159 戦国 BATTLE ROYAL
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[>>3:149忍刀を咥えて駆けてゆく背に、命令は告げなかった。 遊び場は整える。金の分は働く。 自らそう告げた小太郎が、その言葉を違えるはずはないと。
人はそれを信頼と呼ぶが、景虎はそれを金で買った契約だと思っている。]
生き延びたら、たくさんご褒美あげないとね。
[早速薬が効いて来たのか。 流した血は戻らないが、集中力を削ぐ痛みは随分マシになった。
山芭は大将の八重を失い引く動きを見せているが、隅慈、土下の両軍に責められれば、如何に速さを重視した弓と槍の花柳藤軍でも耐えられはしないだろう。 指揮を任せた左京が期を見て引くか。 それとも一人残らず殲滅されるか。]
雪とこたろーが二人を倒せば、まだ勝機はある…かな…?
[例えそれが蜘蛛の糸を掴むような希望でも。 手を伸ばさなければ掴むことは叶わないと。*]
(2) 2015/05/21(Thu) 01時半頃
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右手一本…か… ふふっ きっと、お互い満身創痍なんだろうねぇ…
[>>18富楽の言葉に甘く見られたと憤るでもなく。 一歩、また一歩と歩を進めながら、初めて戦場で顔を合わせた時を思い出して静かに笑う。 あの時は怪我らしい怪我もないまま斬りあって、それでもなかなか勝負がつかず、第三者の乱入で互いに興が削がれて決着もつかぬまま手を引いたのだった。
如何に自分が手負いとはいえ、富楽がそれを見て手心を加えるだろうか?
ーーー否。
万全の状態で互いに全力を出しあえないのは残念だが、放たれた現界喰>>19の威力は、以前と比べて僅かも見劣りするものではない。]
地面を切り裂く現界喰の一太刀。 あぁ、やっぱり素敵…!
[立ち止まり、太刀の柄に手をかける。 構えは居合い。 狙うは一瞬。]
(21) 2015/05/21(Thu) 08時頃
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ーー破ッ!!
[烈破の気合いと共に、迫る細い地割れにむけて垂直に剣を振るう。 剣は地面を切り裂き富楽の斬激を相殺するが、殺しきれなかった細かな土塊が影虎の頬や肩を打った。]
(22) 2015/05/21(Thu) 08時頃
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右肩を痛めたのは失敗だったなぁ…
[笑いながらの呟きは、周囲の喧騒に掻き消されて富楽の耳に届くかどうか。 風間の薬で痛みはなくとも、動きはやはり鈍い。 だが、それでも戦狂いに引くという二文字はない。 むしろこの手負いの状態でどこまでやれるか。 もう一度富楽と斬りあえる喜びと相まって、小さな背をぞくりと震わせる。 富楽の挨拶を斬り伏せた勢いのまま駆け出し、自らの間合いに踏み込むと同時。 とんと地面を蹴って跳躍すると、富楽を見てにこりと笑う。]
(23) 2015/05/21(Thu) 08時頃
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ねぇ、雪と遊んで!
[振り上げた右腕。 太刀を振り下ろせばジャラリと剣にほどけて鞭のようにしなり、二激、三激と縦横無尽に走る刃が斬激の雨を富楽の上に降らせる。**]
(24) 2015/05/21(Thu) 08時頃
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っふふ、ふふふ……っあはははは!
[柳の枝を振る様に関節剣を縦横無尽に走らせれば、片手とはいえ富楽もなかなかよく捌く。 岩ひとつを打ち砕く斬撃のほとんどが黒い打刀にいなされて、富楽を砕くには至らない。
焦るはずの、業を煮やすはずのその状態を、景虎は心の底から喜んだ。
鷹船しかり。八重しかり。 全力で剣を振るい技を繰り出してなお、実力の拮抗する相手がいることの、なんと喜ばしいことか。 その相手と、剣を交えて命のやり取りをする瞬間の、なんと胸が躍ることか!
その歓喜の瞬間を、人は笑わずに迎えられるだろうか?]
うん、遊んで! 富楽が死ぬまで!!
[関節剣が富楽の左腕と顔の右半分を裂いた手ごたえ>>29]
(32) 2015/05/21(Thu) 19時頃
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[ままよと放たれた砕巌刃は正確に景虎の足元へ迫る。 一撃よりもはるかに至近距離。 得物は剣の形状で抜刀状態。 先ほどと同じ手段は通じない状況。 それでもなお、景虎の顔は笑っていた。危機的状況を楽しんでいた。]
――柳に風と受け流そうぞ…!
[剣を持った右腕を振り上げる。 ギシリと肩が嫌な音を立てる。 ぶれる腕を支えるように左手で手首を掴んで、身体ごと鞭のようにしならせて剣を振るった。
富楽の技を受けるでも相殺するでもなく、軌道を逸らせて受ける被害を最小限にする。
それでも逸らしきれなかった黒刃の一撃が、景虎の右足に傷をつける。]
……ッん!
[痛みに顔を歪めたのは一瞬。 裂けた着物の裾。その隙間から覗く細く白い足を赤い河が流れて、関ノ原の地に落ちる。]
(33) 2015/05/21(Thu) 19時頃
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[身体を支える足が傷つけば、当然体の重心が崩れる。 咄嗟に左手を地面に付き転倒を防ぐが、手の平から伝わる地震のような振動にハッとして顔を上げれば、眼前には土壁と、そこから放たれた二匹の土竜>>30 荒れた機動は予測がつかず、どちらを捌いて、どちらを躱すべきか、それすらも咄嗟に判断ができない。
万全の状態であれば。 せめて足が無事であれば。
そのような「たられば」は無意味だと、唇の端を不敵に吊りあげる。]
荒ぶる土竜に、雪が殺せるかな?
[先に近づき牙をむい持たないた左の土竜を、地面を転がる様にして躱す。 土竜の風圧に巻き込まれた着物の裾が千々に千切れて散る花弁のように舞う。 体勢を立て直そうとするその隙に右の竜が迫り、小さな体を喰いちぎろうと咆哮を上げた。]
(37) 2015/05/21(Thu) 20時頃
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[影虎は知らないが、森の胴丸鎧ですら打ち砕いた富楽の技だ>>3:46 防具のひとつもつけず、生身のままの景虎が受ければ容易く四肢を引き千切られるだろう。
ジャラリ。
もう一度関節剣を握る右腕を頭上高くに振り上げる。 踏ん張りの利かない足で、どこまで耐えられるか。
生きるか。死ぬか。
鷹船の血で刺した唇の紅をぺろりと舐める。 剣の柄を握る手に力を込めて、渾身の力を込めて振り降ろした。]
――ッ破ァ!!
[一閃、二閃。 三閃目で肉薄し、四閃目は竜の牙に噛み砕かれた。
関節剣の刃のひとつが、パキリと乾いた音を立てて砕ける。 それは始めに鷹船と西で打ち合った時に受けた刃こぼれが、ついに刀身を砕いた音だった。>>2:91]
(38) 2015/05/21(Thu) 20時頃
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―――っああぁ!!
[勢いを削いだとはいえ、ほぼ直撃に等しい一撃。
はらり、と地面に散った白い絹糸の上に、緋牡丹のような赤い雫が色を添えた。]
(39) 2015/05/21(Thu) 20時頃
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………っは、……はは
[唇から零れ落ちたのは、吐息にも似た微かな笑い声。 濃紺の着物に咲いていた白牡丹は、今やそのすべてが真っ赤な緋色に染まっていた。]
……ほんと、素敵。
[半ばで折れた剣を支えに、どうにか立っているような状態の景虎が、土竜に無残に切り落とされた白髪の隙間から土下を見上げて、うっそりと笑う。 愛らしい顔には、右目を縦に裂くような傷が一本。]
雪の刀、折れちゃった…。 ふふ… こんなに追い詰められたの、生まれて初めて。
[切り裂かれた顔の右半分へ手をやって、べっとりと付いた血を猫のようにぺろぺろと舐める。 富楽をじっと見据えたままの左目は、猫がまたたびに酔ったように蕩けていた。]
(40) 2015/05/21(Thu) 20時頃
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んー…
[半分ほどの長さになった関節剣を振り上げて、剣の間合いを確かめるように周囲の地面を切り裂く。 右の視界が霞む富楽とは異なり、雪の右目は完全にその役割を失っていた。 痛みを感じないのは、小太郎に貰った薬のおかげか。 見えない右半分を庇うように、無意識の首を傾けて左目だけですべてを見ようとする。]
止めよう、なんて、言わないよね? 死ぬまで雪と、遊んでくれるんだよね?
[確かめるように問いかけて、折れて砕かれた関節剣の一部を拾う。]
雪、まだ動けるよ?富楽だって、まだ動けるでしょう?
[着物の裾を裂いて刀を握る右手を上からぐるぐると巻いて固定すると、折れた刃を口に咥えた。
まだ動ける。まだ生きている。なら止まる理由はない。
傷ついた足で富楽へ向かって駆け出す。 折れて短くなった分、より深く富楽の懐へ飛び込もうと。*]
(41) 2015/05/21(Thu) 20時頃
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[傷のせいで速さを削がれた足でも、並みの雑兵と比べれば格段に速い。]
――ッ
[動きのぎこちない右腕を振り、富楽めがけて関節剣を振る。 だが折れた関節剣では限界まで伸ばしても富楽へは届かない。
避ける間でもなく伸びた剣先は地面を穿ち、土竜の裂いた地面に引っかかる。
だがそれこそが景虎の目的。 関節剣の刃が確かに地面を捕らえたのを確かめて、跳躍と共に腕を振る。 本来であれば相手を引き寄せるための技を逆に使い、自分の身体を剣先へ引き寄せて富楽までの距離を一息に詰める。
地面すれすれを矢のように飛び、地に打ち込んだ剣先を引きもどして。 折れた太刀を両手で構えて、こちらへ切っ先を向ける富楽の剣を受ける。>>57
間近で睨みあえば、隻眼で刃を口に咥えた景虎がニタァ…と笑った。]
(63) 2015/05/21(Thu) 23時頃
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――ザシュッ
[打刀の黒い剣先が肩を切り裂くのを承知で、折れた太刀の角度をずらし、腕一本分の距離を詰める。
腕の一本、惜しいとは思わない。
咥えた刃を突き立てようと、全体重をかけて富楽の胸に飛び込む。 景虎の凶器は、狂気は、狂喜は、富楽の肉に届くか否か*]
(64) 2015/05/21(Thu) 23時頃
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[>>69咥えた凶器は富楽の鳩尾へ。 急所へ届かなかったことを怨むように赤い目を爛々と光らせる。]
―――ッがあぁぁぁ!!
[深く突き刺さった凶器を富楽の鳩尾に残したまま、右肩を貫かれる痛みにぐっと背を反らせて叫ぶ。]
ぁ、ガァ… っくぅ…
[血の気の失せた顔を苦痛に歪め、涙を浮かべながら歯を食いしばり富楽を睨む。 肩を貫いた黒刀が、肉と筋を引き裂きながら上へ抜ける。
今までの比ではない量の鮮血が吹き出し、景虎の半身を朱に染めた。 景虎の血は、正面に立つ富楽をも緋に染めただろうか?
小さな体が力を失って、どさり、と背中から地面へ倒れる。]
(76) 2015/05/22(Fri) 00時頃
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………ふっ、はは… 花柳藤と土下の当主が、酷い泥仕合…
[まだ見える左目で富楽を見上げて笑いながら、その顔は満足そうに笑っていた。
はっ、はっ、と浅く短い呼吸を繰り返す。 致命傷。 なにより血を失いすぎた。]
あぁ、くやしいなぁ… 負けちゃった…
[徐々に光を失ってゆく隻眼が、富楽を通り越してその向こうの蒼天を映す。 どこまでも青く、広い空。何も遮るもののないそれに、動く左手を伸ばす。]
(79) 2015/05/22(Fri) 00時半頃
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そら…きれ……ぃ…
[このまま死ねば、風間の忍びの誰かが自分の死を小太郎に伝えるだろう。 雇主である自分が死ねば、小太郎はひく。 景虎の知る風間小太郎は、死んだ雇主に義理を果たす様な忍びではない。 ならば、死ぬことはないはずだ。
なら、それでいい。
あの世へは、自分ひとりで逝く。]
(80) 2015/05/22(Fri) 00時半頃
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[微かに動いた唇からは、声の代わりにかすれた音だけが漏れた。 伸ばした手はなにかを掴んだか。 小さく拳を握ると、ぱたりと力を失って地に落ちる。 まるでくたくたになるまで遊んだ子供が、満足して眠る様に。 空を見上げたままの灼眼は、光を失ってなお、満足そうに笑っていた。*]
(82) 2015/05/22(Fri) 00時半頃
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