266 冷たい校舎村7
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[ 眩い光が心地よかった。あたたかかった。 そう長くは続いてくれなかったけれど。]
(15) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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──現世:自室──
[ ぎぎ、ぎ…………
って音がして、 それは姉さんが歯ぎしりをしてるか、 爪を噛んでいるかの音です。
部屋の端っこと端っこに置かれたベッド。 いつか、仕切りを入れる? って両親に聞かれて、 姉さんも僕も特別それを必要としてなくて、 別にいいんじゃない……? と言ったから、 僕らは家族という動物を飼う箱の中の、 さらに小さなひとつの箱で息をしている。]
(16) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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[ 部屋の真ん中のあたりに、 メイク道具が散らばったままだった。
砕けたアイシャドウがフローリングに散って、 チップやブラシが床に落ちてるのは不衛生。
僕の彫刻刀やカッターナイフは、 依然として鏡台に陣取ってて、
僕は、自分のベッドの上で、 ぼんやりと膝を抱えていたみたいだ。]
(17) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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あのね、姉さん。
(18) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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ばかみたい。だなんて言うなら、 もう僕の顔だって必要としないなら、 いっそ憎んでぐちゃぐちゃに切り刻んでほしかった。
それで姉さんの心がいっときでも晴れるなら、 姉さんが、少しでも満たされるなら、 きっと、僕の18年にも価値があったと思えたよ。 僕の心は最後に満たされたはずだった。
あるいは、一緒に死んでと言って。 姉さんが、あのまやかしとして死ぬために、 僕ごと殺してくれたなら、そうしたら……
(19) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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求められていたかった。 必要とされていたかったよ。 僕にもわかるくらいわかりやすく。 あなたの幸せのために今日も生きるねって、 明日も呼吸をする理由にさせてよ。 最後までちゃんと使い切って。 それは姉さんの義務だよ。
(20) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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だって、姉さんがもう少し美しかったら、 きっと僕はこんなにこの世を嫌わずに済んだのに。
(21) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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……って、考えてしまうことが、 身勝手だってこともわかってるよ……
(22) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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姉さんは何も悪くないよ。 僕も悪いことなんてしてないよ。 だから、全部この社会のせいにするしかなかった。
(23) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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醜いからと気味悪がられたり、 怖がられて、石を投げられることも、 その弟として見られることも、 醜い子には似合わない服があることも、 それよりマシに着飾れたって、 性別が合致しなければ正しくないことも、 醜いとされる自分を隠したまま、 他人に褒めそやされて喜べることも、
(24) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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こんなに間近で見なければ、 きっと違和感なんて覚えずに済んで、 僕は、僕なんかじゃなくって、 こんなばかみたいに斜に構えて、 自分の生きる社会を嫌わずに済んで、
(25) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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全部どうでもいいことだなんて、 くだらない価値観に基づいて営まれている、 この世が悪いだなんて唱える必要もなかった。
(26) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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……って、考えてしまう自分が嫌だよ。 どう考えたって、間違ってるのは社会の方なのに、 これじゃあまるで、 僕がその一員になりたいみたいじゃないか……
(27) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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だからせめて、僕として生きさせてよ。 こんな、どうしようもない僕のまま生きる理由を、 姉さんは僕に与えるべきだよ…………
(28) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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……実のところこの話は、 永遠にループするので、一旦やめようか。
(29) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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[ 姉さんは、姉さんのベッドの上にいる。 俯いてゆらゆらと揺れている。
親指の爪をきつく噛んでいて、 変形したその爪が、すごく痛そうなんだけど、 姉さんは、何も言わないでいつもそうしてる。
それが僕の姉さんだから、 僕はふらふらと立ち上がって、 その目の前まで歩いて行って言うのだ。]
(30) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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姉さん。 姉さん、僕、まだ死ねない……
(31) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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[ 僕を見上げる姉さんの胡乱な目は、 きっと、だから何? とか、そういう、 意味のわからないものを見る色をしていて、
でも、それだけなんだ。それだけなんだよ……
早く死んで。って、 言ったのは姉さんのくせに、 僕がおかしいみたいな目をするのも、ずるいよ。]
(32) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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姉さんはずるい。 僕よりずっと当事者でいるくせに、 この世の価値観に染まるだなんて。
(33) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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……ああ、だから永遠にループするって。 僕は僕が思うよりずっと幼稚で頭が悪いから、 考えたって仕方のないことに囚われて、 もうここから一歩たりとも動けやしないんだ。
(34) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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だから、何も考えずに済むように、 ただ姉さんのために。姉さんの望みだって。 姉さんはそれで喜んでくれて、 少しでも満たされてくれるからって。 そのために生きていることにしたいよ。
(35) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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[ そんな目をされたらもう何も言えないよ。
姉さんが何も言ってくれないから、 僕は何をするべきなのかもわからないのに。
決別したいわけでもなんでもなくて、 変わらないままでいられたほうが、 姉さんのままごと遊びの人形でいられたほうが、 僕は、ずっとずっと楽だったと思う。]
(36) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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[ 僕たちの部屋はいつも静かで、 今も変わらずそうだった。
静かな部屋で、僕らは少しの間見つめあって、 先に目をそらしたのは僕の方だった。
上を向いて。の言いつけに背いたから、 じっと待ち続けられなかったから、 こうなっちゃったのかもしれないのに、]
……あのね、少し出かけてくる。 [ 僕はそう言って、この箱を出て行く。
あれは夢なんかじゃなかったって知ってるから。 向かうべき場所を教えてくれる友人もいるはずって、 スマートフォンと財布を握りしめて、 ひどく冷たい夜へと繰り出した。*]
(37) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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拝啓。 帰ってきてくれて早々ごめんね。 この世なんてやっぱり地獄です。 でも、この地獄で、君に生きててほしかった。
(38) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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それだけは本当だったんだ。 僕自身も気づかずにいた僕の意思だった。 だから、ごめんね。ありがとう。 …………おかえり。**
(39) nabe 2019/06/18(Tue) 03時半頃
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──現在:病院へ──
[ あの天変地異みたいな大雪は嘘だった。
だから、レインコートを着る必要もないし、 僕の家から病院も少し距離があるから、 マフラーをきつく巻いて自転車に跨った。
通知のきていたスマートフォン。 僕にも連絡を寄越してくれる相原さんは親切だ。 でも、あのときのメールはどこにもなくて、 僕はそれが、ちょっとだけ寂しい。
マフラーで覆い切れなかった鼻や瞼が、 びゅんと冷たい風を切るから痛かった。]
(46) nabe 2019/06/18(Tue) 17時半頃
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[ そこにたどり着いた頃、 僕の頬や鼻が赤くなってるのは、 寒さのせいかもしれないし、急いだからかも。
駐輪場を探して自転車を停めて、 ぐるぐる巻いてたマフラーを外しながら、 僕は待合室へと、歩みを進めてって、]
……た、拓海くん、目を覚ました?
[ って、道中見つけた顔>>2に、いきなり。 問いかける僕は珍しくも笑っていない。
……けれど、ああ、でも、 灰谷彩華を呼ぶときに限っていえば、 普段から、僕はどうしたらいいのかしらって、 だいたいそういう顔をしている僕かもしれない。*]
(47) nabe 2019/06/18(Tue) 17時半頃
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──現在:病院──
……灰谷さん、えっと、
[ きっと、それが誰かを認めたときに、 少し安堵の息を吐いた僕である。 ほら、正しい相手に声をかけられたという意味で。
今ばかりは、灰谷彩華の知らないことを、 僕が知ってるってこともすっかり失念して。
だから、頼りなげな笑み>>95に、 僕は少したじろいでしまうし、 差し出されたココア缶を咄嗟に受け取ってしまう。]
(97) nabe 2019/06/19(Wed) 00時半頃
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……ありがとう。 寒い、けど。雪降ってないし……、 これ、もしかして登校したときの?
[ お返しでしょうか。と僕は思い、 覚えてる? って、恐る恐る囁いた。
……きっと僕の財布の中身は減ってないから、 少しばかりズルをした気分になる。けど、
気持ちはありがたく受け取りたいし、 今度こそ、ちゃんと温かいココアが飲みたかった。
いえ、今はそれよりも、 僕は缶を握りしめたまま、微笑む。]
(98) nabe 2019/06/19(Wed) 00時半頃
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……あのね、拓海くんは、 一緒に帰るって言ってくれたよ。 だから、だからきっと、もうすぐ……
(99) nabe 2019/06/19(Wed) 00時半頃
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[ かじかんだ指先で缶を弄んだが、 色々あったかと問う>>96声に、 僕はさらにまじめに答えを返そうとして、 目の前の彼女に似た人形のことも思い出して、]
……色々。色々、あったよ。 でも、みんながあの場所を去る前に、 みんなの身に何があったかはわからない。
灰谷さんの人形が、 どうしてあんなとこに落っこちてたかも。
[ 僕は死ななかったから。 だから、わからないこともある。 そんなふうに、ぽつぽつと言葉を返して。
待合室までの道のりを会話で埋めて、 きっと、その先で良い知らせを知るのだろう。*]
(100) nabe 2019/06/19(Wed) 00時半頃
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[ 待合室には見慣れた大人の顔があって、 言伝がある>>7っていうんだから、 たぶんそれって、今日は帰りなさいって、 そういう意味合いもあったと思うんだ。
もう夜が遅いし、僕らは受験生だし、 これってとてもセンシティブな問題だから。
僕もそう頭の悪いほうではないので、 それはたぶん、理解していたんだけれど、 理解はしてたと、思うんだけれど……、
そこにいたのはクラス担任で、 養拓海は目を覚ましたと言った。 それを聞いて、僕は床を蹴った。]
(101) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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あのとき、
(102) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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白い光の中に、確かに君はいたんだ。 強い光に目を眩ませていたから、 見えるはずもないのに、確かに君だった。 世界が終わる間際に声がする。 そういえば、長い付き合いになるのに、 はっきりと口にしたことなんてきっとないなあ……
(103) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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おはよう、拓海くん。 ……あのね、僕も君のこと、大好きだよ。
(104) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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[ 君が目を閉じていた>>7ので、 挨拶としては、間違いないと思うんだけど。]
(105) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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──現在:病室──
[ 病室を教えてもらえたのか、 そこにまっすぐたどり着けたのか、 何番目だったのか、同行者はいたのか。
……なんてことは、さておき。 少なくとも、担任が会えたんなら、 可能性はあるんじゃないだろうかって、 小賢しいことを考えたのは事実だ。
白い廊下を抜けていって、 扉の先にあるのも白い世界>>4で、 僕は、あの世界のことを少し思った。
そう。あの世界で聞こえた声に、 僕はまだ返事をしていないよ。 笑顔でまたねと終えた世界があるなら、 おはようともう一度今日をはじめたくて、]
(106) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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[ ……それで、]
(107) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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[ 笑顔を、浮かべようとしていたんだけど、 それがうまく保てたかは、怪しい。
君はあんまりな状態だったし、 そもそも本当に目を覚ますの? って、 そういうふうにさえ思ってしまって。
寝台の傍らに立ち尽くしたまんま、 静かに唇を噛みしめていた。**]
(108) nabe 2019/06/19(Wed) 01時半頃
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──待合室へ──
[ 確かな記憶として残る奇妙な数日間。 大雪の中登校する寒さや、毛布の重み、 そういった実感が、僕らに共通するものと知り、 僕はそのことに対しても顔を綻ばせた>>109。
それから。 灰谷彩華があんまり驚き、 期待をしたように尋ね返す>>110ので、 僕はさらに笑みを深めて頷く。
そう。えっと、 そういう反応をしてくれると、 僕も、もう一度よかったなって思えるし、 それでいいんだって、思える。気もして、]
(126) nabe 2019/06/19(Wed) 11時半頃
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……うん、七月さんとね、 見つけて、運んだけど、足が折れてた。 階段から落っこちたみたいに、 踊り場のところに倒れてて。
[ 痛そうだった。とその光景を思い出し、 僕はあの場面をなぞるように語ったが、 果たして人は自分の死に様と思しきものを、 詳細に知りたいだなんて思うのかしら。]
なんにもない天井を、見上げて……、
それから、ええと、 七月さんが、暗幕を持ってきてくれたから、 くるんで、体育館まで運んだ。
[ かくしてスカートの中は守られた。>>3:133 ……とは言わないけれども。]
(127) nabe 2019/06/19(Wed) 11時半頃
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それで、灰谷さんの言う通り、 みんなどんどん人形になって、 痛そうだったり、死んじゃったみたいに。
僕は……どうだったんだろう。 きっともうあの場所には誰もいないけど、 もしかすると、僕も何かを置いてきたのかも。
[ 確かめようはないけれどね。
灰谷彩華がいなくなってからの色々を、 本当にざっくりと語った。白い廊下で。
みんな死んじゃったみたいになって、 代わりに人形を残していって……
でもみんな帰ってきたから。 よかったね。なのかもしれないけれど、]
(128) nabe 2019/06/19(Wed) 11時半頃
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[ 結果的にただ奢られてしまったココア。 プルタブを引いて、口をつけて……、 飲食禁止だろうか。ごめんなさい。
自転車を懸命に漕いだものだから、 喉が渇いていて、でも、 ココアは潤いを与えるというより、 舌や喉にとびきりの甘さを残した。
灰谷彩華は、自分の意思で落ちたと言い、 僕はそれを頭の中で復唱した。>>111
自分の意思で、落ちた。 その意味とか、意図とか、 僕にはさっぱりわからなくって、]
(129) nabe 2019/06/19(Wed) 11時半頃
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……灰谷さんは、帰りたかった? どうして、落ちたの。死ぬことにしたの。 あの場所で、自分の意思で。
[ 待合室までもう少し、というところで、 僕は耐えかねたふうにそう尋ねた。
自分に訪れなかった結末。 ちょっとね。>>2:350と言った彼女に、 そっか。と言ったのをうっすら思い出す。
深入りしないでほしい。>>2:434 明言されていない意図を汲めるほど、 僕は敏い人間として作られていないし、
もうすでに一度、あの校舎で、 他人が口出しするべきでないと信じていた領域に、 踏み込むことを知ってしまったあとだった。*]
(130) nabe 2019/06/19(Wed) 11時半頃
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──病室──
[ ひとつ。咳き込むのが聞こえて、 僕は、伏せていた目を見開き、 ぼろぼろのまま笑う君を見た>>125。
幻聴では、ないです。 僕はここにいるので。
……とにかく、おはようと声がして、 ゆっくりとその右手が動き、 僕の指先に触れるまで、僕は。
動くこともできず、 たぶん、静かに息をすることだってできず、 立ち尽くしていたのだ。君に触れるまで。]
(135) nabe 2019/06/19(Wed) 12時半頃
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確かにそこに体温があると知り、 僕はその温度を知っているとも思った。
(136) nabe 2019/06/19(Wed) 12時半頃
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[ 笑顔で別れてまた会おうって、 思っていたのに、ちっとも笑えやしない。
困ったなあ。なんて考える余裕もないまま、 僕は指先に触れた手>>125を、 縋るように握り締めてしまう。
膝に力が入らないのだ。 両掌で、その手を包み込んでいた。 しゃがみ込んで、祈るみたいに俯いたから、
きっと、うまく笑えてもいない顔を、 見られることはないと思うんだけれど。]
(137) nabe 2019/06/19(Wed) 12時半頃
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……た、拓海くん。 おかえり、ありがとう…… ごめんね……うれしい……
(138) nabe 2019/06/19(Wed) 12時半頃
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[ しぼりだした声が、息も絶え絶えだったので、 涙をこらえきれずにいるのはきっと隠せない。
この世は地獄だなんていったくせ、 君が生きていることを喜ぶというのは、 ひどい裏切りのようにも思うけれど、 でも、また会えてよかったって、 思ってしまって、どうしようもないよ。
生きていてほしいと願ったのは僕なのに、 ごめんねと言うのもずるい気がしたし、
生きていてほしいと願った僕が、 伝えるべき正しい言葉は、わからないままだ。
だから、僕は僕に思いつく言葉を言う。 あまり褒められたことじゃないと思うから、 君に不要なら忘れて。ほかのみんなには内緒だよ。]
(139) nabe 2019/06/19(Wed) 12時半頃
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……ほんとは、 一緒に終わりにしてもいいって言われて、 たぶん、僕は、少し嬉しかったんだ。 でも、君が死んじゃうのは、いやで、
……あのね、拓海くん、 誰かのために生きようとか、考えないで。 うんと先のこととか、どうしようもないこと、 あると、思うけど。生きるのが、辛いなら、 生きなきゃとか、思わなくていいから、
ただ、拓海くんが、 楽しみにできることがあるうちは、 その瞬間までは、そのためだけに、生きて、
(140) nabe 2019/06/19(Wed) 12時半頃
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それはもしかすると、 もしかしなくても、僕の欲した言葉なのかも。 僕は身勝手な人間でしかないから、 他の人間の心の裡を本当に覗くことはできないし。 誰かが本当に必要としてる言葉もわからない。
(141) nabe 2019/06/19(Wed) 12時半頃
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だけど、すべてを終わりにする選択肢を、 僕に見せてくれた君に。少しだけ。 この世が、住みよい地獄になればいい。
(142) nabe 2019/06/19(Wed) 13時頃
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[ 別に、消えていなくなるわけじゃないって、 頭ではわかってるんだけど、その手を離せずにいた。 ただこの体温を、失いたくなかった。 それだけの理由で、生を願ってしまった僕だから、]
……あのね、拓海くん。 僕は、夏が楽しみだから、生きるよ。
[ みっともなく、堪えきれなかった涙を零して、 ……君の手が濡れたなら、それはごめん。
きっと、もっと前向きな言葉を、 君はこれからたくさんもらうだろうから、
ひとつだけ、後ろ向きな呪いを、 こっそり、僕にかけさせてほしい。]
(143) nabe 2019/06/19(Wed) 13時頃
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地獄へおかえり。僕のともだち。*
(144) nabe 2019/06/19(Wed) 13時頃
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──病室>>187──
[ 君の心の内訳だなんて、 僕に分かるはずもなくって、
僕の内心はといえば、 %表示なんて役に立たないくらい、 あれもこれも綯交ぜに溶け合って、 名前もないひとつの色みたくなっていた。
嬉しいはずなのに涙が出て、 燻る罪悪感を恥じてもいる。
素直に、まっすぐまっとうに、 一緒に明るい明日を歩もうと言える、 そんな生き物だったら。と一瞬だけ思う。]
(236) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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[ 静かに手を握り返されて>>188、 君が小さく頷いた>>189ときのことだ。
あまり心配するなと君は言い、 確かに、心配すること自体が無礼だね。
それってつまり、 君がまっとうにまっすぐ明るい人生を、 歩めないでしょう。と言ってるみたいだ。
……否定もできない。 と僕は気付いて、少し顔を上げた。
血の気の失せた指が、目尻に伸ばされて、 昔と同じように、僕は静かに目を伏せて、 その指が耳へ、頭へと進むのを、 少し首を垂れて、静かに享受している。]
(237) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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……そのまま。そのままの意味だよ。 ひまわりが咲いたら、連れてって。
[ ……もう僕は小さい子じゃないから、 あの場所に歩いていくことくらい、 君を引っ張ってくことだって、たぶん、 難しいことじゃないって、わかってるけど。
湿っぽさの拭いきれない声で、 くすくすと冗談めかして笑った。 君の指がくすぐったかった。というのもある。
それで。それでさ、 君はありがとうって言ってくれて>>192、 僕はそれに微笑みながら、そうなるといいなと思う。]
(238) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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[ もっと色んな季節や時間を楽しみに、 君と、ほかの友人たちとたくさん約束をして、 次の約束があるから。って、生きて。
君も、僕自身も、 そういうふうに生きられたらって思って。 ──それでも、いつか駄目になったら。
話の行く先を読めずに、 僕は今度こそゆっくりと顔を上げた。 君は笑っている。その目を見つめる。
ゆっくりと君の言葉を咀嚼して>>193、 数秒、怯えたような目をしたんだろう。]
(239) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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あのね、生きる理由を簡単に、 何かと挿げ替えてしまえるのは、 社会の規範に則れば正しくない、 きっと良くないことだと思います。
(240) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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でも、それだけ。 それだけのことです。 だから、頷いてもいいよね。
(241) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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いつでも。 どこにいたっていいから、 僕を呼んで。手を引いて。 どこでもいいから、連れてって。 ……拓海くん。
(242) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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……きっと、その日を待ってる。
(243) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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[ 目を逸らされた>>194のと同じくらいに、 僕も目を伏せて、静かに小さく笑った。
誰にも嫌われたくはないから、 みんなにはきっと内緒だよ。
……って、 最後に、静かにその手を握り返した。>>194*]
(244) nabe 2019/06/19(Wed) 22時半頃
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──待合室へ>>245──
重くなかったよ。二人だったし。 高本くんが、宮古さんの人形、 ひとりで背負ったときは、大変がってたけど。
[ 細かに描写をした末に、 思いがけない質問が浮上してきたので、 僕は慌てて記憶を手繰って答える。
特に、僕も七月さんも、 手をぷるぷるさせることなく運んだはずだ。
うん。と記憶を確かめて頷く。 重くなかったですとも。ええ、もちろん。]
(267) nabe 2019/06/19(Wed) 23時半頃
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[ それから。あの世界の話をして、 少しずつ白くて明るい廊下を歩いた。
その末に紡いだ質問>>130は、 彼女を驚かせるのに充分だったようで、
驚いたような顔に、僕も少し驚き、 そらされた視線>>247の先を追うように、 僕もまた、白い廊下に目線を滑らせた。
ぼそっとした呟きが、 あまり僕の知る彼女っぽくもなくて、 聞きこぼさないように耳をそばだてる。]
(268) nabe 2019/06/19(Wed) 23時半頃
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戻れないなんて当たり前のことなのにね。 時間は巻き戻らないし、死んだらおしまいだし、 見たり聞いたりしたものは刻まれるから、 人生というのは成り立っているんでしょうに。
(269) nabe 2019/06/19(Wed) 23時半頃
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どうしてそれを望んでしまうのでしょうか。
(270) nabe 2019/06/19(Wed) 23時半頃
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[ あの場所に閉じこもっていたって、 何も叶わない。>>250と灰谷彩華は言う。
たぶん、それは正しくて、 ごくごくと勢いよくミルクティーを飲み下す喉が、 それを言うのは、僕にはすごく自然に見えて、
……だって、灰谷彩華は僕と違うから。 とか言って、受け流すところだった。いつもなら。
でも、それを言う口ぶり>>250が、 その前に吐露された思考>>248が、
……ちょっとだけ、覚えがあるなあって。 結局この世に生きるしかないのだ。 そう唱え続けているときの、自分に。]
(271) nabe 2019/06/19(Wed) 23時半頃
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……あの世界にお邪魔して、帰って、 ひとつ、よくわかったことがあるんだけど、 友達が死んじゃうのは、とても悲しい。
(272) nabe 2019/06/19(Wed) 23時半頃
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[ だから、思ってるんでしょ。>>251って、 投げかけられた問いにはおかしな答えを返す。]
友達が死んじゃうのは悲しいから、 この世界に帰ってきてくれて、嬉しい。
[ これも彼女の望んだ肯定>>251に入るだろうか。
僕は、白い廊下の先に視線を移して、 前を見て、慎重に言葉を紡いでいく。]
でも、本当にそれでよかったのかなって。 僕は、友達に苦痛を強いたくはないし、 かといって、自分にできることも思いつかなくて。
[ でも、それでも生きててほしかったんだけどさ。 ……段々、本筋が迷子になりかけている。戻そう。 話の筋くらいなら、僕にだって戻せるからね。]
(273) nabe 2019/06/19(Wed) 23時半頃
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……だから、ええと。つまり。 僕には、灰谷さんのことは分からないけど、
灰谷さんが死んじゃったり、苦しいのは、 僕にとっても不本意だと思うので、 僕でも役に立てることがあれば、 教えてほしいという話。……なんだけど。
(274) nabe 2019/06/20(Thu) 00時頃
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[ 根掘り葉掘り聞き出すというのも、 聞き出した末に共感をしたり、提案をしたり、 そういうのは、きっと僕には難しい。
いつだって、灰谷彩華と僕の感覚は遠いから。
でも、何が必要かを教えてくれたら、 きっと喜んで力になる。というのを、 一度、きちんと伝えておきたくて。]
……昔、灰谷さん、 猫を抱えて、うちに飛び込んできたよね。 あれは、わかりやすくて、よかった。
[ 一晩だけの不思議な出来事。 あの猫はどこにいったんだろう。知らないけど。]
(275) nabe 2019/06/20(Thu) 00時頃
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小学生の時の話だ。 ずぶ濡れの猫を抱えた灰谷彩華が、 僕の家の前に立っていて、ひどく慌てた。 姉がいるから、子供部屋は無理だよって、 思案した末に、正直に親に話してリビングにいるか、 物置になってる部屋に潜みなよって僕は言う。
忽然と消えた猫はどうしたんだろう。 励ましは下手でも、一緒に探すくらいはできる。
(276) nabe 2019/06/20(Thu) 00時頃
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たぶん、僕にできるのって、 昔も今もそのくらいのことなんだけど。
(277) nabe 2019/06/20(Thu) 00時頃
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[ そう。僕にできることはあまり多くない。 それでも、少しくらいはあるかもしれない。 そしてそれは、話してもらえなきゃわからない。
って、そういうお話でした。それだけのこと。
白い廊下はどこまでも続くわけじゃなくて、 視線の先に、待合室が見えてきたから、 このお話もきっとそのあたりまで。]
嫌でも、閉じこもらないで、 立ち向かうことに決めたなら、 使えるものは、存分に使えばいいと思う。
[ 僕は、のんびりと笑って、でも大真面目に言う。 待合室までは、あともうほんの少し。*]
(278) nabe 2019/06/20(Thu) 00時頃
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社会が滞りなく運営されゆくために、 必要があって設定された、ひとつの仕組み。
(314) nabe 2019/06/20(Thu) 01時半頃
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……としての、僕ら。
(315) nabe 2019/06/20(Thu) 01時半頃
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──病室>>288──
[ 連れていく。>>288と言ってくれたときと、 おんなじように、本当は僕は笑っていたよ。
目を逸らしていた君>>290の知らない話。 僕は微笑んで、小指をそっと絡めかえして、 内緒。と言われて、そのときばかりは、 ほんの小さく喉を鳴らして笑って。 それを幸せそうにって形容してもいいよ。
ねえ、僕らはいつまで、 こういうふうでいられるのかな。
静かに目を閉じる君>>291に、 ほんの一言囁いて、僕はそこを後にした。]
(316) nabe 2019/06/20(Thu) 01時半頃
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果たして、仕組まれた通りに、 君は、僕は、機能できているのでしょうか。 いつまでこの世に仕組まれていられるでしょうか。
……ううん、なんでもなくて。
(317) nabe 2019/06/20(Thu) 01時半頃
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わかってる。わかってるよ。 永遠なんてない。地球が滅ばなくても。
来年も再来年も、それより先も、 きっと夏は来てひまわりが咲いて、 そのとき僕らが変わらずに、 こうしている確証なんて、どこにもない。
確かめようのない未来で、 僕らがどんな形をしているのかなんて、 誰にもわからないってことくらい、
わかってる。わかってる。わかってた。 だから、またね。なんて言って、 また小さな結び目をつくる。 次へとつながるか細い糸を吐く。
……わかってる。
(318) nabe 2019/06/20(Thu) 01時半頃
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…………嘘。 今だけでも、永遠だって信じさせて。**
(319) nabe 2019/06/20(Thu) 01時半頃
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──待合室>>327──
その宇井野くんを運ぶのが、 1番大変そうだよね。 ……灰谷さんのほうでよかった。
[ 大真面目な口ぶりで言ったそれは本心。 マネキンの重さが君の重さじゃないといいね。
というかそのほうが、 宮古さんと高本君が報われると思います。以上。]
(351) nabe 2019/06/20(Thu) 10時半頃
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[ それから。うん。にたまにえ? を混ぜて、 灰谷彩華が相槌を打つ>>329横で、 僕は話し続ける。一区切りするまでは。
話が本筋からズレても、同意がなくても、 前置きに始まり結論に至るまでは。
戸惑ったような目をする灰谷彩華。 に、笑っている僕。やや珍しい。
いつだって、ほとんどの場合、 道案内を頼むのは僕のほうだったから。]
(352) nabe 2019/06/20(Thu) 10時半頃
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[ けれど、戸惑いの末に投げられた問い>>333には、 僕もやや戸惑ったように首をかしげて、
それから、納得のいく言葉を見つけたように一言。]
……友達だから?
[ うん。たぶん、そういうこと。]
友達が、悲しい思いをするのは悲しいし、 力になれることがあればいいなって、思わない?
[ 恐らくこれは、同じ話の再放送ですね。 でも、僕も話をするのが下手で、 特に自分の気持ちは言葉にできないものだから、 そうやって、確かめるようにつぶやいて、それで。]
(353) nabe 2019/06/20(Thu) 10時半頃
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いいよ。鍵はあけておくね。
[ えへへ。と僕は笑った。たとえ話だよ。 いつでもいいよ。ってことだった。僕風に言えば。
きっとあのときもさ、僕の親は気付いていたし、 僕が公園を案内できたのは、その前の時間軸に、 僕を案内してくれる誰かがいたからだった。 つまり、僕はちっとも万能ではないし。
今のご近所さんを物置に押し込めようとすれば、 さすがに、やや問題があるだろうし、 相変わらず子供部屋は相部屋のままだし、 まあつまり、問題は残っているわけだけど。
決意表明じみた言葉>>336がそこにあったから、 僕は、それを静かに笑ったまま聞き遂げて、]
(354) nabe 2019/06/20(Thu) 10時半頃
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[ きっと、結局それが僕らの距離で、 ほら、僕にできるのってそれだけだから。 なんてね。逃げ場くらいは用意をしておくよ。
そんな囁きを返したころには、 待合室にたどり着いてしまって、 僕は廊下を蹴って走り出してしまうので、
明日以降なら、いつだって駆け込んできていいよ。**]
(355) nabe 2019/06/20(Thu) 10時半頃
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[ 学校に行き、予備校に行き、お見舞いに行き、 登校する回数が減って、友人を覆う白が減って、 クリスマスツリーもしめ縄飾りも見なくなり、 つまり、日々は同じ速度で通り過ぎていく。
鶴が何羽いるのか数えるのを買って出て、 寄せ書きの隅っこに、小さな文字で、 「 卒業式でまた写真を撮ろうね 」と。 そう記したくせ、その後のお見舞いで、 卒業式には出られるよね? と尋ねた。 無茶なことを言っていないか不安だったのだ。
毎晩、姉の爪がぎちぎちという傍らで、 僕は自宅にいる時間を受験勉強に費やす、 健全でありふれた受験生として過ごす。
…………冬だった。]
(403) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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[ 冬の終わりが見えてきたころの話だ。 僕は進学先と、春から住む家を決めた。]
(404) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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あのね。高本くん。 家を出ることになったんだ。
(405) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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──数か月後──
[ 晴れやかとは言えないが、 淡々とした語調と表情で僕は言った。
僕はタイミングをうかがって、 ひとりでいる高本悟に声をかけた。 あまり脈略のない切り口だった。
僕の中でそれは、 冷たい校舎に閉じ込められるより前、 あの本当の文化祭の日と地続きの話。
……だったけれど、 話をする順序を少し間違えてしまったので、 たぶん、ずいぶん唐突に聞こえたことだろう。]
(406) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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[ 家から通えることを条件に、 受験する大学を決めたというのに、 下宿先も探してきなさい。と両親は言った。
心配になったのかもしれない。 僕の生活能力とか、社会性とか、 あるいは姉弟離れできない子どもたちが。
直接そういわれたわけじゃないので、 肉親とはいえ、真意はわからない。 両親は、いつもするべきことだけ教えてくれる。 ので、僕はそれにうなずいて、従う。
ただ、国公立に受かった場合と、 私立に進学する場合とで、 家賃の上限に差をつけられてしまったので、 僕はそのときはじめて切実に、 国公立に受からなければ。と思った。]
(407) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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[ それが、あの冷たい校舎を脱した後、 まだ冬のさなかだったころの話だ。]
(408) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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[ それから少し時間が経って、 僕は順調に志望校への進学を決めて、 住む家を見つけて、次の季節を待っている。
それは、僕の話であって、 僕個人の話でしかないのだけれど。]
……思い出したんだ。 高本くんと、文化祭の日に話をしたなって。
血の繋がりは切れない。 決して、逃れられない。
[ 呪詛のような言葉はまだ僕の中に生きていて、 僕はそれを諳んじることができる。>>0:727]
(409) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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……距離を置いたところで、 生きてる限り、家族って繋がりは消えないし、 思うほど、大したことじゃないのかもしれないけど。
僕より劣った可哀そうな家族のために、 従順で優しいいきもののふりをするのは、 たぶん、僕にとっては、手段だった。
僕が生きるための、手段。 生きることを選ぶ理由。
(410) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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でも、僕はあの家を出ていく。
(411) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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[ なんでこんなことを聞かされてるんだろう。 って、思ったかな。どうだったかな。
僕も、はじめは、 どうして自分がこんな話をしているのか、 あまりわかっていなかった。
ただ、自分の言葉で伝える機会は今だけで、 そうしなければ、他人の口から伝わるか、 知られないままだろうな。と思って、
そのどちらも、不本意だったから。 きっと、そのためだけに僕は話し始めた。]
(412) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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[ そして、 滔々と言葉を紡いでいる最中に、 僕はふと気づく。どうして呼び止めたのか。 どうして伝えたのか。何を求めたのか。
結局僕はきっとまだ躊躇している。 あの箱から逃げ出して、自分が、 どういうふうに生きるのか、想像できない。
とても身勝手な話だけれど、 僕は、高本悟の呪いを信じていたかった。]
(413) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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可哀そうな家族を置いてく僕が、 もっと深い地獄に落ちることになったら、 高本くん、そのときは笑ってくれる?
(414) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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[ それはきっと、とても勝手な願いだけれど、 僕はそもそも、身勝手で傲慢で性格が悪い。 から、僕のためだけに、高本悟にそう求めた。*]
(415) nabe 2019/06/20(Thu) 20時半頃
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──教室>>481──
……ありがとう、高本くん。
[ おめでとう。>>481 そう言われて、僕は微笑んだ。
不思議な感覚だった。 きっと、僕はその言葉を手向けられるまで、 祝われたいだなんて、思っていなかった。
不安だったのだ。 家族を置き去りにすることに罪悪感が燻っている。 あるいは、家族に求められなくなることを、 ひどく恐れていたんだと思う。 あれは僕の存在意義だった。
……けれど、ありがとうの言葉と笑顔は、 自分が思っていたより、自然と出てきて、]
(503) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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……ひどいよ。 笑ってほしいと言ったつもりなのに。
(504) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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[ 笑えない。と言われて>>484、 僕は笑っていたみたいだな。 少し瞼の裏から熱くなるのを誤魔化すみたいにさ。
予防線を、張っておきたかったのに。 どちらに転んだとしても、 あの箱の中で呼吸だけをし続けて、 意思なんて持たない方が楽だと思ってしまっても、
やっぱり無駄なことだったなあって、 笑っておしまいにできるように。
なのに、 そんなふうに言われてしまったら、 足掻くしかなくなってしまうじゃないか。]
(505) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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[ 困ったな。というふうに僕は笑ったけど、 別に、本当に困っていたわけじゃない。たぶん。
少なくとも、高本悟に導かれるまま、 いつもと変わらない足取りで、 廊下を歩き、階段を降りて、 見慣れた教室の扉の前に立つことができた。
そのくらいには。]
(506) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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──美術室──
[ 美術部に入りたかった。と、高本悟は言って、 もしそれが叶っていたなら、 きっとずいぶん楽しかっただろう。と僕は思う。
口にはしない。 もう取り戻せない時間の話だから。 自嘲気味に笑う姿を見るのは何度目かな。 高本悟らしくない。とも思わなくなってきた表情を、 僕は正面に捉えて、部屋の中、窓際へと進む。
布のかけられたキャンバスがある。 高本悟の手が、その覆いを外して、]
(507) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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僕のノートを盗ってくれればいいのに。 と、僕はずっと思っていたはずだけれど、 その犯人が今どんな顔をしているか知ったら、 そんな思いはたちまちに消えてなくなるんだろう。
(508) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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誰かの、幸福の糧でいたかった。
(509) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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幸せそうな女の子だな。 ……って、思うよ。
(510) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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[ どう思う? と聞かれて、 僕はそう答えたのだ。静かに笑って。
言葉の持つ印象>>493とは裏腹に、 高本悟の表情は晴れやかだった。
その表情に至るまでの、 葛藤や苦悩を、僕は知らない。
僕は蛭野京輔で、彼は高本悟だから。
だから、僕の抱いた思いを、 果たして高本悟がどう思うのかもわからない。 けれど、それは僕の本心だった。 僕が、僕として、どう感じたかということ。]
(511) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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[ 息を吸う。美術室は静かだった。 そこにいるのは、高本悟と僕だけで、 そこにあるのは、高本悟の描いた絵だ。
少し、目を閉じて、 僕は自分の家族のことを考えていた。 姉さんのこと。
本当は、僕は、自分の家族に、 そういうふうに笑ってほしかったのかもしれない。
笑ってほしかった。 瞼を持ち上げて、もう一度、 見知らぬ少女の穏やかな笑みを見つめる。]
(512) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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……あのね、高本くん。 どんなに足を引っ張る存在でも、 呪いみたいな繋がりでも、 僕は……僕も、姉さんが好きだよ。
(513) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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……今度、絵を描くときは、 僕にも教えて。一緒に描こう。 **
(514) nabe 2019/06/21(Fri) 02時頃
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──後日:病室──
拓海くん、こんにちは。 えっと、これお見舞い。 それから──、これも。
[ 学校帰りといった様相で、 夕暮れどきの病室に顔を出していた。
絵を描いていると人づてに耳にしたので、 食べやすそうなゼリーと色鉛筆と。 それから、僕はスマートフォンを取り出し、 メッセージアプリ上に動画をひとつのせた。
君の端末から開いてくれたら、 見慣れた階段の踊り場と、 見慣れたクラスメートの制服姿が。 ……暇つぶしにいかがでしょうか。>>375]
(646) nabe 2019/06/22(Sat) 08時半頃
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[ 邪魔にならないよう、 隅っこで撮っていたものだから、 通行する人影やおもしろがるギャラリー、 堪えきれなかった僕の笑いが、くっとかふっとか、 なにもかもが入り込んでて、出来は微妙でしょうが、 キメ顔は、ばっちり映っているはず。
ただ、それを見て大笑いをして、 我らが委員長をからかえる人がいないので、 日常の1シーンとしては、ややさみしい。
……とにかく、楽しんでいただければ幸い。
次は予備校に向かうつもりの僕は、 訥々と近況を報告したりもする。 教師の不祥事のこと。学校がピリピリしていること。 それでもみんな日常を生きていること。 僕も、受験勉強をしていること。それから、]
(647) nabe 2019/06/22(Sat) 08時半頃
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……部屋、探すことになって。 僕、あの家を出る。たぶん。
[ 遠方に進学するわけじゃないけど。 と言って、僕は曖昧に笑った。
だって、そのころはまだ、 踏ん切りのつかないままだったのだ。 出ていきたいと、言ったわけでもなかった。
大したことじゃあないんだけどね。 進学を機に家を出る。だけのことですから。 というふうに、なんとなく笑っていたのだろう。**]
(648) nabe 2019/06/22(Sat) 08時半頃
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──冬:病室>>649──
……拓海くんがいないから、 みんな、笑いながら通り過ぎるんだけで、 高本くん、最後までやりきって、 颯爽と去っていったよ…………
[ やや離れてスマートフォンを構えていた僕は言う。 ちょっと思い出して笑いそうな僕である。 このおかしさを共有できたならよかった。 と、僕は清々しいくらい笑う姿を見ていた。
愉快な話もほどほどに、 僕らの日々はいつも通りな一面と同時に、 まるで地獄の様相である。という話もする。
クラスメートがふたり入院して、 いずれも警察が一枚噛むような話で、 それでも、僕の話に戻れば、そこにあるのは日常だ。]
(673) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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……為せば成る。 という言葉を、信じようかと。
[ ちゃんと一人暮らしができるのか。>>652 という疑問をはぐらかしながら、 差し出されたスプーンに口をつける。
林檎だ。と思ってから、 見舞われている人にもらうのは、 どうだったんだろうな。と思ったけれど、 差し出されたら口を開くのは習性で、 ひと掬いはもう喉の奥だったから仕方がない。]
(674) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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[ ひと匙を飲み込む間にも、 減ってく容器の中身の容量>>653と、 食べたり話したり、動く唇を見ていた。]
……うん、そうなんだと思うよ。 そうするべきなんだと思う。 それがたぶん、正しくて、 それができる僕は幸運だよね。
[ 少し目を伏せて、鞄の表面を撫でていた。 それってなんだっけ。と一瞬思い、 ……そう、僕は家を出るのです。 そういう話だね。と思って、微笑んでいた。]
(675) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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でも、それなら、 今までって、なんだったんだろう。 ……なんてね、なんでもないけど。 というか、なんでもなかったんだろうけど。
[ 手持ち無沙汰に動かしていた指先が、 堂々巡りの思考の渦に入ると止まって、
視界に動くものがなくなったので、 僕はまたくだらないことを考えていたなって、 現実に帰ってきたみたいに、へへへと笑う。
気づいたら、ゼリーは空っぽになっていて、 もうすぐ予備校に行く時間だった。]
(676) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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……うん、それじゃあ。 そろそろ行くよ。またね。*
(677) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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[ そして、雪解けの季節が訪れる。]
(678) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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──教室>>656──
[ 自席で昼食を取ろうとしていて、 目の前に落ちた影>>657に顔を上げた。 唐突な話に面食らいながらも、僕は微笑む。]
……部屋? あ、えっと、目星は。 なんで受験のときに仮押さえしないんだって、 しこたま叱られたとこ……ですね。
[ やや気まずそうに僕は目を逸らす。 ジュースのパッケージの赤い林檎に視線を逃す。
せめて合格発表後すぐに動くべきだったらしいけど、 なにもこだわりがあるほうでもないし、 選びたい人が選びきった頃合いに、 残ってるところから選べばいいと思っていたのだ。]
(679) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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[ ぼんやりしている。 と言われるのはおそらく正しくて、
例えば部屋のことがひとつそう。 それから、そのとき視線を逸らした後、 ややすると再び養拓海のほうに顔を向け、 ためらいのある口ぶりで、ようやく尋ねるのだ。]
……本当に進学しないの?
[ 友人の進路を心配するのであれば、 それはタイミングとして遅いだろう。
けど、その頃まで僕のぼんやりとした頭は、 早く元気になるといいなということや、 卒業式には出られそうでよかったなあとか、 そういう、おめでたいことに囚われていた。]
(680) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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[ ……あるいは、当人から話されていないことを、 こちらから踏み込むのは、怖い。 ので、直接尋ねるのは初めてだと思う。
どんな表情と言葉が返ってくるのか、 自分がどう答えてほしいのかもあやふやなまま。
とうとう僕は尋ねてしまって、 静かに答えを待つしかないのだ。*]
(681) nabe 2019/06/22(Sat) 14時半頃
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──教室>>694──
新入生向けの物件なのに、 11月とかに解禁になるなんて、 参考書には書かれてなかったからね……
[ 見透かしたような物言い>>695に、 僕は情けない顔をして笑っている。
両親やお兄さんぶった友人の言うことを、 もっともなので、素直に聞き遂げる気はあって、]
早いとこ見つけるよ。 もともと家から通える距離なんだから、 見に行くって言ってもすぐのことだし……
[ パンをかじりはじめた友人を前に、 会話の合間に弁当の中身を啄ばんでいく。]
(701) nabe 2019/06/22(Sat) 17時半頃
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……就活も長期戦なんだねぇ。
[ その道を行かない僕に言えることはあまりなく、 僕はそんなふんわりとした感想を述べて、 気にしていたかという問いに答える代わりに笑って、 ピックの刺さった林檎のひときれを差し出す。 この間のゼリーのお返しだ。加工前だけど。
自分もまた、もぐもぐと口を動かしながら、 ふざけた調子で続けられる言葉を聞いている。>>697
ゆっくりと咀嚼を繰り返しながら、 ニュースとか、噂とか、 養拓海の口から直接聞いたことのないことを思い、 なぜか思い出したのは夕暮れ時の病室で、]
(702) nabe 2019/06/22(Sat) 17時半頃
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[ やめとけ。と君が言うので、 考えない努力は、している。]
(703) nabe 2019/06/22(Sat) 17時半頃
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[ そのとき僕はどんな顔をすればいいのかわからず、 どんな顔もしないよう曖昧に笑ったんだと思うけど、]
(704) nabe 2019/06/22(Sat) 17時半頃
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[ 距離を置いて、ずっと一緒をやめることで、 きっと少しずつ、頭の中身を入れ替えるのだ。 ……と、そのとき考えた。]
(705) nabe 2019/06/22(Sat) 17時半頃
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いいよ。鍵、あげる……
[ 自分にひとつ。実家にひとつ。 とすると、たぶんひとつ余るだろうしさ。
それに、僕にとって家とか部屋ってやつは、 帰れば誰かがいて、 物音がして、人の気配がして、 ……ずっと、そういうものだったので。]
ひとりの部屋で過ごすの、 とうぶん慣れそうにないし…… きっとさみしくなるから遊びにきて。
[ 君よりお兄さんであるはずのところの僕は、 あまりそれらしいことは言えないので、 甘えるようなことを言うのだけれど。]
(706) nabe 2019/06/22(Sat) 17時半頃
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……ひとりの家にいてもさ、 息が詰まることが、あると思うし。
[ そのときはおいで。
……と、静かに言う僕は目を伏せているので、 少しくらいはお兄さんぶれたかしら。 と思っても、君がどんな顔したかわからないのだ。*]
(707) nabe 2019/06/22(Sat) 17時半頃
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──教室>>712──
終わりなんて来ない。 ……って、思ってたからね。
[ 笑っているのに紛れ込ませるみたいに、 僕もさらりと言って、笑っていたはずだ。
終わりなんてなくて、ずっと一緒で、 だから近場の大学に家から通う。 そう思っていたけれど、そんなことはなかった。
ということを、ただ事実として、 言えるようになればいいのだと、 そのときの僕は思っていたもので。
ふんわりとした言葉に混ぜて、 林檎が噛み砕かれる音を聞いていた。]
(739) nabe 2019/06/22(Sat) 21時頃
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……さすがに、相手は選んでるよ。 拓海くんを信頼をしているってことです。
あのねえ、僕だって、 何言っても照れないってわけじゃあないんだから。
[ 言わせないでよ。というふうに、 僕は箸を置いた手を顔の前でひらひらと振った。 いわゆる勘弁してくれ。のポーズですね。
冗談ぽくそんなことを言って、 話は終わりにしようかと思ったのだけれど、 君が珍しく心細そうな顔をしているので、 僕は微笑んで、お兄さんぶるとかじゃなく、 ただ僕の意見として、言葉を紡ぐ。]
(740) nabe 2019/06/22(Sat) 21時頃
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たぶん、僕はさ、 ああしたらとかこのほうがいいとか、 これからもきっとうまく言えないけど、 でも、ここにいるから。
何を大事にしたっていいし、 大事にするのをやめたっていいし、
息継ぎをしにきてもいいし、 もし帰りたくなくなったら、 ずっと置いといてあげるし、 どこに行ってもいいんだよ。
(741) nabe 2019/06/22(Sat) 21時頃
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[ ごちそうさまでした。と手を合わせた。 修学旅行でもUNOとかしたなって思いながら。>>720
そしてまた唐突にも差し出された封筒>>721を、 僕は不思議そうな顔をして開封して、それで、]
……たいしたものかどうかは、 もらった僕が決めるよ。
──ありがとう。すごくうれしい。
[ ただただうれしい。という顔をして笑おう。
ほら、あの世界では思い出のかけらを、 お化け屋敷に落っことしてしまったものだから。]
(742) nabe 2019/06/22(Sat) 21時頃
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[ 部に置いたままの作品。 には、間違いなく心当たりがあって、
忘れていたわけじゃなかったんだけど、 置いたままであるのは確かで。]
……もう少し、部屋のこととか、 落ち着いたら引き取りにいくよ。
[ と、やや濁した言い方をする。 高本悟の絵を見る前のことだった。*]
(743) nabe 2019/06/22(Sat) 21時頃
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──3月:美術室──
[ 美術部の顧問である教師に声をかけ、 準備室につながる扉をくぐる。 卒業式を目前に控えたころだった。
伝言>>763が伝わってから、 少し時間が経っていたからか、 教師は何かを言いたそうにして、やめた。
ええと、すみません。 僕は扱いづらい生徒だったでしょうか。 ……とも言えず、僕は笑みと会釈を返すばかり。]
(777) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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[ 美術準備室のあちらこちらに、 作り手が置き去りにした卒業生の作品が、 放り出されているのを知っている。]
(778) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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[ あのとき>>743、 言葉を濁しながらも引き取ると言ったのは、 そこに、混ざる姿を想像して、なんとなく、 ……なんとなくなのに強く、拒否感があったからで、]
(779) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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[ ……まだ、放り出されてはいなかった、 赤黒い、人の頭ほどの大きさの塊の前に僕は立ち、 あの、どこか遠いような、今と地続きのような、 不思議な世界でしたように、指を伸ばす。
あのときと違い、指の腹に力を込めることも、 爪を立てることもなく、指先だけでそうっと、 瞼に触れ、頬を撫ぜ、口角をたどる。]
(780) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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本当は。 考えたりもしたのだ。 例えば手を加えて美しくしてやろうとか、 せめて表情だけでも、笑みを象ろうとか、 この淡々と時を刻む校舎に置き去りにしようとか、 いっそどこかで燃やしてしまって、 そのあとの灰をひとつまみだけ持ち帰ろうとか。
(781) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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[ そのどれも実行せずに、僕はここにいる。]
(782) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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これが僕の姉だ。 僕の知る姉の姿だ。 僕の望んだ形とひとつも重ならなくても。 僕の、たったひとりの姉なのだ。
(783) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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受け入れるべきなのだと思う。 あの爛れた指先ではなく、些細な事実を。
(784) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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笑って。と言われて笑ったって、 絵の中の痩せたおんなのこのように、 僕の姉が穏やかに笑うことなんてない。 姉は幸福ではなく、僕は無力である。
(785) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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……その上で、僕は、 姉の幸福の糧になれないから。ではなく、 僕自身がもう少しうまく呼吸ができるよう、 ひとつの箱を出ていくのだと。
(786) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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[ 両腕に、家族の頭を抱いた。 壊さないようにそうっと。
こういうふうにしていれば何か違ったかな。 と、未練がましく思う僕はやっぱり僕で、 そう簡単に踏ん切りはつかないし、
それでも、そんな自分を思わず笑ったので、 笑えてしまったので、これは小さな変化です。
突然ちいさく笑い出した僕に、 先生がギョッとした顔をしたとしても、 悪くはないな。と、僕は思う。]
(787) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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それでも、 僕らの関係が歪でも、醜悪でも、 どんなに世間一般に受け入れがたいものであっても、 僕にとってそれが大切であったことは変わりはなく、
(788) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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僕は、僕の家族のことが好きで、 それとは関係なく、新たな道を歩きだす。
(789) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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……それだけのこと。
(790) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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……先生、お世話になりました。
[ 大切な荷物を抱える。 程度の手つきで、僕はそれを携えて、 3年間お世話になった教師と教室に、 ひとまず別れの挨拶を告げて、頭を下げた。
その返事の代わりに、言いにくそうに、 紙袋をやるからそれに入れてはどうかと言われ、
ぼんやりとした僕は、 なるほど盲点であった。と頷く。]
……どうにも抜けていて。いけないですね。
[ いただいた袋に家族の頭、 …………のようなものを入れ、 僕は朗らかに笑い、恥じるように首を傾げた。*]
(791) nabe 2019/06/22(Sat) 23時半頃
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[ 春の陽射しが綻ぶ。]
(892) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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──自宅──
[ 広くなった。と錯覚する。 ひとり部屋になる子ども部屋の話だ。
引越し先に持っていくものなんて、 部屋の隅に置いていたベッドくらいで、 ごっそりとものが減ったわけではないのに、 まるで別の部屋みたいだ。
家を出ていく僕にも、 姉はやっぱり何も言わないし、 母の急かす声ばかりが階下でするので、 僕らの別離は劇的なものにはなりそうにない。]
(893) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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[ この部屋を出ていく。 出ていって、そう遠くない場所で暮らし、 たぶん、時々は帰ってくるけど、 とりあえずは、家を出ていく。
……というときにふさわしい言葉を、 残念ながら僕は持ち合わせていないし、 姉もやっぱり無言のままで、
かといって、 黙って背を向けるのも違うと思い、
僕はゆっくりと姉のもとへ歩み寄り、 いつも俯いているその顔を覗き込むように、 座ったままの足元にそっと膝をついた。]
(894) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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……姉さん、あのね。
[ 膝の上に置かれた手に、指先でそっと触れる。 ざらついた肌の感触はよく知ったもので、 僕よりも熱い手の体温も、いつもと同じ。
あの冷たい校舎から帰った日から、 その指が僕の頬や瞼に触れることはなく、 気晴らしのような戯れは、 間違いなく終わってしまったんだろうけど、
何も変わっていない。 ……と、僕は思って、 安堵したのか、泣きたいのかわからない。]
(895) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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ばかみたいでも、 姉さんの心が晴れるなら、 なんだってしてあげる気でいたよ。 必要とされたら、うれしかった。
姉さんは、僕の家族だから…… 僕は姉さんのことが好きだよ。今も。
(896) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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……でも、もう行くね。
(897) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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[ 階下で母さんが呼んでいるから。 僕が、その道で足掻くことを選んだから。
立ち上がって、歩き出そうと。 その手を離そうとして、
触れるだけだった僕の指先に、 姉の指が静かに絡む気配がしたので、 それを引き抜くように、僕は立ち上がる。
口を閉ざしたままの姉のつむじ。 それを見下ろしていた僕が、 どんな顔をしていたかなんて、 姉は知らないし、誰も知らなくていい。]
(898) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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僕は、出て行くよ。 姉さんも、生きて。
(899) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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[ ひとりで眠るには広く静かな部屋を去る。*]
(900) nabe 2019/06/23(Sun) 17時半頃
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[ 夏の気配の混じりはじめた、眩い初夏の朝日。]
(940) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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──自室──
[ ──に、目を覚ます。
どうして東向きの窓際に、 ベッドを設置したんだっけ……?
カーテンを引くということを、 僕はなかなか覚えられないし、 雨戸なんてものもなければ、 光を遮る建物などもないわけで、
目覚ましの鳴る前に、 非常に爽やかな朝を迎えたわけだけれど。]
(941) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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…………おはよ、
[ う。まで言うのが、習慣だったので。 一言笑って声をかけ、階下に降りるのが。
もう必要はないとわかっているものの、 半分寝ぼけたまんま、口を開いて、
……子ども部屋じゃ、なかった。 と思い、言いかけた挨拶を飲んだ。
ベッドからそろりと降りる。 広い住まいではありませんが、 洗面所が近いのは、意外と便利だ。
朝が苦手というわけでもないんだけれど、 血圧が高い方ではないし、というか低いし、 早く目を覚ましてしまおうと思って、]
(942) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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[ 顔を洗おうと覗き込んだ鏡の中に、 あんまり不機嫌そうな男がいたもんだから、]
(943) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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[ ……それってつまり、僕なんですけど。]
(944) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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[ 不機嫌そうな彼が、次の瞬間目を丸くして、 そのあと、合点がいったとばかりに笑うので、 そういえば僕は、こんな顔をしてたんでした。
それだけの話。それだけのことだし、 今の僕はすでに、鏡に笑っているんだけれども。
なんとなく僕は、とある友人の顔を思い出し、 ともだち≠轤オく、お泊まり会でもしてくれれば、 気色の悪くない顔をお見せできるかも。と思う。 まだまだ、手始めに。というところですが。 ほんの小さな変化というやつです。]
(945) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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本当にそれだけのことなんだけれど、 それが、僕にはたいそう愉快でして、
(946) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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ひとつめの楽しみに据えた夏を目前に、 ひまわりはまだ咲かないけれど、 愉快に思っていられるうちは、 まだ来ない日>>193を待っていられる、と思うし、
(947) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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思い出す一瞬>>293なんて言わずとも、 夏が来なくて、ひまわりが咲かなくても、 世界が滅びゆくときがやってきたとしても、
(948) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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きっと僕はずっとこうして君を待っている。*
(949) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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[ ──などと、思っていたのは嘘ではなくて。]
(950) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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[ 「夢幻病棟」という文字>>931に笑みをこぼした。 あれから、約3年の月日が経っていた。]
(951) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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SUB:RE:「夢幻病棟」からのお知らせ ------------------------------------ おはよう、こんにちは、こんばんは。 久しぶり? になるのかな?
とにかく、久しぶりにみんなで集まれるといいよね。 お店の手配とか、用意するものとか、 手伝えることがあれば、教えてください。
楽しみにしています。またね。
(952) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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──3年後──
[ 相変わらず、メールは下手です。 直接の対話も似たようなものだけれど。
打ち込んだ数行に、 誤字がないことだけを確認し、 迷わず、送信ボタンをタップした。
みんなで集まるとすれば、 それはずいぶん久しぶりになるかな。 誰かが、ぬいぐるみを持ち込むなんて知らず、 何か思い出話の種になりそうなものがないか、 ぐるりと部屋を見回しもしたけれど、
いつかの強気な宣言に則り、 大切なものとして飾られたまんまの、 スケッチが1枚、壁にあるくらい。]
(953) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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[ ものが少ない。と言われる部屋に、 生憎、そんなに面白いものは転がっていないし、 メイク用品のたぐいももちろんないので、
何か必要なものがあれば、返信があるだろう。 ……と、指示待ちなところも変わりません。
相変わらず、の部分の方が多いけれど、 堂々巡りの旅に夢中になることもあるけれど、 少なくとも、こうしてメールに返事を打てる。
納得のいかないことばかりの、 ままならない世界を今日もゆく。
なので、そうですね。 集合時間に遅れる人がいたなら、 不機嫌そうな顔くらいはしてみようかと。]
(954) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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[ ……想像して、僕はやっぱり笑った。]
(955) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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つまり、僕の優しい地獄はこの冬も続く。**
(956) nabe 2019/06/23(Sun) 21時半頃
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