278 冷たい校舎村8
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[だめ、という早未の声を。 ――俺は聞いた気がしたんだ]>>2:816
(57) 2020/06/18(Thu) 00時半頃
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―― 8:45 ――
[音楽室の窓から注ぐ朝の日差しの中、 俺はむくりと蒲団の中から体を起こした。
昨日は、文化祭の劇の映像をスマホで見ながら 寝落ちてしまったらしい。 寝ぼけまなこでポーチを取り出して 「ああ、化粧しなきゃ」と思ってから。 俺もう女装辞めたんだっけ、と思い至った。
トイレで顔を洗おう。 ふらり、と音楽室を後にする]
(58) 2020/06/18(Thu) 00時半頃
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[廊下を歩いていると、 どすん、という何かの落下音が耳に届いた。>>2:817
俺は息を飲み、弾かれたように駆け出す。 それと同時に校舎にチャイムが響き渡った。>>#0 虫の知らせのように、動悸が止まらなかった。
準備室の扉を開けると、 びゅおうと窓から雪が吹き込んでいる。 誰かが開けたのだろうか。 俺は恐る恐る、窓の下を覗き込んだ]
(59) 2020/06/18(Thu) 00時半頃
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[あーあ、覗き込まなきゃ良かったのにね]
(60) 2020/06/18(Thu) 00時半頃
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はや、み……?
[眼下、遥か下に感じられる地面に マネキン人形が叩きつけられていた。 その横には、ポーチが落ちている]
……あ、ああ…………
[俺は、掠れた声を出すことしかできずに、 その場にへなへなと座り込んだ]*
(61) 2020/06/18(Thu) 00時半頃
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―― 準備室 ――
……助け、なきゃ。
[ただのマネキン人形を? あれが本当に早未かも分からないのに? 助けるも何も、人間だったらこの高さ、 フツーに死んでいるんじゃない?
頭に浮かんだ疑問符を、 打ち消すように窓枠に手を掛ける。 そのまま下をさらに覗き込んで――
あまり高さに、眩暈がした。遠近感が、おかしい]
(74) 2020/06/18(Thu) 01時頃
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[それは、深淵に吸い込まれる感覚]
(75) 2020/06/18(Thu) 01時頃
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早未。―――俺。
[眼下で雪に埋もれつつあるマネキン人形を、 引き上げて校舎の中に 入れてやることができないどころか、 近付くこともできずに。 俺は窓枠に手を掛けたまま、立ちすくんでいる。
不甲斐なさに、唇を噛んだ。
早未によく似た人形をそのままにして去ることが どうしても躊躇われて。 俺は化粧ポーチから、1本のルージュを取り出す]
(76) 2020/06/18(Thu) 01時頃
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[いつか、早未と一緒にデパートで 買い物をしたときに手に入れた限定物の口紅。 俺たちが買いに行ったとき既に残り1本だったそれは、 早未の手に渡らず、俺のポーチの中にある。
そういや、譲り合いの押し問答もしたっけ]
……これ、やるよ。俺もう使わないし。
[はなむけの品を、窓の外へそうっと放った]
(77) 2020/06/18(Thu) 01時頃
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[ルージュはゆるやかに弧を描き、 早未の顔の傍へとぽとりと落ちる]
俺よりも、たぶん早未にその色は似合うから。
[餞別の品は、喜んでもらえたのだろうか。 マネキン人形は、何も語らない]**
(78) 2020/06/18(Thu) 01時頃
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CC レイは、メモを貼った。
2020/06/18(Thu) 01時頃
CC レイは、メモを貼った。
2020/06/18(Thu) 21時頃
CC レイは、メモを貼った。
2020/06/18(Thu) 21時頃
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―― 回想 / ファーストフード店 ――
颯真、……優しすぎ。
[くすっ、と俺は頬を緩ませた。 控えめに笑うさまは、 きっと周りからは女子高生にしか見えないはずだ。
――カップルに見えやしないかと、 俺は少しだけ周囲の目を気にしていた。
本人がいない場でも葉野のフォローをする彼を、 俺は“優しくてまっすぐな奴”と認識している]
(343) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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ま。 葉野にも色々あったのかもな。
[その場ではそう言ったものの 颯真から後日、葉野とのあらましを聞かされれば>>115 「はーーー!?嘘ばっかりじゃん葉野!」と 内心憤慨したのだが、それはまた別のお話]
(344) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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そう、おまえ。
[まさか自分に話が飛んでくると思っていなかったのか。 キョトンと鳩が 豆鉄砲を食ったような顔をしている颯真を、 俺は微笑みながら見つめている]
(345) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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なんで。彼女作ればいいじゃん。 俺と違って、颯真は 見た目もフツーのオトコノコですし?
[颯真の口調を真似て、>>116 俺はホットアップルパイに齧りついた]
(346) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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別に、全部をひけらかすのが 恋人じゃないと思うけどな。
……颯真に、何の負い目があるかは知らんけど。
おまえも健全な男子高校生らしく 彼女作りたいって欲求あるなら、 我慢せずに恋愛するヨロシ。
青春は1度きりアルよ。
[なぜか中国人ぽい口調になった。 真面目に恋愛アドバイスをするのが恥ずかしくて 茶化して照れ隠しをしたかったのかもしれない]
(347) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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[誰にだって隠し事はある。 ――そう、俺にも。あの日の出来事は。誰にも]
(348) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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颯真、実際モテるでしょ。
どんな我儘言って振り回しても、 許してくれちゃうやさしー雰囲気あるし。
告られたら別に好きじゃなくても 試しに付き合ったら楽しいかもよ。 付き合ってから好きになるパターンも良くあるし。
[くすり、と俺は小悪魔に笑う]
(349) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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どんな隠し事か知らねえけど、 1度しかない人生だ。
後悔せずにおまえの人生を生きた方が楽しいぜ。
[女避けに女装するくらい 後先考えずにフリーダムに生きていた俺は、 気楽にそう言ってのけた]
(350) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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[俺は、何も知らなかったんだ]*
(351) 2020/06/18(Thu) 21時半頃
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[早未だったものが雪に埋もれてゆくさまを、 俺はずっとずっと見つめていたんだ]
(388) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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―― 現在 / 準備室 ――
[危ない、という颯真の声>>109に 俺はすっと現実に戻された。 気付けば窓枠に手を掛けたまま、 吸い込まれるように眼下の光景を見つめていた]
……早未が。
[そう呟くのがやっとだった。 窓の下を覗き込んだ颯真の顔が みるみるうちに青くなってゆくさまを、 俺はじっと見つめていた>>110]
(389) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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早未、死んだのか。 それとも、元の世界に帰れたのか。 どういうことなんだよ、これ……。
[颯真が来たことで、箍が外れたのだろうか。
不安な気持ちが、一気に口を突いて出た。 俺は、七星のマネキン人形の実物を見ていない。 初めて見る光景に、動揺を隠しきれずに――]
(390) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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[気付けば、背後に誠香が立っていた>>271]
(391) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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[のんきな口調で「誰かと思ったじゃん」と 気楽に言ってのける誠香に、俺は安堵を覚えた。
こんな状況だというのに 普通に本当の自分を受け入れてくれた誠香を 俺は嬉しく思ってしまう。
彼女が口を開けば、 日常が戻ってきたような気がする。 先ほど見た早未に似たマネキン人形は、 夢だったのではないかと願ってしまう]
(392) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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[だって、彼女の口調が あまりにもいつも通りだったから]
(393) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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[あまりにもあっさりと、自然に、 男の俺を受け入れてくれたから]
(394) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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[そうして俺は 誠香の「千夏ちゃん……!」>>272という叫びに 暗く冷たい校舎へと引き戻される。
慌てて準備室を飛び出した誠香を、>>273 咄嗟に追いかけることができない]
(395) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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……誠香! ひとりはあぶ……な……
[誠香の背中に掛けた言葉は そのまま小さくなって、しぼんでしまった。
不甲斐なくて堪らなかった。そのまま、立ち尽くす]
(396) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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そうだな。閉めよう。
[男ふたり、準備室に残されて。 俺は颯真の言葉にゆっくりと頷く]
だと、いいけどな。
[俺を励ますような颯真の楽観的な物言いに>>320 曖昧な笑みを返した]
(397) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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[だって本当のところは、 この校舎に残された者には分かるはずがないのだ。 本物の早未が無事なのかどうなのか、 すべては憶測でしかなく]
(398) 2020/06/18(Thu) 22時半頃
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