191 The wonderful world -7 days of MORI-
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[ ── ダン、 と。
両足で着地。 さすがに、着地の衝撃も、さっきの傷にも響く。 さて、さっきの”なにか”が、 落ちてくるようなら、次こそ打ち返すか。
── と、きみの声>>291が響いた。
そして、さらなる追撃>>257と、 おれの前に割り込む影>>291に気がついたのとは、 ほぼ、同時だったと思う。
おれは咄嗟に、しゃがみ込み、 盾で軽減されたとはいえ、 襲い来る爆風をやり過ごそうとする。]
(295) 2016/06/10(Fri) 10時頃
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[ 爆煙に霞む視界に目を細め、 次におれが目にするのは、 おれに駆け寄ってきたきみ>>292と、 加勢に駆けつけた兵隊たちである。]
── ごめん、しくじった。
[ そう言いながら、おれは立ち上がり、 花粉用のゴーグルでも買えばよかった、 なんて思いながら、おれはまた背中に翅を生やす。]
アレが弱るまで”飛ぶ”から、 ネル、悪いけど、援護頼む。
[ 背には一対の翅。手に金属バット。 爆弾? ならば、打ち返すのは悪手か? きみの司る兵隊に、 撃ち落としてもらうほうがいいかもしれない。]
(296) 2016/06/10(Fri) 10時頃
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[ ひとまず、おれは天井近くまで浮き上がり、 あちらへ、こちらへと飛び回りつつ、 顔を出したところを殴る── とはいっても、 兵隊たちの銃撃や、剣が先に飛ぶこともあり、
斯くして、13'sスクエア1F・ボウリング場にて、 スケールの大きいモグラたたきがはじまったのだった。**]
(297) 2016/06/10(Fri) 10時頃
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[ 降下と上昇を繰り返して、 ひらひらとモグラの周囲を飛び回る。
爆弾を避け、兵隊の盾に隠れ、叩き、 じわじわ追い詰めればいい、と。 おれは、所々、避け損ねた切り傷を作りながら、 その作業に夢中になって── なりすぎていたのかもしれない。
的が地上に飛び出したから、 おれもそっちに向かって飛んで、
一発叩き、爆弾に備えて退避。
という、幾度となく繰り返したパターンを、 無意識に頭に思い描いていたら、
飛び出した瞬間から、ソレの動き>>305はパターンを外れ、 あろうことか、地上を進むから、
── その先には、きみがいたから、]
(318) 2016/06/10(Fri) 17時頃
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[ ── きみが、きみの描く世界が、なにより大切だ。
きみのためなら、なんだってする。 きみが、失われないためなら、なんだって。
いちばんがきみなんだから、 他に優先するべきことなど、あるはずがない。] .
(319) 2016/06/10(Fri) 17時頃
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[ ひらり。
なんて、優雅な言葉は似合わない。
おれは、地面を蹴りつけるのと同じ感覚で、 思い切り、勢いをつけて羽ばたきそれを追い、 同じように、レーンの上を、 言葉通り、"上"を飛び、 りんぷんを振りまき、
追いつこうか、追い越そうか、ってその瞬間、
きみの前に割り込むように、 躊躇もクソもなく、翅を消した。
思い切り、金属バット振りかぶって。]
(320) 2016/06/10(Fri) 17時頃
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[ ……殺そうと思った。 きみにあだなすもの全部、おれが。 たぶん、本当になにかが振り切れたとき、 言葉とか、叫びとか、なにもないんだと思う。 神さま。] .
(321) 2016/06/10(Fri) 17時頃
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[ ── 爆弾って、叩いたら爆発するのか?
って、アホみたいなことを考えたのは、 おれのうしろには、きみがいるわけで、 おれは、壁になれたらいいなって思う。
……ところで、 金属バットで持ち主ごと殴られた爆弾ってのは、 結局のところ、爆発するのか?
少なくとも、きみの本にも、 きみと読んだ本にも、そんなシーンはなかったね。
── けれど、まあ。 すでに、レーン上に飛び降りながら、 頭上高く、鈍器を振りかぶっているおれには、 今更考えたって仕方のないことである。]
(322) 2016/06/10(Fri) 17時頃
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[ ── ぐにゃり って。 肉を打つような、鈍い手応えが掌に伝わる。**] .
(323) 2016/06/10(Fri) 17時半頃
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── 1F・ボウリング場 ──
[ 考え無しだな。
とは、多分、生まれてこの方、 死にゆくそのときまで、言われたことはなかった。
なので、たぶん、おれにその言葉を贈るのは、 今この瞬間、おれ自身によって、がはじめてだ。]
── っ!
[ 爆風って、こういうことを言うんだろう。 いや、まさに、実際、爆風だったわけだけれど。
まるで、殴られるみたいな勢いに、 おれは、目も開けられないまま、きみを探した。]
(404) 2016/06/10(Fri) 23時半頃
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[ きみは無事だろうか。 怪我をしていないだろうか。 もっとうまくできなかったか? なんだか、ひどく不甲斐ない。]
── ネル、
[ かすれた声できみを呼ぶ。 なんだか泣きたかった。 悲しそうな、今にも泣きそうな顔をして、 兵隊のマスコットを眺めているきみ>>349に、 おれはひどく胸が苦しくなる。]
(405) 2016/06/10(Fri) 23時半頃
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[ ほんとのところ、きみにはおれの助けなんて、 必要ないのかもしれない。
── なんて、まるで気づいていないわけではないのだ。] .
(406) 2016/06/10(Fri) 23時半頃
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── ネル、ごめん、おれのせいで。 大丈夫? 怪我はない? ごめんな、
[ おれはよいしょと立ち上がり、きみの元に歩み寄る。]
おれは平気だよ。このくらい。
[ はじめにやられた足とか、他にも、あちこち、 うまくよけきれなかったときの切り傷とか、 間近で爆発を感じたからか、 皮膚に赤みやヒリヒリとした痛みはあれど、 手足がくっついていて、動く以上、特に問題はない。
おれはきみのためにまだまだ動けるよ。
と言わんばかりに、おれも、手をひらひらと振って見せて、]
(407) 2016/06/10(Fri) 23時半頃
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── でも、タイマー、消えてない。
[ 行かなきゃ。って言うおれは、 なにかに、追い立てられるみたいに。
── だって、この世界に、きみ以外、信じられるものなど。]
……ミッション、クリアしなきゃいけないから。
[ ネルは休んでていいよ、って、おれは言った。 ほんとうは一緒に来て欲しいけれど、 きみはとても疲れて見える。
だけど、タイマーが動き続けている以上、 おれに立ち止まる理由は、ない。*]
(408) 2016/06/10(Fri) 23時半頃
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── 13'sスクエア・1Fボウリング場 ──
[ ── 結局のところ、おれの足止めをしたのは、 突如鳴り響いた警報音>>397であった。 警報音というのは、得てして危険を告げるものである。
きみを取り戻すためのミッションがあって、 けれど、きみを危険な目に合わせるのでは元も子もなくて、
だから、おれはこどもみたいに駄々をこねる。
きみは外に逃げる。おれはミッションに行く。
おれは、もちろん死ねない。 きみを道連れにするわけにはいかないから。 だけど、きみを守るためには、ミッションが──、
とまあ、諦められないおれの強欲さを、 きみは、おれのちょっとした怪我を理由に、 うなずけないでいるようであった。]
(442) 2016/06/11(Sat) 01時頃
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[ ── 気にしなくていいのに。
って思うけれど、それは、 きみを蔑ろにするようでもあって、 おれはやっぱり、きみはやさしいなと思う。
だけど、その間にも刻一刻と、 掌に刻まれた数字は減ってゆき、 おれは、いよいよ焦る。
ほんとうのことを言えば、 きみには一緒にきてほしいとさえ思うのに。 あれも、これも、どれも、全部、全部。 って考えるのは、なんだか、
……ひどく、なじまなくて、
優先順位、という言葉は、たぶん、 今のおれの辞書では、塗りつぶされてしまっていて、]
(444) 2016/06/11(Sat) 01時頃
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[ ……そうこうしているうちに、 掌のタイマーが消えたことに、おれは気づく。*] .
(447) 2016/06/11(Sat) 01時頃
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── 1F・ボウリング場 ──
[ そして、再びブザーが鳴り響く。>>#7
おれは、何事なんだろうとか、 一体この音はどこから響くのだろうとか、 考えるよりも先に、叫んでいた。]
── タイマー消えてる!ネル、逃げよう!
[ なにより大切なのはきみの身の安全であり、 ミッションがクリアできたなら、 ここにいる理由も、なにひとつない。
おれは、きみに走って出入り口に向かうよう促す。 おれも、きみを追いかけるように、動き出す。
バタバタとその場をあとにしながら、なんとなく、 ── 父さんと母さんはどうしたのかな、って思った。]
(464) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ ── あの夜。あの夜の、さらに次の日。
結局のところ、両親が、なにをしたのか。 あるいは、なにもしなかったのか。
誰かを傷つけたかもしれない。 誰かを殺したのかもしれない。 それとも、儀式めいた自死、とか。
いくらでも、考えられることはあって、 ほんとうに、なにも起こってない可能性もあって、 ただ、ひとつだけいえるのは、 どんな末路を辿ろうとも、彼らはきっと幸せ。 ってこと。]
(465) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ 警察につかまってるなら、 神様の言葉を信じない人びとの愚かさを、 ひどく嘆いてはいるかもしれないけど、
それでも、正しさを完遂した彼らは幸せ。
盲目的だなあ、と、十年もの間、 幼いなりに、おれはいつも思ってた。
── 思っていた、はずなのだ。]
(466) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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── 13'sスクエア・1Fロビー ──
[ ボウリング場を出たその先、 出口に繋がるロビーに、 まるで、今さっきここにたどり着いた、って顔で、 鳴り響くブザーに戸惑うひとがいた。
── たぶん、参加者だ。 営業停止中の施設にやってくる物好きなんて、 ふつうのひとには、多分いない。
見覚えのない顔。若い男だ。 そばにパートナーの姿はなく、 フロアマップの前で、立ち尽くしている。]
(467) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ ── ”あと”の時間の使い方が、大事なんじゃないかな。
今朝、確かにそう思った。 今、掌から、タイマーは消えている。 きみは少し先を、出口に向かっていて、 それを確認したおれは、
足を早めて、彼に近づいて、
ほのかに光る紋様の浮いた右腕を、 そっと、男の首筋に向かって、伸ばした。
── 掌が触れる。]
(468) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ ばちん。と、音でもしそうな感覚。
男が、振り返ろうとしたのがわかった。
たぶんそれ、むりだと思う。] .
(469) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ パイを奪い合うゲームなら、敵を減らせばいいのだ。]
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(470) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ 相変わらず、建物には、警報音が鳴り響いていて、 男はなんだか、動きづらそうな、 立っていられない、みたいな、 奇妙な感じで、 ずるり と、崩れ落ちて、
何が起こったんだろう、みたいな表情で、 目玉だけ、しきりに動かしていた。
カエルみたいだな、って思った。 この世界で目覚めたその日に見たソレ>>0:516みたい。 『どうしてオレの身体は動かないんだ』 とでも、言いたげな。
── だって、おれがこの手で触れたんだもの。]
(471) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ このけたたましい音の意味は知らない。 けど、この行いに、意味があればいいと思った。
── すくなくとも、ひとつの収穫。
手足じゃだめでも、油断してるとき、 首や、心臓の近くや、 要は、一般的に”危ない”って言われるところ、 きちんと狙えば、たぶん、おれの力も、 正しい使いみちがある、というか。
……ノイズを”倒す”のには向かなくたって、 おれにはおれの、与えられた役割が、きっと。
── そうだといいな、って、思った。]
(472) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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── 1F・ロビー ──
[ ブザーの響き渡る中、ひっそりと、 ロビーの片隅、フロアマップの前に、 壁に背を預けるようにして、 男がひとり、いるだろう。
その、せわしなく動く目玉にはもう目もくれず、 おれは、先を行ったきみを追いかけようと、 また、出入り口に向かって、歩き出す。
いくらかの高揚感を抱えて、 足の甲から流れる血がつくる、 途切れとぎれのあしあとを残して。*]
(473) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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── そして、屋外 ──
……ごめん、待たせて。時間、まだあるかな。 何か、修理できるようなもの、買わないと。
[ きみに追いついたおれは、さっき見た、 傷ついた兵隊を思いだして、そう言う。
きみはあのとき、とても悲しそうな顔をしていたし、 それがきみの力にも影響するのであれば、 それは、とっても不安なことだろう。]
……電気屋? ちょっと、遠いけど。 それか、ドラッグストアか、百貨店か──、
[ おれは、立ち入れる場所を挙げつつ、 意見をうかがうように、きみの顔を見やる。
目が合うなら、微笑もうか。]
(475) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ ── 大丈夫だよ、なにも心配しないで。
心優しいきみは、心配したり、悔やんだり、 きみが気にしなくたっていいことで、 きっと、気を病んでしまうから、
やっぱり、おれにまかせていてほしい。 きみを、必ず取り戻してみせるから。 おれにもきっと、 きみのためにできることがあると思う。
ほんとうに、心配しないでおくれ。 だって、それが正しいんだから 最後には、それがわかるよ。 それまでは、おれに、全部まかせて。
きみはまだ、なにも知らなくていい。]
(476) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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[ ── そして、世界は暗転する。**]
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(477) 2016/06/11(Sat) 01時半頃
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