105 CLUB【_Ground】
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─シーシャの部屋─
[囁きを返しながら、息苦しさに、喘ぐ。
(なんてひどいことを、言っているんだろう──)
(オレは──)
(なんにも、わかってない──)
なだめるつもりで訪れた部屋で、 見えない棘は、ティーの心にも深い傷を残す──。]
(@126) 2013/12/20(Fri) 03時頃
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─チアキの部屋─
うん。 ……入るよ。
[迷子の合図に、扉を開く。
部屋の中では、小さなからだが毛布にくるまっていた。]
チアキ、どうしたの? お風呂で、水でも浴びて来た?
[あまり足音を立てないように傍へいき 体温を確かめようと、額に手を伸ばす。]
(@127) 2013/12/20(Fri) 03時頃
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>>234
水がすき?
[川や海。 どちらも流れのあるところ。
生まれた時から止まり続ける運命から、 逃げ出したいのだろうか──。
そんなことを思った。
甘える唇は、ティーの首筋に淡い痕を残し 熱いはずのそこが、なぜだか冷たく凍りついた気がした。]
(@129) 2013/12/20(Fri) 03時頃
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>>237
ッ、 チアキ、 どうしてこんな────…
[濡れたままの髪。 よく見れば、毛布から出ている部分も 水気を拭いきれていないのがわかる。
シーシャでさえ、あれほど不安がっていた。 小動物の気質のチアキは、 どれほど心細い思いをしたのだろうか。
手のひらに押し付けられる額を何度も撫でて、 スーツが濡れるのも構わず、 チアキの身体を強く抱きしめた。]
(@130) 2013/12/20(Fri) 03時頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/20(Fri) 03時頃
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[置いていかれるかもしれない不安。 よき買い手に巡りあってさえ、付き纏う恐怖から 救ってやれる手立てが見つからなくて──。
シーシャの部屋でつきつけられた問いへの 納得のゆく回答も見つからないまま、 チアキに掛けてやれる言葉を、 今のティーは持っていなかった。]
いいから──、
[だから、言葉の代わりに、 抱きしめる腕に力を込めて、 押し返す力さえ、まとめて抱き寄せて、 濡れた髪を撫でながら、 チアキの額を自分の肩口に押し付けた。]
(@131) 2013/12/20(Fri) 03時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/20(Fri) 03時半頃
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チアキ、
チアキ
…──チアキ。
[自分を否定して謝るチアキの耳許に、 しー、と、静かな吐息を伝え、 嗚咽を漏らす唇に、指先で触れた。]
(@132) 2013/12/20(Fri) 03時半頃
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ティソは、チアキの耳許で繰り返す言葉が、自分のエゴでしかないと、知っていた──。**
2013/12/20(Fri) 03時半頃
測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/20(Fri) 04時頃
測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/20(Fri) 09時頃
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[銀の蔓が、ずれて ふちなしの、硝子レンズの眼鏡が音もなく毛布の上に落ちた。]
(@133) 2013/12/20(Fri) 09時頃
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[ぱちぱちと、二度瞬いて 歪みない視界に、世界を映す。]
…──ぁ、
[色のない硝子で堰き止めていた現実が 音を立てて流れ込む。]
(@134) 2013/12/20(Fri) 09時頃
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[鳴いている。
おとなの身体に、 成長しきらないおさない精神を抱いて、 こんなに健気なのに、 まだ、自分を否定して。
いのちは、そこにあるだけで 神秘的で美しいものなのに────歪めているのは。]
(@137) 2013/12/20(Fri) 09時頃
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─シーシャの部屋─
[流れて、消えてゆきたい、と。 なんでもないことのように言うシーシャに、 また、心臓を掴まれた心地。
喉元に、温度。 噛み殺すような衝動は、備わっていないけれど、 カメラにそんな姿が映れば危険と判断されかねないから]
…──、 ぁ、シー、シャ
[あまい、声をあげて ただ戯れているだけだと、示す。
冷たい唇。 熱い舌。
温度差に、血が流れ出している錯覚を覚えた。]
(@138) 2013/12/20(Fri) 09時半頃
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[なんにも悪くないのに、 どのこも、このこも、自分が悪いかのように言う。
いい子たれと、 正しさを押し付けられた結果か。]
…………ん。
[ひとりになりたくないはずなのに、 自分から距離をとって、離れていく。
そんなところまで、“いい子”。]
(@139) 2013/12/20(Fri) 09時半頃
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[立ち上がり、シーシャの部屋を出る。
噛まれた喉に指先で触れてみたけれど、 血が流れていると思ったのは、やっぱり錯覚だった。**]
(@140) 2013/12/20(Fri) 09時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/20(Fri) 09時半頃
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[濡れたからだを抱きしめるティーの耳に ほとんど同じ内容の、二人からの通信が入る。
一途に人間を愛するために作られたいのちを これほど怯えさせる言葉とは。 そんな言葉を用いた相手へ、苛立ちを覚える。]
誰に───
[なにを言われたの?
問いを口にし切る前に、 チアキの悲しげな疑問の声に、意識をさらわれる。]
……変わりたいと、望むひとがいるから。
[さみしい、かなしい、こころぼそい。 だれかにそばにいてほしい。
その感情を、ティーは誰より知っている。]
(@163) 2013/12/20(Fri) 19時頃
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[黒縁のガラス板が目隠しなら、 ノンフレームの球面レンズは堤防だったから。
おさないころに傷ついて、 修復するすべを覚えるより先に 逃げることを覚えてしまった脆い内面を 現実という棘から守り、同時に、 わがままで身勝手で、虚(から)っぽゆえに貪欲な 子供の自分が表出しないよう、 閉じ込めておくための囲いでもあったから。]
…────、
[今、それはティーの視界から落ち、 やわらかな毛布の上に転がっている。]
──、
[社会的でものわかりのいい、 理想の自分(たてまえ)が保てない。]
(@164) 2013/12/20(Fri) 19時頃
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[目許に直接触れる濡れた体温。
常より近い距離から囁かれた掠れ声に 囁き返したのは、 罪悪感と自嘲の入り混じった苦い吐露。
喘ぐような吐息とともに吐き出された言葉(もの)は、 寄る辺を求める仔栗鼠の胸に、どう届こうか。]
(@165) 2013/12/20(Fri) 19時頃
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[手は、チアキの額に 濡れて張り付く髪をどかしてやるように動き、 懺悔のあとの、すこし軽くなった心地でふたたび唇を開く。]
──もちろん、 チアキがいてくれたら、嬉しいに決まってる。
[チアキには見えない薄氷を細めて笑う顔は いつもの、包み込むようにやわらかなそれに近かった。]
(@168) 2013/12/20(Fri) 19時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/20(Fri) 19時半頃
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[──こうしていれば、チアキは寒さを感じないだろうか。
調整された室内でも、 濡れていれば気化熱で体温は下がる。
言いかけた疑問に答えをくれる、 落ち着きを取り戻したような声を聞き、 ひどいことを言われたわけではないと知って どこかぼんやりとした安堵に浸りながら、 濡れた身体を、隙間を埋めるようにしっかりと抱き直した。]
(@172) 2013/12/20(Fri) 22時頃
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チアキも、ヤニクも、 ひとと同じ複雑な感情は持ってる。
おなじくらい、長く生きて いろいろなことを経験すれば さみしくて、かなしくて、──さむくて、 誰でもいいから温めてくれるひとが欲しいって、 思うときが来るかもしれない。
[やわらかい笑みは、どこかすこしうつろ。
そう思う日が来る前に 誰かに買われ、愛(プログラム)が隙間を埋め尽くす。
研究所員が言ってはいけない言葉。 語ってはいけない可能性(いつか)。
堤防を失ったティーは、それを容易く口にする。]
(@173) 2013/12/20(Fri) 22時頃
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[見えないかたちを確かめるように 輪郭を辿る指。
くすぐったいような、心許ない指先が 近く感じる呼吸が
──吐息と区別つかないほどの小さな問いかけが。
心のやわらかく、脆い部分を甘く刺激する。]
(@174) 2013/12/20(Fri) 22時頃
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[『だれかそばに。』
それは他ならぬ自分の希求。 満たされない心を抱え、知るからこそ、 無条件の愛(愛玩動物)を作り出せる、 この仕事に可能性を感じた。
けれど、わかってもいた。 どこかでこの研究が、倫理を歪めているのだと。
わかっていても、なお道を進み続ける代償に、 世界と自分を隔てる薄い硝子を選んだ。
甘い毒(ゆめ)を与えるかわりに、 自分はずっと、虚(から)っぽのままでいるのだと──。]
(@175) 2013/12/20(Fri) 22時頃
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[その問いは、ひどく甘い誘惑。
『YES』と言えば、 あきらめたものが手に入るような気がした。]
(@176) 2013/12/20(Fri) 22時頃
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[冷えてゆく手が、チアキの髪を撫で下ろす。 指先が、目隠しの結び目に触れて、震えた。]
(@177) 2013/12/20(Fri) 22時頃
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[結び目を下った指は、チアキのうなじを撫でて]
…──────、
[チアキの胸に甘えるように顔を埋めて、 わずかに、 ほんとうにわずかに、首を横に振った。]
(@178) 2013/12/20(Fri) 22時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/20(Fri) 23時頃
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[思ってはいけない。 想ってはいけない。
罅割れた隙間から 入り込んだ健気であたたかい笑顔が、 いつの間にか胸を占めるようになっていても。
唯一を求める問いへ、 頷いたとしても、何も変わらない。
繊細なチアキにとって、 期限つきの唯一は、 やがて来る別れの時を、致死の毒に変えかねないから。]
(@182) 2013/12/20(Fri) 23時半頃
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[乾いた笑いが突き刺さる。
撫でられると、整髪料で固めた髪が一筋額に落ちた。 何度も辿る指先は、自分と同じ冷たさで]
(@184) 2013/12/21(Sat) 00時頃
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[チアキの胸に抱かれて漏らした震える吐息は、 音にならずに濡れた服に吸い込まれた。]
……うん……。
[倒れこむ身体に逆らわず、体重を預ける。 濡れた毛布の海は、身体と同じで冷たかった。]
(@186) 2013/12/21(Sat) 00時頃
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[毛布の上にチアキの身体をよこたえて、 指の甲で額から顎へと輪郭を辿る。
右手で濡れた服から少しずつ解放してやりながら、 見上げた視界にチアキの顔を映していた。]
……ッ
[目隠しの下で、チアキの目が開くのがわかった。
溢れる声。 なにかを、見つけたのだろう──。]
(@190) 2013/12/21(Sat) 00時半頃
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[寒さを忘れるための熱を煽ろうと 顎から尾へと伸ばした手を引いて、 チアキの顔の脇に両手を突いた。
動きを止めて、じっと顔を見下ろす。]
うん、 ──うん。
[乾きかけの目隠しが、水分を吸って色を変える。]
うん、チアキ──。
[チアキの手に鎖骨を辿られながら、 にこりと微笑んだアイスブルーは たいせつな、宝物を見るようにやさしい色をしていた。]
(@191) 2013/12/21(Sat) 00時半頃
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[ちいさなくしゃみに、くすりと笑んで]
よかったね…───?
[呟いて、肘を折る。 毛布を巻き込んで、チアキに覆いかぶさるかたち。
一瞬、カメラに映る二人は、毛布の波に呑まれた。]
(@192) 2013/12/21(Sat) 00時半頃
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[毛布の海が割れ、チアキの背を抱き起こすように 腕でチアキの体重を支えたティーが顔を出す。
さらけ出された白い肌に、ティーの舌が這う。
自由になる方の手で尾の付け根をくすぐり、 先端へと指先で撫で上げた。]
(@203) 2013/12/21(Sat) 01時半頃
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