193 ―星崩祭の手紙―
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ミツボシは重層培養 イースターに投票した。
エフは重層培養 イースターに投票した。
ナユタは重層培養 イースターに投票した。
ポーラは重層培養 イースターに投票した。
クリスマスは重層培養 イースターに投票した。
イースターは対面販売 クリスマスに投票した。
ライジは重層培養 イースターに投票した。
アマルテアは重層培養 イースターに投票した。
ピートは重層培養 イースターに投票した。
キカは重層培養 イースターに投票した。
イースターは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
犠牲者はいないようだ。殺戮の手は及ばなかったのだろうか?
現在の生存者は、ミツボシ、エフ、ナユタ、ポーラ、クリスマス、ライジ、アマルテア、ピート、キカの9名。
宇宙プランクトンの波が近付くと、空は一様にまるで海の様に泡立ち始めます。
それと同時に強い電磁波が発生する為、宇宙カプセルは送受信が行えなくなります。
その代わりではありませんが、その強い電磁波は、遠くの遠くの星に住むひとたちの声を拾い上げ、宇宙ラジオを通して聞かせてくれます。
その声の中にはもしかすると、あなたが送った手紙を受け取ったひともいるかもしれません。
この村の墓下は、そんな世界です。
(#0) 2016/07/18(Mon) 02時頃
本日の処刑は、クリスマスにセットをお願いします。
(#1) 2016/07/18(Mon) 02時頃
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─回想─
[ワタシ達とヒトで、カプセルを見送り終われば、 足の向きは繭の元へ。
今日はどうなったか見送れた満足感と疲労。 繭の元まであと数十歩。 歩きながら、腹の底から くあり と湧き上がるものに身を任せれば、 涙がほんのすこし、でた。 外気に触れるとそれは硬化し、重力に言われるがまま床へと落ちる。 音を立てて転がったそれは、紅い紅い色をしている。]
(+0) 2016/07/18(Mon) 02時半頃
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[その音で、ヒトは振り返る。 床に転がったそれをみて、瞳はまあんまるに。]
『R、早く繭の中に帰りなさい。』
[聞いたこともない声がした。 その言葉を聞いて、 その顔を見て、 ワタシは、ワタシは。]
(+1) 2016/07/18(Mon) 02時半頃
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ごめんなさい。 ごめんなさい。
[悪戯をした時に言うべき言葉を口出すしかなかった。 これが正しい言葉であるかも知らずに、ただひたすらに。]
(+2) 2016/07/18(Mon) 02時半頃
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『もう大丈夫だから、早く寝なさい。』
[指差された先は、扉。 ああ、帰らなければ。 こんなヒトを見たのは初めてで、意思とは裏腹に足は動かない。 見かねたワタシ達が両手を繋いでくれた。 手を引かれて、電子音が響く扉を通り抜ける。 その時に聞こえた言葉は。>>2:90]
(+3) 2016/07/18(Mon) 02時半頃
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[帰る道すがら、露天で購入したカプセル。 「ああああ」よりはほんの少しだけ上等だと思いたい簡素な手紙と、とある植物を内包した小さな世界]
[仕事柄目にする機会の多い、可愛らしい形をした――と俺は思っている――植物が、相手の目にどう映るかは分からないけれど]
[其れ等を纏めて宙に放ち、空に、宙に消えて行く様を見送る]
(0) 2016/07/18(Mon) 03時頃
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[いつしか眠りに就いていた俺には、 開け放ったままの窓から、一つのカプセルが音も無く寄り添うように入り込んできた事に気付けはしなかった]
[――未だ、もう少しだけ先の時間まで]
(1) 2016/07/18(Mon) 03時頃
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[その日、彼女はいつもより早くスリープから目覚めました。
昨日は踊りを休んだので、今日はきちんとお仕事をして、マスターにもごめんなさいをしなければいけませんね。 そんな私の思いも他所に彼女は店から飛び出していきました。
カプセルを受信する機械の側には疎らに人が集まっています。 昨日の工員がまたおりましたので、彼女は彼の袖を引きました。]
『来たね。今日はまだ配り終えてはいないよ。 そうだなあ、これはどうだろう、面白い形だろう? それから、ほら、これは君宛てのようだ。』
[手渡されたのは見慣れない形のカプセル。 潜水艦でしょうか。 古い文献で私は見たことがあります。 それから、彼女宛てと言われたカプセルはメモリー機能で戻ってきたもののようです。
2つを両手に抱え、彼女は顔を輝かせました。 実際には表情はあまり変わって見えないのですが、工員の彼にもそう見えたに違いありません。 釣られたように彼も微笑むのが見えましたから。]
(2) 2016/07/18(Mon) 17時頃
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[ (お手紙! お手紙! お返事! うれしい!)
軽やかなステップを踏んで自室へ帰っていく彼女の心はそんな気持ちでいっぱいです。
ぱたぱたと少しお行儀悪く部屋へ駆け込んで、机の上にカプセルを2つ並べます。
まずは返事らしいカプセルを開けると真剣にそれを読み始めました。]
(3) 2016/07/18(Mon) 17時頃
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[封筒には少しぎこちない形の絵が添えられています。 それは彼女のお気に入りの記号でしたから、間違いなくこれは彼女宛ての返信だとわかり、彼女はそれを嬉しそうに指でなぞりました。
中の手紙は白い紙に黒いインクの、丁寧で綺麗な文字が乗せられていました。
この星とは異なる星の様子を綴る言葉に彼女は興味を示したようです。 上を見て、床を見てから床下の収納を開きました。 その中に顔を入れてみてから首をかしげると、また続きを読み始めます。
どうやら手紙を返してくれた相手には彼女くらいの年頃の娘がいるようです。]
(4) 2016/07/18(Mon) 17時半頃
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[私は彼に、どこか親近感を覚えます。
彼女の唇が、音もなく二度開きました。
(パ パ)
手紙の中の彼に、父親の姿を重ねているのでしょう。
私が彼に親近感を覚えるのは、彼の言葉の中にはどこか、後悔と悲しみ、憂いを感じたから。 彼を羨ましいと感じてしまうのは、彼には娘を抱きしめることが、頭を撫でることができるだろうから。
そんな私の思いは知らず、彼女は手紙の最後に書かれた言葉にガタリと立ち上がりました。
そして、くるりと文字どおり小躍りすると、手紙を掲げて送り主の名前を唇で形作ります。]
(5) 2016/07/18(Mon) 17時半頃
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[カプセルの中には手紙の他に新しいフィルムが一枚。 彼女の時を止めた年頃と同じくらいの、少女。 少し驚いたようにカメラを覗き込むその顔を彼女はしばらくじっと見つめていました。 しっかりと顔を覚えようとしているのでしょう。
読み終えた手紙を大事にしまうと、小さな紙を取り出してから、さらさらと何かを書いて一度部屋を出ます。
そうして。 店内の壁ににかけられたBARのメニューに貼り付けました。
「とびっきりのジュース!」
それを見たマスターはパチパチと瞬きをして、また部屋へ帰る彼女を小さく微笑みながら見送りました。]
(6) 2016/07/18(Mon) 17時半頃
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[部屋へ戻ると、変わった形の大きめのカプセルを持ち上げていろいろな角度から彼女は眺めます。 なるほどよく出来ていて、送り主の星の技術は高そうだとは私の感想。 彼女は物珍しさからか、あちこちペタペタと触ってからカプセルを開きました。
カプセルの中には手紙と、返信用のカプセルもまた面白い形をしていて。 彼女はそれをまたしばらくいろいろな角度から眺めます。
それから、珍しい贈り物がひとつ。 これは、生き物でしょうか。 植物でしょうか。 ゆらゆら、と小さなガラス瓶を揺らしてその丸い何かが浮き沈みする様を彼女は楽しみます。
ひとしきりそれで遊んでから、手紙を開きました。]
(7) 2016/07/18(Mon) 18時頃
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[かつては、自然に溢れていたこの星も戦争の後には荒れ果ててしまいました。 綺麗だった頃の星も記憶にある彼女は、潜水艦カプセルの手紙の主が住む星に思いを馳せます。
手紙を読み終えると、早速お返事をしたためて。 かわいらしい魚の形をした返信用カプセルに入れました。 引き出しから一枚フィルムを取り出すとそれも一緒に入れます。
届いたお手紙がとても嬉しかったようで、上機嫌のまま、また新しい手紙を書こうとペンを手に取りました。]
(8) 2016/07/18(Mon) 18時半頃
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[新しく流す手紙を書き終えると彼女はカプセルにそれを入れます。 新しい手紙にはBARの棚から2つほど小さな小瓶を拝借するとそれを一緒に入れて。
カプセル送信機械の近くにいた工員にそれらを預けると、BARへと帰りました。
灰色の街は星崩祭に向けていつもよりは明るい色が散見されます。
彼女は店に戻るとBARの舞台でいつものように踊ります。 新しい踊りのお披露目は、もう間近。]
(9) 2016/07/18(Mon) 19時半頃
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ねぇー、わたしって、 なんのために歌ってるんだろう。 [星空の下、ただっぴろいバルコニーに瞬く影がふたつ。 ひとつはわたしのもので、ひとつはあなたのもの。
彼の背中にわたしは凭れ掛かる。 ぼんやりと空を眺めながら、手を伸ばした]
お星さま、掴めない。
[当たり前だろ、とでも言いたげに笑い声が聞こえて、 背中が僅かに揺れる。 笑いすぎだわ。わたしは僅かに頬を膨らませた]
(10) 2016/07/18(Mon) 21時頃
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あ、流れ星、 じゃなっ、い!
[流れてきたそれをわたしの頭に当たる前に素早く捕まえる。 それはわたしの星でも高価な、じゃなくて、 わたしが一昨日送ったものによく似ていた]
……お返事、かしら、 お返事!ねえ、ねえ、 読んでほしいな?
[せがむこと65(0..100)x1秒。 折れてくれたあなたにわたしは手紙を渡した。 彼のコエで紡がれる彼女の言葉。
きっと可愛らしい女の子。 好奇心いっぱいなおしゃべりで可愛い子]
(11) 2016/07/18(Mon) 21時頃
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えへへ、綺麗だって! 嬉しい、詩の感想言ってもらえるなんて、 凄く久しぶりな気がする。
またいつかね、こちらこそありがとう。
[彼女には届かないコエを紡いで、 遠い星に想いを馳せる。
その時、不意にあなたが立ち上がった。 背中に持たれていたわたしは当然、 バランスを崩して仰向けに寝転がる体勢になった]
(12) 2016/07/18(Mon) 21時頃
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いっ、 立ち上がるのなら一言いってから、
……お手紙?
[文句を並べようとしたところ、 戻ってきた彼が抱えてきたふたつの見覚えのない宇宙カプセルを見上げる。 否、ひとつは、 昨日彼が拾ったものと形状が同じだった]
隅に落ちてた? ありがとう、気付いてくれて。
[上半身を起こすと、そのうちのひとつ。 見覚えのない透明な水草で編まれた籠を受け取った。 水草を解くと、途端に溢れ出す水。 それと同時に小さな星を模したなにかが転がった。 手に取って空にかざしてみるも、それは光を浴びて瞬くことは無かった。 中には真黒い紙に、白いインクで綴られた文字。 先程と同じように読んで、とせがめば耳を傾ける]
(13) 2016/07/18(Mon) 21時頃
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カプセルと書くもの、取ってきてくれたら嬉しいな。
[わたしも彼も、それが空気で劣化するものだとは気付くことは出来なかった。
室内に入っていった彼が置いていった、 見覚えのあるカプセルを手に取った。 透明なカプセルに金の装飾が施されたもの。 見れば見る程昨日受け取ったものによく似ている。 蓋を開けると、同じ半透明の便箋。
ひとつ違うのは、差出人の名が無いこと]
(14) 2016/07/18(Mon) 21時頃
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一度目は偶然、二度目は奇跡。
[同じ星のものだとは分かるけれど、 同じヒトかどうか、確信がもてない。 字体は似ている気はするれけど、 今日のは幾分か乱雑だ]
わかんない、なあ。
[ぽす、と手紙を抱えたまま仰向けに寝転がると、 バルコニーの扉が開く音が耳に届いた。
礼を言って宇宙カプセルを受け取ると、 その体勢のまま身体を半回転させ筆を執った]
(15) 2016/07/18(Mon) 21時頃
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「起きて!」
[ 今日は。 雑なノックの音では無くて。 頭の中で響く少女の声で、目が覚めた。 昨日訪れた時と同じく、 ふたつのカプセルを抱えて、 少女は寝転がっている男を見下ろしている。 ]
(16) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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「カプセル来てるよ。こっちは返事かな」 「それから、はい。もう一通」
[ 銀の蓋に、金の装飾の施されているカプセルと、 それからもうひとつは、見覚えのあるかたちのカプセル。 腕を掴まれたまま起き上がってそれらを受け取り、 まず見るのは、見覚えのある方。 はて、と、声を出さずに首だけ傾げれば。 カプセルの中、やはり見覚えのある手紙を見る。 ]
(17) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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「どうしたの?」
[ 不思議そうに見上げる少女と、 視線を合わせる。 ] "偶然ってあるんだな、って思ってた"
[ そう、ひとつのカプセルは。 昨日返事を送ったあの子から再び来ていた。 これはきっと 素敵な偶然だろう。 手紙と、同封されていた小瓶。 その中に入っている星形のキャンディーを、 煙草の代わりに口で転がすことにする。
背から覗き込む少女に瓶を手渡して。 ]
(18) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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"なあ、もしかしたら" "お前にトモダチが出来るかもしれない" [ 食べよう、と瓶の中を示せば、 少女の表情がたちまち晴れやかになって、 星を、口に閉じ込めたから。 感想を聞かずとも、分かるだろうと。 伝えるだけ伝え、少女から離れて机へ向かい、 今日もまた、ペンを取った。 ]
(19) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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[頬杖をついて詩を口遊んだり、 入っていた小さな星(お菓子らしい)をもう一度 空にかざしたりしながら、 やっと書き終わった手紙を宇宙カプセルに仕舞った]
お星さまに、届くかな。
[昨日と同じように、 今日も同じようにみっつのカプセルを見送った]
Will dich im Traum nicht stören, War' schad' um deine Ruh', Sollst meinem Tritt nicht hören, Sacht, sacht die Türe zu.
[おやすみなさい、お星さま。 わたしたちの星も、他の星から見たら きらきら瞬いてるのかな]
(20) 2016/07/18(Mon) 23時頃
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「買ってきておいて良かった」
[ 男を起こす時、 少女が何処かに出かけたような服装だったのは、 どうやらこういう時のためのものを買っていたらしい。 こういうところは、きっと彼女に似ている。 さて、触れる少女の手と声を感じつつ。 返信用のカプセルを閉じて、 今度開くのは、銀の蓋。
ガラスのような半透明の紙に、 群青の文字が走っている。 人柄を感じさせるその文字に、 何時かの彼女と似たものを感じて。
ふ と 笑みを零した。 ]
(21) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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"なあ" "ここの空って、星は見えたか"
「滅多に見られないって母さんは言ってた」 「だから、星崩祭で、星の波を見たいって」
[ 『自分が住んでいるところなのに!』 と、彼女がいたなら、言うのだろうか。 星は異なれど、男と同じく、家族のいる相手。 彼にあって、男に欠けているものは、 自分に問わずとも分かっていた。 ]
(22) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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〜♪
[鼻歌を小さく歌いながら、ワタシは今日送るプレゼントを作っていた。 もうすぐ今日の分のお手紙達が届く時間。 チラチラと時計を見ながらソワソワと落ち着かない様子でワタシは道具を操ってゆく。]
「クリスマスー!文流しはちゃんとやってるの? 今日で送れなくなってしまうから、早めに送りなさいね」
[今日はどんな手紙にしようかな、明日は…なんて丁度考えていた所だったから、お母さんから告げられる事実に思わず持っていた道具を床に落としてしまった。]
えっ!お母さん聞いてないよ!どうして?
「あら、言ってなかったかしら。 他の所より早く星の波が近づくから送れなくなるのよ。 送れなくなって寂しくはなるけどその分長く見られるんだから、楽しみなさい。」
ええっ…うーん……わかったー……
[まさに不服です。と言わんばかりの声色で応える。けれども送れなくなるのは仕方がないので、早速頭を切り替えて床に落ちた道具を拾って続きを始めた]
(23) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[ ―― 結局。 過去にいるだけの彼女に、幸せだったかどうか、 男は聞けずじまいだった。
聞けずじまいだったし、 終ぞ、言えないまま、だった。 ]
(24) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[黙々と作業を続けること数時間。 ワタシはお母さんが運んできた昼食のピザとスープにも気付かずにプレゼントを作り続けた。]
…コツン……コツ、コツン…
えっ…?あぁ、わぁ!! 来たのね!今日もお手紙が来たわ!
[窓にぶつかっていたのは3つのカプセル達。 1つは小さいカプセルで、透明な色をした銀の蓋には金の装飾。 もう1つは銀色の楕円形のカプセル。なんだか不思議な仕掛けが組み込まれているようだ。 そして最後の1つは――]
あれ?これ…昨日も見たわ! もしかして…2回目なのかしら!素敵! またお歌が聴けるのかな、楽しみだわふふっ。
[ワタシはすぐさまそれらを並べると端から1つずつ開いていった]
(25) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[ 同封された一枚の写真を、 傍らの少女とともに見ること、暫し。 ]
"…写真、残すか" [ 一寸の、間。 触れてはいるけれど、迷っているかのような、 そんな、少女の動きがあって。 ]
「良いよ」
[ 男と同じく。 何時かを後悔しているような顔で、笑む。 ]
(26) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[まず最初に開けたのは、他のカプセル達より一回り小さい銀の蓋に金の装飾が特徴的なカプセル。
中を開ければ初めて見る半透明の紙、それはまるでガラスで出来ているみたいで。 つい光を通してみたり、指でコツコツと鳴らしてみたり。 深い青色のちょっと癖っけのある文字はなんだか優しそうな人柄をまるで表しているみたい。]
機械に溢れた世界…まるでワタシの星とは正反対ね! 奥さんと息子さんがいるのね、きっとワタシのお家に負けないくらい素敵なファミリーなんだわ。 ワタシのプレゼント気に入ってくれたのかな、宝物ですって!ふふっ!
[見ず知らずのワタシからの手紙に丁寧に答えてくれた見ず知らずの何処かのお父さん。 なんだか父親の暖かさ、優しさに触れ合えた気がしてとっても嬉しかった。
ちょっぴり目頭が熱くなるのを指で抑えて、最後に手に取ったのは綺麗なスタードーム。 中身を揺らすとキラキラと星が舞い、まるで星崩祭を掌の上で見ているような。
ワタシはその手に収まる小さな宇宙を暫く堪能してから、机の上に飾った。 ワタシの一生の宝物がまた一つ。増えた。]
(27) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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「父さん、もっと色々伝えれば良いのに」 「母さん、父さんの声が好きだって言ってたから」
[ 発するものじゃあ、ないのに。 "声"が好きだと言うのは、 なんだか不思議な表現だった。
手紙に書かれていた文章が 過ぎる。 発さなくても、思いが乗せられれば、 声 なのだろうか。
少女の電子機器。 写真の撮られる音を聞きながら、 そんなことを 思った。 ]
(28) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[そして次に開くのは、隣においてある銀色楕円形をしたカプセル。 なんだか仕掛けがあるようだが、機械に慣れないワタシは四苦八苦しながら中を開けて黒い画面を見つめる。 中に便箋が?でもどうやって開けるのだろう。 色々なところを触って、コツコツと叩いたり、撫でたりする内にピカッと光って急に映し出された人の姿に思わずびくっと体を震わせた。]
うわわっ! す、すごいわ…この中に人が入っているのかしら… アナタは出てこれるの?えっ?
[話しかけても返事はなく、話し続ける箱の中の人。 あたふたしている間に話し終わってしまい、どうにか弄ってまた聞き直す]
(29) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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星の開拓…すごいのね、他の星では色んな星を飛び交うこともできるのかしら。 新しい星に自分の名前がつくなんて素敵ね! ワタシも見つけたらつけてくれるのかな?
[褐色の、ワタシと大体同年代に見える画面の彼が持つ花は今ワタシの目の前にあった。 ワタシはそれを慎重に持ち上げると、くるり、と回しながら光に当てて見る]
本当に透明なのね。すごいすごい! こんなの見たことないわ!後でお父さんに自慢しなくちゃ!
[先ほどのスタードームの隣に飾り、にっこりと笑みがこぼれる。この2日間で沢山の思い出と宝物がてきた。 どんなお返事を送ろうかしら、そんな事を考えながら手は最後のカプセルへと伸びる]
(30) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[最後に開くのは昨日届いたモノと同じ形の色のカプセル。 内心大きな期待を寄せながら、ドキドキと高鳴る胸を抑えてカプセルの蓋を開く。]
…わぁ!やっぱりアナタなのね! すごい!すごいわ!!
[昨日の夜も何度も聞いていたあの声。 今回はまた違う歌が流れてゆく。 音の流れに耳を澄まして、透き通る声に心揺れ動く。]
あぁ、やっぱり素敵ね。 2回も聞くことができるなんて、ワタシはなんて幸運なのかしら!
[小さく折りたたまれた便箋を開くと知っている名前。まるで詩のようなお手紙を何度も読んで心に染み込ませる。 カプセル達を近くにおいて机へと向かい、ワタシは早速お返事を書くためにペンを取り出した]
(31) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[空を見上げる。 晴れていた空はいつの間にかゆらり、ゆらりと波立っていて。 他の家から上がるカプセル達も少し不安気に揺れながら登ってゆく。]
んん…この子達…ちゃんと登って行くのかな…
[ぎゅ、と自分も不安気にカプセル達を抱きしめる。 中には先ほど完成したばかりのプレゼントともう送れなくなるからってこれまでの倍以上の時間をかけて綴ったお手紙が入っている。]
…うん!この子達なら行けるわ! だってワタシの所まで来てくれたんだもの! 頑張ってね!いってらっしゃい!またね!
[ワタシは腕の中に収まるカプセル達をゆっくりと放した。 それらはゆっくりと、でも着実に宇宙へと向かってゆく。 見送るワタシは彼等に向かって大きく手を振った。]
(32) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[ワタシはカプセル達が見えなくなっても暫く、そのまま空を見上げ続けた。 手紙の行方を考え出したら妄想が止まらないけれど、やっぱり色々期待をしてしまうのは仕方がなくて。 今度はどんなところに行くのだろう、お返事送ったあの人は喜んでくれるかな、とかとか…]
「クリスマス!お店開くから早く降りてらっしゃい!」
…っはーい!すぐ行くわ!
[星崩祭ももう目前、お父さんとお母さんも気合が入っている。 少し冷めてしまったお昼ご飯のカボチャのスープと小さなピザをお腹に詰め込んで。 ワタシはパタパタと階段を降りるとお店の扉を開けた。 いつもより早く開店したお店にはもうお客さんが沢山入っていた]
わお!ふふっ イラッシャイマセ!!何かお探しデスカ?
(33) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[彼女の朝は、けたたましい警報音から始まった。 あの後新たにドーム壁のひび割れが見つかり、補修に駆り出されていたのだ。 どうやら硬化を待つ間に寝入ってしまったようで、それは年に一度あるかないかというレベルの失態であった。]
うえ、ヤッバ。
[見ると残りの水ゲージは1割を切っており、生命の危機を告げる警報は、そのためであるようだ。 水圧が低くなり始めているせいだろうか、慌てて身を起こせば酷い頭痛に襲われる。]
イッダダダ……あ?
[思わず頭を抱え込もうとした、その視界。 映り込んだ見慣れない物体に、一瞬痛みも忘れて首を傾げる。]
(34) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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何、これ。
[それは、透明な……入れ物、だろうか。 何度か転がして、中に透けて見える白いものが、もしや便箋なのではないか、とピンときて。]
うっわ、マジで? 本当にお返事、来ちゃった?
[と、年甲斐もなく1人テンションを上げ。 数秒後、戻ってきた頭痛に、今度こそ頭を抱えて蹲るのだった。]
(35) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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「……なんだ、とうとうくたばったのかと思ったぞ。」
[第Dゲート。 開門を願えば、少しだけ強張った顔をしていた守衛は、そう言って肩を下ろした。]
あー、悪いね。 こうしてピンピンしてるよ。
[「あんた殺しても死ななそうだもんな」などと憎まれ口を叩きつつも、その言葉の端々には安堵のようなものが感じられた。 帰投予定時刻を大幅に遅れたのだから当然か。 居心地の悪さに無意識に頬を掻こうとするが、メットが邪魔してできなかった。]
「んで、お前さんの持ってるそりゃ何だ?」
[脱気処理の後、内ゲートを通過する時、守衛の男は目敏くそれを指差した。]
あーっと? 神様の御言葉?
「……何じゃそりゃ。」
(36) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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ステラ! お待ちかねのお返事がきたよ。
「ほんとに!?」
[その瞬間のステラの顔は、それは嬉しそうに輝いて。 無邪気なその笑顔は、きっともう、彼女は忘れてしまったものなのだろう。 眩しそうに目を細めると、彼女もまた笑顔を見せた。]
「それで?なんて返ってきたの?」
ちょっと待ってね、今開けるから。
[容器を開く、すると少し匂いの違う水と、ほんの少量の気滴がそこから落ちた。 中の真っ白な便箋が、紙であることに少しの驚き。 透明な袋に入れられたままのそれを、静かに開く。 中の文字は黒く、細身なその字は几帳面な印象を彼女に抱かせた。]
[そうしてステラのためにと読み上げた内容は、少なからず彼女にも興味深いものだった。]
(37) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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「てれぱしーって、何だろう?」
[全て──彼女に宛てられた、もう1通をも読み終えて、ステラはそう疑問の声を上げた。]
うーん…… 相手に触ることで、こうしてお喋りしなくても、話ができるってこと……?
[その単語は、彼女にも聞き憶えはない。 しばし、思考を巡らせて、思い付いた。]
ああ、もしかしたらハッカーが近いのかも知れないね。
「ハッカーさん!じゃあこの、エフさんって人の星では、みんな頭の中で考えてることが分かっちゃうんだね!」
[すごいなぁと感嘆の声を上げるステラは、それはそれは、楽しそうで。 光を映さないその目はきっと、どこか遠くの、この字の主の星を見ているのではないかと。 そんな錯覚さえ、感じられた。]
(38) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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あと……これかな、お菓子って。食べてみる?
[最後、容器の底に収められていた袋。 円板状の小さな、これは乾物の一種なのだろうか。 薄い木肌のような色をしたそれを、ステラの手に乗せる。]
「うーん、でもお腹空いてないからなぁ。 それより、お手紙、かして。 触ってみたいの。」
[そっか、と曖昧に返して、2枚の便箋と容器を握らせる。 高価な宝物でも扱うように、ステラはそれを弄び始めた。]
「行ってみたいなぁ。」
[ぽつり、ステラが呟いたその一言。 その小さな一言に、彼女が拳を握り締めたのを、知る者はいない。
しばらくの後、彼女はペンを取っていた。 他ならぬ、彼女の意思で。]
(39) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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[ もう一通。 今度は少女に言われずとも、 自然とペンを走らせていた。
出来たばかりの写真を見つめる少女が、 「もうちょっと笑ってよ」なんて、 くすくす、男の腕に触れながら伝えてくる。 ]
(40) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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"生憎、お前と違って、慣れていないもんで" [ 今日は特に結ばれていない髪を、 乱雑にかき混ぜて、同じく笑う。
家族写真。 きっとはじめての、それに。 少なからず心が晴れたのは、 男と、少女。互いに同じだったのだろう。
同時に 後悔、も。 押し寄せてくるのだけども。 ]
(41) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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[ ふたつ。 カプセルを閉じれば、再び飛ばし。 ふと 横へと視線をやる。
暗闇を見上げた少女の瞳が、 ぱちり 瞬くのが見えて。 何時かの彼女のように、星がこぼれ落ちた。
気が した。 ]
(42) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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[何かあったのか。 問う守衛の男に、返答は与えられなかった。 明日になったら、ドームがひっくり返ってるかもね。 彼女はただ、寂しそうにそう呟いていた。]
(43) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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[試料の栽培に使う水槽をひとつ持ちだして、食卓の上に置いた。分厚い金属硝子で作られたそれは重く、よっこいせぇ、と声が出た。
初めて届いた宙の向こうからの手紙に添えられていた、カミサマになれる素を、真面目な顔をして、水槽へと注ぎ込む。添えられていた取り扱い説明書の映像に従って。
映像の中のお姉さんいわく。一つの種、そしてさらりとした砂。最後に、小さな瓶に入った一滴分の液体を中央にぽとりと落とし、指先でかき混ぜる。最初はおっかなびっくり、慣れてくれば大胆に。指先の抵抗が軽くなったところで、水槽から手を引き抜いてそっと蓋をする。
水槽の中では、指で作った回転が、そのまま渦となって残り、渦に乗った砂が最初に入れた種を取り巻いている。]
ふぇー……。
[こうしていると、無重力空間が発生し、大気圏の発生などを経て、小さな種が惑星へと育っていくらしい。たった1週間の寿命のそれは、とてつもないスピードで水槽の中で世界をつくりあげようとしている。飽かず、それを眺めていたが、そのうち3つ目のカプセルに手を伸ばした。]
(44) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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[偶然 や 奇跡。 それはまさしく言葉の通り。 そう簡単に起こるものではないのだ。 けれども、やはり。 望んでしまうのもまた然り。
夢の世界から目覚めても、 望むものはなにも得られていない。 君が顔を上げるのに気付いた私は、 眠気まなこをしかと目に焼き付けた。]
おはよう、星。 ………やっぱり、僕らはこのままなのかなぁ。
[ぽてり、君は椅子から降りては 手近の白い箱に手を伸ばす。]
(45) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[箱の上に浮かぶ記号を指でつついては 表示される数式と映像上から、 この星に外部からの異物の侵入のないことがわかる。 君は小さな溜息を吐いて、 私に視線を戻すのだった。]
……ねぇ、星。 お前は、そとの世界を知りたくないかい? 僕はね、そとの世界を知りたいんだ。
[切なる願いを聞き届けてくれるのは、 いったいなにものだろう。 ……決して叶うことなど、 ないかもしれないけれど。]
(46) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[私がいるじゃない。 私をその眸に映すだけでは足りないの?
君と私。 新しい星を、作れるじゃない?]
(47) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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………行ってくる。
[それだけ告げて、出て行く背中。 私と君の白い空間から。 君が向かうのはきっと、お祭りの中。]
(48) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[明け方の侵入者には気付くことなく、寝息を立て続けていた。 目覚めの時間に設定されたアラームが鳴り出す数十分前の、眠りと覚醒の狭間の、ふわふわとした時間]
[頭の下で詰め物が寄ってしまった枕を抱え直そうと無意識に手を伸ばし、円筒形の冷たい感触に触れる。 構わず布団に引き込むと、からりと何かの蓋が外れる音が一つ]
…………ん、んん。
[もぞりと身動ぎするも、小さな音一つで、この至福の時間が破られる筈も無い。 ぎゅうっと円筒形の何かを抱き直して、布団に肩まで潜った]
(49) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[時刻は確認していないけれど、アラームは未だ鳴る気配が無い。 だから未だ、眠っていられる。 うつらうつらと更なる眠りの世界へ堕ちようという時――]
『……ぴちち』
[――アラームとは別の、何かの音声に、とうとう閉じ続けていた瞼を開く事を選んだ]
(50) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[それは鳥の声に似ていたけれど、湖の上を飛ぶ鳥達のようにみゃあみゃあという甲高い声でも、陸地を飛ぶ鳥達のようにぎゃあぎゃあという大きな声でも無い。 寝ぼけ眼を擦り音声の出処を探し窓の外を眺めても、そんな変わった声で鳴く生き物の姿は見えない]
……ゆめ、か?
[身を起こそうと布団に手を突き掛けて、何故か透明な筒状のカプセルを抱いていた事に気付く。 そして、片方の掌の下に、何か丸い感触。 恐る恐る手を引こうとすると、また「ぴちち」と何かの鳴き声が、布団の中から響いた]
うわっっ!!?
[飛び起き、掛けていた布団を剥ぐ。 掌から開放された『丸い何か』は、無機質に見える銀色の身体を揺らし、青い宝石の双眸で以って此方を見つめていた]
(51) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[繭の中。 くあり と浮かぶワタシの中に飛び込んできた声。]
『空がプラ…………に……れた。 この状………宇宙…プセ…を飛ばす……はでき…い……う。
これは幸運な……に、辿…着……よう…。 R…まだ……るのか。』
[途切れ途切れに聞こえる声は、眠りを邪魔してより一層深い世界へと落ちていくことをワタシは望んだ。 何処か遠くで、ワタシ達の笑い声が聞こえた、気がした。]
(+4) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[幾ばくかの時が流れ、 箱庭に微かに響く床を蹴る音。 それは次第に近づいてきて、 扉が大きく開け放たれた。]
…………星っ……! ね、 みてっ!
[息を切らして帰ってきた君。 大切そうに両腕で抱えるものは、 見覚えのあるカプセル。 そう、君が送ったものに添え入れておいたもの。]
(52) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[ぜぇぜぇと息を吐き出しながら、 私の前に辿り着いた君の笑顔は、無邪気なもの。 君は、丁寧に机の上にカプセルを置いて、 大切そうに中身を開いていた。]
おへんじ、おへんじだよぉ! ど、どうしよう、大丈夫かな?
[どきどきワクワク。 そう形容できる姿に、私に唇があったのならば クスクスと笑っていたに違いない。 中を開けて最初に見つけたのは、 映像の中でしか見たことのない 花 。 小さな硝子に収められた其れは その先を透かして見える透明な花弁を持っていた。]
(53) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[割れないように、そっと白い箱の上に乗せ。 正に穴が空きそうなほどに見つめていた。]
これは、花? 花、かぁ! なんて綺麗なんだろう……!
[恍惚とした表情で、見つめること暫し。 それなりに長い時を経てから、 ようやく共に詰められていた質素な文を開き。 文字で表される返事に目を通す。 君の脚はぶらぶら踊る。 きっと踊り子にも負けないくらい。]
(54) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[黙々と目を通して、 最後の一文字まで読み取って呟いた。]
カミサマ、………カミサマになれたら、 どんなにすごいんだろうね。
[ほんのり哀愁漂う視線。 内容までは読み取れないけれど、 君が嬉しそうなことだけは分かるのだ。 そして、君の眸が私に帰ってきた。 そんな心地さえ感じた。気のせい?]
(55) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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[宇宙は広い。 君の好奇心も宇宙のように広い。]
そとの星へ行けるなんて、すごいや。 僕も行きたいなぁ、ね。星。
[そとの世界への熱望も更に強まるばかり。 透明な花は、そとからの手紙は、 君の好奇心をまた私から攫うばかり。]
(56) 2016/07/19(Tue) 01時頃
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そーれっと!
[銀色の宇宙カプセルを、桃色の乳白色の空へ思いっきり放り投げる。軌道の一番高いところでゆっくりと空中に止まったそれは、やがてゆるやかにゆるやかに高度を上げて、霧の中へと消えていった。]
しっかり届けよー。
[ぶんぶんと、手を振ってカプセルを見送ると、その場に止めていたスタンド・カーを繰って走りださせる。視線は地面と、宙を往復。
ひとつはすぐに見つかった。青い草原に、目立った金色に輝く赤のカプセル。]
みーっけ! ……でもこれ、俺が送ったやつじゃねぇなあ…また新しいやつが届いたんか!
(57) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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『 小惑星5656MC3が、 昨夜上空***地点にて観測され…… 』
[画面の中、アナウンサーの男が読み上げるニュースを どこか遠い星の出来事のように、 ぼんやりとした意識のまま耳に入れる。
“ その時 ”にはまだ遠い。 けれど、それは確かに 音も無く近づいている。
俺たちに残された時間は───…]
(58) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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………おはよう、セト。
[テレビをじっと見つめたままソファに座り きゅっとエプロンを握る彼女。 こちらに気付き上げられた顔は笑顔だけれど 唇が、僅かに震えていた。 シンはまだ 起きていない。]
……大丈夫だよ。そんな顔するな。 宇宙プランクトンの大移動で 軌道が変わるかもって話だろ?
[実際のところ、その可能性は低いらしい。 けれど、無力な俺は、俺たちは 今はただ それを信じることしかできず。]
(59) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[拾い上げると、これもまた貴重なもののように矯めつ眇めつ。鼻唄を歌いながら更に草原を走らせて。排気フィルムの限度いっぱい外を駆け巡ると、興奮で若干頬を紅潮させて、プラントの扉を潜る。3つのカプセルを両腕に抱えて。
ひとつは金色の。ひとつは、自身が送ったものの返信用のひとまわり小さい銀のカプセルと。もうひとつ、また新しい別のカプセルを加えて。]
すげー、すげー!返事が来たぜ!それにほら、また新しいカプセルが来た!案外この星の近くに、別の星があるのかもなあ!
…ん?そしたら異星系との接触になるのか?そしたらさ、k67先攻調査隊みたいに、シニアスクールの教科書に乗っちゃったりすっかもしんねーな!
[宇宙を成形する水槽の傍らに、両腕のカプセルを、壊れ物のように置きながら、賑やかに騒ぐその声は、しん、と静まるプラントの中に響いて消えた。
まずは拾った順に、カプセルを開き始める。]
(60) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[ぎこちない笑みを浮かべながら ぽんぽん、と彼女の柔らかな髪を撫でると そのままバルコニーへ繋がる窓へ。]
……なあ、今日も届いたよ
[転がっていたのは、三つのカプセル。]
(61) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[そうして君は、気分が昂るままに 新たなる文を綴り始める。 インクが少し掠れ始めたのか、 文字を綴るのに、何度もインクを乗せていた。
どんな言葉を書いているのだろう? やはり、私にはわからないけれど。 しあわせそうな君の笑顔を見れば、 きっとしあわせな内容なのだろうと、思う。
もしも、私が言葉を綴るのにならば……。]
(62) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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よーし、開けるぞー?
[夕暮れ時。 昨日と同じように三人並んでソファに座る。 テーブルには三つのカプセル。 今朝届いたそれは、俺が仕事から帰ってくるまで 開けずに置いておいてくれたらしい。 仕事は早めに上がらせてもらえた。 皆、例のニュースの影響か あまり仕事に身が入らないようだった。]
(63) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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まず一つ目。 ……これも、カプセルなのか。
[自分たちの星のものよりやや小ぶりなそれは 淡く輝くガラス玉。 壊れないよう、そっと開けば どんな仕掛けなのだろうか 透き通るような、美しい声が鳴り響く。 歌うような、語るように流れるその詩は どんな意味を持つのだろう。
シンが目を輝かせながらカプセルを開閉する横で 俺は中に入っていた手紙に目を通す。]
これ……この前の返事だ。 すごいな、返事もちゃんと届くのか。
(64) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[少し興奮した声でそう漏らせば 隣のセトが手紙を覗き込み、 「なんて送ったの?」と問いかけてくる。]
まぁ……いろいろ。 世間話みたいなもんだよ。 ……ん?飛行機?
[同封されていたのは、紙飛行機。 手紙にPSと続いた文章と 決して上手とは言えない出来のそれを見て 思わずくすりと笑みが漏れた。]
ほら、シン。 この前のあれ、喜んでもらえたって。
[やや不恰好な飛行機を手に乗せてやると 「ヘタクソだ!」と言いながらも シンは嬉しそうに笑っていた。]
(65) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[銀に金の装飾が施された蓋と、透明なカプセル。 銀色の小鳥の嘴を撫でてやりながら、同封されていた半ば透けて見える不思議な便箋を開く]
……本当に届いたんだ。他の星に。
[生まれてこのかた外の星に出た事も無く、あまり他の星の文化に触れる機会も無い。 送り主は、湖も海も植物も知らない世界に居るのだという。 家にあった果物を同封したのだけれど、思いのほか喜んで貰えたようだった]
それならもっと、いっぱい、色々入れとけばよかったなー。
[飛ばせるカプセルの大きさにも限界があるから、実際にそう色々と詰め込む事は出来なかっただろうけれど。 湖の星でいえば土を多く必要とする根菜類などは滅多に食べられない高級品だとはいえ、その種自体が絶滅して無くなってしまった訳ではない。 植物が絶えて存在しない世界は、想像が付かなかった]
(66) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[湖の星は、自然豊かというよりは、自然に埋もれてしまった星だ。 きっと昔は、もっと沢山の機械や人工物に溢れた星だったのだろう。 何が切っ掛けでか、それは全て湖の底な訳だけれど]
[俺達が遺跡を調査しているのは、旧時代の文化や自分達の起源を知る為だと言われている。 それは建前で、旧時代の技術を吸い上げ、利用する為という見方もある。 実際、調査が進む度に便利な道具や機械が造られるようになっているので、どちらも正解だと思う]
(67) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[彼――どうやら、流れるような字の主は大人の男性らしい――の星は、逆に、自然が機械に埋もれている星なのだろうか。 手紙から受ける印象では、自然が少ない事に対する代わりのように、機械や創造する事に長けた星のように思える]
[初めて送ったカプセルは作法も知らず、返信用のカプセルを入れる事すら失念していたのだけれど、 送られてきたカプセルの装飾は、自星で見たこともないような精巧な細工が為されている。 そして同封されていた機械仕掛けの小鳥は、嘴を擽ってやると瞳を細め微笑みの表情さえ作った]
『ぴちち』
[愛らしく鳴く玩具の小鳥。 夜も明るい街や、玩具工場]
[自然は無くとも、人々は賑やかに暮らしているのだろうと、そう思った]
(68) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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じゃあ、二つ目。
[テーブルの真ん中に置いたカプセルから取り出したのは ややレトロな羊皮紙に書かれた手紙。 小さな文字で丁寧に綴られた内容は]
星を…育てる……?
[今まで、聞いたこともないようなもの。 同封されたキットの説明書チップを起動すれば その“育て方”を知ることができた。 好奇心旺盛なシンが興味を持たないはずはなく すぐに大きな水槽を用意して育成開始。]
(69) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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これは……すごいな。
[材料を混ぜ合わせれば、 それはぐるぐると集まり、形を成す。 まだはっきりと星らしい形ではないけれど
終わりを迎えるこの星で、 それは確かに、“いのち”を持った。]
(70) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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最後……これ って、昨日の…? あの子のと、同じ……
[つるりとした触り心地のよい、繭のようなカプセル。 中に入っていた手紙にも見覚えのある文が書かれていて やはり、同じ子たち…だろうかと推測がつく。]
(71) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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すごい偶然だな…! 同じところから、二回も。 ほら お返事待ってるって。 シン、お友だちになれるんじゃないか?
名前は、────…
[昨日と同じく、中には折り紙が入っていた。 けれど、その形は俺たちの知らない折り方で “ はな ” というらしい。
いろとりどりのそれらを じっと見つめ 良い香りのするらしい“本物”の姿に胸を躍らせた。]
(72) 2016/07/19(Tue) 01時半頃
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[……… ココロ を持たぬ私には、 何を綴るべきなのか判別は難しい。
ただ、ひとつ。 私を産んでくれた君に、感謝を。]
ふふ、僕の文もちゃあんと届きますように。
[祈りと共に宇宙へと放ったカプセルは、 何処まで飛んでゆくのだろう。 白い箱の映像から、何処かへゆられゆく様は 途中までは追いかけることができる。 けれども、終着点までは、わからなかった。]
(73) 2016/07/19(Tue) 02時頃
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― 露天 ―
[両手いっぱいに何かを抱え、ばたばたと路地を掛ける。 辺りは薄暗く、もう少しで二つ目の月が顔を覗かせるような時間帯]
あっ、まだ開いてたか!よかったー!
[目当ての店が未だ店仕舞いしていないことに安堵の息を漏らしつつも、脚は止めない]
おっちゃーん!昨日のカプセル!あれちょーだい!!
[商品にシートを掛けようとしていた店主を遮って、紙幣と硬貨を丁度置いてやる。 「あっ、返信用のやつも忘れないでくれな!」と付け加えるのも忘れずに]
(74) 2016/07/19(Tue) 02時頃
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[渋々といった体でカプセルを仕舞いかけたシートから取り出し渡す店主に礼を言い、 その場で手紙と手にした袋を小さな潜水艦に詰めた。 思ったよりも小さかったそれに、はみ出しそうな袋をぎゅうぎゅうに詰めて、閉じる]
よーし、いってこい!
[ぽーんと軽快に投げ出すよう宙に放ち、空に、宙に消えて行く様を見送った]
(75) 2016/07/19(Tue) 02時頃
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[ ふわふわ
ふわふわ
今日もまた、空へと小さな星を飛ばす。 暮れ始めた空の端、 昨日まではなかった 赤い煌めきが、ひとつ。 ]
(76) 2016/07/19(Tue) 02時頃
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ナユタは、肩に乗せた小鳥を撫でると、小鳥は愛らしい声で囀った。
2016/07/19(Tue) 02時頃
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