219 The wonderful world -7days of SAIGAWARA
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── 回想/6th day ──
[駄々を捏ねているのは何方だろう。
如何にか無理にその華の生命を延ばそうとするのは。 真っ当な言葉も探せない内に己の“我”を通そうとするのは、紛れもない駄々になるだろうに。
(生殺しの状態のまま、おく事の、 凄惨さにまで気の回らないまま。)
流れるように拡がる艶黒の髪と、随分血の気が失せたように思える肌の色が只冷たく思えて。
嗚呼、それでも、最期の願いと。>>6:263 云う口調ばかりは“先生”のそれに、一度伏せた視線を引き上げる。 未だ、意識のある事など気が付かずに、落ちた“木刀だったもの”を、右手で拾い上げた。
(左の腕にその身体を凭れさせたまま、)
ぐ、目を閉ざすと、縦に真っ直ぐと構えた刀を、 蝶でも縫い止めるかのように、]
(+11) 2017/06/23(Fri) 15時半頃
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[ ─── 孤独華を、己で手折った。 ]
(+12) 2017/06/23(Fri) 15時半頃
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(深い獄だろうと、灼熱の中だろうと、 貴方の行く先であるならば、
─── 何処へでも、添います、)
[手折った華を大切に抱え込んだまま、ぽつぽつ、空も泣かないのに雫が落ちる。 側に居る筈の死神の彼が何を言ったとしても、青年は抱えた華を取り零さないよう黙するだけだ。
── そうして、緋く染まった華二輪、 其処に、静謐として佇んでいる。]*
(+13) 2017/06/23(Fri) 16時頃
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── ──
[慎ましく生きるべきなのだと教えられてきたのだ。 人の主張とは否が応でも波を立てる。 だから、如何しても必要な時以外は疵ごと飲み込んできた。 そう云うところは父より人に好かれやすいと言われていたが、青年にとっては肝要な事ではなかった。
─── そこに若し、“次の機会”があれば?
その時は、きっと、 ──── ]*
(+14) 2017/06/23(Fri) 16時頃
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── Re:prologue ──
[ふ、確かに千切られた筈の意識が揺蕩っていた。]
(嗚呼、どうせ死んでしまったのだ、 静かに放っておいてくれないか、)
[そう、思っていたのだが。
何処へでも、と云った言葉を思い起こせば、薄らと目を開く。 次は何処だと思えば、目の前に広がるのはサイガワラの街だったものだから、呆気に取られて幾度か緩慢に瞬いた。
未だ生きているのでは、などと思う事がなかったから、 状況を上手く理解できなかったのだ。]
(+19) 2017/06/23(Fri) 18時頃
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[何ぞ呪いめいた言葉を述べる異口同音も又、増えていた。>>#1 皆々一様に虚ろの硝子張りに仄昏い青を宿している。 序で、日増しに現れる雑音が、元から凶暴なものが黒く変わったものとなっていた。
只、黙して道を睨めれば立ち上がろうとして。 質量のあるのに気が付いて目線を下ろせば、
─── 脚の上に乗せられたままの先生だった。
小さく苦笑って、酷く勝手な事と知りながら。 何時もは束ねられている髪を梳いていた。 水を掬う如く、拾い上げても直ぐに落ちてしまうのを、繰り返しながら、何処か夢心地を半分くらい混ぜたような気持ちでそうしていた。]*
(+20) 2017/06/23(Fri) 18時半頃
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[掬うように撫ぜている手の向こうで、先生の睫毛が少しさざめいた気がしながら、なおもその髪を梳いていた。
(思えば、近くにいた筈なのに、 存外に遠い距離だった事を薄らと自覚した。)
そうしていれば、その唇が、何かを言いかけては止まって、
─── 三度目にして、言葉は音を成す。>>+44]
…… ええ、私です、 お早う、りゅう、
[梳いていた手を止めると緩く笑んで、首を僅かに傾けると、玻璃を覗き込むようにしながら、口数多くなく言葉にした。
只、青年は穴を掘った訳でも、百年待った訳でもないのだが。]
(+64) 2017/06/23(Fri) 23時頃
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[死んでなお、夢に魘された日もあったのだから、 死んでも夢は見るのだろう、などと、若し此れが虚ろの夢であっても覚めたくないと思う青年は、夢か現かを確かめようともせず。]
… 如何、だろう、 先の遊戯から篩い落とされたは確かだが。
[先生と死神の会話なんぞは知らないから、一体何を望まれたのかも知らないまま、浅く息吐くのを見つめていた。>>+45]
嗚呼、君が生きていて良かった。
[鏡合わせのようにおんなじ事を口にして、緩やかな笑みのまま見下ろしていれば、何に気付いたか突然に跳ね起きるのを少し驚きを以って見遣ってから。
髪の揺らめくのと、すっかり軽くなった脚の感覚を知って、 僅かに惜しむ心地になりながら、ふるり、被りを振った。]
(+66) 2017/06/23(Fri) 23時半頃
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[…そうして、改めて。 三度目の世界に、ゆるり、視線を巡らした。
(というのも、此処でする事など。 皆目と知りもしなければ、 未だ夢水に浸ったような心地のまま。)
扨、何をしよう、などと思ったところで、降って湧くような事などないのだ。
( ─── 嗚呼、否、訂正しよう。
したい事やすべき事は兎角として。 黒い雑音は湧いていたようだったから。)
只、とても穏やかで静謐な刹那であるのは間違いがないから、そのままに居るのもいいかと思いながら。]*
(+68) 2017/06/23(Fri) 23時半頃
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座敷守 亀吉は、メモを貼った。
2017/06/24(Sat) 00時頃
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[ (明るい場所に近い影の方が暗い、 それは、或る意味的を射ていると思う。)
ふ、と、緩んで戻りそうにない笑みのまま、その目蓋に落ちる細指を確とは捉えないで言葉を落とす。>>+81
…穏やかにすぎて、実に死後らしいかもしれなかった。
手を伸ばされたとして、拒む事はおろか、嫌がりもしないのに。 先生が手を動かしかけた理由は知らないままで、 幽かに留まった言の葉の行く末を捕まえようとも思わなかった。]
(戦わせず済むなら、越した事はない、)
[玉響に消える夢でも構いはしなかった。 本当に、独りで道を生かされるのかと思った先に比べたなら、ずっと平穏なものだったから。]
(+96) 2017/06/24(Sat) 02時半頃
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[夢も、 思いも、 …… 刹那の華の命でも。 何時かは喪くなるものなのだから、此の時から態々醒める必要も感じない、と、先を考える事は ── 辞めていた。
(短い華の、更に短い夢なれば。 今暫らくの、心休める静謐くらいは、 生き様が如何とあれど、赦されるだろう。)
幻と消えるのを愁うのは青年も同じ事だったが。>>+82 そこに落とされた言葉に、少し目線を伏せたが、起き上がるのにつられて跳ね上がり、気にしないようにと頭を振るのが先だった。 それから、一拍、二拍、と間の空いてから、言葉を溢すように落とす。]
… 嗚呼、恨んでやろうかと思った。 私だけが遺されたなら、赦すまいと思った。
だが、君が慮ってくれたのだとは分かったから。
こうして君と同じ所に居れるものだから、 そんな八ツ当りめいた感情は忘れてしまった。
(+97) 2017/06/24(Sat) 03時頃
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[余分に付け足してしまってから。 ついついと軽くなってしまったらしい口を鎖す。 何かを言いかけた隣の“君”が、先を飲み込んで仕舞えば態々尋ねる事もしない。>>+84
(夢が醒めないで欲しいのは、青年とて同じ事、)
静謐に落ちるのは、二人分の存在の僅かな音ばかり。
それが、事前に先生が精製陣を壊した事で此方に黒い雑音が湧かないからだとか、そんなものを考えられない程には思考が巡っていない。 その内に追加報酬を狙った死神などに追われるのかもしれないが、未だ先の話。]
…… 嗚呼、折角だ。 何にも急かされず追われずの内に、 此の街を君と話しながら歩くってのも悪くない。
[誰も気が付かないのなら、人目も喧騒も気にしないでも善い。 そうやって散歩なんぞ提案したのは、単に思い付きだ。]
(+98) 2017/06/24(Sat) 03時頃
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[行き当たりばったりなんかとは無縁だったものだが。 或る意味、死んでいると云う現状を飲み込んで受け容れているからこそ、責任やら何やらを忘れて言葉にできるというのはあっただろう。]
(此れが譬え霞朧の幻でも、 君が居てくれる夢だってなら。
─── 随分と粋な事をする、とは思うが。)
[頷くなり、同意なりが返るなら、漸く座ったままの腰を上げて、と、道を歩き始めるだろう。 今度こそは、きちんと“君”の横に並んで。]*
(+99) 2017/06/24(Sat) 03時半頃
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[手が伸ばされようとしていた事すら知らないのは盗られてしまったからこそだろう。 だが、同時に、嘘だとかを気にせずに誰かと距離を詰めようとできた所以でもあった。 だからこそ、先生が負い目を感じるならば、それは本来青年自身も感じるべきものなのだ。
(誰も“自分”を掬い上げてはくれないと。 声を上げもしなかったのに、勝手に思っては、 如何しようともしなかったのだから。)
そうして、先生がその先行きごと手放そうとした事を、未だ、半ば夢心地の青年は知らないのだ。]
(+155) 2017/06/25(Sun) 00時頃
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[ (短い短い華の命。 散る間際まで、満足の行く生であったのか、 それすら見る事を赦されない個々の華。
なれば、その刹那くらいは、 儘、真白に彩を乗せられたなら、と。)
仄かに疵の名残は感じながらも、 降参宛らに振られた手と言葉と、余りにも己に正直であれたものだから、夢と思ったまま。>>+133]
だとすれば、君が消えなくて良かった。 恨むと同時に、空虚を感じただろうから。
[立ち上がっていた君の下駄が、軽く音を立てた。]
(+185) 2017/06/25(Sun) 01時半頃
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嗚呼、余りにも忙しくて、 静寂とは当分無縁だったから。
今日一日くらいは赦されて善いだろう、て、
[明朗に笑うその姿を、眩しげに目を眇めて見上げたなら、腰を起こして立ち上がる。 招く君の横に添って、“行き当たりばったり”に付き合ってくれるらしいのに笑って返せば、はにかむでもなく言われた言葉に頷いた。]
……私の事? はは、そんな事で良かったら。
[それから、尚も行き当たりばったりを続けるように、「気になった道を適当に選んで行くでは駄目か、」などと言った。]*
(+186) 2017/06/25(Sun) 02時頃
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座敷守 亀吉は、メモを貼った。
2017/06/25(Sun) 02時半頃
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