237 それは午前2時の噺。
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[柱、田畑、柱、田畑、柱、住宅地、柱……────
不規則な揺れは硝子窓越しの景色を変えていく。瞬き一つ入れてしまえば、フレームで切り取ったはずのつい先程の景観すら、記憶から零れ落ちるほどに。 ほう、と外気に息を散らしていく。空席の目立つ車内に落ちる色は無い。アナウンスと同時に開かれた扉、流れ込む風に雪の名残も無く、穏やかに仄めく温かさは春の兆しを窺わせた。
柱、家、人影、柱、田畑、柱、住宅、柱………
馴染みの町から離れれば、人の手垢の付いた街並みが広がっていく。車窓のフレームは外の変化を見逃すことなく映し出していた。落とされるシャッターの数々、誰もが見逃してしまう写真を掬い取っていき、――――モニターに立ちはだかる人影が、腰を下ろした。 外界とを繋ぐ扉からは、やがて個性の波が押し寄せてくる。人、人、人、……引くことのないささやかな喧騒はすぐ傍にあったはずの兆しを呑み込み、情趣をも連れ去っていかんとする。残ったのは、圧迫感からの僅かな苛立ち。 ああ、酸素が、欲しい。
酸素。]
(26) 2018/03/24(Sat) 15時半頃
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酸素ってさ、
[一旦呼吸を意識してしまえば薄らぐ空気の影を追うように、目の前の景色が他人事と化していく。 意識は過去へと、吸い寄せられていった。]
(27) 2018/03/24(Sat) 15時半頃
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酸素ってさ、酸っぱそうとおもわない?
何、突然。生理?
ばぁか、ちがうっての。
[笑気を乗せた音は口元を覆う読みかけの文庫本に阻まれて、くぐもってしまう。 ウッドテイストの店内に洒落たシャンデリアが柔らかな明るさを齎した。あちこちに咲く控え目な談笑の花と軽快なビッグバンドジャズを背景に、一冊の世界と、少し苦味の効いた珈琲。 ここ好きかも、行きつけの喫茶店の内観を一瞥した彼女の呟きに自分が誇らしく胸を張ってしまいそうになるのを押さえた。何事も無いように頁を捲り続ける。BGMが鳴りを潜め、煌々と呼び起こされる世界は自身の胸を抉り突いてしまうもの。 実家へ戻れば温かい笑みで迎えてくれる親。果たして、この世界のように内に巣食うもの抱えながら、自身を見守っているのだろうかと。]
(28) 2018/03/24(Sat) 15時半頃
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酸素が酸いと仮定して、だ。 今吸ってんのは、どんな味がしてんのよ。
んー、…… あまい?
[世界から目を逸らすように重ねた問い。大きく息を吸い込んだ彼女に、じゃあ此処には酸素が無いわけだ、と一言。途端に、文庫本から視線を上げて、うぇ、と表情を歪ませていった。 読書サークルという数少ないホットラインから繋がった彼女、ヒトとの接触よりも本との密な関わりを選んだその眼差しが本から持ち上がることは数少なかった。僅かな逢瀬にも、自身と彼女を繋げるのは一冊の本。同じ世界を分かち合うひと時も穏やかで温かなものだったのだが、次第に欲が差し向けられるのは別の方で。]
……きっと、中和されたんだよ。
(29) 2018/03/24(Sat) 16時半頃
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[長い沈黙の後、したり顔で言い放つ唇はカップの縁へと宛がわれる。こく、角張ったものの無い、なだらかな傾斜に滑り落ちていくアイスティーは空気よりももっと甘いはずだろう。傍には破られたスティックシュガーの包装が幾つも積み重なっていた。一本、取られた振りをしてみるのは、上機嫌に綻ぶ彼女の口許が見たいからかもしれない。 やがて見届けた世界から退くように、文庫本を閉じて置く。目の前には既に此方へと戻ってきた彼女が、爛々と感想を期待するような視線を送ってくる。二人だけの閉ざされた読書会、―――今日のひと時をそれだけにするつもりは、この本が題として選ばれたときから、無かった。]
――――――…… 。
[具体的な物言いは、とうに出来ない年頃に互いになってしまった。一言二言、書をなぞりながら囁いた後に、差し出す1カラットのダイヤの指輪。すう、と見開かれる目に、その肌白い頬と同じく熱が灯されていくのを見逃さずにいた。
あの世界が織り成すものが造花ならば、この先に続く光はきっと、精彩豊かな生きた花溢れかえっているものだと、信じて疑わない。]
(30) 2018/03/24(Sat) 16時半頃
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[信じて、疑わなかった。]
(31) 2018/03/24(Sat) 16時半頃
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[柱、建物群、柱、ビル群、柱、ビル群……。
同じ屋根の下で暮らし始めて数年が経った。彼女との逢瀬は、本を跨らずとも手を、頬を、その柔い肌を重ね合わせることができる。 その薄い唇すらも触れることが出来るのに、其処から紡がれるのは呼吸音だけ。 果たして、彼女の言葉を聞いたのは何時だっただろう。彼女の微笑みを見たのは何時だっただろう。絶え間なく規則的に動いていく歯車の一部は、十二分にその顔を見ることすら叶わなくなっていた。
アナウンスと共に開かれる扉、密度の濃い人だかりを抜けて、歩を進めた。多くの花々が彩ったバージンロードの影一つ無しに、整然と揃えられたコンクリートの、未だ冷さを持つ道を踏み締めていく。*]
(34) 2018/03/24(Sat) 17時頃
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