97 wicked ROSE 【ハジマリの五線譜】
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[セレスト-至上の天空-]
(206) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[あまやかな音が、そう呼んだのが合図。 スータンの首元に結んだままの、ぼろく穴だらけの白布がはためく。 抜けるような青空に吹く夏風のみどりのにおいをたっぷりとはらんで、ふわり、と]
(207) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[ば ――――さぁっ]
(208) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[白布は、輝かしいまでの翅に姿を変える。 漣、木漏れ日、そよ風、花弁の透ける色。 氷砂糖、歌うくちびる、ばらの頬。 この世界に満ちる様々を見せる遊色の薄翅が、十も、二十も、百も、千も重なった、光の翼。 その翼をたたえて、"セレスト"は恍惚にうっとりと目を細め。
あまりにうつくしく、笑う。]
(209) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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アルト。
[黒翼舞う左手の鎖と真逆、しろい輝きを放つ翅を背に。 寄り添っていたぬくもりから、ゆったりと身を起こす。]
(210) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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ありがとう。 ――うたえるよ。
[天使の声《チェレスタ》の音色で、まずはじめの一言、そう歌って。 朽ち欠けた大聖堂の、その滅びの隙間から、天空の名のまま、空へと舞いあがる。]
(211) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[青年は指揮棒を一度高くあげると 柔らかく動かし始める。
先ほど、アルトとセレストの共鳴する《音》に 感じた優しい記憶を。]
تخزين دية 《優しい記憶を》
[ーーーーーー奏でて]
(212) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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A《ラ》――――――――
[天使の声《チェレスタ》の喉は、ただ一音を歌う。 原初の音。すべての始まりにして、すべてを構成する世界調律音。 赤子の泣き声、いのちの呼び声。
癇癪を起こす子を宥めるように、この世を指揮するオルガンの、音のひとつひとつを強めるように。 この世界で目覚めて、はじめに歌ったあの音を、高らかな諭しの福音のよう、空に響かせる。]
(213) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[至上の輝きを帯びて視える、聖堂から覗く天空から。 光の粒が、羽の形を模してふわりふわりと落ちてきた。
鼓膜を優しく震わせるのは、世界に満ちる光の音色。 薄い、薄い羽は硝子の様に、世界に広がる景色を映す。
そして、恍惚に酔う様な薔薇色の頬と旋律を奏でる唇で奏でる。 天空から奏でられる天使の声《チェレスタ》の、微笑の音色は。
――――うつくしい!!]
(214) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[《指揮者》は残った方の手に《指揮棒》を さらに、世界に《全休符》を命じた
たちまち《静寂の音》が世界を支配して 荒ぶる天使の《鈴の音》が《ディミヌエンド》する
ゆっくりと立ち上がり、《作曲者》の元に]
(215) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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い、やだ……嫌だ、嫌だ嫌だッ!!
[聞きたくない。 長い髪を乱して耳を塞ぐ]
[これ以上音を聞かせないで。 これ以上思い出させないで。 あの時感じた物を。知った物を。 忘れたままで、いたいのに]
(216) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[初めて知った世界は]
[あまりにも醜くて]
[その事に対して、絶望した]
[そういうことに、しておきたいのに]
(217) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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[イーシュが聖遺体に見せた反応。 天使が、痛切にイーシュを求めた様子。
それだけでも、それがあったことはわかるから。
テノールとソプラノが嬉しそうに笑っていた あの頃を思い出して。]
يمكنك الذهاب فقط لابأس به نتذكر جميع ا 《すべてを思い出さなくたっていい。》
الذاكرة لطيف مع ايشو 《イーシュとの優しい記憶を》 [音はピアニッシモ。そっと囁く。 駄々をこねる、子供にそっと囁く。]
(218) 2013/10/05(Sat) 23時頃
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イアンは、セシルの気配に、穏やかに笑って。
2013/10/05(Sat) 23時頃
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[無傷のまま、眠る白い鼠のそばに来て その身体を片手で掴む スータンを拾い上げると《指揮者》の方へ
《指揮棒》が再び動く前 声《ヴォイス》に願いをこめて《奏者》の天使に]
(219) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[滅びの音は、静寂と共に微風の様に弱まる。 前後して奏でられるのは、至高の空。 そこから響く、もうひとりの光の天使が鳴らす、生命の歌。
オルガンの音色、白き天使にも語りかける声。
まるで、新たに生まれた天使の福音の様に音色は響く]
(220) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[樹木の蔭において、自分とセシルにも あった、優しい記憶を思い出す。
声を殺して、泣いていた その頭をそっと撫でたことを。]
(221) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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canto amoroso《優しく愛情こめて歌う》ように
[それは何者にも覆せない声《ヴォイス》]
(222) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2013/10/05(Sat) 23時半頃
クシャミは、神父と目が合い、ほほ笑む
2013/10/05(Sat) 23時半頃
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やめ…………い、やぁ……!
[清らかな旋律。始まりの音。 美しき福音が空虚な器を満たして行く]
[美しい。あまりにも、美しい……]
[そうだ]
[初めて本当の世界を知った時]
[確かに、そう思ったんだ]
(223) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[囁く様流れる、ピアニッシモの旋律。 そこにあらゆる旋律を導く《楽人》の黒光は煌きだす。
懐かしい過去、遠くの想い出。
沢山の優しい記憶を思い出すその旋律に重ねる様に。 何処からとも無く響いてくるのは。
硝子を叩く様な駒鳥の翼と囀り。 そして、小鳥を求める、小さな獣の生の歌蓮が、ささやかに]
(224) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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神父様…こちらを…
[鼠の寝床になっていたスータンを そのまま、彼の肩に羽織らせた]
(225) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[それは遠い昔巡り逢えた瞬間に溢れた、喜びの狂奏曲]
" きみに、あいたい…… "
[それは彼ら、それらが別たれ嘆いた、悲しみの独唱曲]
" 手を離さないって 伝えたかったのに "
[孤独に蝕まれ歪み捩じれても、誰もほんとうは変えられなかった様に。 アリアの空で、寂しく響き続けていた、狂想の夜想曲]
[最期の時まで、決して変わらずにいた、二人のほんとうが奏でる音色は]
(226) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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" もう いちど " " きみに "
(227) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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―― " अइताकाता《アイタカッタ》 " ――
(228) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[囁く声に思い出してごらん、懐かしい記憶を。 やさしいほんとうを。
誰の胸にも流れる、確かな旋律。
思い出して、口ずさむだけでいい。 このうつくしい世界へと飛び立てるのだ。 囁く様な、そんな音色を最後に重ねて]
(229) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[白い鼠はアスランの手で掴まれたまま 《子守唄》を聴きながら、眠り続けている]
(230) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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…………セシル、ありがとう
[優しく《A》が響く中肩に何かが。 痛みに震えた息を吐いたあと 微笑んで頷いて。]
(231) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[すっ、と掲げ輝きを放つのは。 音と音を結ぶ、キズナの光。 楽曲導く指揮者に並ぶ、《楽人》の光が、少年から煌き。
歌おう 皆で
届く光は、聖堂を突き抜けて空へ。 倫敦の空、世界中の旋律が流れる空の下にまで届いてくれる事を祈りながら。 沢山の《奏者》を導く光と共に、《楽人》の少年は――]
(232) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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フィナーレは…… どんな楽曲にするの?
[優しい記憶の囁きが静かに鎮まるその後に。 少年は導きの緑を確かに握る《指揮者》に問いかけた。 彼が振り上げるタクトを心待ちにしているように]
(233) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[鈴の音は、静寂に近づいていく。 嘆きと悲しみのデクレシェンド。そこに、囁くように、微笑むように、歌いかける。]
Don't cry,little angel《なかないで、愛し天使》
[天女が、その腕で包み込むさますら、思わせるような。 至上の慈悲で、うたう。]
(234) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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[部屋を訪ねるのは限られた者のみだった]
[用件はいつも同じ]
[歌を奏でて欲しい]
[それは自分の存在意義でもあった]
[だから私は、“嬉しい”]
[嬉しいから、“微笑む”]
[そんな日々の繰り返し]
(235) 2013/10/05(Sat) 23時半頃
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