18 Orpheé aux Enfers
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[静かに開かれた扉の音にも、驚いて一度肩を跳ねさせた。 けれど振り返って友人の姿を認めれば、ほっと表情は和らぐ]
セシル!本当に来てくれたんだね。 ありがとう、ありがとうっ。
[態々自分を迎えに来てくれた彼へ駆け寄って、深く頭を下げた。 多分、普段通りに振るまえている筈だ。 …真っ赤になったままの眼を除けば。
彼が自分の歌声に、哀しげな色を感じ取っていたことを知らない]
急がないと、揃って怒られちゃうね。大変だ。
[冗談めかして言いながら、強がって笑みを浮かべた]
(204) 2010/09/05(Sun) 03時半頃
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[セシルの顔は、明らかに自分のことを心配しているようで。 本当にもう大丈夫だからと。 再度笑みを作ろうとした所で、伸びてきた腕に包まれる]
……………………っ。 せ、セシル…。
[いつもと逆転した立ち位置。 彼だって今、大変な筈なのに。余計な負担をかけてはいけないのに。 確りしなくてはと自分に言い聞かせるのだけれど、それでも包み込む腕があまりに優しくて。引いていた筈の涙が、再び溢れてくる。視界がぼんやりと滲んだ]
(206) 2010/09/05(Sun) 04時頃
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サイラスは、セシルに身を預けつつ、しばしの間おとなしく髪をなでられていた。**
2010/09/05(Sun) 04時半頃
薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2010/09/05(Sun) 04時半頃
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―物置部屋―
[ずっと撫でていてくれたから、呼吸が落ち着くのも少しは早くて。 彼が指先で綴る文字に、静かに意識を傾ける。
やがて一段落つけば、頬を伝う跡を消すように軽く擦って。 セシルと共に、大練習室へ向かうだろう**]
(211) 2010/09/05(Sun) 09時半頃
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―メインホール―
[握られた手を握り返し。セシルに手を引かれてメインホールまで向かう。 戸口に立てば、真剣な表情をして深く頭を下げた]
遅れてすみませんでした。
[足早に自分の位置へと向かう。途中、ワットの渋い表情が目にとまり]
あはは、ごめんねぇ。秘密の特訓してた。
[小声で冗談めかして告げて、持ち場へと到着した。 ラルフに声をかけられたなら、眼が赤く腫れていること以外は、何一つ先ほどまでと変わりないようににこりと微笑んで]
此方こそ、宜しく。 あ、そうそう。さっきは本当にありがとう。
[さっき、というのはセシルを気遣ってくれたこと。 のんびりとした様子には、緊張感が欠片も感じられなかったとか]
(239) 2010/09/05(Sun) 20時頃
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[自校の生徒―――ワットに、ドナルドに、セシルに順番に目配せを送ると、小さく頷いて楽器を構える。 別人のように鋭い視線がヴァイオリンへと落ちた]
――――――――――……。
[一度だけ、その冷ややかな視線はバーナバスへ向けられた。 睨んだ心算は無かった。ただ、楽器を持ってから彼の方を見たら、そうなってしまっただけのこと]
[指揮が振られる]
[初音から安定した色を紡ぐ彼の演奏は、その心を表しはしない。 想いが素直に音に表現される友人とはまるで正反対のようだなと、心の中で苦笑した。
指示が飛べば繊細に、大胆に、リズムを刻む弓は滑らかに形を変えて行く。 個性豊かな音色が次第に纏まりを持ち、共鳴し合い、膨らんでいく中、ヴァイオリンは風のように唄う。ときには原っぱの中心を、ときには低い水面の上を、ときには日陰の暗がりを。 道を辿り、追いかけ、見出しながら進んでいく]
(249) 2010/09/05(Sun) 21時半頃
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[高校生たちの演奏が、次第に熱を帯びてきた。 普段と違う環境。刺激の塊のような個々の奏者達。 高揚するのは無理も無いことで、そして、―――――――…]
(まずいな、浮いてきた)
[この局面に置いても振れの無い青年の音が、全体から僅かに浮かぶ格好となる]
『サイラス! 音、安定させろ!』
(んー………)
[それが見逃される筈も無く、飛ばされる檄に思案する。 迷子になりかけた音を、助けてくれたのは…]
――――――――――……♪
[再び風は心地良さそうに舞い始める。 支えてくれたのは耳慣れた低音。一度乗ってしまえば、もう見失ったりはしない]
(250) 2010/09/05(Sun) 21時半頃
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[傍らで響く、同じパートの第二ヴァイオリン。 忠実で正確に弾きこなされる旋律は、彼の積み重ねられた努力を現しているのだろう。好きな音だった。
その落ち着き払っていた横顔の口角が、僅かに持ち上がるのを感じた。 彼のことなど、全く知らない筈なのに―――ああ、そんな顔をするのかと、感心にも似た驚きを感じていた]
…………………。
[さて、それにしても。 昨年の文化祭で聞いたのと、明らかに違う音が混ざっていた。何処か閉塞感すら感じるトランペットの音。 技巧的にはむしろかなりのハイレベルだろうその音色。けれど、違った。 僕の心に大きな衝撃を与えた、あの姿。 ―――――それは、決して女装していたからではなく(しかし、残念ながらその要素も完全に否定はできないが)]
[バーナバスの檄を受けて、トランペットの音は踊り出す。ああ、これが「いつもの」彼なのかと、衝撃はあの日のままに]
(258) 2010/09/05(Sun) 22時頃
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―メインホール―
[楽器の構えをとけば、いつもの暢気な笑顔を浮かべて。 片づけを終えると、友人の元へ駆けて行った]
セシルー。食事の前に、一旦部屋に戻ろう! 荷物置いてこなくちゃ。
あ。でも、場所は自分では覚えていないんだけどさぁ…。
[あはは、と苦笑を零して]
連れてってくれる?
[ゆるりと首を傾けながら、片腕を差しだした]
(271) 2010/09/05(Sun) 22時半頃
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わっ。
[椅子に座りなおした友人を眼で追う]
あっ。
[直ぐに立ち上がった友人を、再度眼で追う。 何だかその動きが可笑しくて、僕はくすくすと笑みを零した]
もう、何やってるんだい。ふふ。
[手に綴られた文字に目を細めて、そっとその手に力を込める]
さっきはありがとう。 君は、いつも僕を助けてくれるね。
[音が浮きかけた時のことを言って、礼を述べる。 彼の荷物が多いようなら、運ぶ手伝いを申し出つつ。セシルの向かう先へと着いて行くだろう]
(277) 2010/09/05(Sun) 23時頃
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― F部屋 ―
[持っていた彼の分の荷物を、 「此処で良いかな」と確認しつつ部屋に置いて。 身軽になれば、自分のベッドにぼすりとうつ伏せに沈み込む]
着いたー。疲れたー。 ―――――――……今日も一日、お疲れ様っ。
[子供みたいに楽しそうに足を軽くぱたぱたさせてみたり。 寝転がってシーツの上に顔を預けたまま、 やがてセシルの方へ視線を向けた]
………………………。
[少しだけ、真面目な表情になる]
いつでも、大丈夫、だからね。
[穏やかにそれだけ告げて、少しの間だけ目を閉じる]
(284) 2010/09/05(Sun) 23時半頃
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― F部屋 ―
[眼を閉じたままだが、相手が近づいてくるのが音で何となく分かる。 ぎし、と寝台の沈む音に続いて、頭に落ちてくる温かい手のひらの感触]
うん。
[綴られた言葉に静かに頷く。 伏し目がちに開かれた瞳は、やがて彼の顔を見上げた]
(291) 2010/09/06(Mon) 00時頃
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[相手の問いかけに、一度こくりと首を縦に振り]
確か、ずっと昔から同じ先生に教えて貰っているんだよね。
[相槌を打ちながら、彼が昔教えてくれた話を思い出す。 幼いころから世話になっている先生で、 その相手のことを慕っているのだと。 そんな風に彼は語ってくれていた気がする。
当時の彼の様子を思い出せば、何となく微笑ましい気分になるのだが]
…………………。
[かちかちと、打ち込まれた続きの文字。 決して長くはないようだった。
直接画面を見せることなく、セシルは携帯電話を寝台に放り投げた。 僕は少しだけ困ったような、そして心配そうな視線を彼に向けた後、起き上がってその電話を手に取った]
(298) 2010/09/06(Mon) 00時半頃
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