160 東京村
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(だから……やめーや。 ホラーはやめーや……!! なんなん最近……)
[見たくないものを伏せるような気持ちでTwitterを閉じ、LINEを立ち上げる。昨日のメッセージは未だに既読もつかずに放置されていた。 脳裏に彼女の横顔がよぎる。 その首元に巻かれた自分と揃いの赤い手ぬぐいと、あいりすのコラ写真が何故か重なって見えて、堀川は再び誰もいない店内で一人、青ざめながら、犬のように身を震わせた。]
(24) 2015/06/05(Fri) 17時半頃
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ボリスは、首の赤い手ぬぐいに、じんわりと冷たい汗が染みていくのを感じた……**
2015/06/05(Fri) 17時半頃
石工 ボリスは、メモを貼った。
2015/06/05(Fri) 17時半頃
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(>>21) …っ!
[緊張していたので、声に一瞬ビクッと跳ねた。 おそるおそる振り向くと、大平さんがいた]
……あ、大平さん。…ごめんね、起こしちゃった? …知っている? 何の事言ってるのかわからないけど、大平さんも見えるの? これ。
[私は鏡の中のサラリーマンを指差して聞いた。 もちろん全く悪びれなどしない。 それほど驚きもしない。…薄々わかっていた。 トクベツなのは私ではなく、鏡だったらしい]
(25) 2015/06/05(Fri) 17時半頃
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(>>25) [さっきの映像(>>20)はもう鏡に像を結んでいなかった。]
……もう、消えちゃいました……神谷さんには、何が見えてるんですか
[思い出すのは鏡の都市伝説。鏡は、こわいものだ。何かを映したり、吸い込んだり、何かが出てきたり。 こんな、陽も昇らないうちの鏡なら何を映したって不思議じゃないんじゃって、自然に思った。 私にはもう見えないけど、神谷さんはまだ鏡を指してる。別のものを見てるのかも。]
わ、私には……アイリスが失踪したことの犯人を呟く、神谷さんの姿が……
(26) 2015/06/05(Fri) 17時半頃
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[私の鏡の像も既にぼやけていた。]
私は昨日会ったサラリーマンが見えてたの。新宿の大平さんに会った所で知らない男と歩いていたけど…よくわからなかったかな〜…。
えっ私? えっえっ?
[鏡を見てももちろん私の顔が普通にうつるだけ。 慌てた様子になった後、一度深呼吸して]
…それは昨日の私ね。ツイッターのあの画像みたよね? その最中が、鏡に映ったの。顔に痣のある女が、アイリスを…。 見たと思うけど、ずっと映っててくれるわけじゃないから、何もかも知ってるわけじゃないけど
(27) 2015/06/05(Fri) 18時半頃
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―前日の夜―
[アルタ前には別段変わったものはなかった。 まぁ、そうだよな。なんとなく警察が沢山いるのを期待してはいたものの、現実はそんなものだろう。 つまりこの写真も悪戯なわけだ。最近は手の込んだ悪戯が流行っているらしい。]
[石動からツイッターアカウントを教えられたのを切っ掛けに、話の流れでその場にいた3人でアカウントを教えあう。 自分のアカウントは殆どROM専の、たいしたことを呟かないアカウントですけど。そんなことを付け足しながら。 結局その日はその後、特になにもなく解散になった。]
(28) 2015/06/05(Fri) 18時半頃
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―早朝 新宿―
[また電車が止まった。 早朝の通勤ラッシュの満員電車の中で寿司詰めにされること数十分、そろそろ新宿に到着かと思った矢先に新宿駅での人身事故。 仕方なく乗り換えを余儀なくされ、予定時刻を大幅に遅れてようやく新宿に辿り着いた。]
(29) 2015/06/05(Fri) 18時半頃
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(>>27)
鏡に……
[いままさに自分も見たように。そんなことがあるか、とは言えない。]
じゃ、じゃあ……神谷さんは、アイリスのことをいっぱい知ってるって、わけじゃないんですね……? そっか……
[それにしても]
顔に痣のある女……ですか
[なぎさのことを、思い出す。]
(30) 2015/06/05(Fri) 19時頃
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[満員電車で揉まれてクタクタになった新聞をゴミ箱に投げ入れ、コンビニでサンドイッチとコーヒーを購入。 職場へ向かう途中の横断歩道の信号待ちでなんとなしに携帯電話を手に取る。あれからまだ例の非通知着信はない。 twitterを開いてタイムラインを流し見すると、今朝の新宿駅での事故に関するツイートがいくらか目に入った。]
心霊現象……ねぇ。
[トヨタは心霊現象を信じない。幽霊なんているはずがないし、都市伝説なんてものは大抵裏があるものだと考えている。 自分自身がその都市伝説と関わることになった今でもその考えは変わらない。 変わらないのだが……]
[横断歩道を渡って暫く直進した後次の信号の前で小道に入る。 暫く路地裏のような道を進んだあと、コーヒーの空き缶を自販機の横の空き缶入れに捨て……今来た道を振り返る]
…………。
[誰もいない。誰もついて来てなどいない。そのはずなのに。 先ほどから誰かに見られているようなそんな気がして、居心地が悪い]
(31) 2015/06/05(Fri) 19時頃
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……大平さんに昨日の私が見えたなら 本当にアイリスはもう……。
(どうしよう。警察に…でもこんなのどうやって) [大平さんにも見えたことで、私は少し自信がなくなっていた]
そう、ね。顔に目立つ痣があって…まあそんな人見たらとりあえず気をつけていいと思うけど。見かけたら気をつけてね。
(32) 2015/06/05(Fri) 19時頃
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[出社してタイムカードを切り、自分のデスクについて今日の予定を確認。 上司はまだ出社していない。 顔を合わせれば昨日の件で報告書の提出を求められるだろうから、上司が来る前に外に出てしまおう。 報告書はあとで喫茶店にでも寄って書き上げればいい。こういうとき、自分が外回り担当であることを便利に思う。]
[会社の外にでて、乗り換えの確認をする振りをしながらtwitterを確認。 昨日アカウント名を交換した相手の呟きを確認したりしていると、ふと妙なアカウントからフォローされていることに気付く。 プロフィールの画像はアイリスのアカウントと同じ。だが……]
『アイリス失踪の犯人は、顔に痣がある女』 …………?
[なんだろう。なにかの告発だろうか。 アイリスの失踪にはやはり事件性があって、その犯行を目撃した人間が警笛を鳴らしている?]
顔に痣がある女……そういえば、今朝の人身事故関連の記事でもそんな文字列を見たな……。**
(33) 2015/06/05(Fri) 20時頃
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(>>32) [アイリスはもう、と聞いて顔を暗く沈ませる……。 なんで、そんなことになるんだろう。私にはもうよくわからない。 だって、あの画像だってコラだって。そんな事件、起きてないんだから。 でも、不思議なことは、起こっている。
なぎさのことは言うべきか悩んだが、言ってどうにかなることでもないんだと思ってしまう……。]
(34) 2015/06/05(Fri) 20時頃
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ヒナコは、わかりました、と言ってこの話に区切りをつけるだろう。
2015/06/05(Fri) 20時頃
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― 早朝・新宿 ―
[山手線にて人身事故。]
……あらら。
[困ったな、という調子で呟いた。 池袋に用があったからだ。 流石に幾らか待てば動くだろう。 インドの『お友達』を見送って、喫茶店で余計にゆっくりする。 人身事故についてを携帯で調べてみると、『男女が線路に落ちた』が『死体はない』とある。 地上という世間ではそれを事故というのか。]
(35) 2015/06/05(Fri) 20時頃
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[ホームにいた全員で、同じ夢を見た、貴重な体験。 想像する。 都会の忙しい暮らしの中に降って湧いた浮遊感。 「とろりたりららん」と電車が来た事を告げるまるい薄紫の芯をした音色が波紋を描きながらかさなりあう。 スローモーションで電車が入ってくる。 繊細な視覚と聴覚で聞く、人の営みという音楽。 そのなかの言い争う声。望まれていない声。 誰かが言う。 『言い争いをしている男女は消えた』 いざこざは消えてしまったよ。 人の目は赤くなってる時ほどよく見える。 皆見た。 『本当だ』 いざこざをしていた男女のノイズが『視界』から消え、電車が車両の数だけ長く大きな拍手をする! きいきいという電車の金属めいた歓声と同時に、スロー、もっとスロー、よりスローになって、ゆらぎながら電車がすわりこむ。 音が止む。皆同じ夢から目が覚める。
ぐるぐる回り続けるリーフの色をした電車を40分も止めたのは、平和への望み。そういう事でどうだろう。]
(36) 2015/06/05(Fri) 20時半頃
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>>34 あ、もし、……アイリスに関係ありそうな人いたら、教えて欲しいかな。 大平さんの判断でいいから、もしかしたら、またアイリスが一緒に映るかもしれないし! 狙った人を見れるのかはわからないけど。
ええっと…電話番号、良かったら。 [自分の番号を書いた紙を渡す]
(37) 2015/06/05(Fri) 20時半頃
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―新宿・駅の近くの喫茶店―
[店員がコーヒーを持ってくるまでの間に、ノートPCを取り出して立ち上げる。画面に窓のマークが浮かび、ようこその文字。 画面が切り替わるのを待って煙草に火をつけた。客もまばらな店内にセブンスターの煙を燻らせる。]
飛び込んだのは 【日本人離れしたハーフらしい顔立ちの男】と【口許に大きな痣のある女】 [ツイッターに飛び交う目撃情報を再度整理する。二人は直前に言い争いをしていた。 事故後二人をみたものはおらず、遺体や血痕はおろか車体の損傷もなかった。 そして、アイリスをその2人を関連付ける情報はなし。 一応覗いてみたしっとブログも今朝はまだ更新されていない。]
[煙草の灰を灰皿に落とし、店員が運んできたコーヒーを口に入れる。]
(38) 2015/06/05(Fri) 20時半頃
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[興味深いが、しかし自分とは関係のない事件。 だからこそ人々は己の想像で物事を書き立て、それをみてあれやこれやと言い合う。 この事件ももう少しすれば真偽も定かでない様々な情報が次々に付け足されていくことだろう。 まぁ、自分には関係ない。適当なところで検索を切り上げて、報告書の作成に入る前に伸びをした。]
…………。
あれ、あの顔……。
[近くの席に、見覚えのある顔があることに気付く。 先日すれ違った気がするホームレス風の男だ。みればみるほど昔世話になった『笠井先輩』に似ているような気がしてくる。 勿論先輩はあんなホームレスのような身なりをするような人ではあり得ないので、単に他人の空似なのだろうが……]
[気になるので、じっと見てしまう]
(39) 2015/06/05(Fri) 21時頃
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[おや、と思う。
近くの席に『知った顔』がやってきた。>>39 特技といえることはそれほどないが、人の顔を覚える事だけは昔から得意だ。 忘れていた試しがない。 代わりに名前はからっきしだが。
ずっとそんな風にがんばっているんだな。 ありがちだが、立派になって。
こういう事は、都会ではたまにあることだ。 ただし、向こう側から気づかれることはそうそう無い。 当然だ。もう『笠井』という人間は居ない。 居なくした。
一方的に知ってはいても、『正真正銘の他人』だ。 今じゃ、最高にキモチのイイふかふかの花穂を摘むから『ワタヌキ』さんなんだ。 いや『四月一日』でワタヌキだったかな。まぁどちらでもいい。 そして向こうも気づくまい。――気づくまい?]
(40) 2015/06/05(Fri) 21時頃
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[――驚いた。]
(41) 2015/06/05(Fri) 21時頃
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(>>37)
あ、はい……わかりました……
[電話番号を受け取る。 アイリスに関係するひとというとなぎさのことばかり今は思い浮かんでしまう。]
ええと……じゃあ、もうちょっとだけ寝てていいですか、神谷さんが出る時になったらおいとまするので……
(42) 2015/06/05(Fri) 21時頃
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[ホームレス風の男は、珍しいものを見たような顔をしてから、スーツを着込んだ男に、
悪戯をするように、――にや。 と笑った。
それから、それが気のせいであるかのように、しれっと席を立ち、レジへ向かう。釣り銭も受け取らない。 店からさっさと出ていく気だ。 ――もう電車は動いているはずだ。 >>39]
(43) 2015/06/05(Fri) 21時頃
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[目が合った気がした。 ホームレス風の男が一瞬呆気に取られたような顔をする。 思わず目を逸らしかけたその瞬間、男はトヨタが予想だにしなかった形に表情を変えた。]
え
[ホームレス風の男の笑みに、思わず身を強張らせる。]
先輩……なのか……?
[そそくさと席を立ち、去っていく男の背中を見つめながら トヨタは目を見開いたまま動けずにいた。]
(44) 2015/06/05(Fri) 21時半頃
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(>>42)
[私はそうして、許可が出れば神谷さんの出る時間まで眠りこけているだろう。 嫌な夢を見ながら……。 そうして神谷さんの家から出て、お礼を言って、別れを告げる時に思い出して言う。]
あ……そういえば私の名前、さか……さかしたひなこっていいます ず、ずっとアイリスの名前で私のこと呼んでたから……それでも、いいんですけど
[それだけ付け加えて、東京のどこかへ消えるだろう。]
(45) 2015/06/05(Fri) 21時半頃
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―昨夜>>2:277>>2:278>>2:279>>2:283―
[バーテンダーの男がなぎさの襟首に手をかけていたが、大事に至らぬうちに別の女性店員に引きずられていった。女子トイレから戻ってきた真弓はそのあたりの最後の方を見届け、なぎさがいなくなってから席に着いた]
ただいま。落ち着いたみたいね。なんかなあ。彼氏は欲しいけど、痴話喧嘩みたいのは本当勘弁だわ。 ……あ、好きに頼んでいいわよ。今日は特別私の方で奢ってあげるから。あら、何これ。またやればいいの?
[年下の方の少女にそう言って追加のビールを頼む。差し出されたルービックキューブを手に取って、いとも容易く1分以内に揃えあげた。初期配置は119通りしかないのだ、パターンは全て記憶している]
(46) 2015/06/05(Fri) 21時半頃
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デートならもう少し洒落たところに行くわよ。 そうね……一応ここでやる事は終わったかな。次の場所がどこになるかはすぐにはわからないけど…… 女子トイレのタンクの中にドライバーとレンチが入ってたわ。……ああ。袋に入ってたから汚くないわよ。このキューブにアルファベットが書いてあるでしょう。これが答え。
[手提げ袋に入れた戦利品の工具類を見せつつ、キューブのパズルについて簡単に説明した。]
力士シールの犯人がやった事かどうかわからないけど……次もまたどこかにこういう鍵があると思うの。まあ、それでどうなるか……分からないんだけどね。多分命の危険はないと思うし。
ああ、そうだ。名前言ってなかったわね。 高円寺真弓。池袋でスマホ売ってるの。そう言えばそっちは……智恵美さんと……?
[自分の名前を教えて、彼女たちが興味を示すようなら申し出も聞いた。]
そうね、昼間は私も仕事だから…… メアド、いやtwitterかLINEの方がいいかしらね。交換したら、連絡してあげられると思うわ。
(47) 2015/06/05(Fri) 21時半頃
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[智恵美という女の子の方はこちらの話よりはむしろアイリスの行方不明の謎を追っているようだった。確かに、これだけ一度に多くアイリスについて知る人間と会うというのは気にかかる。力士シールにはおそらくシールを張る犯人がいるのだろうが(もっとも、誰にも目撃されたことのない犯人だ)、アイリスの方は見当もつかない。 ともかく、智恵美とは連絡先は交換した。バーテンダーの男と交換、という事はさすがにしなかったが。]
まあ、だから……そうね。こっちの謎が解けたら明日にでも連絡はするから。そうね、アイリスの事。何かわかったら教えてちょうだい。「リーク」の事でもいいしね。
[「リーク」についてはそう真面目に考えているわけではなかったが、全部繋がっている、そういうことは創作物語でならいかにもありそうだな、と考えた。きっとその場合は、オムニバス形式でそれぞれ主人公がいる群像劇的な物語だろう。小説よりはビジュアルノベルといったところか。]
それじゃあ、またね。補導されたらアイリスの事どころじゃないんだし、気を付けて?
[彼女達にはそう言って駅前で別れた。中央線はとっくに復旧を終えていたようだった。]
(48) 2015/06/05(Fri) 22時頃
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[『笠井』という人間の人生はとっくの昔に終わっている。
だから、いつでも、こうして『知った顔』を見つけても、知らないふりをする。 してきた。そしてそれで回っていた。 向こう側は、『知った顔』だと気づくこともない。 気づかれたことがない。
それで回る程度の人生だったのだ。人間だったのだ。 『さかさ風船』の携帯電話とそう変わらない。 闘争の世界から離れたくなる人間なんて、得てしてそういうものだ。 敗者は記憶に残らない。
本当に、極稀に『もしかして』で誰かの記憶に引っかかる瞬間がある。 けれど今しがたの喫茶店のスーツの男も、目があったとして。この顔でにやりと笑ってみせたとして。 きつねに摘まれた位の驚きで、また今日の日常に、明日の日常に、皆無事に戻っていく。
家に帰って、居るかどうかも知らないが、たとえば妻に『昔の先輩に似たホームレスを見つけた』程度の話をしてみてくれてもいいだろう。言葉に出すことでスッキリして、記憶から離れていけるだろう。
――それで十分。十二分。 忘れて貰える位が、丁度いいのだから。]
(49) 2015/06/05(Fri) 22時頃
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[喫茶店を出た。 通りをぺたぺたとサンダルで歩く。 革靴を履いた靴底で忙しく道を歩く――そういうのは、『なかったこと』になっている。 足元のマンホールが帰りを待って、穴からひゅうひゅう鼻歌を歌っている。
やはりどうにも昨日から『変な日』が続いているらしい。 こんな風に『知った顔』と目があうとは。]
(50) 2015/06/05(Fri) 22時頃
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―夜・三鷹― [環状線を離れ西に数駅行ったこの場所は東京ではあるが閑静な街並みだ。電車一本で都心にたどり着く便利さながら、少し足を伸ばせば緑の木々に覆われた公園が広がる。井之頭公園の敷地は広大で池もあり、ゆったりと一日過ごしても飽きないくらい。文豪の愛した街、近藤勇の墓のある街。生まれ育った箕面の町を思わせる場所は、多少勤務地から遠くても自分には理想の下宿先だった。
しかしそれも昨日までの話。今日駅を降りたそこは、自分の見知らぬ場所と化していた。 そう、力士シール。それも新宿とは比べ物にならないほどあちこちに、行く先々の電柱に張られている。]
(51) 2015/06/05(Fri) 22時頃
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………そろそろこの顔で胸焼けしそうになってきたわ。
[最後まで厄日だ、と思いながらアパートを目指す。その間も嫌な予感は消えなかった。なぜ、自分の行く先々に現れるのか。自分が謎を追っているのではない。………むしろ、自分が力士シールの謎に追われているのかもしれない。その懸念は、自宅にたどり着いた時に確信に変わった。]
…………どうして、ここにまで。
[たどり着いたアパート。自分の部屋のドアの前に、力士シールが張られていた。]
(52) 2015/06/05(Fri) 22時頃
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― 池袋 ―
[『さんかく』はあちこちに居る。 なにも新宿周辺だけに居るわけではない。 ワタヌキも新宿の喫茶店で見知った顔で懐かしい思いをしたあと、『さんかく』の日常に戻った。 葛飾区の喫茶店パール近くで、『あいりちゃん』と待ち合わせをした『さんかく』とは、今日池袋で待ち合わせた。 『ひなこちゃん』が『あいりちゃん』ではないと連絡をくれたのも彼だ。
インド産のインディーカ。鼻をくすぐる未知の果物。未知なくせしていつかどこかで食べたよな懐かしい甘い果汁の風味と甘いにおい。体にかかる重力の確かさ。まるで柔らかい布が乗っているかのような地球のおもみ。『まんなか』へ向けてたゆたうように吸い込まれていくリラックス。 そういうハイを楽しむことのできる、温厚な青年だ。]
(53) 2015/06/05(Fri) 22時頃
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