255 【ヤンストP村】private eye+Violine
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― 翌朝 ―
あ、悪い。こっちのゴミも表出してくれ。
[アトリエを清掃してくれる業者が清掃に訪れた。 基本的に――例の部屋以外を任せてある。
木屑など、アトリエの床中を掻き出したゴミや 昨日の花も掃いて捨ててもらう。 紅茶のティーパックなど流しの三角コーナーの生ゴミ、 女性の観覧客も居るからサニタリーボックスも。 見える所のゴミだけでもひと袋分は出た。
絵画の詰まった段ボールは一箇所に固めて、 取引主キャンセルをした絵や彫刻も箱詰めし、 大学に送付するつもりで。 綺麗にアトリエの展示物を空にした。 ―――描きかけの一枚を除いて。]
(0) 2018/12/04(Tue) 08時半頃
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[あとは――、
一応、まだ使える着替え類は前日まで残しておくが 色あせた下着、草臥れたシャツ、 毛先が跳ね返った歯ブラシなど 廃棄用の衣料品や生活用品を ゴミ袋に詰めておいたもの。 古いパレットや使用する予定の無い種類の絵筆なども。
画具関係の使えるものは妹に譲るつもりであるが。]
(1) 2018/12/04(Tue) 08時半頃
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[家にあるものにも手をつけねばならないが 先ずは手近なところから片付け終えた。
ゴミは店の脇にある所定場所に置いておけば 昼になる前には回収が来るのだろう。]
さて、と。出るか。
[着替えを持参し、治療院で風呂を借りに出かけよう。 段ボールの運び出しが来るまでに戻らなければならないし 昨日入れてないから今日は済ませておかねば。 いつもは気にしないのだが施錠はきっちりと行う。 昨日の出来事は流石に男の警戒を強めていた]**
(2) 2018/12/04(Tue) 08時半頃
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[治療院で風呂を借りている間、不穏な話を聞く。
山羊の頭が落ちていた話には心当たりあるが “遺失物”扱いで自警団に届けられたんだとか。 あんなもの引取りたくもなく、バックレるに限る。
それに朝のうちにパン屋へ寄るつもりが 店荒らしに遭って営業していないだとか>>7
薬屋で何か遭ったらしく 自警団が周辺を回っていただとか。>>2:330 もっとも、薬屋で何があったかまでは 中年の看護師からは聞かされなかったけれど 営業時間であるのに 閉店しているのは確からしい。>>36]
(51) 2018/12/04(Tue) 22時頃
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立て続けに偉い騒ぎだな。 ……しかも。
[―――召集となる住人が絡む場所ばかり。 己も含めれば、何か意味があるのだろうかと 考えずには、居られない。
別に洗うのは自分で出来るのだけれど 背中を流してくれるのを断りはせず 世間話に耳を貸す。
ココアは近所周りの挨拶>>2:167と共に ラスクを配り歩いていたようだから 近年でも輪をかけて愛想の良さだ。 そんな善良な彼女の店を荒らすような者が この街に居るなんて信じられないと]
(52) 2018/12/04(Tue) 22時頃
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イルマはもう話聞いてんのか? パン屋は潰さないとは聞いたが。
[“荒らされた”ことしか看護師は知らないようで 被害の程までは分からないけれども。 ココアが口にしていた店の存続の事が気がかり。>>0:486 まだ出勤したばかりで 顔を合わせていないらしい>>34]
そうか……。 まあ窯なんかが無事なら、どうにかなるんだろうが。 [流してもらうのは背中。 他は当然自分で洗い、湯船に入る際は 手を貸して貰い、入浴を済ませ。]
(53) 2018/12/04(Tue) 22時頃
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[それから、借用と手間賃の支払いを済ませて 治療院を出ることにした。 イルマに声を掛けていくべきか悩んだが 荷物の引取りが来てしまうと困るので よろしくとだけ中年の看護師に伝えておく。
そうして往来へと車椅子を進め、 アトリエを目指す途中――
見覚えのある女と、昨日見た男が――歩いていた。 一瞬、女が誰だかわからなかったのは。 その格好が、真っ黒な――喪に服した いつものワンピースでは無かった為だ。]
(56) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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あ………?
[パピヨンと――― 花屋の主人が語っていた写真家の男。
視線が合う。 鍔の広い帽子を被っていない、女と。 目は合うが、気まずそうに伏せられた。
素通りして、やりたかった。
明らかに親密な空気はただの客と店の女ではない。 男と昨日過ごしていたような態度でも無かった。 だから、]
(57) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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[格好だけじゃない。 ついでに言えば化粧だって妙に気合が入っていて。]
なあその男、 なんだ……?
[有り得るはずのないイアンからの連絡。 生きて帰れるかもしれない親友に妬みを覚えた。
パピヨンから喪服を脱がせた若い男。 長い足をすらりと揃えて。 じゃあ、こいつは一体何なんだ。 腹の底から煮えくるような感情は、無視できない。
ああ、そうだ。 連れ添う二人はまるで、 “三番街の蝶”を彷彿とさせる。
でも、その男はイアンじゃないし まして、自分でもない。]
(58) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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[何も言えずに黙っているパピヨンに代わって 若い男は交際しているとはっきり言った。 歳は離れているが真剣に考えて貰えたのだと。]
黙れ、お前に聞いてねえよ。 そこの若作りしたババアに言ってんだよ…… [苛立つくらいに、綺麗なのに。 憂いる表情は懺悔でもしているようで。 何も言わないのが、肯定でしか無かった。]
イアンは、どうするんだよ。 お前も伴侶が死んだことにして所帯持つのか うちの親父と同じじゃねえか。 [自身もまた罪を犯した事は分かっていても。 男と関係を持った事までは口に出来ない。 だって、このまま描き写したいくらい 目が合うまでの二人は、幸せそうだったから。]
(63) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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あいつ、戻れるかもしれないって連絡来たぞ。
[けれど。 ―――― 抑えてはおけない。 親友が帰ってくるのは真実ならば。]
(69) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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イアンから帰って来れるかもしれないってよ。 おい、どう話つけるんだ? あいつの顔見て、なんて言うんだ? これが新しい旦那です、って言い張るのか?
[こんな形で伝えるつもりじゃなかったのに、]
なあ、―――― 一体どう言い訳するんだよ、クソばばあよ 10年労働して帰ってくるあいつに! 若い男と年甲斐なく、乳繰り合って、 股開いた阿婆擦れがよ! [往来の真ん中で話すような内容じゃなかった。 でも、罵りは止まらなかった。 やめてくださいと若い男は宥めようとするが それを制し、パピヨンが前に出て、 上から叩きつけるように男の頬を平手打つ。]
(70) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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『嘘つき。』
(72) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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[車椅子が傾く。 ずり落ちはしなかったが、頬の痛みは鋭く。]
『あんた、死ぬのが決まって おかしくなっちまったんだよ。
そんなこと、あるわけが無いでしょう。
自分の不幸を他人にまで 引っ被らせようとすんのはやめて。』
[ノイローゼだときっぱり言い放つ女は、 男を一度睨み、若い男の腕を引いて。]
『もう会わない。 店にも来ないで。』
[おろおろとした男と共に、通りの先に消えていく。]
(73) 2018/12/04(Tue) 22時半頃
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……………。
[追える筈もなければ、 それ以上何かを口にする事も出来ない。]
……く、そ……
[暫く俯いて動けずに居たが、 やがて、ゆっくりと車椅子を進めて。 アトリエへと戻るしかなかった。
ゴミが漁られた痕跡など視界に入らない。 昼間から飲んでやりたい気分で。 荷物を出したら酒でも買いに行くかと 鍵を差し入れ―――― ]
……、あ、ぇ?
[ 開いている]*
(79) 2018/12/04(Tue) 23時頃
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― アトリエ ―
[パピヨンとの決別の直後で気が動転しているのか。 いつもの様に掛けずに出てきたのではないか。 頬の痛苦を摩りながら考え込む。 一から思い出せ、治療院を訪ねる前の事を。 ――――いや。 鍵は、掛けて出た筈だ、 間違いない。 携帯に短く無機質な音が届き、ぎくりとした。>>43 送信元を見ればタツミで、 緊急性はない内容だったのでほっとしたが。 薬屋で何かあったのかが気になるも 今は目の前の違和を解決するのが優先だった。]
(92) 2018/12/04(Tue) 23時半頃
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……っふ、な、
中に、いるのかッ… 誰、か。
[突っ込んだ鍵を抜こうとしたが、 抜けず。回らず、 けれどドアは引けてしまう。
刃物で鍵穴が変形したせいで 鍵が抜けない状態だと判断が出来ない。]
(93) 2018/12/04(Tue) 23時半頃
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…………、
[自警団を呼ぶべきかと一瞬悩んでいると 隣の定食屋の主人が声をかけて来た。
清掃会社が段ボール箱を運んでいた事。 不用品を回収すると伝言があった――と。]
は…ぁ? そんな事、俺ぁ頼んでないんだが……。 確かに立ち会いで掃除は頼んだし… でも、ゴミ出しはもう終わって………… [けれど、いつも出入りしていた業者と 同じ格好であったから間違いないと返されてしまった。
それよりも顔が腫れているから 氷嚢を持ってくると呑気に告げ、戻っていく。]
(94) 2018/12/04(Tue) 23時半頃
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……何がどうなってんだよ。
[理解が追いつかないまま、 一度、奥歯を噛んで、館内へ。]
確かに、段ボールが減ってる…
[数を確かめてはみたのだが オークション品の出荷分は数も合うが 大学に送るつもりだった 取引取消した絵や彫刻の箱が数足らず。]
(96) 2018/12/04(Tue) 23時半頃
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まさか、
[キャンセルにした腹いせに? 確かに同じ地区ならIDと同一の工房名で ここに思い当たってもおかしくない。
でも。 どうやって鍵を開けた。 鍵穴からスペアキーを取れる程 長く留守にしたつもりはない。 どうやって清掃業者の制服を用意した。
個人の執着にしてはあまりに――――]
(99) 2018/12/04(Tue) 23時半頃
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[段ボールから描き途中のパピヨンの絵に視線が逸れる。 そこにあったのは、己の絵だけではない。]
……………こい、つ
[一枚の写真だった。 まるで比較でもさせたいみたいに キャンパスに寄り添っている。 先ほどはストールで見えなかった首元が明るみだ。 男がつけた覚えのないキスマーク。 先ほどの一件が頭に過ぎり、無意識に歯ぎしりするも そうだな、正直――写真の方が綺麗だ。 絵の中の女は虚しさを肩に乗せているから
パピヨンの身は、案じなくていいだろう。 だって、隣に足がちゃんと生えている騎士がいる。]
(101) 2018/12/04(Tue) 23時半頃
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[けれど、オークションのキャンセル主が どうしてパピヨンの写真を所持しているのか 理解の範疇を超えていた。
若い男の生業が写真家と聞いた事も頭から飛んでいる]
………あ。
[―――、あの手紙に繋がる。 父親と同じ事をしたと告発する手紙。 それはつまり――男とパピヨンの一夜の時間を意味する。
見知らぬ訪問者は、男とパピヨンの関係を知っている。
何らかの方法で、知っているのだ。]
(105) 2018/12/04(Tue) 23時半頃
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[閉じていた筈のノートパソコンが開いていた。 それに近寄ろうと車椅子を前進させた時。
奥の部屋が開いている事に、気づいた。]
! ッぅ、フ……
[呼吸が止まる。 何故、どうして。 あの部屋は必要な時以外は施錠している。 外鍵はまだ強引にこじ開けたにしても――
いいや、そんなのはどうだっていい。
―――手段を想像する前に車椅子を進めていた。]
(106) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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[死の仮面が壁中に飾られた一室。 他のデスマスクのどれかが消えていたって 量が多くて流石に気が付けない。
男が葬儀屋に依頼され作り、保管していたのは 過去二十年に遡るもので。
だが、“それ”だけは 消えていれば直ぐに解るのだ。
一箇所に五寸釘で打ち据えてあった 二枚のデスマスクだけは。]
(108) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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ふざけんな……
なんで、そんなもんを欲しがる……?
[不用品――確かに不要だ。 処分しようと思っていたのだから。
でも、
あの不気味な、釘に打ち付けられた死に顔を どんな興味で持ち帰るというのだろう。
どっと汗が噴きでて、 心音が警鐘のように鳴り響く。 わからない。 理由が、ひとつも、理解できない。]
(110) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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[その時、背後で電子音が響く。]
ひ、っぅ
[裏返った声が上がるのも、無理はない。 あまりに嫌なタイミングだった。]
(112) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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[この音は、オークションの通知音だ。 嘲笑うようなタイミングで パソコンから通知音が二つ響く]
ざ、けんな……… ふざけんな……お前、何処で、見てんだよ……
[“新着通知”
取引はキャンセルしたというのにも関わらず “到着連絡”として画像付きで 例のIDから添付されたのは――。]
(113) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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[我が家の写真が撮影された画像。 ―――ぞっと背筋が凍る。
もう一通。 ――目の前が暗むよう。
人とも獣ともつかない腸腑にまみれて その中心にメッセージカードが見て取れる。 家族を貰ったと、辛うじて読めた。]
(116) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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[―――家族なんて、いないのに。
でも、父親と義母と、
あとひとり、持ち去るとするなら。 この気を違えた何者かが持ち帰るとするなら。]
(117) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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[自警団に届けるだの、近所に報せるだの 商社の引取りを待たねばならないだとか――― そんな事は全て頭から吹き飛んでいた。
車椅子を進め、工房を出た
隣店の亭主が氷嚢を持って出てきたが 要らないと愛想も何も忘れて家路を目指す。] なん、で…、
[なんでだ。 どうして、死ぬだけの男だけでなく、 家族“みたいなもの”を壊そうとする]**
(122) 2018/12/05(Wed) 00時頃
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