212 冷たい校舎村(突)
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[ …あのときは、 あのときは、俺を抱きしめてくるえとさんが、 俺以上に泣いていたえとさんが、 せかいでたったひとりのかみさまにすら思えた。 …あのとき は* ]
(172) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ それから、足元に広がる血溜まりを、 まじまじと見つめる。どろりとした、赤色。
鼻につくのは、金属めいたにおいで、 そのことが、どうしようもなく、 本物 だなと、思うから。
このマネキンが、水野じゃないとして、 ……でも、この血 は ?
ゆらり 揺れた視線は、 マネキンの腹に刺さった、刃物に向く。
向いて、俺は、 まっすぐ、それを見たまま、 誰ともなしに、尋ねる。]
(173) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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― いつかの秋 ―
[ あのときから ずうっと あと。 二年の秋頃。 "広がった世界"に少し慣れてきたときだった。 保健の授業の一環だったように思う。 外部から講師を招いて、…なんの話だったかな。 そう 確か、性の話だ。よく聞くような。
内容は殆ど忘れてしまった。 何せ、俺に取っては他人事だったからさ。 覚えているのは その、 …同性愛者が、"二十人にひとり"ってこと。
俺は欠伸こそしなかったけれど、 正直言えば、他人事だから あと何分かなあなんて、思っていた気がする。 ]
(174) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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── これ、抜いてみて いい?
(175) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ 隣の席には保田がいた。 向こうの席にいる奴と揃って 時計を見ていたものだから>>0:43
…なんとなく お前もか、とか そんなことを思っていた 覚えもある。 だってそうじゃなきゃ、 俺、あいつに話しかけなんてしなかった。 ]
(176) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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「 ―― なあ 保田 」 [ あいつ、こっち見たっけ。 なんにせよ俺は、興味のままに、あいつに囁くんだ。 ―― だってさ、同性愛者が あの講師の言うみたいに 二十人にひとりだとしたら、さ、
もっと他の "誰かさん"。 そう たとえば。 …たとえばの話だぜ? ]
(177) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ 言うなり、俺は、
赤色でぬかるんだ廊下を踏んで、 きらきら きれいな 光の瞬きの下、 倒れている人形に、歩み寄る。
マネキンの、胸に突き刺さった刃物。 それに向かって、手を伸ばして。*]
(178) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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「 …… 家族と関係持った奴って、 何人に一人なんだろうな 」
(179) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ その囁きを 落として。 前髪の隙間から、保田を見ていた。 その表情を、確かめるように。窺うように。 ]
(180) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[メロンパンをもぐもぐと食べながら、文化祭のことを静かに思い出していたら、 そういえば今もちよちゃんとおそろいだ――と、 変な状況に似つかわしくない微笑ましいことを思うことができていた。
だからちよちゃんを見つめ返すわたしは、 平静を保っている様子を見せていた。>>98
……おかずの交換はできないけどこれはこれで悪くない]
何ができるかなんて、わからないよ。けど、 ………こういう時、だからこそ、助け合わないと。
[おーるふぉーわん、っていうんだっけ、そういうの。 耳通りの良い言葉を並べていきながら、しかし、 表情をだんだん強張らせていく、わたし]
(181) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ 俺は変わらず、穏やかな笑みを浮かべていた* ]
(182) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[―――ちよちゃんにも、ヒーローにも、 話せていない悩みを抱えているくせに、 助け合いなんてどの口が言うんだろう。
その癖踏み込むことからも踏み込まれていることからも逃げるつもりでいる。
だけど、チャイムの音で疑問は驚きに変わり、>>99 ちよちゃんが何を考えているか知ることも、 それからわたしが逃げ出すこともなく、時間は進む]
………、そう、だよね。
[身を寄せ合いながら、ちよちゃんの言葉に頷いた。 確証なんてないけれど、信じる者は救われると言いますし]
(183) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[話すだけ話して、その後はだんまりと。 少しずつ人集りが増えてみんながみんな、つばさちゃんを囲うようにしてこの渡り廊下で足を止めていました。
不意に、ブレザーをかぶせようとしている蝶美の姿>>105が見えて、それを座らせようとしている通の姿>>111を何処か遠いところで見ていました]
(184) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[力強い言葉の響きは、 顔も知らないはずのわたしにとってのヒーローを、 何故だか束の間連想させていた―――]
(185) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[死にたい。
そう思うことがあっても私は、 叫ぶように生き足掻く人ばかり見てきましたから。
たとえそれが模造品であっても、 目前で広がった“死”の光景は、恐ろしかったのです]
さ、さら…ちゃん、危ないよ、私も、
[行くよ、と。 今度こそは下へと向かう彼女>>110を追いかけようとしました。
ですが、似たような。 …いいえ、私よりも多く赤が滲んだ通>>117に声をかけられて、改めて見下ろしました。
上履きに滲み膝に付着した赤。 こんな格好で、何が出来るというのでしょう。 追いかけたってきっと、困らせてしまうだけでしょうから]
(186) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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そっか。保健室、着替えあったと思うから、通も、また。
[その後に出会う誰かさん>>138も伝えてくれるでしょうが、教室に向かうその姿>>115を見送りました]
(187) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[その後くらいだったでしょうか。 理一の声>>125が聞こえたのは。 とりあえず視線を向けましたけれど、あっ、と言う前に理一は蝶美ちゃんが被せてしまったブレザーを取ってしまいまして>>126]
…………え。
[おもわず溢れたのは非難がましい呟き。 「なんで取ったの?」 問いかけることはしませんでしたが、瞳が揺れたことは自覚できましたから。
だから視線を逸らしましたが、 理一の何処か戸惑ったような瞳>>127に、私は戸惑います。
理一の感情が読めなくて。 那由多>>142はあんなにも分かりやすかったのに。
いや、早とちりかも、しれません。 気のせい。 無闇に詮索して踏み込んだ先 見つけたものが、人ならざる化物だなんて、恐ろしいじゃあないですか]
(188) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[鞄にたくさんの食料を詰めて、食堂を出る。>>101 教室に戻るものと思っていたけれど、 先導するようにわたしの手を引くちよちゃんは3階までのぼっていった。>>102
やがて渡り廊下が見えてくる。 エの字型の校舎の縦線の部分に当たる場所。 確かにクラスメイトが集まってるんだけど、なんだか様子が変。 鉄錆のような香りがする中、倒れている“何か”を囲んでいる。 ちよちゃんといっしょに近付いてそれを見た]
(189) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[ですから今はこれ以上はやめて、淡々と状況の説明を]
…………突然、叫び声をあげて放送室から飛び出したつばさちゃんを、追いかけてたの。
だけど、私たちが見つけたのは……。 つばさちゃんそっくりの、マネキン。
通は、まるでつばさちゃんの代わりにいた、みたいだって…言っては、いたけど…。
人が、マネキンなんかに、なるわけ、ないでしょ。 だから、つばさちゃん、探そうって。
だって、校舎から出られる方法なんて、ないじゃん。 なら、絶対、どこかにいるはずだから。
[それから視線をつばさちゃんそっくりのマネキンに落としましょう。 先ほどは狼狽し過ぎて本物の人であると勘違いしたソレを]
どうして、こんな…まるで殺人現場……でも、自殺してる、みたいな、ことになってるかはわからないけど。
(190) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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気分、わるい…かも。
[そうして言葉尻に溶けるように誰とはなしに呟いていた時でしたか。 誰に向けられたものかあいにく私には分かりませんが>>173]
…………ダメでしょ。
[何言ってるの、ねぇ>>175 興味本位なのか、どうかも、私には分かりませんけども。
本当に悲しい時、ムカついた時、 それを笑顔で隠せない時、
どういう顔をすれば正解なのでしょうね?
少なくとも私は唇を引き結んで、 眉を寄せて、那由多に非難がましい目線を送っていたでしょうけど]
(191) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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[マネキンだ。 見るからにつくりものの人型だと認識したはずなのに、 本物じみた、自ら流したかのような、赤く紅い液体の水たまりに沈んで、 うちの高校の制服を着て、明るい色の髪を紫のリボンで彩っていたから]
……つばさちゃん?
[小さく呼んだ。返事はない。
――壊れた人形のようになって、死んでいる?
頭が真っ白になったのは数秒だ。 ちよちゃん>>105がそれを“血塗れのマネキン”とはっきり言ったから、もう一度見直して……、
そう、マネキンだ。間違いない]
(192) 2017/03/12(Sun) 20時半頃
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教室、にさ。 いっぱいタオル積んできてたから私、それ取ってくるね。 ここ、このままに出来ないし、マネキンだとしても、…可哀想だから。
[他の子はどんな反応を示したでしょう。 刺すような発言がその手>>178を止められたのかどうかも、さて。 私は誰かの反応を待たずして階段を下りて教室にむかいましょうか。 着替えたほうがいいとは言われましたがどうせまた、汚れるのならこの格好のままでも構わないと判断して]*
(193) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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―2F廊下―
……そ、そう、――、 古辺、ぶじ、なら、いい けど でも――
[>>162いまも 床に飛び散った、その、赤は、なに。 能久は息を強張らせたまま、床と古辺の掌を交互に見た。長い前髪の下、、表情はよく窺えない。]
……水野さんは 大丈夫じゃ ないの…か? ……――、
[水野が消えて。マネキンが残されて。血が飛び散って。それは一体、どういうことなんだ。誰かの心の中で、何が起きている。 保田の忠告に従うらしき様子、 >>163けれど動けないまま 指し示された階段の先を苦しげに見上げていた。]
(194) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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……―え、
[>>164不意に声を掛けられて、 びくんと能久は振り向いた。 会わないほうがいい、そんな忠告。]
……――、 ……、…… わか、…った。
[カタチばかりの返事はして、 けれどどうしたらいいのかわからない。 手を伸ばした時、掌についた赤い色を見下ろす。まるで 現実感がない のに。]
…っ、つ、ついて、いこ―――うか……
[漸く尋ねた時には 古辺の姿はもうずいぶん遠く。途方に暮れたように、能久は―――*]
(195) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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― 現在:保健室前 ―
[ 多分、足音が聞こえてきた>>110のは、 泣き声に滅入りかけていた時だった。 ぽた ぽた、 ブレザーの袖から垂れる赤色から目を離して、 一階に来たらしいクラスメートを、見る。 距離が遠くても、聞こえるように 泣き声を、かき消すように 発する声は、大きく。 ]
(196) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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―― あ、 天ヶ瀬 丁度良かった …制服、頼んで良い? [ 保健室を指さして、 彼女を、前髪の隙間から、見下ろそう。 ]
(197) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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PPP イルマは、メモを貼った。
2017/03/12(Sun) 21時頃
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―いつかの夜― [――すすり泣く声、
砕けた食器の欠片に、 赤く血がついている。
いつかの夜、 いつかの諍い。 何年前からの冷戦状態。
入れないところにおれは居る。
家にいるのがいきぐるしくて、 おれは真夜中抜け出した。
聞こえていないとでも思っているの。 こどもは存外、聡いんだ。
――――ゲーセンの自販機の隅っこで、座り込んで膝を抱える、補導されなかったのが、奇跡的だ**]
(198) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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─2F廊下─
[階段を下りて、そのまま教室に向かいましょうか。 道中思い出すのは少し前のこと>>130]
本当、マジすごくないんですけど。
[たまにも怒らない私があんな風に角の立つことを発してしまった事実をから恐ろしく思い、深い、深い、ため息をつきます]
もぅ、…ほんと、やだ……。 お腹いたい……保健室…。
でも、通いるかもしれない、し。 着替えてたらだめ、だ。
[緊張で、きゅう、と痛む腹部。 一瞬、あの時かけられた言葉>>83を思い出しました]
(199) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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付き添ってもらえば、よかったかな。 [ちいさく笑って、笑って、笑った筈なのですが、今更に膝が震えそうになるものですから。
顔を上げて歩きましょう。 今はもう笑うのは疲れてしまいましたから、唇は一本線に結んで。 赤が付着した上履きと靴下は片手で持ち、裸足で廊下をぺたぺたと。
そうしていれば、遠目にクラスメイトの姿>>195が見えたでしょうか]
…………なに、迷子?
[そう声をかけてしまうくらいには、何処か心細そうに見えてしまっていたので、自然、目線を合わせようと上を向いて]*
(200) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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―2F階段近く廊下― [追うにも、今更間抜けな気がして 能久は深く息を吐く。嫌なことばかり蘇る]
……あの血 ほんもの、かな…………
[そんな、ばかなことを幼馴染に尋ねる。答えはあったか、どうか。 階段に向かうべきか。重い足を踏み出す前に、足音ひとつ>>200]
――入間さん?
[裸足であることに驚くよりも、 尋ねられた内容に困ったような顔をするのが、先。]
……ちがうよ、 なんで学校で迷子に、なるのさ……
……って、入間さん、その、赤いの、なに
(201) 2017/03/12(Sun) 21時頃
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