261 エイプリル・トフィーの融解点
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[ゆるゆる吐き出す言葉の数々に、 レベッカの動きは完全に止まっていた。
目を伏せる。 頭の奥がじんじんとする。
首元がひやりとして、手が離れた事が解った。 上に乗っていた重さも無くなった。
彼女が立ち去ると同時に、 他の村人がやって来て、俺を見つけて、 たぶん医者を呼ばれるのだろう。]*
(57) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[ 村長が 山から帰ってきた。 ]
[その頃にはレベッカはもう村を出ていて、 恐らくは二度と戻らないのだろう。
清々したけど、 あんなのが村長の娘だと言う事実は、 気に入らないままだ。
軽い脳震盪で済んだとはいえ、 一歩間違えば殺されてたところだし。]
(58) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[村人が集められて、 山に登った結果を聞かされる。
結論、神様には会えたという。
俺は少しほっとして、 村長の話を聞いた。
山の神様が言うには、]
俺に…村を出ろ、って?
(59) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[そういう事らしい。 一人でも生き延びて、血を絶やさずに。 この村の事実を、山神の存在を、 後世へと残してくれ、と。そういう事だ。
俺は一度口を噤んだけども、 でもそういう事ならば、確かにとも思う。]
解りました。 俺は…七月、シェルターに入ります。 だから、その時に持って行けるように、 神様についての伝承や文献を纏めて貰いたいです。
[村長にしか解らない事も在る。 山の神を讃える音楽も習わなければならない。 やる事は沢山あって、 七月になるまでに間に合うか解らなかった。]
(60) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[それと、もう一つ。]
[山の神様から言い渡されたという事柄に、 俺は緩く、目を瞠った後、
静かに静かに、頷いた。]*
(61) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[終わりの日が定められていても 扉で区切られた世界の時間は緩やかに過ぎていく。
箱舟へのチケットと言うには素っ気無い封筒は 飾り気無い机に馴染んでいた。 宛先は何度見ても変わらず見慣れた名前のままだが、 既にひと月が経っているのに現実味は薄いまま。
そんな認識で済んでいるのは 家に居るようにと言った両親のお陰なのかも知れない。 ニュースでは荒んでいく人々の心を映していたし、 選ばれた者への反応も包む事無く語られている。
炎上騒ぎや事件をまとめている個人記事がある辺り 世界にはまだ時間を持て余している人もいるよう。]
(62) 2019/03/28(Thu) 00時頃
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[街の様子は両親からの話によると 食料の買い占めや宗教の呼び掛けなどが目立つ程度。 それでも犯罪は少なからず起こっているらしい。
最後の日を刑務所で過ごすのだろうかと首を傾げたが 独身者が大半を占めていると聞けば何も言えなくなる。
少なくとも彼らにとっては 独りの部屋よりも穏やかに過ごせるのだろう。]
(63) 2019/03/28(Thu) 00時頃
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[―――あの日から、あの子は帰って来ない。
じっと封筒の宛名を見つめた後、 鞄にありったけの荷物を詰め込んで家を出て行った。 両親が取り乱していない様子を見るに 連絡はしているらしい。 それでも時折心配そうに話をしている。
友達といるのかも知れないし、 付き合っている二つ上の先輩といるのかも知れない。]
(64) 2019/03/28(Thu) 00時頃
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[ ひと月遅れで届いたこの感情は 多分 疎外感 と言うものなのだろう。**]
(65) 2019/03/28(Thu) 00時頃
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[ なにも、かわらない。 ]
(66) 2019/03/28(Thu) 00時半頃
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[青春とは 何者にも成れる気がして、結局何者にも成れないことだ]
(67) 2019/03/28(Thu) 00時半頃
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[ 5月。 最後の一日になるまで歯車でいる人々は 何かに吹っ切れたのか知る由もないが、 如実に増加した着信回数に苦笑しながら 馴染みの150ccを唸らせる。
薄い雲一枚に遮られて達観した三日月が どうにも他人と思えないほどには 運命との疎外を感じさせていた。 ]
(68) 2019/03/28(Thu) 00時半頃
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[ 粘り付く熱帯魚の感覚と満ちる潮の匂い。 望月の白い海の底で、二人で溺れてみたい。 世界の終焉すら甘い言葉のエッセンスに、 底冷えした臓腑が一つ。
最早馴染みの虚脱感にひくりと喉を引き攣らせ それでも軽薄なりに率直な笑顔を張り付けて 隙を見せないように湿った髪を撫でた。
己には関係のない話だから、 普段通りと変わりない。 ]
(69) 2019/03/28(Thu) 01時頃
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……、いたい。
[ 息が出来ない。 帰る前に金を渡すのなんて嫌だろう、と 前払いで貰っていた封筒もトランクに投げ ハンドルに頭を押し付けた。
しにたくないと泣き喚きながら、 最後には笑って礼を言う女の、男の、 心の中からも爪弾きを喰らった気分で 深く深く、息を吐いた。 ]*
(70) 2019/03/28(Thu) 01時頃
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