193 ―星崩祭の手紙―
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んっんー。高さはこんくらい?角度はこっちでいーんかなあ。
[母星から送られてきた宇宙カプセルの、備え付けカメラを自分が座る予定の椅子に向け位置を調整する。]
わーらうなよ、いっつもコンソールから本部に送ってる動画レターとは、勝手が違うんだからよぉ。
[プラント内の誰かへ、拗ねた様に唇を尖らせそう言うと、カプセルの中に封入されていた説明書通りに外装を所定通りにタッチする。キュィィ、と小さな起動音とともにRECのランプがじんわりと内側から漏れるのを見ると、慌ててカメラが焦点を合わせる椅子に戻って座る。
咳払い、ひとつ、ふたつ。]
(11) 2016/07/16(Sat) 21時半頃
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[一頻り喋った後、ばいばーいと〆てカメラに手を振ると、慌てて宇宙カプセルに近寄り録画を止める。]
これでいーんかなあ…もうちっと畏まった方がいいんか?わっかんねーよなあ…。
[なんせ初めての体験である。動画レターなら本部や母星の親や友達に向け送ったことはあるが、これは誰とも知らぬ相手に送るのである。勝手が違う。ましてや、自分たちの星とは違う、全く異なる星系に向けて!]
…ま、撮ったもんは撮っちまったし、難しく考えてもしゃーないか。 俺、今日の分の採取のついでに、これ送ってくんな。
[誰ともなくそう声を掛けて、外気スーツにメットを被ると、しっかりと封をした宇宙カプセルを小脇に抱え、幾重の扉を抜けてプラントの外へと出る。]
(15) 2016/07/16(Sat) 22時半頃
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[この西の果ての星の空は、地平線の乳白色から空が深くなるほど夕暮れというには桃色の強いグラデーションを形作っている。光源らしきものの存在は認められるが、空を覆う霧状とも雲状ともいえる物質で拡散され、1日中等しいほの明るさである。
最初は違和感を覚えたそれも、この星に来て6ヶ月、任務外で外へ出る事はなくとも、プラントの小さな窓からでも見慣れた。]
そーれっと。…可愛い女のコのとこに届きますよーにっと。
[宇宙カプセルを垂直に放り投げると、パン、パン、と手を合わせて拝む。カプセル上部に風圧を受けたことをセンサーが感じ取ると、暫しまるで鳥が迷うように宙を揺蕩ったが、ゆっくりゆっくり上昇していき、うす桃色の霧の中へ消えた。]
ほんとに届くのかねー。
[手をかざして宇宙カプセルが視界から消えるのを見送ったあとも、暫くその姿勢で立ち続け。ゆっくり首を振ると、いつもの採取作業に取り掛かる。]
(19) 2016/07/16(Sat) 23時頃
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岩にはりついた珊瑚の様な苔、石に見紛うような緑色の種、硝子のように摘まんだ指先を透かす花弁の花。この辺りはよく見掛けるもので、プラント内での生育を実験する為、毎日試料として採集している。
生き物と言えば、風に吹かれて転がる大小の毛玉のようものがそうと言えるか。だがこちらは、生憎プラント内の環境では、1日もすれば萎んでしまった。
もう少し遠出をすれば、既に馴染みになったこれらの異形の動植物もサンプルとできるかもしれないが、いかんせんひとりでは手に余る。
ふと、明日はこの花を宇宙カプセルに詰めて送ってみようかと思った。]
そろそろ帰りますかねーっと。
[一頻り試料を詰め終わると、時間の経過のわからない空を見上げる。
あの空から、遠く遠く宇宙の波を漂って、俺のところにも手紙が届くのだろうか?]
(20) 2016/07/16(Sat) 23時頃
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