266 冷たい校舎村7
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『それでは、次のニュースです――――』
(+11) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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―― 自宅 ――
( …… あれ? )
[暖かい家の中で目を覚ました。 ……そのことすぐには受け入れられず、 何かに横たわった姿勢のまま、イロハはじ、っと目の前に映る光景を見ていた。
煌々とあかりのついた自宅のリビング。 台上に置かれた大きいサイズのテレビにローテーブル。 テレビはつけっぱなしで、 ゴールデンタイムの合間にちょこちょこと流れるニュース番組を今は垂れ流している。 テーブルの上には湯気を立てていないマグカップがひとつ。 この部屋には確か、ふたりは座れるサイズのソファーがあった。 イロハが今横たわっているのはソレだろう]
(+12) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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[母の帰りを待つうちにソファーで転寝してしまった。 そう判断するのにふさわしい材料が揃っていた。 だが……違和感。 それもぬぐいきれないくらいの]
ここは、学校じゃない…………
[ゆっくりと思い出す。 大雪の中学校に向かったこと、 道中が妙に静かだったこと、 3年7組の教室に集まった顔ぶれ、チャイムの音、 閉ざされた校舎(せかい)でのこと]
(+13) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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―― 帰る前の話 ――
マジで? あたしったらすごいじゃん。
[どうもタイミングばっちりだったらしい。>>49 イロハの中にヒーローに憧れる思いはないが、 ついつい、嬉しそうな顔をしてしまう一幕もあったが]
あー……、そっか。
[教室へと引き連れていくことはできなかった。>>50 七月の口ぶりからして、高本だけが先に教室に戻ったことには、 やっぱり、何らかの理由があったみたいだ]
(+14) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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なん、で、そんなこというのさ。 あたしがこうやって来ちゃうのも、こうやってここにいるのも、 これが……最後ってわけじゃ、ない、じゃん。だから……
[帰らないと、ってイロハは心のどこかで思っているにしても、 別にそれは今すぐでもちょっと先でもなくったっていい、 そう思っていた。 たとえば、の話になるけど、 この世界をつくったのが七月で、みんなを引き留めたがっているというなら。 彼女が望むならずっといてもいいくらいだったし]
(+15) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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………… なーに、ヨーコちゃん。
(+16) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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[イロハは殊更穏やかな口調で七月に呼びかけた。>>51 結局なんでもない、と返ってきてしまったけれど。>>52
ただ、高本に会いたくない、というのがこの場に残る理由なら、 いくらか間を置けば頭も冷えるだろう]
…………うん。わかった。
[そう思って、こくこく頷いて多目的室を後にして、そうして]
(+17) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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なんか、うまくいかないモンだよねぇ……
[このまま、教室に戻る気にはなれなかった。 戻って、高本をはじめとした面々に、 ヨーコのちゃんのことは心配ないよ、って報告して、毛布で寝る?
……誰かの悲鳴とともにマネキンが現れる。 そういうことがこの先も、ないと限らないわけで。 少しの思案の末、イロハは多目的室のわりと近くに寝場所を取ることにした。 そりゃまあ何もないのが一番だけれど。 保健室から残ってた毛布をこっそりこっそり、拝借して、 廊下、は寒いから……美術室にしよう、と決めた]
(+18) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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[音を立てずに扉を開ける。 油っぽい臭いの中、いくつもの四角い板がイーゼルに立てかけられてそこにある。
――そっか、ここも、か。
ここにも文化祭の時間がとまったまま留まっている。
探索して回れば、美術部である蛭野や養の展示物も見られたかもしれないが、>>2:472>>2:473 イロハは見回ることより寝ることを優先していた。 入り口付近が一番スペースありそうだったから、 毛布を敷いて、そこで眠った]
(+19) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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[イロハだって、思いもしていなかった。
あれが、さいごになってしまうだなんて]
(+20) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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[灰谷彩華はあの校舎(せかい)のどこにもいない。 ――と、言うのは、間違いないらしい。
盛大に階段落ちした状態で残るのとどっちがよかったんだろう、 なんて、ことは、……考えない。 のろのろとソファーから身を起こす。とたん、額に鋭い痛みが走って顔をしかめた]
……、ん、何……?
[触ってもよくわからなかったので、 洗面所の鏡の前に立って、前髪をかきあげる。 額にはたんこぶができていて、見るからに赤く腫れていた]
(+21) 2019/06/13(Thu) 00時半頃
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…………。
[一瞬心当たりのなさに呆然としたイロハだったが、 心当たりに思い至ればそれはそれで呆然となった]
まさか、……帰る前に頭ぶつけたから……?
[精神世界のしくみはやはりよくわからない。 とはいえ痛いのは確かなので、家にある救急箱で応急手当をした。 消毒液をしみこませたガーゼを傷口にテープで止める。 前髪をいつも通りおろせば多少は隠れるが、 それでも明るいところでは見えてしまうだろう]
(+22) 2019/06/13(Thu) 00時半頃
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[手当てを終えてリビングに戻ってくれば、 何気なく部屋着のポケットの中のスマホを取り出す。 何分か前の、通知。 トークアプリの方に新しい通知が来ていたようだ]
アイちゃん……!
[何、ていったらいいんだろう。「おかえりなさい」? そうやって返信の第一声を考えていたイロハだったが、 送られていたメッセージの内容を見て小さく息を呑んだ]
(+23) 2019/06/13(Thu) 00時半頃
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え、 うそ、なんで……
[養が病院に運ばれたって。血まみれだったって。
思わずイロハはつけっぱなしのテレビを見たが、 ニュースはとっくに終わっていた。
だからとりあえずテレビを消して、スマホをいくらか操作して、 それから相原にメッセージを送った]
(+24) 2019/06/13(Thu) 00時半頃
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『わかった。あたしも行く』 『それとメール来てた?』
『きてなかったよ』
(+25) 2019/06/13(Thu) 00時半頃
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[……察しはいいと思ってたよアイちゃん。
というのはさておき、そう。 はじまりの時間に、3年7組の教室にいた面々に関初入れずに送られていた、 遺書じみたメール。
それが、今手にしているイロハのスマホには届いてなかった。>>25 相原のところにもきてなかった。 だから―――だから、 つまりは送信できなかったのでしょうか。
考える、それはじたばたして動けないことに他ならない。 だから、自分の部屋からコートとマフラーを引っ張り出して、 ふつうに、家を出た。 母宛てのメッセージは何も残してはいなかったが、 ……まあ、別にいいさ、必要以上に怒られたって**]
(+26) 2019/06/13(Thu) 01時頃
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