193 ―星崩祭の手紙―
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「起きて!」
[ 今日は。 雑なノックの音では無くて。 頭の中で響く少女の声で、目が覚めた。 昨日訪れた時と同じく、 ふたつのカプセルを抱えて、 少女は寝転がっている男を見下ろしている。 ]
(16) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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「カプセル来てるよ。こっちは返事かな」 「それから、はい。もう一通」
[ 銀の蓋に、金の装飾の施されているカプセルと、 それからもうひとつは、見覚えのあるかたちのカプセル。 腕を掴まれたまま起き上がってそれらを受け取り、 まず見るのは、見覚えのある方。 はて、と、声を出さずに首だけ傾げれば。 カプセルの中、やはり見覚えのある手紙を見る。 ]
(17) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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「どうしたの?」
[ 不思議そうに見上げる少女と、 視線を合わせる。 ] "偶然ってあるんだな、って思ってた"
[ そう、ひとつのカプセルは。 昨日返事を送ったあの子から再び来ていた。 これはきっと 素敵な偶然だろう。 手紙と、同封されていた小瓶。 その中に入っている星形のキャンディーを、 煙草の代わりに口で転がすことにする。
背から覗き込む少女に瓶を手渡して。 ]
(18) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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"なあ、もしかしたら" "お前にトモダチが出来るかもしれない" [ 食べよう、と瓶の中を示せば、 少女の表情がたちまち晴れやかになって、 星を、口に閉じ込めたから。 感想を聞かずとも、分かるだろうと。 伝えるだけ伝え、少女から離れて机へ向かい、 今日もまた、ペンを取った。 ]
(19) 2016/07/18(Mon) 22時半頃
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「買ってきておいて良かった」
[ 男を起こす時、 少女が何処かに出かけたような服装だったのは、 どうやらこういう時のためのものを買っていたらしい。 こういうところは、きっと彼女に似ている。 さて、触れる少女の手と声を感じつつ。 返信用のカプセルを閉じて、 今度開くのは、銀の蓋。
ガラスのような半透明の紙に、 群青の文字が走っている。 人柄を感じさせるその文字に、 何時かの彼女と似たものを感じて。
ふ と 笑みを零した。 ]
(21) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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"なあ" "ここの空って、星は見えたか"
「滅多に見られないって母さんは言ってた」 「だから、星崩祭で、星の波を見たいって」
[ 『自分が住んでいるところなのに!』 と、彼女がいたなら、言うのだろうか。 星は異なれど、男と同じく、家族のいる相手。 彼にあって、男に欠けているものは、 自分に問わずとも分かっていた。 ]
(22) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[ ―― 結局。 過去にいるだけの彼女に、幸せだったかどうか、 男は聞けずじまいだった。
聞けずじまいだったし、 終ぞ、言えないまま、だった。 ]
(24) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[ 同封された一枚の写真を、 傍らの少女とともに見ること、暫し。 ]
"…写真、残すか" [ 一寸の、間。 触れてはいるけれど、迷っているかのような、 そんな、少女の動きがあって。 ]
「良いよ」
[ 男と同じく。 何時かを後悔しているような顔で、笑む。 ]
(26) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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「父さん、もっと色々伝えれば良いのに」 「母さん、父さんの声が好きだって言ってたから」
[ 発するものじゃあ、ないのに。 "声"が好きだと言うのは、 なんだか不思議な表現だった。
手紙に書かれていた文章が 過ぎる。 発さなくても、思いが乗せられれば、 声 なのだろうか。
少女の電子機器。 写真の撮られる音を聞きながら、 そんなことを 思った。 ]
(28) 2016/07/19(Tue) 00時頃
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[ もう一通。 今度は少女に言われずとも、 自然とペンを走らせていた。
出来たばかりの写真を見つめる少女が、 「もうちょっと笑ってよ」なんて、 くすくす、男の腕に触れながら伝えてくる。 ]
(40) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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"生憎、お前と違って、慣れていないもんで" [ 今日は特に結ばれていない髪を、 乱雑にかき混ぜて、同じく笑う。
家族写真。 きっとはじめての、それに。 少なからず心が晴れたのは、 男と、少女。互いに同じだったのだろう。
同時に 後悔、も。 押し寄せてくるのだけども。 ]
(41) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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[ ふたつ。 カプセルを閉じれば、再び飛ばし。 ふと 横へと視線をやる。
暗闇を見上げた少女の瞳が、 ぱちり 瞬くのが見えて。 何時かの彼女のように、星がこぼれ落ちた。
気が した。 ]
(42) 2016/07/19(Tue) 00時半頃
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