181 アイスソード伝記
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オーレリアに1人が投票した。
サイラスに2人が投票した。
アシモフに3人が投票した。
アシモフは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
サイラスが無残な姿で発見された。
現在の生存者は、オーレリア、カイル、アンタレス、イワンの4名。
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聞け、人々よ
エアを武器として使う時代は終わった!
古代の遺産は戦争ではなく 人類の発展のために利用しようではないか
これは平和の夜明けである
─── モッリス平和条約「エアに関する提言」より
(0) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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■西暦1945年
第三次世界戦争、終結。 エアの軍事的利用の禁止が、国際規約に明記される。
(1) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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14世紀後半のレグルス地方の文献記述以降、 アイスソード「オーレリア」の足跡は浮上と沈黙を繰り返した。
この期間におけるアイスソードの活躍で特に有名なものが、 第一次世界戦争における凍土作戦での運用であろう。
アルビオンの古事に倣い、エアを暴走させることで 敵対国の領土に壊滅的な打撃を齎すことを狙ったこの作戦は、 古事ほどの規模の威力は無かったものの一定の成果を上げた。
(2) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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だが暴走、と一言でまとめたものの 軍部が求める威力をエアから引き出すのは、 実のところ容易ではなかった。
個体差もあった。ゆえに悲劇も起こった。 より戦闘に向いたエアへ鍛え上げるために、 多くの実験が幾つものエアに対し為されたという記録も残っている。
(3) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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“人の言葉を操り、人の姿に化ける”武器。
それは確かに武器であり、
…だが姿形は人であった。
エアの扱いについて、人道団体からの非難が増え始めたのも この時期からである。
(4) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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かような経緯の末、 第三次世界戦争終結後のモッリス平和条約の提言を受けて、 エアの軍事的利用禁止を盛り込んだ国際規約が結ばれた。
それは度重なる戦争の結果、消耗し数を減らしたエアを 保護する目的もあったとみられる。
(5) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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<< エアとは単なる道具なのか >>
<< それとも >>
――――これより数世紀に渡り、
研究者、あるいは“魔法使い”たちの間で エアの在り方が議論されてゆくこととなる。
(6) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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■西暦2000年
学園都市アモルの、とある古い蔵から、 「オーレリア」を名乗る美少女が発見される。
(7) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[オレの名はカイル・ジョクラトル。
学園都市アモルで、赤点の華麗なる綱渡りをしながら 中等部に通う15歳だ。]
(8) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[1999年7月、世界は滅亡する――――
なんて予言もあったけれど、
蓋を開ければ、ほらふきダムスは狼少年で 結局のところ拍子抜けするくらい何もなくて
いつものように年が明けて 正月番組をだらっと見ながらお節をつついて
お年玉の前年比10%カットに不満を言ったら、 「文句を言うなら期末テストの成績をあげろ」とオヤジに言われて
それくらいならバイトしてやると啖呵をきったら 「あぁらそれならイイモノがあるわよ」とオフクロに言われて…]
(9) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[西暦2000年、正月2日。
年末サボって逃げきったはずの大掃除が、 オレのもとにしたり顔でやってきた。]
(10) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[なんでも去年亡くなったばーちゃんの蔵を片付けたいらしい。
ばーちゃんはゼルダって名前で、アモルの金貸しババアって そこいらじゃちょっと有名人だったりする。
金は貸すけど、利子はしっかりキッチリいただく。 これって、まー、商売なら当然じゃねーのって、 オレなんかは思うんだけど。 一部では「情が足りない!」と言われたりするんだ、これが。 まったく身勝手だよなー。]
(11) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[利子といっても、そもそも金のないヤツがお金を借りにくる訳で。 結果としてヨクワカラン価値の骨董品が無駄に集まることになった。
そいつらを、
ぽいっ
と放り込んでいたのが
そう――――、蔵。 オレの家族の間じゃ、魔窟って呼ばれていた場所だ。]
(12) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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…うっ、 げえ、
埃くさっ!! あと変なにおい!!
[蔵の、古びた木製の扉を開けると、澱んでいた空気が、もわっと、入り口にいるオレに向かって這い寄ってくる。]
ええい、こんにゃろ。埃退散!
[オレは、扉をばーーーんっ、と全開してやった。 冬のきりりと冷たい空気が、蔵の中を洗い換えようと流れこんでゆく。陽の光に照らされた埃が、くるくるぴゅうぴゅう、激しく動き回っているのが見える。 はっはっは、見たか古い蔵め――――…、…]
(13) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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のわっ!!?
(14) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[蔵の奥から、勢いよく何か黒い影が飛び出してきて、オレは思わずのけぞってしまう。]
な、なななんだっ!?!?
[ちょっとビクついたのは目を瞑ってほしい。 なにせ此処は『魔窟』だ。なにが、あっても、不思議じゃない。
大声を出しながらオレは、その黒い影の正体を見定めようと目を凝らす。]
(15) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[ネズミだった。]
(16) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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おおおおおおどろかせんな、よ!!!
ばあぁああかっ
[くっそ。と舌打ちして、オレはずんずかと蔵の中に足を踏み入れた。 もう驚いてやんねー。ぜったい!]
(17) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[ホウキ剣とゾウキンシールドを振りかざして、手当たり次第に攻撃してゆく。 よく分からんお偉いサンのミミズがのたくったよーな文字が蓋に書いてある箱をどけ、ぷぅんと古紙の匂いがする巻物を端っこに積み上げて。 現れた床をざざーっと掃いて、ゴミの類を一箇所にまとめ、 更なる奥を攻略しようと腕を伸ばし――――…
と。 ひやりと冷たい固い棒状のものに手のひらが触れた。 どうやら何かを包んでいた布が解けて、中身の一部が剥き出しになっているらしい。]
(18) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[オレはその棒状の『何か』をむんずと掴み、 勢いよく引っ張り出した。**]
(19) 2016/01/25(Mon) 07時半頃
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[ どさん! ]
(20) 2016/01/25(Mon) 08時頃
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[周囲の棚から、ばさばさと古文書のような 古びた色をした本が続けて落ちた。
何か。を包んでいた布がはずれてふわりと埃の中を舞う。
振動でもうもうとたった埃煙は、しばらくの間暴れまわり、蔵の中の視界を悪くした。白い布が、ふわりとその埃の中に重なる影の上におちかかる。]
(21) 2016/01/25(Mon) 08時半頃
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[周囲を支配していた煙の中、ゆれの中心で、つかまれて引き出されたその"何か"は、少年の上におおいかぶさっていた。]
……〜〜
[白い布をかぶった"何か"は、ふるふるとまとわりつく布をいやがるように体をふるわせた。動きに布がずれ落ちて、埃にまみれてやや灰色がかった黒いリボンがあらわれる。]
(22) 2016/01/25(Mon) 08時半頃
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[黒いリボンは、やわらかな白金の束をまとめているようだった。その下には、黒いなだらかな曲線が続く。すなわち黒のワンピースに包まれた背中を持った"何か"は、筒上の布、つまり袖からすんなりとのびた白皙の腕を少年につかまれ、]
………
[少年の肩にサッカーボールよりちいさい顔をのせて、体の前面を、少年におしつけていた。胸の間には むにゅっとした見目よりも骨を感じさせないだけのやわらかい厚みがある。]
(23) 2016/01/25(Mon) 08時半頃
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[ぴょこ と、黒いリボンが少年の眼前で動き、 白金の向こうへと送られる。]
………
[黒と白金のコントラストの代わりに現れたのは、 齢十五、六の少女の顔だった。 少し低めの丸い鼻先がカイルに向けられて、 ややたれがちのおとなしげな目がぱちぱちと瞬いた。]
(24) 2016/01/25(Mon) 08時半頃
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[霧の出る湖面に似た青い色の瞳が、カイルをみつめたまま、 たちあがろうとしたのか、つかまれたのと反対の手が ばたぱたと空中を泳いだ。が、無駄だと悟ると動きを止めた。]
オーレリアに、
ごようじ、ですか?
[青い目の持ち主──抱え込めてしまうほどの小柄な少女は、 目と鼻の先にいる相手へ、尋ねる声を発した**。]
(25) 2016/01/25(Mon) 08時半頃
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っわ、ちょっ!!!?!?!
[雪崩れた古書に巻き込まれ、オレは尻餅をついて倒れ込んだ。 荒波に投げだされた手漕ぎボートが一瞬にして沈んでいくみたいに、埃やら本やらが上からばさばさっと降ってきて、オレはあっという間に埋もれてしまう。]
(26) 2016/01/25(Mon) 14時頃
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