105 CLUB【_Ground】
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長くなったが、そういうこった。 全部投げ出しても欲しいもんが、あった。 まぁ、手には入らなかったけどな。
[淡々と話す様は他人事であるかのよう。 そして、一時戻るのは“上司”としての顔。]
で、お前には居んのか。 買いたいやつが。
[それが蛇とリスでなければ。 フェネックか虎であれば、買えなくはない。 買い取りという形になり、減俸もペナルティもついてしまうが。 心の内を聞けるかと、向ける瞳は強く。]
(@109) 2013/12/22(Sun) 05時頃
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[何度も名前を呼ばれて、目を閉じる。
呼んでくれる声が、チアキのものだから。 心地好い、ひなたのような声だから。
ほぅ──と、吐息が漏れた。]
(@110) 2013/12/22(Sun) 05時頃
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[サミュからの返事がある前に、もう一人の部下と繋がった通信を切った。 白衣のポケットに眠る銀は、全て聞いてしまったのだろう。 聞かせたくなどなかった。 いつまでも、いつまでも “愛してる” と。
嘘でも、貫き通したかった。]
(@111) 2013/12/22(Sun) 05時頃
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[チアキの声に赦されるように、 細い指が銀の蔓を摘み、 ノンフレームの硝子の堤防を、崩した。]
…──チアキ、
オレは、チアキがそう言ってくれるから、 へーきだよ。
チアキはオレに、ずっと欲しかった言葉をくれた。
泣いていいって。 寄りかかっていいって。
オレは誰かに、ずっとそう言って欲しかった。
(@112) 2013/12/22(Sun) 05時頃
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チアキは、わるいこだね。
…────オレとおんなじだ。
チアキ。 …──チアキ。
( オレの )チアキ────。
(@113) 2013/12/22(Sun) 05時頃
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チアキが寂しいとオレも寂しい。 チアキが悲しいとオレも悲しい。
チアキが嬉しいとオレも嬉しい。
……チアキが笑う顔が見たい。
(@114) 2013/12/22(Sun) 05時頃
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[何度も何度も、繰り返し名前を呼んだ。
降り積もる雪のように、 チアキを白く隠してしまえればいいと。]
……──〜、 チアキ
[震える唇から、隙間風のような声が漏れる。]
(@115) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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僕、ティーの力になれてる? それなら嬉しい。 僕、ティーにたくさんたくさんありがとうを言いたかったんだ。 僕ばっかり助けてもらってたから、僕もティーの力になりたかったの。
[最後に、最後に少しだけ、ティーを助けたかった。 数週間前、震えた声を聞いた時からずっと、願っていたこと。 それが叶えられたと知って、笑み交じりの吐息が漏れる。 そして目を閉じて開けば、そこに少しだけ哀しい色を乗せた。]
うん、僕は悪い子なんだ。 ティーよりずっと、悪い子なんだ。 だから――さよならを、しなくちゃいけない。
[身体が震えたけど、声だけは震えないように、耳にも尻尾にも力を込めた。 ティーが名前を呼ぶから、仮初の名前を呼ぶから、だからこんなに、胸が痛いんだ。]
(128) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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[切なげに愛しい子の名を呼びながら、
薄い唇は、うっすらと、笑っていた。]
(@116) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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ティーと僕はお揃いなんだね。 ティーが望むなら、僕は笑っているよ。 今もちゃんと、笑っているよ。
だからティーは好きに生きて。 泣いて、怒って、笑って、精一杯、生きて。
[声は震えなかった。涙だって零れなかった。 ――視界が滲むのは、前が霞むのは、雪が溶けたせいだから、これは決して、涙などではない。]
(129) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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もし、だ。 お前が買いてぇヤツが居たとして。 そいつがお前と同じ気持ちなら、俺は何も言わん。
[新しい煙草を取り出して、火を灯す。 空気に溶ける白は、雪よりももっと穢れている。]
買い取る時も、出来るだけ上に掛け合ってやる。
[そう言って話し終えた“上司”の灰皿の上。 押し付けられた煙草は、強い噛み痕が残っていた。 どこかにも淡々と降り積もる、涙(ゆき)の *かわりに*]
(@117) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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[決して開かない扉の向こうで、 小さな傷つきやすいこころを抱えて、
他の誰かにこころを奪われる前に]
(@118) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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[────────────────……]
(@119) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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[ほぅ──と、もう一度。 ぬくむ春に溶けて消える、雪のような吐息が漏れた。]
(@120) 2013/12/22(Sun) 05時半頃
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……――――そろそろ、行かなきゃ。 僕を待ってる人がいるんだ。
[それは、無言の空白から、どれくらいの時間が経った頃だろう。 背伸びに震える足を叱咤しながら告げた声は、もう欠片の迷いもなく。]
僕が選んだ道、僕が決めたんだ。 またティーの前で笑えるように、僕も精一杯生きるよ。 ご主人様のために、生きる。
[温くなってしまった扉に、そっと口づける。 それを最後に、扉から身体を離した。]
ティー、ありがとう。会いに来てくれて。 最後にティーに会えて嬉しかった。 ティーと話せてよかった。 また、ティーから元気を貰っちゃった。
[袖で溶けた雪を拭って、今度こそ笑う。 もう大丈夫だと、言い聞かせるように笑った。]
(130) 2013/12/22(Sun) 06時頃
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[銀の蔓が、ティーの体温を吸ってほのかな熱を灯す。
沈黙を、間に挟んで、時間が流れる。]
───チアキ、
[最初にそれを破ったのはどちらだったか。]
……うん。 もうすぐサムが迎えに来る。
[フーの話が途切れた。 受け渡しの時間はもう間もなく。]
(@121) 2013/12/22(Sun) 06時頃
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[人間(ひと)はよわくて 自分勝手で、
穏やかに送り出そうと思っていたチアキを、 簡単に傷つけようとするくらい、
一人では隙間を埋められない、不完全ないきものだから。]
(@122) 2013/12/22(Sun) 06時頃
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[聞こえるか聞こえないか わからないくらいの小さな声で
ずっと、長いこと 自分が叶えて欲しかった願いを、口にした。]
(@123) 2013/12/22(Sun) 06時頃
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うん、連絡したら来てくれるんだって。 ……あ、
[端末を開けば、メッセージを送った何人からか返信が来ていた。 その内容に瞼を震わせ、口元に笑みを浮かべる。]
僕、ここに来て良かった。 皆に会えて良かった。 ティーに会えて良かったよ。
[それは心からの、慈愛に満ち溢れた言葉。 愛に満ち溢れた愛玩動物(ぼく)が、人間(あなた)に贈る感情。]
それじゃあ、呼ぶね。 ………ティー、さっき言ったこと、忘れないで。
[床に残された画用紙。 そこに視線を向けた後、端末に視線を落とす。 そして指が画面に触れた**]
(131) 2013/12/22(Sun) 06時頃
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[扉の向こうで浮かべた笑みは、どんな表情よりも優しく。 囁いた声は、どんな音よりも優しかった**]
(132) 2013/12/22(Sun) 06時頃
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[ちいさな唇が扉に触れて離れたとき、 ティーの唇も、いのるように扉に触れていた。
果たされなかった約束。 過去になった愛。
すべてを聞いていた銀のロケットを、 冷たくなった左手に握りこみ、 同僚が、赤い包みを手にあらわれる前に ティーはひっそりと、その場を離れた。**]
(@124) 2013/12/22(Sun) 06時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/22(Sun) 06時半頃
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―研究ルーム―
[渡されたのは、一匹の“愛玩動物”のデータ>>@88。 目を通し始めると、その視線を先導するように、読み上げる声が重なる。
最終行に記されたサインは見覚えのない名前“Frank.F”。 コピーを見ることもなくソラで読みあげた後に、紡がれ始める昔語り。そう、まるで、遠い御伽噺のように。
ただ訥々と、降り積もる雪のように深々(しんしん)と]
(@125) 2013/12/22(Sun) 07時半頃
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[スタートは20歳の世話係。 目の前の人を20歳若くした姿と、今の自分とが重なった。
世話係と惹かれあう“動物”には、データ通りの耳を持つ「兎」と、極彩色の羽根を持つ「鳥」と――…。
『愛してた』
過去形の言葉が重くのしかかる]
(@126) 2013/12/22(Sun) 07時半頃
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[奪って逃げようとした。 その言葉で、若い世話係のイメージは今の自分と分離する。代わりにもっと幼い、あの頃の自分と重なった。
どれだけ、どれだけ、どれだけ想っても。 寝付いて日に日に弱りゆく相手に、食事を与え、生きるための快楽を与え、溢れる想いを囁いても。 喪った主のために流れる涙を、止めることができなかった。 「目を合わせた相手に一生を捧げる」という、“愛(システム)”に勝てなかった18の頃。
そこが重なれば、後は必然。
お前ならわかるだろ?――…その言葉に、うなだれるように小さく頷く]
(@127) 2013/12/22(Sun) 07時半頃
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〔〔 “Who”are you ? 〕〕
[警戒した目で「兎」が紡ぐ。歌うような声で「鳥」が紡ぐ。 若い世話係“Frank.F”の、表情はよく見えない。 ただ静かに語る目の前の「彼」に集約されていく。
――そして部屋に、珈琲を啜る音だけが響く]
(@128) 2013/12/22(Sun) 07時半頃
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……っ、 俺は、
[投げかけられた問い、弾かれたように顔を上げる。 強く向けられる眼差し。心の奥底まで見透かすように。
うろたえた。 自分の偽らざる想いは、とても醜く、情けなくて。 フーに、フランクに、失望されたくないという想いが、この期に及んで口を重くさせる。
けれど、]
(@129) 2013/12/22(Sun) 07時半頃
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[ひそやかに紡ぐ打ち明け話。心の一番奥底の、情けない部分を曝け出した。 打ち明け話はまだ続き、微笑みさえ浮かべている]
立場も減俸もペナルティも、俺にとって本当はどうでもよくて。 「書き換える」存在になりたくない、それが全てだった。だから相手が、俺だけ、ただひとり俺だけを選ばない限り、俺も選ばない。選ばずにいられた。……なのに、
[途切れる声。笑みは消えて、吐息を詰まらせる。 その息を、ようやくゆっくり吐き出した時]
……ヤニクが、それを越えてきたんだ。
[震えそうになる手を、もう片方の手で握り込んだ]
俺の傍がいいって、言った。 誰が主になるよりも、商品と所員でもいいから傍にいたい。 抱き合いたい、声を聞きたいって。
(@130) 2013/12/22(Sun) 07時半頃
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……だから俺、いつもの言い訳が使えなくなった。 あの言い訳がある限り、どんなに心が揺れても、 手を伸ばさず、フィリップに操立てしていればよかったのに。
[途方に暮れたような笑み。けれど懺悔の後のような、清しい心地もして。ありのままに差し出した、臆病で自分勝手な心。そしてフランクの目を、じっと見つめる]
自分の心に向き合わざるを得なくなって、 今、あんたと話してみて、ようやく、わかった。
俺も、ヤニクの傍にいたい。 真面目で、不安定で、自己評価低くて、素直すぎるくらい素直で、甘え下手の甘えん坊で、でも奥底はとても強くて、まっすぐで、そんでとびきり優しい。 そんなヤニクの傍にいたいし、傍にいてほしい。
……なぁ、おっさん。こんな俺でも*認めてくれる?*
(@131) 2013/12/22(Sun) 07時半頃
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− 広間 −
[静まり返ったその場所は先程までと違ってとても寂しかった。 玩具や絵本や毛布で埋めても足りなくて。 のそのそと窓の外を見ていたが、すぐに飽きてしまった]
そっか…。
[食事前までは飽きずに見ていたのに。 独りで見るものは何でもつまらない。 祝福の最後の伝言を贈った後、チアキがホレ―ショーが いない事を寂しがっていた事を思い出す]
ご飯……。
[いつもご飯を楽しみにしていたホレ―ショーを思い出して]
(133) 2013/12/22(Sun) 11時頃
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[まだサミュエルはいただろうか。 配膳口に声を掛ける]
ホレ―ショーまだ来てないの。 俺持って行こうか?
[声を掛けたがいなければ端末に同じ内容を送る。 広間は寂しくて誰かの傍にいたかった]
(134) 2013/12/22(Sun) 11時頃
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