191 The wonderful world -7 days of MORI-
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[ 目の前の男が、昨日、何を見たかなんて、おれは、知らない。
掌に刻まれた数字は、今この瞬間も減り続け、 おれは、目の前の競合者がどうこう、とかより、 はやくミッションをこなさなければ、という思いでいる。
きみの提案に、男の反応は芳しく、 こちらに、方角を選ばせるような様子さえ見せた。>>406
── だから、おれは、遠慮なんてせずに、 会話に割り込むようにして、口をはさむ。]
── じゃあ、南。もらっていいですか。
[ このときばかりは、きみに尋ねることもなく、 まっすぐ、その、競合者ペアに向かって。]
(413) 2016/06/12(Sun) 20時頃
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[ 理由は、ふたつ。
ひとつは、単純。距離の問題。 モリ区の北端、というと、 またあのスクランブル交差点なんかを経由し、 ぐるっと、スカイタワーの方に出ることになるけど、 南なら、駅のほうに、ずうっと道なりに行けばいい。]
(414) 2016/06/12(Sun) 20時頃
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[ もうひとつは、彼らは知らないだろう。
さっきの、小魚をくれた死神の来た方向。 北の方角から、歩いてきた彼女は、 あっさりと、おれたちに質問の機会を与えた。
── 北で、他の参加者と会ったのかもしれない。
だとしたら、そいつもヒントをもらっている可能性は高く、 そして、このミッション、 ヒントがあれば、そう難しいクイズじゃ、なかった。
つまり、ポイントになる可能性なら、南のほうが。
……なんて、絶対、口には出さないけれど。]
(415) 2016/06/12(Sun) 20時頃
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[ ── もっとも、彼はともかくとして、 彼女>>412が、どんな反応を見せたか。
どうにもこのゲームの参加者の女の子は、 あまり友好的な態度を取る気がないらしい。
と、いつぞやの元同級生・森さんを思い出したりもして。]
(416) 2016/06/12(Sun) 20時頃
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[ そして、ミッションに使えそうなものは、 それがなんであろうと、使っていく方針である。
モブAあらため、 きみと楽しそうに話していた気の良さそうな青年が、 食料を差し出す>>406なら、 おれは、平然とそれを受け取るだろう。
もちろん、礼は言う。 ありがとうございましたと、頭は下げる。
こっちは食べものなんて持ち歩いていない。 代わりに差し出すものがないのは、仕方ないのだ。
なんて、変わらぬ表情の下で、考えながら。*]
(417) 2016/06/12(Sun) 20時頃
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── 焦ってますよ。
[ 当たり前じゃないか。
北か南か。選べと言ったのは彼>>406だ。
これって、結構重要な選択だと思うんだけれど、 それを、こちらの判断に委ねようとするワタルさんとやらも、 無作為に決めようとする彼女>>418も、
なんだか、なんにも考えてないんだな、って。
思った、から。]
(424) 2016/06/12(Sun) 20時半頃
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ワタルサンたちは、焦らないんですか?
[ おれは、淡々と問い返す。
ああ、そういえば、昔から、 何考えてんだかわからない、って、 たまに言われては、いたけど。
焦らないわけ、ないじゃないか。 ミッションは、未だクリアとならず。 カウントダウンは、無情にも進み、
生き返りを賭けたゲームは、 ポイント制度以前に、 ミッションクリアを以て成立する、のに。]
(425) 2016/06/12(Sun) 20時半頃
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── 生き返る気がないなら、どうしてここにいるんですか?
[ その態度って、その選択って、 死んでもいいってこと、なんだろう。
── って、気もちを込めて、おれは首を傾げる。
こんな問答をしている間にも、残り時間は減ってゆき、 だけど、これは結構、おれにとって、 きみを取り戻したい、おれにとって、 大切な質問だったり、するので。
例えば、黙りこんで、答えてくれないなら、 おれは、きみに、次へ向かおうと促して、 歩き出そう、とは、考えている。*]
(426) 2016/06/12(Sun) 20時半頃
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[ 彼女の言葉に>>433、首を傾げるだけの反応を返した。
ルールが明示されているこの世界で、 彼女の言う意味は、わからない。
七日間で幕を下ろす世界の四日目に立って、 もう、往く先よりも、来た道のほうが、長いのに。
”やり方”なんて、たくさんはない。 ひたすらにポイントを稼ぐか、他者を蹴落とすか。 どちらも取らないなら、生き返る気がないなら、 ……とっとと、死ねばいいのに。]
(449) 2016/06/12(Sun) 21時半頃
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[ ── 答えは、聞けたけど、
それを、頭の中で反芻して、 やっぱり、生きる気、ないんじゃないか、って。 もうひとり、ワタルサンとやらも答えてくれたなら、 それも、噛み砕くように、しながら。]
お菓子。ありがとうございました。 ── ネル、行こう。
[ おれは、もう一度だけ頭を下げて、 きみとともに、南へ、南へと、歩き出す。*]
(451) 2016/06/12(Sun) 21時半頃
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── 南エリア:モリ駅付近 ──
[ きみが、言葉に詰まった>>522のと、 おれが、掌のタイマーが消えた>>#8のと、
きっと、ほとんどおんなじくらい。
きみの視線を追って、おれは、 倒れているひと>>510にも気づいて、 それに寄り添うようなひとにも、 ふたりに、見覚えがあることにも、気づいて。
……目が良くて、良かったな。 って、思った。]
── ネル、あの人たち、怪我してる。
[ ……そうでもなきゃ、町中でへたり込まないか。
ともかく、おれは、こちらを見るきみ>>523に、 駆け寄ろう、でも、なく。]
(531) 2016/06/12(Sun) 23時頃
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……おれ、様子見てくる。 ネル、そこのドラッグストアで、 包帯とか、ガーゼとか、救急セットみたいなもの、
[ 買ってきて、って。
言うだけ言って、おれは、駆け出す。 きみの答えを聞くよりも前に。 おれのほうが走るのが速いとか、 そういうことを、きみが考えず、 納得してくれたことを祈って。
人影のほうに、ひとりで。*]
(533) 2016/06/12(Sun) 23時頃
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── 4th day:南エリア ──
[ 掌のタイマーの消滅が、ミッション終了を示してから、 おれに与えられるボーナスタイムは、 いつも、そうも長くは、ない。
から、おれは、急がなきゃ、って、思って。]
── 北見さん。
[ きちんと、あの日聞いた名前を呼んで、]
── どうか、したんですか。
[ 見りゃ分かるだろ、って。 言う余裕も、彼らには、ないかもしれない。
そんなことは、どうだっていい。]
(536) 2016/06/12(Sun) 23時頃
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[ 時間切れになる、その前に、 もし、彼らが勝手に死んでくれるなら、 それが、一番、なんだけどさ。
おれは知っている。 これまでの怪我も、日付をまたげば、 幾分かは、いつも、回復していて、 親切な仕様だなあって、感謝もしたけれど、
今は、それが、邪魔でしかなくて、]
……大変そうですね。
[ そう言いながら、おれは、彼らに歩み寄り、 北見 圭一の、背後から、 そのパートナーを、覗き込むような素振りで、
そっと、”力”を込めた、腕を伸ばして、]
(538) 2016/06/12(Sun) 23時頃
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[ ── ばちん。]
.
(539) 2016/06/12(Sun) 23時頃
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[ まだ、わりかし元気そうな、 北見 さんの首筋に、べとり と、掌を押しあてて、
彼が、反応する、というより、崩れ落ちる かな? それよりも、先に、 ウエストバッグの中の、大ぶりな刃物に手をかける。]
── 良かった。
[ ポイントを持ってそうな彼らを、 ここで、排除しておくことができるなら、 こんなに、良いことはない。
少し、癖のある黒い髪。 その、脳天めがけて、刃物を振り下ろす。]
(543) 2016/06/12(Sun) 23時半頃
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── はい。おかげ様で。
北見さん、昨日は、ありがとうございました。 あと、ネルと、仲良くしてくれて。
[ おれは、そう、言いながら、にっこり、微笑んだ。 ── せめて、笑顔で送ってあげようと思って。>>541
包丁の柄を握りしめたその掌に、 ちゃんと、手応えがある、その瞬間まで。]
(544) 2016/06/12(Sun) 23時半頃
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── おつかれさまでした。北見さんと、ええと……、
*
(548) 2016/06/12(Sun) 23時半頃
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── 巻き戻し:彼ノ岸公園 ──
── 口だけなら、なんとでも言えますよ。
[ って、おれは、言ったのだ。
あせってまちがえたくない。 協力は大事。>>481
── 七日で終わる世界。 実質は、そんなにもない。
はじめから、正解も見えずに、 焦りもせず、切羽詰まりもせず、 悠長に構えて、他人から、奪う気概もない。
そんなやつに渡せる椅子は、どこにもないんだって。]
(573) 2016/06/13(Mon) 00時頃
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[ そんな思いで、彼の答え>>484を”見て”いた。
生きたい。死ねない。 なんて、きっと、みんな、言ってる。
だけど、そのほとんどは、嘘。 本気で、誰か蹴落としてでも、なんて、 ほとんどのやつは、実行しない。
口だけお化けの戯れ言なんだって、 おれは、よく、よく、知っていて、
だけど、おれは、本気だよ、ネル。 ── きみのためなら、なんだってする。]
(575) 2016/06/13(Mon) 00時頃
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[ いっしょに、って、 やけに言われる日だ、って、思いながら。
おれは、彼に渡された紙切れ>>486を、 無造作に、ポケットに押し込んだ。*] .
(578) 2016/06/13(Mon) 00時頃
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── そして、現在 ──
[ おれは、荒い息を、とぎれとぎれに吐き出しながら、 自分の顔に、腕に、衣服に、 べとり と、付着した赤色にまみれて、 文字通り、”凶器”になった包丁を握りしめ、 ただ、ひとり、その場に立っている。
── 血は、助けようとしたからついた、ってことにしよう。
だけど、包丁についた血は、どこかで洗わないと、 人助けじゃ、刃は赤くならないからな、って。
きみが、不要な心配をしなくて済むように、 いろいろと、考えを巡らせているところだった。]
(587) 2016/06/13(Mon) 00時頃
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[ そこに、かけられるのは、]
── おつかれさまです。
[ メアリー・ポピンズ。 って。 もはや、あだ名みたいで、ちょっぴり気に入っている。
その軽やかな声と拍手に、 おれは、目を細め(下瞼に血がついて気色悪いのだ)、 一礼くらいはしてみせようか。
それから、小さな死神>>@73の姿も。 おれは、あ。 と思い出したように声を上げて、 ひょこり、と一歩、彼に近づく。]
(588) 2016/06/13(Mon) 00時頃
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── ネルのほん、返してほしいんですけど。
.
(590) 2016/06/13(Mon) 00時頃
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[ 前回、会ったときと変わらない、 平坦な声で、おれは問う。
いや、ちょっと怒ってる。 だって、相手は、 ちゃんと返すよう言ったはずなのに、 持ち逃げした、窃盗犯みたいなもんだし。
あ、でも、今は手が汚れている。 ウエストポーチは、本が入るサイズではないし、 おれは、少し困った顔をして、 「紙袋かなにか持ってませんか」なんて、 ついでに、聞いてみたかもしれない。
── 付近に、 死神 兼 おまわりさんが降り立った>>572、 なんて、気づくこともなく。*]
(591) 2016/06/13(Mon) 00時頃
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[ ふわり、と、近づく赤色>>@77に、
おれは、模様の浮いたままの手に、 赤色に濡れた包丁、握りしめて、 場合によってはすぐに斬りかかる準備をしていた。
── だけど、彼女が、攻撃する素振りはなくて、]
………… 、
[ なんて、言おうとしたのだったかな。
真っ赤なおれは、まばたきひとつ、 真っ赤な死神に、向けて、]
(619) 2016/06/13(Mon) 01時頃
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── ネルは、
[ 生き返るべき? 分かってくれる?
── すとん、 と、
言葉が抜け落ちてしまったみたいに、 おれは、奇妙な感覚に、首を傾げそうになって、]
(620) 2016/06/13(Mon) 01時頃
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……おれは、ネルのために、 できることなら、なんだってする。 それ、だけ。 .
(621) 2016/06/13(Mon) 01時頃
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[ ──そう、そうだ。
口だけお化けのその他大勢とちがって、 おれは、おれの役割を、使命を、 きちんと、最後まで果たすよ、ネル。
だから、きみは、何も心配しなくてよくて、 きみは優しいから、たとえ正しい行いであっても、 きっと、”悲しい”って、顔をするから、 きみは、なにも、知らなくてよくて、
── きみが、生き返る。きみに、戻る。
それだけが、たったひとつの、花まる大正解。
それ以外、大切なことなんて、なにも、ない。
おれの手が汚い、とか、そんなこと。 きみに触れられなくたって、 きみの隣に立てなくったって、そんなこと。]
(622) 2016/06/13(Mon) 01時頃
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……どうでもいい。
[ 声に出してみる。そうだ。その通り。
きみが生き返る。きみの世界が、続く。 きみの人生が、あんな惨めな夜に終わることなく、 これから先も、ずっと、きみが、生きて、 記憶のかけらを、きらきらした世界を、 つむぎつづけてくれる、なら、
── おれは、他になんにも、いらない。]
(623) 2016/06/13(Mon) 01時頃
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