158 Anotherday for "wolves"
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―騒動のあと―
ジョスランさんが そんなようなことを言ったんだもん。
[新鮮なハムとみずみずしいレタスが挟まった もちもちのベーグルを力いっぱい 噛みちぎりながら。
しゃあしゃあと罪をなすりつけて えへへと肩をすぼめて笑う。]
わーい!! ヤキガシ!!美味しいやつだ!! マーゴありがとう、大好き!
[声を弾ませながらデザートのフィナンシェに 眼を輝かせる。 楽しい 楽しい ずっと続けばいいのに。]
(313) 2015/05/14(Thu) 11時半頃
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[悪夢――現実――に引き戻されないように。]
(314) 2015/05/14(Thu) 11時半頃
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[いつもなら半分こする花輪。
片側がきれいで 片側がいびつで
そんなふたりの花輪。
今日はいびつな花輪と きれいな花輪。]
(316) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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[「交換こ」と言って差し出された きれいな花輪。
少女の辞書に「遠慮」という言葉はない。
いいの?!と 眼を輝かせて。
代わりにお礼をしようと、ポケットに手を突っ込むと…――]
(317) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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ヒヤリ…――
[冷たいものに手が当たり 自分の手が一気に冷める感覚。
手だけじゃない。 身体も目も 心臓だけが赤く熱く燃えるように 脈打って。
これはわたしが欲しかった大事なもの、宝物?]
(318) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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[その時わたしの頭に 浮かんだのは きっとひどいこと。
おとなに言ったら お父さんやお兄ちゃんに言ったら 怒られそうなこと。
オーレリアお姉ちゃんが持ってた綺麗な銀の薔薇細工。 欲しかったのに、これがあると怖いから、 手放しちゃおうなんて。
しかも…――友達にあげちゃおうなんて。]
(319) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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……お礼、マーゴにあげる。
[少し俯くのは、マーゴには見えない。 隠しきれない少女の声色を照れ隠しと見るか、 また“いつも”に見え隠れする違和感と見るか。
受け取らなければ強引に手に握らせて。]
お花のかたちしてるの、それ。 お守り。
[と付け加えて。
本当にお守りだったことを ふたりは だれかは 知ることがあるのだろうか。]
(320) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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[それだけ告げるとバスケットを片手に マーゴの花輪を頭にかぶせ 墓地の方へと駆けていく。]
またね! ジョスランさんと兄さんも!またね。
[と少しうわずる声を張り上げて 残した人たちに別れをつげて。]
(321) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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[わたしは駆ける。 とばないように頭に乗せた花輪を片手で押さえて。
バスケットを持つ片手では本がカタカタの揺れる。
わたしは風。 びゅんびゅん。 高い木々に囲まれた獣みち。太陽も届かないで鬱蒼としてるけど わたしは気にせず走り抜けてく。
わたしは妖精。 ふわりふわり わたしの足元の花は 毒の花ばかり。]
(323) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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[「何がなくなるのが怖い?」
「わたし」
「おともだちと家族がいなくなるのが」 「一番怖い。」 ]
(324) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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[嘘ばっかり。]
(325) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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[わたしが怖いの。
わたしのことを 愛してくれる人が いなくなること。
わたしの場所が なくなるのが 怖い。
わたしが 愛されなくなるのが いちばん怖い。 ]
(326) 2015/05/14(Thu) 12時頃
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―墓地―
[母親のもとへ向かうころには 息もあがって。
ゆっくりと墓石へと 歩み寄る。]
お母さん。花輪、作ったよ…。 ……っていっても、これマーゴのだけど。 あげるね、お母さんに。
[今日で何年だろ? ……えっと…わたしが5歳の時だったから……。]
7年?
[8年です。]
(329) 2015/05/14(Thu) 12時半頃
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[間違いには気づかぬまま、少女は続ける。]
どうしよう。お母さん。 村に戻るのが怖い。 多分もう話題になってるよ。 ごめんね、お母さんのめいにちに こんなこと言って。
[戻りたくない、その思いと 自分だとバレてやしないかという不安 それを打ち消したい、確かめたいという思いと。
せめぎ合う葛藤に中々答えが出せぬまま。 うだうだと墓石の裏に腰かけるとバスケットから 絵本を取り出し、読み*始めた。*]
(333) 2015/05/14(Thu) 12時半頃
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―墓地―
[頭に濃いオレンジ色の花輪を乗せたまま。 ゆっくり、ひと文字ひと文字 スペルを辿る。]
ア カ は い い ま し た。
[アカというのがその本での狼の名前。 そして次の行へ指をなぞろうとすると
上から振ってくる声に びっくりしてヘンな声が出た。]
(396) 2015/05/14(Thu) 19時頃
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わぁあぷ!! ……びっくりした。
グレッグお兄ちゃん。
[「それ」というのが何を指すのか一瞬わからなくて きょとんとしていたが頭を示されると あ、と小さく声をあげる。]
綺麗でしょ。 これはね、マーゴがくれたの。 わたしのはこっち。
[とバスケットの中で本と一緒になっていた 少しくたびれた花輪を見せる。 走りながらバスケットを大きく振っていたから 元々いびつだったそれは 更に解けそうなくらい緩くなっていた。]
(397) 2015/05/14(Thu) 19時頃
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[腰を下ろすグレッグに]
……まだ。 今アカがシロのおともだちを 追い払ったところ。
[シロというのがその絵本での山羊の名前。 白いからシロというらしい。]
……。
[それだけ言うと、ふ、と俯いて少女は押し黙る。 従兄はそれを不思議に思って尋ねるだろう。 俯いて口を尖らせたまま]
(398) 2015/05/14(Thu) 19時頃
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「キャサリン」っていうのやめて。 お母さんはお母さんだもん……。
[普段、彼が父のことを「ルパート」と呼ぶのは さほど気にならない。 なのに、何故か久しぶりに彼のくちから聞く 母の名前はすごく不快だった。]
(399) 2015/05/14(Thu) 19時頃
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―3歳の記憶―
[呼び方のはなし。
父の名前はルパート。 母の名前はキャサリン。 兄の名前はグレッグ。
それは知ってる。 でもお父さんはお父さん。 お母さんはお母さん。 お兄ちゃんはお兄ちゃん。
少女にとってそれが名前だった。]
(403) 2015/05/14(Thu) 19時半頃
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[だから兄の使う言葉を疑問に思った。 ただその頃は、兄がことばを言い間違えてるという 根拠のない確信があった。]
おにいちゃん おかしいんだ。 おとうさんのこと 「おじさん」 だって。
[キャハハと愛らしく笑う、今よりも幼い少女は 叔父という言葉を知らなかった。 その時説明されたような気もするけれど 幼い少女に理解はできず。]
(406) 2015/05/14(Thu) 19時半頃
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「おじさん」って言ったら よそのひと みたい。
だからやだ。
[ときっぱり跳ねつけて 困り顔の父や母や兄にのしかかるように抱き付いて]
だってうちは よにんかぞく だもんねっ!
[そんな思い出話。]
(407) 2015/05/14(Thu) 19時半頃
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―今朝のこと―
[病気ではないと父は言うけれど>>179 じゃあなんだって 一体全体おしっこの出てくるところから 血が出るのかと少女は問うた。
すると父は 「大人になった」 そういう表現で初潮を言い表した。 そこで少女は]
わたし、おとなになったの!? もうおとなの仲間入りなのね!
[とはしゃいだという。]
(412) 2015/05/14(Thu) 20時頃
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[母の呼び名について、兄に告げる少女>>399は 眉をしかめて目は潤ませて 口はへの字に結んでいる。
兄への不満だけではない。 不安定な少女の理性と感情という天秤は ネジの外れたシーソーのように 大きく何度も傾いていた。
だが、それは果たして相手には伝わるのか。]
(418) 2015/05/14(Thu) 20時半頃
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[と思うと 兄が何か言ったか話の途中でも 構わず。]
あ! あのね、わたしね、今日ね、おとなになったんだよ! わたしもおとなの仲間入りになったんだって!
[と今朝のことを喜色満面に騒いだ。]
グレッグお兄ちゃん。 これで、わたしいつでもお兄ちゃんのお嫁さんになれるよ!
[と付け加えて。]
(419) 2015/05/14(Thu) 20時半頃
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「わかってる」
[そういう兄の声は優しいものだけど 兄が母のことを、「お母さん」と呼んだことを 少なくとも少女は知らない。
キャサリン、と名で読んだり ねえ、とかちょっと、とか。
そういう思い出が 兄の言葉から説得力を 奪う。
本当に…――? でも答えを知るのが怖くて わたしは、ただお兄ちゃんを見るだけ。]
(436) 2015/05/14(Thu) 21時頃
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[不思議がるグレッグに 少女もまた不思議そうに 小首を傾げて。
何だか呆れたような灰の眼が 頭のてっぺんからつま先まで 全体見るもんだからぷくっと 頬を膨らませて反論する。]
お父さんがゆってたもん。 わたし今日からおとなになったんだって。
[父には言えたが、年の近い兄には 「おしっこが血になった」とは言えず。]
(443) 2015/05/14(Thu) 21時半頃
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[それからまたころりと一変。 照れくさそうにもじもじと スカートの裾を弄りながら]
わたし、お兄ちゃんとけっこん したいんだもん。 ドナルドおじさんはね、マーゴが好きだから。 ジョスランさんはね、マーゴが好きだったけど 勘違いだったの。 でもわたしジョスランさんとは けっこんしたくないからいいの。
[とうろたえる兄を余所に手を包み込むように 握りしめた。]
(446) 2015/05/14(Thu) 21時半頃
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ねえねえ、いつけっこんできる? 明日できる?
[その問いをする少女の表情には 微笑みはなく、声を少し荒げて 困った様子で兄に尋ねた*]
(447) 2015/05/14(Thu) 21時半頃
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えぇー。 子どもの時からいっしょに居たから もう時間たまったと思ったのに。 おとなになったらいつでもけっこん できるんじゃなかったのか……。 たばかられた。
[兄の言葉>>466にがっかりして肩を落とす。
昨日ジョスランに言った内緒の話。 その話には続きがある。]
でももう少し先になったら グレッグお兄ちゃんともけっこんできるんだよね。
(482) 2015/05/14(Thu) 22時半頃
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[グレッグが父を「ルパート」と呼び 母を「キャサリン」を呼ぶのは
彼が……、従兄が本当の家族を忘れられないから。
お父さんとお母さんがそうだったように わたしがグレッグお兄ちゃんとけっこんしたら。
本当の家族になれる。
4つのピース。ひとつは欠けてしまったけど。 きっと3つはきっちりはまる。 そうしたら、もっときっとずっと一緒にいられる。]
(489) 2015/05/14(Thu) 23時頃
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