266 冷たい校舎村7
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──うん、帰ろう。 真っ暗になってしまう前に。
(352) 2019/06/17(Mon) 18時頃
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「またね」と笑って手を振るお別れが、 闇に呑まれず、君の見る世界に残せるうちに。**
(353) 2019/06/17(Mon) 18時頃
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[帰る、って言った時に、 ヨーコねーさんはまたやっぱり、ぽろぽろ泣いていた。 また女の子を泣かせてしまった。
ごめんなあ、って苦笑することも、 傷ついてしまう肌をいたわることもできなくて
俺はただ、優しい言葉にこくこくと頷いた。>>344]
……うん、 みんな、おんなじ。
…………うん。
[みんなで帰ろ。 一緒に帰ろう。 その言葉をかみ締めて俺は生きることにする。>>346]
(354) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[たくさん、酷いことをしたし 恐らくはなんにも解決しちゃいなくって いたずらに、巻き込んだ皆に 辛い思いをさせただけかもしれなくて……]
(355) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[俺は少し後悔するように暗くなりゆく校舎を振り向いた。 文化祭の面影は、まだ廊下のあちこちに残っている。
ぱちぱちと瞬いて消えていく蛍光灯の光に 少し、追われるようにして足早に その葬列めいた行進は進んでいった。>>335
きっとずっとお別れだ。 ここに二度と来ることはない。
だから、最後に、 俺はこの場所に切れないシャッターを切って、]
(356) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[終わっちゃうなあ。 って そういう言葉だけ飲み込んで、前を向いた。 ちらちらとこっちを向いてくる悟に、 なんだよ、って笑いかけて>>338>>339>>340]
( 帰ったら、もっとちゃんと話せるのかね )
[明日の事は何にもわからないから、 悟にまた会うことを楽しみに、歩を進める。]
(357) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[弔うような、あるいはただ祈っているような 不思議な時間は、どれだけ続いただろう。>>349
初詣の神社でそうするように 「何願ってたの」って聞いたら、 キョースケのお祈りは聞けたんだろうか。>>351
どんな願いであっても、 それが叶いますように。
隣でお祈りをしながら、そう思った。]
(358) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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……は、はいって…… 入ってるよ、たぶん
[俺はヨーコねーさんから降って来た言葉に、>>348 ぱちぱちと瞬きして、思わずそう返した。 あんまり自分を勘定にいれるのが得意じゃない俺だ。
少し頬を掻いて、言い直す。]
俺を含めて、みんな。いーことありますよーに。
[これで大丈夫、と立ち上がって、 帰ろう、っていうキョースケと悟に頷く。
それから、ヨーコねーさん、と呼びかけた。]
(359) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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あのさ。
[ちょっと体を寄せて、小さく耳打ちをする。]
(360) 2019/06/17(Mon) 20時頃
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[耳打ちを終えると、
わざとらしく悟に笑いをくれてやり、 内緒話を明かすこともなく歩きだす。
こっちこっち、ってキョースケの手を引いたりして]
[少しずつ、少しずつ、世界は暗くなっていく。]
(361) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[校舎裏の出口に向かおうとして、 ぴくり、と俺は逆の方向を見た。]
(362) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[…………鳴き声が聞こえる。]
(363) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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…………、 こっち。
[皆を別方向に促しながら、
そんなに追いつくのが難しい速さでもなく 俺は一階の昇降口に辿り着く。
シャッターは開いていた。 真っ暗になった校舎に光が差し込んで その中で犬が一匹、丸い尻尾を振って、わん、と鳴くと 光の中に消えていった。]
(364) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[幻が消えた後には、ただただ、出口がある。
真っ暗な中ぽっかりと開いたガレージのシャッター。 冬であるはずなのに、昇降口に射しこむ陽射しは夏のよう。 外に見えているのは――――……]
(365) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[……そこが正しく出口であると、 俺は理解しているのだけれど やっぱり、少しは怖さも残っているので。
俺は振り向いて、皆に笑いかけて両手を伸ばす。]
(366) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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悟。ヨーコねーさん。キョースケ。 帰ろう!
(367) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[冷たい校舎の外に見えていたのは――
――――…………どこまでも蒼い、快晴だった。*]
(368) 2019/06/17(Mon) 20時半頃
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[ こっち。>>364と君が言って、]
(369) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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──現在──
[ 導かれるがままに、僕は歩いた。
先に聞いていたのと別の方向。 裏から帰れると言ったのを覚えていたけど、 ……でもまあ、君が言うなら。
ここに来てほんのすぐの頃に、 確認をしに来た昇降口。
その場所を閉ざしていたはずのシャッターは、 今はもう開いて、光が射しこんでいる>>365。
思わず目を細めた僕の視界を、 掠めて消えてったまあるい尾っぽ>>364。 わんと一吠え。聞き間違いじゃあないはず。]
(370) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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[ 君のことを何もかも、 知っているわけじゃあ勿論ないから、 それが君にとってどれほどのことか、 今は、わからないこともあるけど、
けれど、これでおしまいじゃないんだから、 そのことを悔やむ必要がどこにあるだろう。
重苦しい白色から深い闇へ。 移り変わっていった空が今は、 底抜けに青く、明るくて、
振り返って手を伸ばした君>>366に、 きっと僕は目を細めていたけれど、 眩しいだけじゃなく、確かに笑っていた。]
(371) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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[ 光に、手を伸ばした。]
(372) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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君が笑っていたから、僕は怖くないよ。
(373) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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君に続くようにして蒼に飛び込む。 どこまでも晴れやかな、夏を思わせる空だ。 また。またあとで。また明日。またいつか。 きっと、そんな言葉を紡ごうと、 溶かされてしまいそうな光の中で、僕は笑った。
(374) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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さよなら、冷たい校舎。 ……またね、僕の友達。 *
(375) 2019/06/17(Mon) 21時頃
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R団 タカモトは、メモを貼った。
2019/06/17(Mon) 22時頃
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ん、んん……?
[なにやら葉子に拓海が耳打ちをしている。 そのあと意味深な笑みを拓海に向けられて 俺は困惑したんだ。>>361
とっておきのイタズラを仕掛けた 小学生の餓鬼のような笑顔 ランドセルの中にバッタでも入ってるのかよ。 怖いぞ。説明しろ。
そんなことを考えながら、 1階の昇降口へと進んでゆく]
(376) 2019/06/17(Mon) 22時半頃
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[そして、あの懐かしい鳴き声を聞いた]>>363
(377) 2019/06/17(Mon) 22時半頃
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[開け放たれたシャッター。 そこから差し込むまばゆい光]
……たろ。
[掠れた声が出た。
鮮やかな記憶が蘇る。 むかし公園で追いかけっこをしたあの犬は 確かもっと大きかったはずだけれど。
ああ、俺の方が大きくなってしまったんだ。 はたと気付いた]
(378) 2019/06/17(Mon) 22時半頃
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[人は誰しも変わってゆく。 同じままではいられない。
幸福だった頃の象徴であるその犬は、 まばゆい光の中に消えていった。
幻影が消え去った後、 昇降口の向こうに見えているのは、 抜けるような青空だ>>368]
(379) 2019/06/17(Mon) 22時半頃
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[ああ、確かに。 ここはお前の作った世界だろうよ、拓海]
(380) 2019/06/17(Mon) 22時半頃
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[成績のことも、家のことも、何にも考えずに ただ無邪気に遊ぶことができた餓鬼の時分]
(381) 2019/06/17(Mon) 22時半頃
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