239 ―星間の手紙―
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[機械の身体は、疲れを知りません。 では 私は休憩時間を何に費やすかというと、 生身である腕のケアが主なものになります。
そして最近は、もう一つやる事が増えました。 今となっては、そちらの方が 熱心になってしまっているかもしれません。
お返事が来ているかも と思うと、そわついて つい呆けてしまう事もしばしば。 こうして ルシフェルを確認する時間が、 今の私にとって、一番の楽しみになっていました。]
(39) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[新着メッセージは二通。
一つ目の差出人を見て、私の手は止まります。 歓びと緊張が、一気にやってきました。 だって、其処にあった名前は つい最近思い浮かべたばかりの彼だったんですもの!]
( アンタレス……! )
[返信用の新規メールを開きながら、 努めて冷静を装って、メッセージを再生します。
懐かしい彼の声。 私の馬鹿みたいなメールにも、 律儀に応えてくれる事が微笑ましく、 それと共に、私の心を甘く擽るのです。]
(40) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[私に口があったのなら、 柔らかく綻んでいた事でしょう。 私に頬があったのなら、 薄桃色に染まっていた事でしょう。
……でも。 でも、呑気に聞けていたのは途中まで。]
(41) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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…………えっ!?
(42) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[高く、耳障りな音が部屋に響きます。 それが 自分のあげた声だと気付くのにも、 少しの時間が必要だったくらいです。
そのくらい、私は動揺していました。 どうして彼は、 気付いているかもなどと思ったのでしょう。 確かに、よく目が合うな とは思っていましたが、 でも ……だからって。
そんな 混乱しきりの思考回路よりも、 余りに正直に動いたのは、生身の指先でした。 それならそれで、素直に身を任せれば良いものを 下手に理性なんて取り戻してしまったから、 無様なメールを送る羽目になるのです。]
(43) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[しまった と思った時には、もう遅く。 言葉にもならない文字列は、 既に 電子の海に放られていました。
何だか泣きたい気分で…… いえ、私に涙を流す機能は無いのですが、 何にせよ、新規メールの作成を始めました。
本当なら、自分の声でお返事したいけれど そんな事、出来ませんから ね。]
(44) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[連々と 連々と 此方の想いだけを綴る文章でした。
送る事を、何度 躊躇ったでしょう。 先に誤送信をしていなければ、 そのままこれを、削除していたかもしれません。
同時に私は、酷く浮かれていたのでしょうね。 結局は 歓喜に震える指先で、 拙く綴ったその想いを、ルシフェルに託します。 画面越しの貴方に、どうか 届きますように。]
(45) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[浮かれ気分から持ち直すのにも、 そう 時間はかかりません。
もう一通。 届いたメールの差出人を確認して、 返信の為に動く指先はやはり軽やかです。 何とも、現金なものですね。]
(46) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[途中まで書いて、ふ と、思い出すのです。
宇宙を駆けていたあの子。 ある時から着飾る様になった、あの子。 ……死が怖いのだと言った、あの子。
当時は心配に思うばかりでした。 けれど、今ならば 彼女に、 もっと 何か言えるのではないでしょうか。
────既に"死"を経験した、私ならば。]
(47) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[見る人が見れば、ただの慰めに見えるでしょう。 心配性なわたしからの、精一杯の。 それは彼女にとっても、そうな筈です。
彼女は、綺羅びやかなあの子は、 わたしの実状を、知らないのですから。
知らないままでいてくれれば良いと思います。 あの子に教わったお化粧をする顔は、 私には もう、無いんですもの。]
(48) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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[全てのメッセージにお返事が出来たなら、 私は習慣めいて、通信機を撫ぜました。
いい子、と。 慈しみの手付きで。]
(49) 2018/04/25(Wed) 23時頃
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