193 ―星崩祭の手紙―
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『エフ、貴方の字って綺麗なのね』 『私、ちょっとびっくりしたわ』
[ 本当に驚いた!
なんて、わざわざ伝えずとも分かる表情で、 男の顔を眼鏡越しにのぞき込んだのは、 未だ互いに若かった頃の 話だ。
彼女自身はといえば。 所謂 止めとはねとやらがない、 まあるい、まあるい字。 彼女は男と違って 自分で"伝える"ばかりだったから、 文字を書く機会なんて、そうそう無かった。 それ故のもの、なのだろう。 ]
(16) 2016/07/16(Sat) 23時頃
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[ 引き出しの、中。 ]
[ 電子機器や 念 ばかりのこの星では、 あまり売られなくなった、 昔ながらの 手紙 一式。
まっさらな、白い紙に。 同じく取り出した、黒い ペンで。 神経質そうな 細い字を連ねていく。 ]
(17) 2016/07/16(Sat) 23時頃
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[ 書き出すのは。
彼女が知りたがったのだろう。 そとのせかいへの 興味と。
それから、 ]
(18) 2016/07/16(Sat) 23時頃
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『文字だと饒舌なのね』 『私と全然お話ししてくれないのに!』
[ 手紙と、それからもうひとつ、物を詰め。 カプセルを閉じる最中。
何時かの彼女の言葉が過ぎった気がして、 口の端で僅かに、ぎこちない笑みを作った。
懐かしさ、と。 自嘲と。
きっとそんなところだろう。 ]
(21) 2016/07/16(Sat) 23時頃
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[ 窓を開き、 過ぎるばかりで、写真も、何も。 形として残ったものの無い 殺風景な部屋から、 カプセルを暗い宙へ放る。
どうか 届くと良いと。 そう思うのも、きっと思い出とやらの彼女の影響。
カプセルを見届けてから、 ふ と 視線を下げれば。
声こそ出さずとも、 男よりずっと器用に、心から笑うこどもたちが、 街を装飾していく光景が、見えた。 ]
(22) 2016/07/16(Sat) 23時頃
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