なくて。
わたくしは薄紅の眸をふせ、俯くのでした]
(77) 2011/01/26(Wed) 10時半頃
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[そんなわたくしを見かねたのでしょうか。 ナイフを取り出す青年の姿が、視界の端に入りました。
……ああ。また、あのナイフを身体に押し付けられるのかしら。 せめて見えない所にして……、と。心の中で呟いた所で、呆然とします。 また、とは。どういう事なのでしょう。 わたくしは前にも、誰かにナイフの刃で傷つけられた事があるのでしょうか。そんな記憶は何処にもないと言うのに……]
―――――…、
………、……?
[そんな事を考えていたから、ナイフを持った青年が傍で膝を突くのに気が付きませんでした。 ともかく、逃げなければ…と、腰を引いた所で。 すまないけれど、笑う姿が見えます]
(78) 2011/01/26(Wed) 11時頃
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[身動きする事も出来ぬまま、彼の手で、私の足には幾重に布が巻かれていきます。 これが、靴の代わりだと微笑む彼に。 わたくしはありがとう、と。言葉を発しようとして、無声の音を唇が綴るのでした]
…………っ。
[ロバートと一言二言話す様子を、足にまかれた布を撫ぜながら、見詰めます。
わたくしの声はどうなってしまったのでしょうか。 伝えたい想いを伝える事の出来ぬ唇を歯がゆさにきゅっと噛みました]
(79) 2011/01/26(Wed) 11時頃
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[食事を、と。 ロバートが口にします。
不思議な事にあまり空腹を覚えることはなかったのですが、 例も口に出せぬ自分が、せめて出来る事を。
そう思い、巻いてもらった布を靴の代わりとして立ち上がります]
――……。
[わたくしも手伝います、と。 小屋の中を物色するロバートの腕に、触れようと手を伸ばしました]
(81) 2011/01/26(Wed) 11時頃
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[こく、と頷きます。 手伝いたいとの思いが、伝わって良かったと、わたくしは微笑みました]
…………?
[名前。 わたくしの、名前。
眉根を寄せ、記憶の糸を手繰ります。
わたくしの名前は、そう――…]
(わたくし、なまえ、こりーん、です)
[上を向いた掌の上に、人差し指で綴る文字。 美味く伝わらなかったなら、もう一度。 ゆっくりと一文字ずつ同じ言葉を綴るでしょう]
(83) 2011/01/26(Wed) 11時半頃
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[ロバートがわたくしの名前を口にすれば、こくこくと。銀の髪を揺らし、頷きました。
ちゃんと伝えられて良かったと。嬉しくて浮かぶのは、ほっこり笑顔]
(さっきは、ありがとう。おもくなかった、ですか?)
[もう一度その手のひらに綴って、 紅茶をとの事には、もう一度頷きます。
寂しい夜に飲むカモミールが齎す優しい眠りは、何時もわたくしを癒してくれたから。 彼が口にする言葉が良く判るのです]
(85) 2011/01/26(Wed) 11時半頃
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[気にさせないように、きっと彼はそう口にするのでしょう。 でもあの靴を作ってくれた青年との話を聞いていれば、 ロバートが皆を此処へ集めるために尽力してくれていたのは伺う事が出来ました。
だから、そっと手を伸ばします。 ロバートが払わなければ、その手は彼の手を包むでしょうか]
(あ、り、が、と、う)
[と、声を紡ぐ事の出来ない唇で、 感謝の気持ちを、もう一度伝えるのでした]
(87) 2011/01/26(Wed) 12時頃
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[そうしてロバートと一緒に小屋の中を探っていれば、 掌よりも少し大きいぐらいの四角い缶を見つけました。
ラベルにはティーカップのイラストが描かれています]
…………?
[こ、れ?と。 わたくしは缶を両手に持つと、ロバートへと見せるのでした]
(88) 2011/01/26(Wed) 12時頃
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[ロバートが微笑んで呉れるのが嬉しくて、わたくしまで笑顔が伝線します。 こんなにも穏やかな気持ちで微笑んだのが久しくて、ふふ…と、唇から笑みがこぼれました]
…………っ!?
[そう。笑みが、零れ落ちたのです。 音となって、声を失ったこの唇から]
――――…ぁ、こ、え……きこえ、ますか?
[喉を押さえ、口元を覆って。 目の前の彼へ尋ねます。
少しだけ掠れてしまった声で合ったけれど、彼の耳にわたくしの声は届いたのでしょうか]
(90) 2011/01/26(Wed) 12時頃
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[掠れた声で合っても、取り戻せた事が嬉しくて。 まるで親鳥に懐く雛のように、ロバートの後ろに付いてお湯を沸かすのでした。
ティーカップを洗うロバートを尻目に、突然声を取り戻した喉を撫でます。
……あ、ああ、あぁ。
[喉を震わせる声は、次第に元の――少し細い、高い声に戻って。 ほっとした様に、胸を撫で下ろしました]
(93) 2011/01/26(Wed) 12時半頃
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きっと、ロバートのおかげ、ですね。 あなたが優しくして下さったから……本当に、ありがとう。
[ティーカップを洗うのが先だと謂わんばかりの彼に、少しだけ苦笑し、手伝いますと声を掛けるのでした]
(95) 2011/01/26(Wed) 12時半頃
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[台所から出てきた、靴を作ってくれた青年に、こくりと頷きます]
あ、なたも…ありがとう。
[スカートの裾を僅かに上げて、作ってもらった靴を見せます。 それはとても優しさに溢れていて、私の足を包むのでした]
(102) 2011/01/26(Wed) 12時半頃
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コリーンは、ロビンが差し出すカップを手に取り、あがる湯気と香りに、ふわりと*微笑んだ*
2011/01/26(Wed) 12時半頃
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