279 宇宙(そら)を往くサルバシオン
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― 自室 ―
[ 意識が覚醒して最初の視線は、手元へ向いた。 見覚えのある形を確かめるように、何度か開閉する。
モニターには、昨日と違う名前があった。 燻る瞳に数秒映してから、窓の外を見る
宙を泳ぐポッド>>#1は、射出された勢いまま離れていく。 重りを吊るしている訳でもない。ましてや重力もない。 小さな船は、永遠に止まることのない旅をするのだろう。 暫く見つめた後、瞼を伏せるように視線を外した。
テーブルへ固定されたカップの中、コーヒーはもうない。 縁に残る跡を眺め、いつもと同じ装備で部屋を出た。]*
(5) 2020/09/01(Tue) 06時半頃
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― 談話室 ―
[ 談話室を訪れたのは一昨日よりは早く、昨日より遅い時間だった。 既にふたつの姿>>3>>4が見える。もしかしたら他にもいたかもしれない。燻んだ色に安堵と不安を同時ににじませながら、頭を擦って部屋へと入る。]
とるど いん 、 わく ら 、ば 。
[ 談話室は静かだ。昨日と似ている。 目を閉じている間、ほとんど声の聞こえないふたりだった>>3:204>>3:220。 音を残すようにそれぞれへ声をかける。 まずは壁の方へ、それから窓の近くへ。 端に辿り着くまで止まれない身で、二本の線を描いた。]
…… お 、 はよ。
[ 意識をこちらへ向かせる為か、あるいは形を確かめるように、宙に浮いた指先が辿り着いた道の先、両者の肩へ触れようとする。 視線が重なったとしても、口からは挨拶以上の言葉は出て来なかった。]
(6) 2020/09/01(Tue) 06時半頃
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[ 特別なことがない限り三本目の線を描き、最後にはテーブルの側で身体を止める。 ワクラバの手から、そしてトルドウィンのポーチから溢れ出たスプスプイが未だその場にいるのなら、談話室にあった簡素な器に寄せ集められているだろう。
それを見下ろしながら、次の足音を待っている。]**
(7) 2020/09/01(Tue) 06時半頃
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― 談話室 ―
[ 触れたトルドウィン>>12の肩は、以前支えてもらった腕と同じく黒い外殻に覆われていたか。 合わせた目から視線を落とし、指の先をじいと見つめた。]
うん 。
[ 方向を変える為に、触れた指へ軽く力を込める。 以前の様子なら問題ないと思うが、もし何らかの影響を与えてしまったなら謝罪の声だけが後ろに残った。
それから、身体はワクラバの元へ。 ほとんど同じ動きを繰り返す。]
(32) 2020/09/01(Tue) 22時半頃
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[ モナリザ>>25が現れて、アーサー>>11がやって来て、ミタシュ>>18の姿が見えて。さん、しぃ、ご。 二日前まで両手の指を駆使していたのに、もう片手に収まりそうな命の数を実感する。 一向に姿の見えないひとりへ予感めいた何かを感じながら、アーサーの語るコータの旅立ちに耳を傾けた。]
みた しゅ。
[ ミタシュが尋ねたのは、器に眠るスプスプイらとは異なる夜を過ごしたスプスプイたちのことだろう。 昨晩、一緒にと願った声>>16に迷うことなく頷いた。 最初はみんな連れて行ってもらおうとしたのだが、主人のいないコーヒーへ視線を落とし、半数のスプスプイには談話室で休んでもらうことにした。
ひとりは、さみしい。 その半数が、この器のベッドに収まる赤灰色だ。]
(33) 2020/09/01(Tue) 22時半頃
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それな ら、 みんな いっしょ が いい、か も。 みん な みたしゅ と、 いっ、しょ 。
[ 一晩経ったコーヒーは、さすがにテーブルへ置いておくままという訳にもいかないから、と。 器に入った子たちとの合流を求め、指先で示す。]
かた ち。 …… から 、だ ? ほうって おかれ るの 、 きっと さみし、 い。
[ 青色洗剤を知らない己には、これは最初からずっとスプスプイの死体なのだ。 いつかの小さな呟き>>14よりずっと温度のある声の主へ、横たわる亡骸を預けようとした。]
(34) 2020/09/01(Tue) 22時半頃
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[ トルドウィン>>13が口を開いたのは、皆が――少なくとも彼にとっての皆が集まってからだった。 淡々と告げられる報告に似た言葉たちに、複数>>20>>23の悲鳴が上がる。]
……。
[ 唇の奥からは、何の音も出て来なかった。眦から流れるものもない。 きっとヘリンならまた隠し切れずに泣いてくれるかもしれないけれど、その彼女はきっともう何処にもいない。
死体を見た者>>2:142がいた。しかし通路も部屋も、己が訪れた場所はすべて綺麗なままだった。 ヘリンの部屋に清掃用ロボットが入ったのなら、彼女の部屋も綺麗に整えられたのだろう。目を伏せる。]
……。
[ しかし、アーサー>>24の提案を否定することはなかった。 ミタシュ>>28>>29が泣きそうな顔で頷いたのも止めなかった。]
ここ ろ、 は、 ……。
[ 何も、言わなかった。]
(37) 2020/09/01(Tue) 23時頃
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[ 次いでモナリザ>>35も同行を申し出る。 彼女の言い分は最もだった。 トルドウィン>>13が語った報告、その最後の言葉はきっと全員理解しているだろう。
パイセンが襲われて、ソラに会えなくなって。残り9人。 スプスプイが赤灰色になって、 コータが果てのない旅に出て。残り7人。 ヘリンが何処にもいないのなら、残り6人。
クラゲはあと2体。夜ごとに1人消えていく今が続くなら、今日は最後になるかもしれない日だ。
それなのに、情報も指針も残されていない。 ただ過ぎ行く時を無為に過ごすくらいなら、一欠片でも何かが残っている可能性に賭ける方がよっぽどいい。
故に、制止の言葉は今度も出て来ない。]
(41) 2020/09/01(Tue) 23時頃
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いって 、らっ しゃ、 い。
ぼく は、 のこる …… よ。 あしで まとい、 になる、 し、
[ 己の足元を見下ろす。地からずっと高い位置にある足先は未だ安定せず、厚く覆われた装備の下、萎びて小さな形があるだけだ。片方に至っては気体から変われてもいない。 きっと今すぐにでも駆けて行きたいくらいのはずだ。 首を横に振る。]
だ、 から、 かえって きて、 ね。 おしえ、 て。
みんな が、 みた、 へりん、 の こと。 これから のため、 の 、 なに か。
ぼく も しりた、 い。 …… まって、 る。 から。
[ コーヒーでも入れて。と言おうとした口は、アーサーの小さな背中を思い出して閉じられた。]
(45) 2020/09/01(Tue) 23時頃
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[ トルドウィン>>38の腕が一瞬浮いて、再び閉ざされる。 旅立つ3つ、あるいは4つの背を見送ってから、トルドウィンへと視線を向けた。]
…… みつ 。 もっ て、 る ?
[ 一言、ヘリンが絶賛した甘いそれの在り処を尋ねた。]
(46) 2020/09/01(Tue) 23時頃
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― 少し前:談話室 ―
ぜんぶ 、 が いい 、よ。
[ ミタシュ>>39の問いには短く答えた。 もう一度近い言葉が繰り返されるから、フェイスカバーの奥、頷いて見せる。宙に浮く髪が海藻みたいに踊った。]
…… ? あの、 ね。
[ 不思議そうな顔をした。それから、緩慢な手招きを。 小柄な彼女と屈めない己では距離は完全に縮まらなくて、結局言葉はすべて空気に溢れてしまった。]
いい、 よ。
[ そうしてスプスプイの形は、ミタシュの胸元へ宿る。]*
(50) 2020/09/01(Tue) 23時半頃
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ありが 、とう。
[ トルドウィン>>48のポーチから次々と琥珀色が現れた。 ぷしゅぷしゅ。ゴロゴロ。頼りない音を立て、前進する。 チューブに手が届く段階で何度目かの腕を借りようと手を伸ばし、それが叶ったなら腕一本分の距離を残して浮き止まった。]
ひと しぼり、 で いい、 の。 こーひー に、 いれよう と おもっ て。
[ 淹れるのが上手だったコータも、目の覚めるような味を提供してくれたヘリンも、皆の為にと準備してくれたミタシュもいない。 五度目のコーヒーは、分厚く覆われた己が手で危なっかしく淹れられた。]
(51) 2020/09/02(Wed) 00時頃
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とる どいん 、 も のむ ……?
[ 念の為という様子で尋ねた。 ワクラバの姿があったなら、彼にも同様に。 望まれた数だけ出来上がったカップは、淵にところどころ茶色い染みができている。]
……。
[ 己の分には借りた琥珀色を一絞り垂らして、深い色に混じって見えなくなるのを暫く眺めていた。]
(52) 2020/09/02(Wed) 00時頃
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…… わくら、 ば ?
[ ひとりの名前を呼んだ。 しかし、手元から上がった視線はトルドウィンの方を向いている。]
すぷすぷ い が、 おしえ、て くれる こと って、
[ 談話室の人数が減る前、トルドウィン>>47が話していた言葉をなぞる。]
そういう こと を、 いいたい、 の。
[ それは、己も抱いた懸念>>3:104だ。 今なお残る、可能性のひとつだ。 曖昧な言葉に形を与えるように、予想の答えを求める。]
(55) 2020/09/02(Wed) 00時頃
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…… なん、で あんな かお、 した の。
[ 昨晩、コータと、コータに寄生した宇宙クラゲと言葉を交わす間、トルドウィンは言葉をほとんど発さなかった>>3:220。表情を変えなかった>>3:182。 と、思う。コータとワクラバ、両者の間を視界は行き来していて、彼のすべてを見ていた訳ではないから。 その中で唯一捉えた眉間の皺>>3:190。ミタシュ>>14には遠く感じたそれは、己>>3:195にとっては案外すんなり嵌る言葉だった。
……そう言ったことを、拙い言葉でゆっくりと伝える。 時間がかかっただろう。暫く彼を待たせることになる。]
とるど いん 、 は、 どう おもっ、 た の。 なに を かんがえ て、 るの。
ぼくに は、 きみが よく みえな、 い から、 みせ て。 もっ、 と。
…… じかん が、 ない んだ。
[ それは、話題に上がったもうひとりの彼>>3にも言えることだけれど、生憎と身体に定着した口はひとつだったから、逸る気持ちを抑えるように話し終えた唇を食んだ。]*
(56) 2020/09/02(Wed) 00時頃
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[ >>57意外だった。意外だったから、]
いが、 い だ。 にがて だと、 おもっ 、て た。
[ そのまま口にした。 おっかなびっくり淹れたコーヒーは、誰のものより薄い。 それでも深い色を残す中へ、己が絞った何倍もの量の蜜が落ちていくのを見ていた。 少量なら一瞬だが、あの量ならば少し時間がかかるだろう。
この場で口にできない己と蜜が溶けるのを待つ彼。 どちらもコーヒーを口にしないまま、時が流れる。]
(67) 2020/09/02(Wed) 01時半頃
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[ その間を埋めるように、問いを並べた。 ゆっくりと言葉を連ねる内に溶け切ったのだろう。細かくカップを傾けるトルドウィン>>63を見つめる瞳は、彼の触角へと向いた。 以前は衝撃に震えへたれていたようだが、蜜一本分の今日はどうだっただろうか。]
うん。 それ は、 ぼくも そう おも、 う。
その かのう せい は、 だれに、 も、 ひてい 、でき、 ない。
…… もちろん こうて い 、 も。
[ 故に疑念は永遠に停滞し続けるだろう、とも。 ワクラバの方を向いたトルドウィンへ同意を示した。 その上で、問う。あの時の表情の意味を。 トルドウィンはまたコーヒーを傾けていた。]
(68) 2020/09/02(Wed) 01時半頃
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んー …… こん な、 か お。
[ >>64少し考えてから、眉間に力を込めた。弱々しい皺は一本溝を刻んだだけだ。 指先で押し込もうとしても、透明な仕切りに阻まれてしまい、結局見本を提示することはできなかった。]
それ は、 …… うう、 ん。 ぼくの、 こと ばじゃ 、だめ だね。
―― わくら、 ば。
[ 次に呼んだ名は、本人へ向けられたものだった。 一滴も減っていないコーヒーをラックの上へ置き、緩やな速度で窓際へと進む。 透明な壁に手をついて、身体をワクラバの方へと向けた。]
(69) 2020/09/02(Wed) 01時半頃
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あの、 ね。 ぼく は、 きみ の ことが、 しりた 、い。 …… んん 、
[ 距離を近づけると、彼の体内からか金属の擦れ合うような音が聞こえる。 返事を待つように、それから考えるように間が空いて、それから大きな手を捉えようと腕が伸びた。 もしそのままなら彼の掌に、届かないなら己の掌に。指先で文字を書く。]
よく、 みてる、 でしょ 。 こっ ちなら、 ど、 う?
[ 目なら、届くだろうかと。一文字一文字丁寧に見えない線を描いた。]
『さ』『い』『な』『ん』『っ』『て』『?』 …… むず か しい、 な。
[ 近くに手頃なタブレットでもないかと見回す途中、一度トルドウィンを見つめる。]
(70) 2020/09/02(Wed) 01時半頃
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もう ひと、つ。
さっき、 なん で、ついて いかな かっ た、の ? みた しゅ、 に。
[ 紙上の一枚絵のようだったふたり。何か交わしたふたり。 浮いた腕の理由はきっとあの少女だろう。 彼を留まらせた理由を尋ねる声は、先程より穏やかだ。 答えを急くつもりはないから、返事を待つように見つめることはない。再びワクラバの方を向く。]
(71) 2020/09/02(Wed) 01時半頃
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…… これ は、 ぼく、 から。
『ど』『ち』『ら』『も』 『の』 『い』『み』 『お』『し』『え』『て』
[ 昨夜から耳に残り続ける呟き>>3:219を文字に認めた。]
しりた い こと、 ほん と う、は 、 もっと ある けど 、 じか、んは だれよ り げん かく なん、だ 。
[ もしもっと時間があったなら、 もしこんなことにならなかったら。 そんな仮定は意味を為さない。そんなものは何処にもない。
一度ゆっくり瞼を下ろした後、反応を見逃さないよう、真正面からまっすぐ見つめた。]**
(72) 2020/09/02(Wed) 01時半頃
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― 談話室 ―
[ トルドウィンは口より触角>>80が、ワクラバは口より目>>94が饒舌だ。 今回、前者は口数が少ないようだった。薄すぎるコーヒーは、ラックの上とトルドウィンの手元>>81にある。 淵に当たるような息の音。その表情は見えない。]
ひてい す、る すべも、 ない 、よ。
[ 後者は今日も雄弁だ。トルドウィンに対してワクラバの名を呼んだ時、視線>>92がこちらへ向くのが分かった。だから身体を開いて、ふたりが同時に視界へ入るようにする。]
…… っ 、!
[ いつもより大きく開かれた目>>94に肌が波打つような感覚を覚えたのは、それからすぐのことだ。跳ねた身体に、球体の中を髪が踊る。 逸る指先を掌へと押しつけた。 声と、文字と。ふたつの言葉を同じ早さで重ねる。]
(118) 2020/09/02(Wed) 21時半頃
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『だって ぼく は ずっと、 わくらば の たりない ことば の さき を もとめてた。
すぷすぷい に たのんだんだ。 でも だめ だった。』
[ ミタシュの胸元で眠る一部のスプスプイを思う。あの掠れた青は少女のくれた水色のキャンディより鮮やかだったのかもしれない。 それを知る術はもうないけれど。 頭を振ることで思考を一旦振り払って、はじまり>>2:201の話をした。一方的に交わした誓い>>2:156の話をした。]
『それなら じぶん で しらなきゃ。 ぼく は しらなきゃ えらべない。 しらないから を りゆう に えらびたくない。
わからない は もういわない って きめたんだ。』
[ どちらが指す対象>>95>>105を知った。自然と進みを遮ったあの時>>2:135のことが思い出される。 あの時唯一確かなことだった。悪くなかったと口にしたことを、今でも確かに覚えている。 だから、理解を得たと頷いて示す。]
(119) 2020/09/02(Wed) 21時半頃
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[ 沈黙の隙間に語られる"さいなん"は、己の抱いた感覚>>3:195>>3:196にやはり似ていた。 故に答え合わせをするように、耳を傾ける。 トルドウィン>>110が気性荒くそれを否定しようとも、敵への嫌悪を露わにしようとも、口を挟むことなく。饒舌な触角が怒りに震えるのを、見ていた。]
…… かた、 ち。
[ 形を得た己の手を見下ろす。透かして見ることはできないが、この厚い生地の下には五本の指があり、五つの爪がある。そのすべてに満ちるガスが、内側には充満している。 指を何度か開閉した。顔を上げる。 ワクラバ>>102が己の名を呼んだからだ。]
(120) 2020/09/02(Wed) 21時半頃
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みた しゅ 、は、 みずい ろ を、 くれた んだ。
[ 唐突に、そんな話をした。 ワクラバだけでなく、トルドウィン>>82へも語りかけるように口を開く。指もまた、再び掌を滑る。]
『のこった すぷすぷい を たくした とき、 みたしゅ いったんだ。
わたしで いいの って。』
[ 先程皆の前で起きた出来事>>39を改めて語る。]
『もう ひとばん すごした あと だよ。 いまさら じゃ ない ?
くらげが こうかつ だと するなら、 それにして は あまりにも じっちょく だ。 あと おっちょこ ちょい。』
(121) 2020/09/02(Wed) 21時半頃
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[ そこで一度手を止める。 決めていたこととはいえ、実際形にしようとすると指先が震えた。]
『こわい けど。 こわい よ。 もう ぜんぶ ぜったい は ない。 しんじる ことも うたがう ことも もう おなじ。 かくしょう なんて どこにもない。
でも たぶん みたしゅ は ちがう。 しんじて いいんじゃ ないか って おもう。
しんじたい と おもう。』
[ トルドウィンの言うミタシュの強さを知らない。 ワクラバ>>103の判断がどう転ぶかも知らない。 しかし、少女の愚直とも言える優しさを知っている。水色のキャンディはただ甘かったのだ。man-juと同じくらいに。 故にトルドウィン>>112の揺れを引き戻さんとでもするかのように、己の考えを示した。]
(122) 2020/09/02(Wed) 21時半頃
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[ 己が名に応えたのはその後だ。 トルドウィン>>111の視線を受けても、燻んだ瞳は変わらぬ色を宿している。]
『こころ は ちせい で あるか。』
[ 指と口が語ったのは、いつの日か受けた問い>>2:7だ。]
『きかれて ぼく は わからない と こたえた。 ちせい は ひつよう だと おもう けど なくても きもちは あるきが する から と。』
(123) 2020/09/02(Wed) 22時頃
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『うちゅうくらげ は こーたの こと しってた。 うちがわ から きおく や ちしき も うばう。 こーた の まま こーた じゃ なかった。
ぼくは それを ちゃんと しりたかった。 もじ じゃなくて、 じっさいに みて はなして りかいしたかった。
ぼく は どうしても ぼく の せんたく を じょうきょう の せい だと わりきれ ない。』
[ ヘリンの覆いとして口を挟まなかった>>3:100が、記憶にずっと残り続けている言葉を掬った。 殺す相手を選ぶなら、自分の意思で。迷いに迷った初めての日のようなことは嫌だと、必要なら、当時と同じように対話の理由>>194を語る。]
(124) 2020/09/02(Wed) 22時頃
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『だから ぼく は こころ を さがしている。 うちゅう くらげ が もほう しえない ちせい とは べつ の こころ を。』
[ それをミタシュに見た気がしたのだと、先程の言葉>>122を補足するように告げる。]
(126) 2020/09/02(Wed) 22時頃
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『それから あーさー も。
あーさー は かしこい。 かしこい かれ が あいまい な のうりょく を せつめい しきれない で いる。
それに あーさー は ほんらい へんか が あまり すき では ないんだ。
だったら その のうりょく は ほんもの だ。 うそ を つく なら もっと ちゃんと する。
あれ は ほんとう の ゆらぎ だ。 あんな やさしい こえ が うそ は いや だ。』
[ 宙に向かって呟かれた声>>3:51に触れた理由の最後は、願望混じりの曖昧なものだった。それでも、信じると。語る指先と口元は震えで朧になる。 消え入りそうな文字と声を止め、両者を捉えていた視界をワクラバだけに向けた。]
(127) 2020/09/02(Wed) 22時頃
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