48 マーメイドライン
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― 仕立て屋の朝 ―
[その日の朝は、常より少しだけ特別だった。 ――といっても、海に浮かぶ伝承の光に感動した訳では無い]
『ころろろん ころろろん』
[目覚まし時計よりも先に、店に昔からあるレトロな電話の音に起こされたからだ。 電話は、都会に就職したきり音沙汰の無かった懐かしい友人からの物だった]
(0) 2012/05/17(Thu) 00時頃
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[街中でマーメイドラインが噂になっている事を知ったのは、それより少し後、店を開けてから。 装飾品を好む女性達は、噂好きの女性達でもある。 「とても綺麗だったわよ」と海色のボレロを注文した客の言葉に、「あたしも機会があれば見てみたいです」と返す言葉に特別の想いは無い]
[見てみたいと言ったのは本音だけれど、「機会があれば」と言っているうちは『機会』など来ないものだ]
(1) 2012/05/17(Thu) 00時頃
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[昼を少しばかり多めに回った時間。 約束の時間に合わせ、店先に『CLOSED』の札を下げてお気に入りのワンピースに袖を通してから表通りに向かった]
「ラヴィ、ひっさしぶりー!」
[約束のカフェに友人の姿を見留め、大きく振られる腕に小さく手首の動きだけで応える。 懐かしさに口元が綻ぶけれど、その学生時代の愛称を大声で叫ばれるのは好ましくなく、厚い前髪の下で僅かに眉を顰めた]
(4) 2012/05/17(Thu) 00時半頃
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「やー、相変わらずその暑っ苦しい髪型なんだね。なに?まだ先生に操立てしてるの?」
[彼女は先に注文を済ませていたのか、運ばれてきた冷たい珈琲のストローを咥える口で、開口一番に問いを寄越した。 配膳を終えたウェイトレスに注文をしようと開けた口が、思い掛けない内容に思わず「え?」と問いを返す]
「だってアンタ。クラリッサ先生が綺麗だって言ってくれた物を、他の人に見せたくな――」
――――っ、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?
[慌てて旧友の口を塞ぐ]
(5) 2012/05/17(Thu) 00時半頃
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[唐突に、当時の事を思い出した。 たかだか数年前とは言え、若さに任せて浮ついた思考をだだ漏れにしていた事を目の当たりにさせられるのは居たたまれない気持ちにさせられる。 しかもよりによって、何故口が軽く人の感情の機微に疎い彼女に話してしまったのか]
……あの、何でもありません。 紅茶を頂けますか?
[ウェイトレスに向き直ると、引き攣った笑みを浮かべながら注文を済ませる。 「誤解されたらどうするの!」と恨みがましく旧友を見詰めてみたものの、彼方から瞳は見えないので効果の程は怪しい]
ああもう。 このカフェ当分来られないわ……。
[紅茶と軽食の美味しい、良いお店だったのに]
(6) 2012/05/17(Thu) 00時半頃
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[それからどれくらい経っただろうか。 旧友と近況や古い話に花を咲かせていると、時の過ぎるのはあっと言う間。 彼女は親戚の結婚式の為に帰郷しているらしい。「これから美容院に行かなきゃ!」と慌ただしく去って行った]
………………。
[カフェを出て、潮の香りを辿る。 潮風が髪を乱すのもそのままに、足元に纏わる長いワンピースの裾を、僅かに煩わしいと思いながら]
(7) 2012/05/17(Thu) 01時頃
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[旧友の声が脳裏に蘇った]
「……クラリッサ先生は、海に『喚ばれ』たんだよ」
[懐かしさに飽かせ、先生の近況を知らないかと訊ねた己に返った応え。 もう何年も前の事。 先生は、既に生を絶っていた]
[知らなかったのかと気の毒そうに告げた彼女の表情が、心に刺さる心地がした]
(9) 2012/05/17(Thu) 01時頃
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― 港 ―
[街の喧騒を抜け、海へと足を向けた。 漁の時刻を疾うに過ぎ船も無く、常ならば釣り人でそこそこ賑わいを見せる桟橋。 釣り人達がマーメイドラインを見物しようと集まった野次馬を避けたのだろうか、今日はやけに静かだった]
[桟橋の先まで歩み、服が汚れるに構わずぺたりと座り込んだ]
……マーメイド、ライン。
[見たいと思った訳では無いけれど、そこにもう光は無い]
なんで、ヒトを喚ぶの。 あなたの側には永遠が、愛しい人が、いるのではないの。
[伝承の光が出会いの光だとしたら、今朝方の光は。 海に消えた二人は、今も共に在るのではないのだろうか。 海の泡しか知らぬ、伝承の結末は]
(25) 2012/05/17(Thu) 22時頃
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[伝承の先など誰も知らない。当人以外は、知りようも無い事。 それだというのに、伝承の二人が分かたれた可能性を思い、ふいに苦しくなった]
…………ッ。
[両の腕で脚を抱え、顔を埋める。 傍目には気分を悪くしたように見えてしまうかもしれない。 けれど、零れ落ちそうな涙を堪える為にも、一度海から視線を外したかった]
(28) 2012/05/18(Fri) 00時頃
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[厚い前髪でも遮り切れない視界を、簡易な暗闇で閉ざして目を瞑る。 苦しさが徐々に遠退くに任せていると、気遣わしげな声>>30と、背に温もりを感じた]
……ぁ。 だ、だいじょうぶで――
[慌てて顔を上げた途端、目尻に溜まっていた涙が一筋流れ落ちる。 只の重力にか、人肌の熱に安堵を覚えたか]
[堪え切れず零れた涙を、視界を塞ぐ前髪と共に手の甲で拭い去る。 そうして繕い切れぬ体裁を繕ってみせてから、声の主を見上げた]
(31) 2012/05/18(Fri) 00時半頃
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[海風が冷たい。 前髪を払い風を直接受ける瞳は濡れていて、ひんやりとした外気を感じさせる]
………………ぁ。
[目の前には、十代も半ばの小柄な少女。 身を屈め視線を合わせられた事に気付いたのは、彼女の瞳に己の瞳が映り込んでいたから。 一拍の後、慌てて前髪に瞳を隠すより先に、掛けられた優しい言葉に顔を歪めて]
――っふ、く。 う、ぁぁぁぁぁ………
[嗚咽が漏れた]
[優しい言葉は笑みを形作っているのに、何処か自分の抱えた感情に似通った響きを持っていて。 それが哀しかった]
(33) 2012/05/18(Fri) 01時頃
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[溢れた涙を手の甲で拭い、鼻を啜る。 拭っても拭っても涙は溢れ出て、喉からも言葉にならない音が漏れ続ける。 優に片手程も年嵩が下の少女の前で泣き出した事を気にする余裕は残ってはいない]
[ふいに、視界が暗くなった。 頬に当たる柔らかな布の感触と暖かさに、それが抱き寄せられたからだと知れた。 少女の腕の中、また、新しい涙が瞳に滲む]
(35) 2012/05/18(Fri) 01時半頃
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……好きだったの。 幸せでいて、欲しかったの。
[差し出される温もりに縋り、吐き出すように口にする。 脈絡の無い言葉は、少女に正しく伝わるとも思えない。伝える為の言葉では無い、只の独白]
[気の迷いでも何でも、好きだった。 その後、好意を持ち付き合った誰とも瞳を合わせる事が出来なかった程度には]
海になんて往かないで ……また、綺麗だって――言って欲しかった。
[来ない『いつか』を待って、機会を永遠に失くした。 それを哀しいと感じているのは、今の自分なのか少女の頃の気持ちなのか]
(36) 2012/05/18(Fri) 02時頃
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[――そうして暫し。 泣くだけ泣いて、喉も枯れて、吐露するだけ吐露をして。 ぐすぐすと鼻を啜り、少女から身を離した]
……さびしい。
[もう一度映り込んだ瞳の中に、見えた感情。 呟いた言葉は、独白のようでもあり、少女への問い掛けのようでもある]
(37) 2012/05/18(Fri) 02時頃
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[ほぼ初対面の相手に見せるべきでなかった姿。 それを受け止めてくれた少女に、冷静になりつつある頭がじわじわと今更な羞恥を掘り起こす]
ありがとう。 ――……海はね、大切な人を連れて行くの。
[羞恥から、言葉を重ねた。 飛行機事故で死んだ両親も、最期は海に墜ちたのだという]
でも、海を嫌いにはなれないの……不思議ね。
[そこまで口にして、泣き疲れて呆とした頭に差し込む物があった]
(38) 2012/05/18(Fri) 02時半頃
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[抱え込むとどうにも出来なくなると告げた少女。 それは年頃の少女らしい背伸びをした言葉とも取れるけれど、彼女の声に滲む色はそれを否定していたように思う]
[暫し逡巡して、まだ僅か掠れた唇を開いた]
あのね。 大人が泣いて良いなら――
[子供が泣くのは当然の権利だと、まだ残る逡巡の中に続く言葉を隠す。 瞳に降り掛かる前髪の下で、目元を濡らす水滴を指先で*拭った*]
(39) 2012/05/18(Fri) 02時半頃
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[相槌のような、返答のような、小さな頷き。>>55 背に回された手が、暖かい]
……還って?
[照れ隠しのように重ねた言葉に返された少女の言葉に、僅か瞠目する。 そしてその後に続いた『兄』の言葉に、少女も海で大切な人を亡くしたのだと思う]
[だというのに。 泣いても良いと言外に含めた言葉に返るいらえは、赦しを求めるような響きを持って]
泣けるときに泣かないと、動けなくなっちゃうわ。 ……でしょう?
[頬を涙でべたべたに汚したままで格好など付く筈も無いけれど、精一杯大人らしい――道化染みた振る舞いで、小さく口元に笑みを作ってみせる。 彼女の気持ちが少しでも軽くなるように祈りながら、彼女の頬を濡らした涙の跡を視線で追った]
(65) 2012/05/19(Sat) 00時頃
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[海に還った人達は、誰かの大切な人達は、寂しかったのだろうか。 だから誰かの還った海に、還って行ってしまったのだろうか]
[今、その人達は、寂しくないのだろうか。 自分達は、とてもとても寂しいのに]
………………。
[海色を溶かしてしまう程に流した筈の涙が、またじわりと滲んだ]
(67) 2012/05/19(Sat) 00時頃
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