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[見下ろした手は、人のものだ。>>12 爪の血の色まで失せた手が 縋るように俺のシャツを握っていた。 犬はそんなことはしない。 従順に「マテ」を守るだけの犬なら。
やっぱり笑ってるだけのいぬじゃないんだなあ、お前は そのことに安堵を覚えてしまう俺は、 やはりオトモダチに向けるべき感情を 間違えている。
――昼にさえいけなくて、勝手に傷ついて、 こんな無様な負け犬を笑ったり 哀れんだりするだけの奴は沢山いた。
お前がそういうやつだったなら、 俺はお前に興味を抱かなかっただろうに。]
(15) さねきち 2018/10/19(Fri) 03時頃
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(でも、――仕方ねえかなあ。)
[いつか陽射しが見えない夜に溺れることがあるなら 浮き輪を投げるだけじゃなくて一緒に沈んでやろうか。 ……黒くて、不気味で、おそろしい海の中に。>>11]
(16) さねきち 2018/10/19(Fri) 03時頃
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[伸ばされた手をふり払うだけの元気はなく>>12 支えてくれる人間の手指に、やっぱり安心した。 ここに誰かがいる。じゃあなくて、 ここに洋次郎がいてくれるので。
普段なら「なんでもねえよ」と無理して逃げる体で しゃがみこむ無様さをさらしてしまう。>>13>>14]
( 安住だって、はやく、そうすればよかった 苦しいって泣き喚けばよかった )
[……いや、 安住にとって周りの人間が それをするに値しなかっただけ、かもな。 それはそれで、いやな気持ちが胸に広がるってもんだが
…………………なんか、いいや。 難しい事は。今の俺にはちょっと重い。 頭上で どした と喚いている洋次郎がやかましい。 俺はうるせえなあ、という言葉を口の中で噛み潰した。]
(17) さねきち 2018/10/19(Fri) 03時頃
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しなねーよ。ばーか
[残念ながら、まだ死ねない。 少なくとも俺自身は死ねない、と思っている。 体はキツいけど。
体が焼けて走れなくなった襤褸人形のくせ 苦しいのを知りつつ死ねないのは アディショナルタイムではないと思いながら 試合を去れないのは こうやって慌てる馬鹿のツラが笑えるからだ。]
(18) さねきち 2018/10/19(Fri) 03時頃
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つか。 はやく謝れやタコ ま、……いーや
[まだ謝らない犬以下の洋次郎を見上げて ひきつった笑いを見せた。
それから、歩き出そうとして心配げにこちらを見るので、 屋上の階段降りきるまでつきあえ、って笑った。 あとは自分で帰れるさ。]
(19) さねきち 2018/10/19(Fri) 03時半頃
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……よーじろ、う、さぁ。 あいさきが心配してたぞ。 元気なカオみせてやれよ
[俺はけらりと笑って、 四階の踊り場で洋次郎と別れただろう。 「またな」と呼びかける言葉は、 信頼の分ちょっとだけ重い。
どこかに消えてしまいそうな「人間」のお前への、 ちょっとした呪いです。 引きちぎるなら引きちぎれるくらいの、重しです。]
(20) さねきち 2018/10/19(Fri) 03時半頃
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[ふらふらと野良犬は校舎を出る。 ここに混ざれる場所はない。
ないのだけれど、 未練がましく視線はサッカーのゴールを見遣る。]
……帰ろう。
[あの一年が何をいおうが、知るか。
なんて強がるように呟いて、 俺はその日はひとり、帰路につく。 潮田からのメールに気づいたのはその後のことだ。**]
(21) さねきち 2018/10/19(Fri) 03時半頃
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――帰ってから――
[文字は、こういう時楽だ。 すぐに答えを返さなくてもいいから。
布団に沈みながら俺はぼんやりとそう思った。 きていたメールはまるで告解のように、とりとめもなく潮田の感情を描き出していた。>>2:269
ごめんなさい。 そういって、許してもらいたい相手は、俺ではなく きっと潮田が暴言を吐いた先――安住英子なんだろう。
「何か聞いていたの?」 何にも聞いてねえよ。
「後悔で、いっぱいなの。」 俺もそうだよ。
考えたって苛立ったって悔やんだって泣いたって苦しんだって、例えば安住が生きながらえたって、この呪いは消えやしない。どうすればよかったんだろうな。]
(24) さねきち 2018/10/19(Fri) 21時頃
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( 答えなんかどこにもねえ、よなあ )
[馬鹿らしい呪いだと、思う。]
(25) さねきち 2018/10/19(Fri) 21時頃
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───────────────── To 潮田 From 葛 ─────────────────
何を言ってしまったのかは知らないです。 あと、俺は安住から何も聞いてないです。 潮田さんのせいか、そうではないか、 それを察するのは 俺には難しいです。
でも 潮田さんが安住のことで悩んでいたことは、知っています。 強く悩んで苦しんでいたことは知ってます。 俺が「なんで安住を部活に誘わないのか」って聞いたとき あんなに思いつめていたこととか
人間って、案外単純で気にかけてくれる人が一人いれば 少しは救われてしまうものなので 安住にとっての潮田さんも、少しくらいそういう存在だったら、いいなあって思います。 居場所を奪うばかりじゃなくて ちゃんと心のよすがであればいいと思います。
(26) さねきち 2018/10/19(Fri) 21時半頃
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てか。 そうでもなければ、わざわざ会いにいってから自殺しないだろうと思いますし。かわいさあまってにくさ百倍、っていうじゃないですか。 だめだ。 とっちらかってきた。
なんというか。 事故。だと思うんで。人付き合いの大体って
俺が潮田さんをゆるすので 潮田さんは安住と自分をゆるす努力をしてください 俺にゆるされるのじゃたりないっていうなら 潮田さんにとって気の許せるあいてにゆるしてもらってください
それだけです ─────────────────
(27) さねきち 2018/10/19(Fri) 21時半頃
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無理。
[文を整える気力すらなかった。送信ボタンを押しながら布団に額を押し付ける。たかが事故のせいで呪われて一生傷を背負うなんて馬鹿げてる。そんな馬鹿、少ないほうがいい。
俺はただそう思っただけで、思ったことを綴っただけで、メールの内容に深い意味なんかなかった。 几帳面な奴なら、もう少し文体整えるだろうよ。**]
(28) さねきち 2018/10/19(Fri) 21時半頃
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―― 翌日 ――
[冥々と暗い夜道を駆け抜ける。 どこまでも、どこへでも遠くへいこうとするのに―― どこへもいけないまま、焦燥だけが心を焼く。
俺の後ろには誰かが乗っている。 誰だろう。誰であれば……嬉しいだろう。
そんなことを思ったのだけれど、バイクを走らせるのに必死で振り向く余裕などなかった。 ヘルメットをしているはずの頭に、髪の毛をすりぬけ指が触れた。女だ、と理解する。]
「 九十九はさあ、 」
[夜風の中静かに笑い声が聞こえた。
――目を覚ます。]
(56) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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[がらんとした部屋で目を覚ました。 ぴぴ、と鳴る目覚まし時計を黙らせて俺は呻きながら起き上がる。部屋の中には誰もいない。不思議と、母さんが帰ってこない日々を思い出したが、その思い出を静かに思考から閉めだした。
身体が熱い。塗り薬を探したけれど、切らしていることに気がついて舌打をする。そもそもこれが火傷の後遺症なのかどうかも不明だった。風邪めいた倦怠感が全身を支配していて、熱病のようにも感じられる。]
……、
[自分の世話くらい、もうできる。 ちょっとばかし金を稼ぐには力が足りないくらいで 何も勉強せずとも点数を稼ぐにはちょっと馬鹿なくらいで 料理だろうが裁縫だろうが生きていくためならできるし一人で病院に行くことなんて簡単だ。 学校があったかどうかはさておいて、身支度を整え病院へ赴くのに時間はかからない。
……そういえば。 安住が運び込まれたのは、ここだったっけ。 ぼんやりと病棟を見上げ、現実感のないままに踏み入る。 予約した時間まではまだまだある。俺はぼんやりした頭のまま、入院病棟に赴きナースセンターを覗いた。]
(57) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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「安住栄子ってひと、ここに運び込まれたと聞いて……」
[なんとナースさんに問いかけたかは覚えちゃいないが、凡そそんな言葉をかけたと思う。 明らかに容態の悪そうな不良を見上げたナースさんは、視線をさまよわせてから、同僚といくつか、言葉を交わし、]
「個人情報になりますし、面会は……」 「けれど意識は取り戻したみたいで」 「あなたは、学友さんですか?」
[ほんとうに意識を取り戻した直後なのか、面会については断られたが、ナースさんは確かに俺にそういった。 目を丸くして息を呑む。 それから落ちた溜息は、なんの色をしていただろう。]
(58) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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……そう、ですか ありがとうございます
( 生きていてくれた。よかった。 ) ( ああ、生きてしまったのか。お前 )
(59) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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[軽く頭を下げ、俺はそこを後にする。 相反する二つの思考に頭を抱えそうになりながら、本来の目的へと向かう。
病棟の外で、俺は端末を手にとった。――いくらか迷ったようにあて先を探すと、その名前を見て、ほ、と息をついた。]
(60) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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───────────────── To 潮田 From 葛 ─────────────────
安住、目を覚ましたってナースさんから聞きました。
─────────────────
(61) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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[それから――これじゃあいつみたいだ、と洋次郎の顔を思い出しながら、違うメールで付け加える。]
(62) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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───────────────── To 潮田 From 葛 ───────────────── これから書く事、流してくれていいんだけど。
これから大変だと思うんです安住。 だから、過去に何をいって、何をいわれたとしても 潮田さんにそのつもりがあるなら一緒にいてやってください。
安住って 悪ぶって夜遊んで、吹奏楽もやめて でも昼の学校にも吹奏楽にも未練たらたらな奴だと、 少なくとも俺は思っていて
そういうやつって、潮田さんみたいな 吹奏楽にいっしょうけんめいで、 ひとに、優しくできる人 やっぱり羨ましくて眩しくて、嫉妬して嫌って でも見つめずにはいられなくって そういう自分も嫌いになってくと思うんですよ
(63) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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───────────────── なんか、どうしようもないやつだと思うんですよね。 そんな安住が夜に逃げたりしないように傍にいてやってほしいんです。 安住の「好きだけど嫌い」がまた安住自身に向かないように。 それって、潮田さんができることかなって思うんで。
潮田さんが、なのか、潮田さんにしか、なのかは俺には判断つかないけど。 思い当たって頼めるのは、潮田さんだけなので、お願いします。
なんか、長々とごめんなさい。 それじゃ。 ─────────────────
(64) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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[そこまで書いて、病院の天井を見上げた。 熱はまだ下がらない。
爺とババアがちらちらとこちらを見てくる。うぜぇとガン飛ばすだけの元気もなく、俺は自分の名前が呼ばれるのを待っていた。**]
(65) さねきち 2018/10/20(Sat) 16時頃
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―― ――
[病室の前で足を止めていた。
パーカーを被った柄の悪い男が自殺未遂をした患者の病室の前で、入るでもなく躊躇って、傍目には扉を睨みつけている。 それだけで世間様からすれば不審ではあるのだろう。 ちらちらと通りすがるナースさんの視線が突き刺さる。
けれども俺はそれに睨み返すことすらせずに、真っ白な病室の扉を見つめていた。 首裏を掻く。まなざしを移す。「安住英子」の名が冗談のようにそこにある。]
(88) さねきち 2018/10/21(Sun) 02時頃
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………
[思う事はたくさんある。]
[例えば、結局縋れるものになれなかった俺のふがいなさだとか。 会いにいっても迷惑なだけじゃないのか、だとか。 そもそもそんな資格があるのか、だとか。
結局潮田に安住を託したように ……俺も洋次郎と似たようなもので 安住が昼の世界にきちんと戻ることを願っているので 会いに行くべきでは、ないのかも、とも、思ってしまった。]
(89) さねきち 2018/10/21(Sun) 02時頃
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[けれど。 自分のやりたいこともできない、負け犬見てる。って、 その言葉が耳の奥で震えて、弾けた。]
[病室の扉に手をかける。――開ける 白いカーテンがゆらりと風になびく。 窓から落ちた陽射しが、白いベットをさらにほの白く染め上げていて、眩しさに目を細めた。
俺は一瞬、投げかけられる言葉を期待したけれど、落ちるのは静寂ばかり。ああ、と安心か落胆か、なにかわからない溜息が漏れた。]
なんだ、寝てんのか。
[――何の夢を、見ているのだろう]
[願わくば、酔いしれられるような夢を、見ていてほしいと思った。 できればその時だけでいい。現実は酔えない夢ばかりだ。浅い夢を歩ききるには人間はあまりにも花のように脆いから。] ちったあ元気になれよな……、
(90) さねきち 2018/10/21(Sun) 02時頃
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[そいつの生に苦を願ったのに、 皮肉なもんだと、小さく笑う。]
[・・・ えいこ、と呼びかけたくなって、 俺は静かに口を噤んだ。
お前をその名で呼ぶ事は、きっと、これからもない。]
[何も言わずにベッド脇の机に小さな包みを置く。 添える言葉は何もない。 誰が来たかも知らせまい。
青空の色をしたタオルケットが一枚。 俺が安住にあげられるものは、それだけだった*]
(91) さねきち 2018/10/21(Sun) 02時頃
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―― 学校 ――
[安住の自殺は学校の中にどんな影響を及ぼしたのか、 翌日登校することがなかった俺は知らない。 新聞で何かしら書かれていたかもしれないが――……。 かったるい授業の合間。 休み時間に廊下を歩けば、ふとこんな噂話をきく。 つきささる眼差しの意味を理解する。]
「この前自殺しようとした生徒って 不良と関わってたんだって ほら、そこ歩いてる、あいつだよ」 「ああ、あいつね」 「――あれなら納得だよねえ、」
[淡々とまなざしをそちらに移せば、噂をしていた女共がびくりと肩を震わせて逃げて行った。ウケんな。と思った。不愉快を煮詰めてスープにして飲まされたような心地だった。 かける言葉を噛み潰す。溜息にして逃がした。]
(92) さねきち 2018/10/21(Sun) 02時頃
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クソみてえな場所だな、やっぱ。 ビョーインより。
[――馬鹿らしい。どいつもこいつも他人事だ。 一回くらい同じ目にあってしまえばいいのだと思う。 同じ舞台にくることがないのなら、勝手に賞味していればいい。*]
(93) さねきち 2018/10/21(Sun) 02時頃
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[潮田に送った文面は―― その中で語った安住のことは、 多分、俺の、俺自身の投影でしかない。
(ほんとうの安住はもっと違っていて 真実はもっと最低なものなのかもしれない。)
友達に馴染めず、周りにいい顔をして、落ちぶれた不良に声をかけ―― そうしてその速さに無邪気に笑っていた安住に、 俺は自分の姿を見ていた。
例えば、あの日母さんを起こしにいかなければ。 例えば、あの日運悪く火事に巻き込まれさえしなければ。 例えば、二年の頃きちんとサッカーをできていたならば。]
(111) さねきち 2018/10/21(Sun) 06時半頃
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[ 例えば、が積み重ならなければ 夢み、まどろむ犬のごとく
毎夜母さんが帰ってこない現実だって 強制され矯正されて 「いい子」にされていた自分だって 自覚せずに、済んだのかもしれなくて
子供のままで笑っていられた>>109 のかもしれなくて……
……安住も、俺と同じで そういう例えばが積み重なって 追い詰められていったように見えていた
・・・・・・・・ いや、見ようとしていた のだろう。俺は。 勝手に投影して、勝手に哀れんで、苦しめばいいのにと思う半面、救われてほしいとも思っていた。]
(112) さねきち 2018/10/21(Sun) 06時半頃
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( あ ……だったら、なんで )
[一瞬俺は息を呑み、 その思考を遡って、自分の性悪さに吐き気がする。
ちゃあんと昼の顔を被って、忘れようと心がけて 楽に、生きていようとしていた犬に 俺は先日起きろと張り手をやったようなものじゃないか。
気づかせなければ。 あの喧嘩のあと近づかなければ。
ああいう険を乗せた顔>>107をさせることもなくて 「お気楽なれんれん」のままでいさせられたのに。
積み重なった「例えば」があいつにあるなら 思い出させないようにした方が よかったのになあ なんて 後悔はいつだってそうだ。後からやってくる。]
(113) さねきち 2018/10/21(Sun) 06時半頃
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(それでもやっぱり嬉しかったのか、どうして)
[俺は自問して、煙草も吸わない口の中を苦さで満たす。]
[誰もいない部屋。父の世界から零れた自分。 見つめたまなざし。まっすぐに俺を見た目。>>105]
(誰もいないサッカーグラウンド。 声をかけないチームメイト。 真っ直ぐに飛んできた声と表情。>>2:51)
[ 相反するもの 似たもの、を交互に思い出す。]
(114) さねきち 2018/10/21(Sun) 06時半頃
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( …… 考えるな ! )
[無性に叩かれた背中が痛かった。>>109 ちゃんと一人で自分の世話くらいできるさ。 なぞった言葉はひたすらに乾いている。]
(115) さねきち 2018/10/21(Sun) 06時半頃
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[未練がましいこの身が揺らした視線の先には、サッカーのゴールがある。
見上げた青空はどこまでも美しく綺麗で、 髪を染めることもなくサッカーに励むガキ共の黒髪に、よく似合っていた。
しばらく迷うこと、どれほどか。
安住英子が落ちてから数日後、 背の高い1年ゴールキーパーのもとに、 そいつより少しだけ背が高い不良が訪れ 「一日だけつきあえや」とサッカー練習に誘ったことも、 ……あったかもな*]
(116) さねきち 2018/10/21(Sun) 06時半頃
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―― ―― ───────────────── To 四十崎 From 葛 ───────────────── 音が似てるからまざるのは仕方ねえだろ
待って。コーハイイクセーゲームってそれリアルじゃねーか。 リアルは完全にクソゲーだと思ってるぞ俺は。 つか俺のポジフォワードだから。GK教えられないから。 ……気が向いたらな。
バイクか。そうだな、乗るのも悪くないか。 そういうあいさきは、夢叶いそう? 家買うほうか。愛の先のよすがになってみるほうか。 ─────────────────
(158) さねきち 2018/10/21(Sun) 12時半頃
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───────────────── 仲直り。そんなこといってもなあ……? 怒った理由は聞いた。理不尽だった。 とりあえず、なんだろう。仲直り? っていうほどでもねえけど 休戦? は したんで、あいさきは胃痛を減らせ。
誰かのためにキリキリしてるあいさきも好きだけど、 のほほんとしているあいさきも好きだから。
ぐるぐるしていて辛いことがあったら ちょくちょく息抜きしてくれるとうれしい。
というわけで。ゲームで遊んでくれ、気が向いたら。 あいさきが教えてくれたやつ、 今3周年記念で色々やってるじゃん? 最近ログインして気づいたわ。まじでヤバい ─────────────────
(159) さねきち 2018/10/21(Sun) 12時半頃
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[たぶん、病院で診察を待っていた頃だと思う。 そのメールが届いたのは。
待ち時間が長いので、 俺はそういうメールを四十崎にしたためていた。
昔と変わらないのんびりとしたやりとりに、 目の前にあいつがいるような気分になってくる。 少しだけ、表情が弛んだ。]
(160) さねきち 2018/10/21(Sun) 12時半頃
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[俺は四十崎と安住の関係を知らない。 だから、メールに出すことはない。
それでもクラスから自殺未遂の人間が出たことに、 四十崎が何も思わない人間ではないだろう ……とは思うので、 苦しんでいることがあれば言えよな。と、 それを添えた。
誰かの荷物を抱え込まされたのか>>0:645 それとも抱えてしまうのか わからないけれど 少しだけ生きづらそうなあいつだから わざわざそんなことを添えた。
煩かったらすまないとは思う。]
(161) さねきち 2018/10/21(Sun) 12時半頃
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(「あいさきよすが」はひとりぶん。 他の誰でもないし、誰でも「いい子」でもない。 こんな落伍した俺がアプリゲームなんぞに誘う相手。 その空白は、”ひとりぶん”しかあいていない。)*
(162) さねきち 2018/10/21(Sun) 12時半頃
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―― ――
[これもまた病院でのことか。
四十崎へのメールを打った後、俺は返信できてない二つのメールに目を通した。 屋上でぎこちなく指を動かしていた誰かさん>>2:165じゃねえけど、その時の俺は、あいつに匹敵するレベルでそのメールを返しづらそうにはしていた。指が止まる。言葉が止まる。]
[思い出す――触れた手の感触だとか、温度だとか。貸された肩だとか。 ひきつれる火傷の痛みや照れに逃げ出すことよりも、それにすがることを優先した俺自身のことだとか。>>106
思い出して、から、あいつにメールを送ったときの心境だとか、これを送ってくるあいつの意図に思いを馳せ、俺は肩を落とした。]
(163) さねきち 2018/10/21(Sun) 13時頃
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[喧嘩した相手から唐突に「いきてる?」って送られたこと自体意味がわからないだとか。茹でたこ状態でそんなもん送るより他にわかりやすくいうべきことがあるだろうだとか、そこらへんの文句を煮詰めて発されたのがこの設問であることだとか。
いや、わかるけど。
体調が悪かったので、安住が落ちたことを切欠に、お前もそのうち消えはしないかとやけに不安に思えてしまっただとか。体調が悪かったので、むしろ「いきてる?」って俺がきいてほしかったんです、だとか。
書くわけないだろ。こ×すぞ。 大体いつもの素直なわんころの姿はどこにやったんだよ。 体大丈夫?くらい送ってみせろ。腹が黒いぞ。
俺はつくづくそう思ったので、随分時間をかけてそれを返した。]
(164) さねきち 2018/10/21(Sun) 13時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
てめーのこころ無いといかけによりしんでる
─────────────────
(165) さねきち 2018/10/21(Sun) 13時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
つか、そこらへん意識朦朧だったんで許せよ 送ったの覚えてねえんだよ 安住落ちたしハチ公顔色悪かったし いいじゃん、心配したってことで
─────────────────
(166) さねきち 2018/10/21(Sun) 13時頃
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( ごめんなんてぜってぇ言わねぇ )
[長く息をはいてその二つを送り出しただろう。**]
(167) さねきち 2018/10/21(Sun) 13時頃
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―― 瑠璃へ ――
[そのメールを見て、俺は暫く固まっていた。 あんまりにも俺らしくもない感情が揺さぶられるから、悪さを思い出すために煙草が必要な気がした。けれどここは病院だ。
真っ白な病院。全面禁煙。毒物の摂取はできもしなくて、秋空のような爽やかさ>>147にあてられるようだった。]
(192) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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あ ――……
[そっかあ、と呟いた俺を不思議そうに老夫婦が見る。構わず病院の古びた椅子に脱力して背を預ける。はあ、と零す吐息は長い。
病院の天井を見上げる俺の顔は、多分あんまり誰も見たことがないような、ほっとした、って笑い顔だ。
潮田は、安住の傍にいてくれるんだな、いてやってくれるんだな、と、そう思えたから、俺は嬉しかった。
……どうしてだろう、 とても嬉しかったんだ。
どれだけの醜聞が、どれだけの悪意が、 安住とその周囲の人間の像をゆがめて映し出したとしても、 どれだけ嘘が這いずり回っていたとしても。 この先2人に何があったとしても、 今、ここに綴られた潮田の気持ちだけは「ほんもの」だ。 それは誰も変えようがない。]
(193) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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[それって、他の誰かにとってはどうでもいいことでも、俺にとってはそうじゃなかった。
こんなに綺麗なもの、まだ世界にあったんだ。 宝物でも見つけたような気持ちで俺はメールを読んでいた。 おかしいだろう、たかがメールで。 でも、そう思ってしまったんだ。
潮田が救おうとしているのは俺ではないのに ――安住に自分を投影していたからだろうか―― しばらく俺は、「よかった」という気持ちで一杯だった。
(194) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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ンだよ潮田 お前すげえじゃん もう……こんなのさあ……
[長さとか関係なく返信に時間がかかりそうじゃん。俺はそう呟いて、また長く息を吐く。 バイクで走り抜けた時よりも、サッカーで走りきった時のような爽やかさに静かに震える。
多分まだ、俺は人間の善性に期待をしていたんだろう。昼に焦がれた、野良犬だから。まっすぐな言葉が何より眩しいんだ。
――呼び出しがかかった。 ああ、いかなきゃ。と思い、俺は歩き出す。]
(195) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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───────────────── To 潮田 From 葛 ───────────────── よかった。真っ先に潮田さんに知ってほしいと思ったから。 こちらこそ。安住のこと、ありがとう。 泣いてくれて、ありがとう。
居場所・・・ ほんとうにそうだったのか、俺にはちょっと自信が無い。 だけどあいつの愚痴吐き場ぐらいになれていたら、まあ、いいよな って思う。 ─────────────────
(196) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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───────────────── ヒクツになってる……とおもわれんの、ちょっと違うから 言い訳すると
音楽のことを話す安住はいつもすごく遠くを見ているようで そこに戻りたそうに、俺には見えていたから 潮田さんと安住の様子を見て、すっげぇもだもだしたし なんか、俺も潮田さんに嫉妬してた。たぶん。 だから、安住にとっての俺が居場所、っていうのも、ちょっと驚いたというか。
……まあ、治って頼まれたらまたバイク乗せるのもいいかもしれないな。 ─────────────────
(197) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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───────────────── ああ、会いにいってほしい。
安住がどれだけヒクツになってたとしても 潮田さんがどんだけ安住のことを考えてたか、って やっぱり、俺は知ってるからそう思う。
後悔のないように、 逃げずに伝えてやってほしいし…… でも、辛い、って思ったら、話聞くから。
応援してる。二人の事。
─────────────────
(198) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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─────────────────
追伸:タメ口で書いてみたんだけど あんまり絵文字も使いどころ知らねえし こわくね? って思うので こわかったら素直にそう指摘してくれるとめちゃ嬉しい。 努力するから。 ─────────────────
(199) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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[返信してから、長く息をついた。自室のベッド脇。誰もいない部屋。 知らず額にあてていた指先を、祈るように組んでいた。
――誰のためか、なんて、そんなことは知らない。*]
(200) さねきち 2018/10/21(Sun) 19時半頃
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|
―― 学校であったかもしれない話 ――
「葛君ってはのんとどういう関係なんだろ」 「いみわかんないー」
[と、廊下でそういう話を聞き、俺は「は?」とそちらを見た。女子達がきゃあきゃあとまた、悪口をささやいているところらしかった。連日ヒマだな、とは思う。黙って単語帳でも捲っとけよ受験生。とも思う。
――思うので、俺は大人げないので。 つかつかと彼女らに近づき、その傍の壁を軽く蹴った。
ヒッ、と悲鳴があがる。明らかに怯えられている。女ってちっさいな。と思いながら見下ろす。]
(201) さねきち 2018/10/21(Sun) 20時頃
|
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何の話
[そのグループで一番弱い立場の女が生贄にされ、残りの女は、一歩はなれて怯えながら俺を見ている。 曰く、この前葛君と安住さんの話をしていたら、はのんから思うような返事がかえらなかったのだと、生贄の女は言う。>>174それが気に食わないのだと。へえ、と鼻を鳴らし、俺は生贄と、逃げた女達をまとめて睨んだ。]
そういうの直接言えや。俺か本人によお。まじクソ ・・・ ……てか、はのん って誰
[その一言で、女共は何かを察した。「あ、これ関係ないやつだわ」と、怯えと哀れみがまざったような目で俺を見る。「ごめん、授業だから」と彼女らは離れていく。俺はその後姿をじっと睨んでいた。
はのん、って、友村のことか。 あ、そういや二年の頃話したな。 そう思いだすのは、しばらく経った後。クラスの名簿を見てからの話だった。つまり俺はクラスメイトの名前を覚えていない馬鹿をさらしたことになるが、特に後悔はなかった。
胸糞悪いほうが嫌いだからな。*]
(202) さねきち 2018/10/21(Sun) 20時頃
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―― ―― ───────────────── To ハチ公 From 葛 ───────────────── >>183 30パーセントくらいでは
てか、メールまとめろっていっただろ 俺 ─────────────────
(216) さねきち 2018/10/21(Sun) 21時頃
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[そのメールが返ってきたのは、 俺が潮田のメールを見る前のこと。 煙草の火をつけて、一本吸いきるくらいの時間をかけて 俺はお気楽じゃないメールに言葉を返していく。]
(217) さねきち 2018/10/21(Sun) 21時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
なんだよ まだ怒ってんのか 自己管理ちゃんとするから、もう大丈夫だって 昨日はさすがにこたえただけだから
─────────────────
(218) さねきち 2018/10/21(Sun) 21時頃
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[困惑が滲む文面。それから] [かなり、の間をおいて、こう返す。]
(219) さねきち 2018/10/21(Sun) 21時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
病院、行ってるから大丈夫 心配してくれてありがとよ
うん。なんか俺も悪かったよ。 またな。
─────────────────
(220) さねきち 2018/10/21(Sun) 21時頃
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[ごめん、とかかれている文字をなぞる。 ごめん、と口に出してみる。
やっぱりそれがいえなくて、 「悪かった」とやりやすい表現に変えた。 ぶわりと罪悪感が膨らむ。――どうして、と問いかける声に答えはない。]
(「あんだよ 俺の喧嘩ぁ買う価値もねえってのかよ」)
[そういうことじゃねえんだけど、と、少し困る。 なんだか自分が甘ったれてきている気がして、やっぱり、苦い煙草が吸いたかった。*]
(221) さねきち 2018/10/21(Sun) 21時頃
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―― ――
[それは月も出ない夜のことだった。 走り屋に混ざることも少しだけ少なくなった俺は、進路指導課の前にあったチラシを読んだりしていた。こんなものに今更行って――と染み付いた負け犬根性が頭を擡げるが、ともかくも受験をしないなら働かなければという意識が勝っていた。
そういえば今日は親父が何か相談があるといっていた。と、思い出す。皿も片づけず食い散らかしていく朝餉の始末と、毎度洗濯に出し忘れやがる靴下のこと以上に俺から親父へ話し合いたいことはない。何か言われたらそれを切り出そうと考えている俺は、その日は随分と穏やかな気分でいた。]
「――九十九」
[玄関から誰かが入ってくる。 おかえり、と口の中でその言葉は潰れた。ひとかげ、2人。いや、3人だろうか。 親父につれられて入ってくるのは歳若い地味めな女。それが、小さな子供を引き連れている。そいつらは親父が乱して俺が整えるばかりの居間に我が物顔で入ってきて、]
(259) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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……だれ、そいつ
[声が震えたのは、理解し難かったからだ。 その距離も、親父が俺に向けるまなざしも。
その地味めな女と子供の半歩前に、親父が立っている。 その動きに気づかないとでも思ったのか。 まるで守っているようだ。 ――だれから? ……なんで?]
[わかりません、という顔をして、俺は親父を見ている。親父はまるで俺を他人のように女に紹介し、女は俺に行儀よく頭を下げ、怯えのまじった目で傍らの子供を後ろに下げた。 ガキの丸い目と目が合う。真っ黒な髪。真っ黒な目。何をも疑わぬ純粋なまなざし。それからそっと視線を外し、俺は再び、親父を見る。] なんのつもりだ 「挨拶しろ、九十九。私の同僚の――さんだ。それから、子供の■■だ」 ……なんなんだよ
[軽く会釈をする。逃げたい、逃げなきゃ。そう思う前に、この何もわかっていない男は口を開く。――愚かなことに。それを、喜ばしいことのように言う。]
(260) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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「裁判が終わったら私達は再婚する。もう決めたんだ。 お前も就職するだろう? 父さんも新しいスタートを切りたい。 新しく家族をはじめよう ……本当はもう少し時間を置く予定だったんだがな」
[とても、まっとうな事のように、それを言う。 照れるように俺から視線をはずし、知らない女を見る。知らない女は穏やかに笑って、そっと自分の腹を撫でた。
曰く、不倫ばかり重ねていた妻と切れて、 息子を育てるために日々、終電まで頑張ってきた「父親」は
曰く、不良になりはてたどうしようもない息子の 理不尽な暴力にも耐えて今までやってきたが
曰く、同僚の女性の優しさに癒されて、 同じく子連れである彼女と再び、前を向いて歩いていきたいらしい。]
(261) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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[故に、どうしようもない息子は。 新しい家族として、彼女らを迎えるべきだと。 今まで頑張ってきた父親の選択を、ゆるすべきだと 彼らは暗に示している。]
[そこで父親の手をとるのが「美談」というのだろう。 見知らぬ女と見知らぬ子供。不倫もしなさそうな地味な女。 どうしようもない息子も丸く収まれば、 そこには父親が見たしあわせのかたちがある。]
[「わかった」と、一瞬でも頷かなきゃ、と思った自分に、吐き気がした。]
[一体、誰に言い訳をしながら生きているのかと問いかける。学校という量産所に入りきらなくなっても尚、昼に焦がれてもがき、誰もいない家の中あふれ出そうになった感情を押し殺し続けた結果が、これだ。また「そうでなければならない」と縛るのなら、せめて人間として好きでいさせてほしかった。]
ふざけるなよ
(262) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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[叫んでいた。口をついていた。勢い親父に殴りかかった。 倒れるそいつをみて、カマトトぶった地味女が「きゃあ」と叫んで子供を守った。親父の名を呼んだ。女にはさぞ、「元妻のせいで荒れた息子を、愛しい人が押さえつけている」ように見えるのだろう。俺の味方なんぞここには一人もいない。 親父は2人を守っている。そんなことはわかっていた。殴り返されながら、獣のような唸り声の中、何度も父親を殴りつけた。
今すぐてめえのふざけたツラを包丁で刻んでやろうか。 今すぐその女てめえの前で犯してやろうか。 今すぐ、その子供の首、絞め殺してやろうか。
そしたら全国紙だ。愉快だな。てめえの選択のせいで。]
殺してやるっ…!!
[親父から離れる。血の匂いがする。地味な女に詰め寄った。押し倒してやろうかと手を伸ばす。 ……手が、止まる。
女はひたすら、子供を抱いていた。 白い首。白い頬。何のけがれにも触れたことがないような子供が、何の罪もない子供が、無垢な目で俺をみあげ、当然のように母に抱かれている。
真っ黒い瞳には男が映っている。 ――火傷痕醜い男が。醜い野良犬が!]
(263) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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( 「―――――――――――――」 )
[……なんで、俺にはそれがなかったんだ。俺にはそれをくれなかったんだ。って、見知らぬ女の腕に対し、俺は思っている。 もう十代も後半の男がこんなことで苦しむなんて間違っている。母親も父親も、最初から俺の事を見てくれていなかったじゃないか。今更じゃないか。傷ついた父親を責めて金をむしるような真似をしたのだから、父親が外に救いを求めたっておかしくないじゃないか。
そういう正しさから、いつだって言い訳をしてきた。「だって俺は苦しいのに」と。
息もできないまま女から離れる。携帯と財布、バイクの鍵。それ以上はいらない。俺はそのまま、部屋を飛び出した。
荒い呼吸の中、駐車場に向かいながら、俺はメールを遡っている。 白い画面に映し出される言葉たち。 面と向かってではないからこそ交わせた言葉。
嘘と本音とがいりまじる中、俺は安住が落ちた日からずっと、癖のように見ているメールに目を通す。]
(264) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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「きっと葛くんと一緒にいた夜は 逃げる場所なんじゃなくって、 英子ちゃんにとっては 大切な居場所だったんだろうって。」
(265) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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( 「居場所」 )
[潮田はきっと知らない。それがどんな飴玉よりも甘い言葉かを、知らずに打ったのだと思う。祈るように、縋るような気持ちで携帯の画面を額にあてた。――誰のために祈っているのか、まるで見当がつかなかった。
衝動に任せバイクに跨る。蒼い機体はくすまずにエンジンの音を夜闇にとどろかせた。夜に溶け込むように、風に抗うように、町並みへと紛れていく。]
(266) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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[ ――――――……………。]
[誰の声もしなかった。真っ黒な道路に向けていた目を、ぐるりと後ろに戻す。誰もそこにはいない。薄ら寒い空気に、薄く吐いた息が融けていく。>>0:4 薄汚れた天使の羽のステッカーをざらりとなでて、くすんだように見える機体に跨った。
こうして一人走るようになって、どれくらいが経った?
そういう思考が頭を擡げるけれど、覚えちゃいねえなと力なく笑った。 路地を過ぎる黒猫を一瞥もせずに、バイクに跨る。
バイクジャケットの内側。火傷痕がひどく疼く。触れる体温は、ない。 死んだように光る街灯も冷たい星も、灰色の町も、何もかもが近づいては通り過ぎていく。]
[現実感のないままに、燃えて走って、尽きるだけの路を往く。
――行ける場所もないのなら、生きる場所さえないのなら、どこにだって逝ける。
だから―― ]
(267) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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( 後ろに乗るなら、誰が、嬉しいだろう そんなことを考えて、「海」の傍を通り過ぎる。 )
[がしゃん、とあっけない音がした。 横から突っ込んできた車に轢かれ、あっけなく。 蒼い機体が砕ける。ヘルメットが飛ぶ。血の味がする。骨が砕ける。 現実感のないままに、地面に落ちる。潰れる。
痛い。 体中が燃えるように痛い。混濁した意識の中で、冷えゆく手足を守るように体を縮こまらせた。自分からあふれ出る血の中。傍から見ればきっと生れ落ちた胎児に似ている。]
( 「生まれなければ、――……」>>0:282 )
(268) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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[あまたの苦を越えて、その先に死逢はせがあるならば なぜひとは生まれ、陽はまた昇る。
教えておくれと、呟いて、]
(269) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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[ ――――――リリリリリリ……]
[はたと俺は眼を覚ます。 眩しい陽射しが窓から射して、思わず目を細めた。口の中で血の味がする。舌打しながら、目覚まし時計のアラームを止めた。
ふらふらと歩んでいく。フローリングの冷たさから、体の痛みまで、やけに生々しく感じられた。親父の寝所を覗いて、殴られた痕に湿布を貼ったと思しき親父が眠っているのを見つけてはじめて、あれが夢だったのだと悟る。
――バイクで走った、そこまではほんとうで。 事故で死んだ。そこからは、夢だ。
けれどどちらが現実なのか、まだ実感がわかなくて。 俺は朝飯をつくる前に、ふらりと携帯を手にとる。
ひとつ、息を整えて、 ひとつ、何を書くかを躊躇うと、 らしくもないと、少しだけ頭を抱えて。]
(270) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
海、いつ行くよ。
─────────────────
(271) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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[開け放った窓から、煙草の煙を吐き出した。 ――すがすがしく晴れた空は、青いわけでも黒いわけでもなく ただただ白く、やわらかで
苦い口の中――……ほんの少しだけ、イチゴミルクの味を思い出し、ああやっぱりらしくもないと、煙を吐き出していた。浅い夢に溺れることは、できるのかどうか。わかりもしない。]
(272) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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[窓から見た朝日はどこまでも残酷に 世界を白く照らし出し 空舞う鳥へ、いきかうひとへ、恵みを届けるけれど。
この苦界の中で巡り続ける太陽は、 落日した女も、夜にしかいられない野良犬も 知らない顔して、周り続けるのだろう。
昨日も、今日も、変わりなく。*]
(273) さねきち 2018/10/22(Mon) 00時頃
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―― ――
[目の前の、この、これを、なんと言い表していいものかわからないまま、端末の時刻表示が0を越えていくのを見守った。]
[増えていくメールに、かつてのふわふわした夢想家を見出せない。そこにはやっぱり眠気の醒めた蓮洋次郎がいて、俺に向けての心情をむき出しにしている。 それが事実なのだけれど、その事実に対して揺れ動く俺の心ときたら、ちょいとした悪路をバイクで走る時よりも忙しないのだ。]
(317) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[>>292 怒っている、という。 あの蕩けそうな笑みしか浮かべていなかったハチ公が人間のように怒っている。
アルコールに本音を吐き出すような夜を思えば、それが人間として正しいことのように思え、嬉しい。喜びしかない命はいびつで、壊れてしまいそうだから。
けれどあいつの目の前にある現実を――ぜんぶは知らないけれど、認識させてしまうという意味では、「人間として起こした」ってこと自体が最悪だろう。悪いことをしてしまった、と思う。
……そこまでは、まだきちんと、俺は人間らしく考えられていると思うんだが。]
[そうやって怒って苦しそうなあいつの姿をみて、この心に生じるほの暗い喜びは、人間様の感情というにはあまりにも畜生じみていて、戸惑った。
洋次郎の眠気が醒めて嬉しい。それは「ほら見ろ、俺をあの廊下であざ笑ってたお前だって同じだ、俺と。苦しいんじゃねえか。ざまあみろ」という嘲笑をはらむものであったし、
「そういうお前の姿を知ってるのって俺以外にあと何人いるだろうな」という満足感をはらむものでもあった。]
(318) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[でも、嘲笑も満足感も、 あるいはその人のある側面を 自分しか知らない、という優越感も、
友人に抱いていい感情ではないことは、よくよく知っていた。]
(319) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[――十六夜のような月が、 腰掛けたベランダからよく見えた。 闇に煙草の煙をたなびかせ、 真っ白い画面に目を落とし、俺は更に表情を曇らせる。]
(320) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[自分を蔑ろにするな、と書いてある。 文化祭の俺がうざいから、じゃなければ、……「べつにいいから」と繋がりそうな形で、メールにかいてある。>>293>>294
――自分の世話くらい一人でできるさ。 だから、心配させることがあってはいけないのだと思う。――それはかつて両親に手間をかけさせなかった、「いい子」の少年の心境だ。あるいは両親からのまなざしがなくなり一匹狼を気取るようになって、身に纏った強がりによってのものだ。
けれど、心配されているという事実にどうしようもない照れを覚える。嬉しいと思う。
自分の行動が「くそうぜー」のでなければ、と綴ったこころを思う。「俺が洋次郎をどうでもいいと思っていて怒らなかった可能性」がないならいい、と思った、という意味なら、俺はやっぱりそれが嬉しいのだ。
……あいつにとって俺が、どうでもいい奴「じゃない」、ということのように思えるから。]
(321) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[――つらつらと考えたけれど。 やっぱ、俺ってお前のオトモダチとしては失格なんじゃねーの、と俺は思う。 しばらくかかってやってきた一通に、「ばか」と呟く、言葉は響かない。>>297]
……まとめろ、っつってんだろ
[こんなに沢山の感情を、小分けに与えられたから、俺はお前の事を簡単に「トモダチ」っていえなくなりそうだ。 安堵と心配と後悔と嘲笑と満足感と、妙な独占欲。 「ひとりのためのれんれん」なんざ求める気もねえってのに、難儀な執着を抱えている。]
[でも、だからこそ、――切れそうな縁の糸を、照れるからと切ることなんか、できなくて>>289 けれど頼ることには慣れていないから、言葉を綴る指先はまたいざよう。]
(322) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
おう、末代まで語り継いでやる
─────────────────
(323) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[語り継ぐ気なんかないくせに、笑う。煙草の煙を笑って噛み潰した。 ……情けなさと愉快さが同居するなんて知らなかった。]
(324) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
別に、お前のことどうでもいいわけじゃない。 トモダチだと思ってる。
─────────────────
(325) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[ほんとうに? ――問いかける。
答える声は、ない。だからきれいごとだって乗せられる。]
(326) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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───────────────── To ハチ公 From 葛 ─────────────────
ばかだなあ てめーは
またな
─────────────────
(327) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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[何に対してそう思ったのか書かなかったから、また難しい顔をさせそうだと思った。けれど、それ以上のコメントを、しようがなくて
俺はまたな、と打ち込み、送信して、端末の電源を落とす。 見上げた月明かりは遠く白く、吠えるには丁度よさそうだ。]
( 「ああ、どこまでも、どこまでも、 この見もしらぬ犬が私のあとをついてくる、 きたならしい地べたを這ひまはつて、」―― )
[醜く、きたならしい地べたを這い回り、俺の背後をついてまわる――……畜生のような感情をもてあまし、
落とす灰。灰皿にて消し潰す火種。 吐き出した煙混じりの長い吐息もにがい微笑みも、 やっぱり誰にも知られず夜に融けていく。
俺はこんなにも情けなく笑っているが 今、どんな顔してるんだよ、と よっぽどあいつに聞いてやりたい。*]
(328) さねきち 2018/10/22(Mon) 21時頃
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―― 病院 ――
[俳句みてぇ、と小さく笑い、 緊張を和らげるよう、ほっと息をついた。
――ああ、これだ、と思う。 離れる前の四十崎縁という人間は、 こういうほっとするやつだった、と、思いだすようにして 文面を再度遡り、何度も読み返した。
最後に来たものを一読して――>>310 心に灯るのは、暖かな火だったように思う。 苦しい世界を歩くために必要な暖かな灯火だ。]
(334) さねきち 2018/10/22(Mon) 23時頃
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───────────────── To 四十崎 From 葛 ───────────────── えー。潮田は笑って許してくれる…かね
まじクソゲー。プレイしたくねえ。 でもプレイしないと面白いゲームはできないって罠。 そこまで含めてクソゲーだと思うんだよな。ホント あ、試合見に来てた? 俺の雄姿は最高だろうがよ?
あたりまえだろ。まだ好きだ。 …スッキリする道か。うん、選んでみるわ。 ありがとうな。
セラピスト? アニマルな方じゃなくて? へえー、カウンセラーみたいな。 あいさき、人の話よくきいてくれるし、いいんじゃないかな
(335) さねきち 2018/10/22(Mon) 23時頃
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───────────────── もちろん。あいさきがぐるぐるした時は、俺が話聞くよ。 ちゃんと頼ってくれよな。
俺はもうガキじゃねえ。ガキじゃねえとは思ってる……けど 「居場所」って、やっぱ、ないと心細いっつか うまくいえねーけど。
あいさき、大学いくだろ。 そんでもまた会って 会えるようなさ
それくらいの「居場所」はあればいいなって思うけど。 お前と俺の間にさ。
なんからしくもねーことかいたわ。 俺負けないんで、誰勧誘したか知らねえけど あいさきはラーメン三人前おごる準備しとけよ ─────────────────
(336) さねきち 2018/10/22(Mon) 23時頃
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[切って傷つけて殴り合って、 それだけが、意味のあることじゃないだろう。
つかず離れず、支えあっていられるならば それは一番健全な「友達」だと思うんだ。 そういう意味で四十崎は俺に「昼」を思い出させてくれる。 もう忘れかけていた、正しい人間の長閑な「昼」を 居場所としてくれる気がする。
混ぜられるもう一人が誰かは知らないけれど 俺は久々に、四十崎とするゲームのことについて 思いを馳せている。
ああ、どうかどうか。
やさしさは、人と人の あい だにあるものだから、 お前がくれる優しさの さき に 願わくば切れやしない よすが がありますように。
願いをこめて、最後にこう、送った*]
(337) さねきち 2018/10/22(Mon) 23時頃
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───────────────── To 四十崎 From 葛 ─────────────────
お前と友達でよかった。 ありがとうな。
───────────────── *
(338) さねきち 2018/10/22(Mon) 23時頃
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―― 朝 ――
[端末が鳴る。首を傾げ、俺はフライパンから視線をあげた。ぱっと取ったそれはメールの到着を知らせている。>>331 卵焼きが焼ける音に紛れて、俺は小さく肩を竦めた。]
いつ、っつってんのに
[今かよ、と溜息をつく。焼き上げたそれらを手早く皿にもりつけ、ラップをかけた。サラダは作り置いてある。
もう知らん、と思ったのは ――部屋で寝ている父に対して、だ。
手にとったヘルメットは二つ。 駐車場まで降りて、蒼い機体を唸らせる。 示された現在地を暫く注視して、走りなれた町のあそこだと理解すれば、返信をすることなく走り出す。]
(339) さねきち 2018/10/22(Mon) 23時頃
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|
[――朝の風が痛みの残る頬を撫でていく。 再び来る「また」に、 少しだけ落ち着かない心地を抱えながら 目印となる店をみつけ、その周囲を見渡すと、そいつの目によく見えるよう停まった。>>333 ヘルメットをあげて洋次郎を見る。]
俺を呼び出すとはいいご身分でオニーサン
[眠そうな顔で笑いやがるから、お姉さんに囲まれた後なんだろう。 俺は鬱陶しいと思いながらヘルメットを投げた。「大丈夫」という声が聞こえたなら]
うっせぇ、大丈夫じゃねえよクソ はやく被れ、ねぼすけ
[そういって表情を隠すようにヘルメットを被りなおす。 照れ隠しの様子は、見えていなければいい。
洋次郎が後ろに乗るなら、蒼い機体を走らせるだろう。*]
(340) さねきち 2018/10/22(Mon) 23時頃
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―― 朝 ――
甘ったれんな
[眉間に皺が寄る。いて、と殴られた痕が引きつるのに顔を顰めて、にまにまと笑う洋次郎を睨んだ。>>354 てめえが仕事帰りってんなら俺は喧嘩帰りだ、とは思ったが口にしない。そもそも喧嘩した後バイクは知らせて寝てたし。
貼ってある天使のステッカーを癖のようにざらりとなでて、一息をつく。 笑い袋よろしく、犬の顔を引きずってかまだ笑っているそいつの脇腹をよっぽど小突いてやろうか>>355と思ったが、俺は自分の顔を隠すことに忙しい。
ヘルメットをつけていない――とわかれば、ふざけんなこのタコぶっこ×すぞ、とがなっているのだけれど、それにも気づけなかったものだから、ふてくされるように前を見た。]
(356) さねきち 2018/10/23(Tue) 00時半頃
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うっるせえ 世界一のクソ男ボコボコにしてやったんだよ まじあいつはいつか殺す
[その割には朝飯を作ってやる愛想はあるけれど。眠っている父親の首を絞めるか、野球バットで顔を潰すかの選択をする前に家は出なければならないと思う。
ともあれ。 お前が後ろに乗るのならば、]
へーい ワン公がちびらねえように 安全運転を心掛けてやんよ
[爆走してやっても面白いだろうけれど、それで振り落とされても後味が悪いだけだ。夜ならまだしも朝の世界で走るには目立ちすぎるから、警察も警戒しないようなルートを頭に思い描きながら、俺は言葉どおり安全運転でバイクを転がす。
――エンジン音が静かな朝に響く。]
(357) さねきち 2018/10/23(Tue) 00時半頃
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つか、なんでメール送った今なんだよ……
[愚痴が聞こえたかどうかはさておき、青空に似た蒼いバイクは、まだ白い空の下、海へと向かうだろう。
道中ミラー越しにお前を見ることがあるなら、 多分俺は「死にてーのかてめえ」と怒るけど 振り返るようなことがないなら、そのまんまだ。**]
(358) さねきち 2018/10/23(Tue) 00時半頃
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誰がするかよ
[と、俺は苦い顔をする。 世の中に糞男は星の数ほどいるので、洋次郎もそういう類の人間にあっていてもおかしくないが、一瞬開いた空白の意味を理解できないまま、「記念撮影とかまじむり」とそれだけを伝えた。 ――背中を軽く小突かれれば、へ、とあざわらってやり、お前を後ろに乗せるだろう。
人が少ない路を走っている。時折はやむを得ず大通りの傍を過ぎることもあったが、大体は野良犬がそうするように、人目につかない道から道へと。
やけに大人しいな、と思いながら、俺は背後のお前を見ずにいた。
急な誘いに応えるために家を飛び出し、ジャケットを着るのを忘れていたからか、それとも安住とは身長そのものが違うからか、いつもと勝手が違うので少し緊張している。肌を撫でる風も、後ろに乗るヤツとの距離も、なんだか少しだけ近いような気がしている。]
(366) さねきち 2018/10/23(Tue) 08時半頃
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|
――は あ?
[大人しくしていたお前が何か言う。>>362 どういうことだよ、と。ビビリか? と笑う前に、思考が停止した。 唸る風。すこし肌寒く、死に近い只中で、背中に触れる温度が近づく。抱きつくような形に姿勢を変えたのだろうかと察しはつくのだけれど、お前をミラー越しに見る前に―― 首筋あたりに風が入って、それ、が来る。]
……ふ、ぁ?!
[まず知覚したのは硬い感触だった。首筋に硬い感触が当たっている。暖かすぎる吐息が火傷痕に触れて初めて、「噛まれている」のだと理解した。ひくりとあっけなく肩が跳ねる。驚きで吐息が零れる。 跳ねる心臓も、震える背筋も、バイクに乗っている時でなけりゃあ気にしないままだっただろうに。
「なんで?」を思考する前に、前方を無理やり通ろうとする車が見えて―― 「殺すなよ」という声を思い出し、唐突に恐怖が駆け上る。]
(367) さねきち 2018/10/23(Tue) 08時半頃
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( ――殺しちまう! )
[その時の俺のあわてようときたら、ない。 普段ならそんな車知るかと進むところを、とっさにブレーキをかけ、ぎりぎりで停車する。ほんとうに目を鼻の先を信号無視した車が思い切り通り過ぎていくのを見て、ぞっと恐怖が腹の中で渦巻いた。
は、と吐き出した息が熱い。噛まれている場所が熱い。舌先や粘膜が火傷のあとに触れるならば、むき出しになった場所に触れられているような気がして、妙に胸が騒いだ。
エンジンの音が聞こえる。周りはあいも変わらず静かな朝の景色なのに、それは胎動のようにも感じられた。]
(368) さねきち 2018/10/23(Tue) 08時半頃
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( ……危なかった、 ……いきて、る )
(369) さねきち 2018/10/23(Tue) 08時半頃
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[――生きている。洋次郎も、俺も。 それだけのことなのにひどく落ち着かず、海につくまで、「やめろ」とも「このクソ野郎」とも言えずに無言を貫いて――]
(370) さねきち 2018/10/23(Tue) 08時半頃
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ノーヘルでバイクに乗るってのはな 死にてえってことだ マジふざけんなよ こ×すぞ あぁ?!
[きいてんのか、と問いかけた相手は、しおらしかったのは最初の十数秒だけで、今はげらげらと笑い出している。生憎と俺は犬を飼ったことがないので、馬鹿な犬のしつけなんざ知らない。てめえ、と呻き、ひっぱたいてやりてえ衝動を堪えた。]
きいてんのかおい。 くそ、……俺だけ死ぬってはなしじゃねぇんだぞ
[お前も死んだらどうするんだよ、と俺は暗に責め立てている。 笑い袋になっているお前の胸倉を、今度は俺が掴む番のようだ。可能ならばそうして、諭すように真剣な表情で説教する。
数歩先にある海は、怒りに無視されて少し寂しげに小波を立てていた。]*
(371) さねきち 2018/10/23(Tue) 08時半頃
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―― 海 ――
そうだろうが ……それは、 ……うるせぇよ
[お前だけならいいという話でもない、と揚げ足をとられて、返す言葉がなかった。俺だけなら別にいいじゃねえか。そう思うのだけれど。伸ばされた手がそれを止めるように、俺の髪をかき回す。>>387]
やめろクソ
[唸る俺は随分と「しおらしい」。わしゃわしゃと乱される髪。夜が隠してくれるわけでもないから、きっと赤くて醜い火傷痕はよく見えるだろう。見んなよ、と呟きながら、洋次郎のまなざしを捉えている。]
(390) さねきち 2018/10/23(Tue) 23時頃
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……ンなわけ、
[ねえだろう、という言葉は音にならずに消えた。 そこには人間がいた。まどろむ犬の顔をしたハチ公ではなくて、何かを言いたげに笑う、意地の悪いお前の姿があった。>>388
そこにあるのは嘲笑か、それとも安堵か、執着か。 ……なんだっていいと思った。美しいさざ波の反射や陽の光を、優しくもないほの暗い炎に変えて瞳の中で煌かせている。その「人間」の笑顔を、俺ははじめて綺麗だと思ったから。
クソ野郎と呻いた声はやっぱり言葉にならない。 すっかり言葉を失い負け犬に成り下がった。 情けない。妙に背中が痛い。お前が噛んだせいで、「いきている」だけでこんなに「いたい」。 どうせ今日も昨日の繰り返しでしかない生で、確かに「いきている」と実感する。]
(391) さねきち 2018/10/23(Tue) 23時頃
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だったらてめえの――
(392) さねきち 2018/10/23(Tue) 23時頃
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…………
[折れるように項垂れる。お前の胸倉掴む俺自身の手だか、お前の首筋やら肩だか、どっちに当たるのかわからないが、そこに額を押し当てた。
ここにひとりの人間がいる。蕩けるような笑みと共に、今にも犬になり下がりそうな人間だ。鼓動の音やかましく、不確かな『また』と『明日』に引きずられて生きる人間がいる。そんな人間が当然のように「おまえだけならいいって話でもない」と、いってみせる。当然のように俺の命を心配して。
そんなもの、殺せるわけがないだろう。 「生きている」と思ってしまった相手を。 まるで一蓮托生だとでもいいたげに指>>-613に力を込めたお前を、殺せるわけがない。――俺が死ぬだけならいいのに。
きつい腕の感触>>383は、潮風ごときにかき消せるものではなくて、まだまだ胸を(この心臓ごと、)しめつけてくる。じわりじわりと、昇る熱さの正体を俺は知らない。
しばらく、額を押し当てていた。]
(393) さねきち 2018/10/23(Tue) 23時頃
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……てめえが、ちゃんと見てろ。 ほっとくと置いてくぞ俺は
[誰にも追いつけないように走っているから、犬の寝ぼけた頭で追いつけると思わないでほしい。
きちんとリードを引けるのは、腐り落ちかけた首輪を結びなおすのは、人間の手だとよく知っておけと思う。俺は何様だろうな。……縋っているのは、俺の方なのかもしれなかった。
苦しさと怖気を弾き飛ばすように、唸るように言う。]
死ぬのなんか怖くなかったのに……ッ てめーのせいだ クソ 責任とれ洋次郎
[鬼胎を孕む。 ――慄く。誰かの「死」に。
そんな「人間らしい」感情を抱くのは、いつぶりだろう。安住の自殺にすら最初に「怒り」を抱いた俺が、……怖くなる、なんて。
俺は思い切り――手を伸ばし、]
(394) さねきち 2018/10/23(Tue) 23時頃
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わかったか この クソ野郎!
[ムカつくお前の額を、指先で弾こうとした。 その時のお前の表情だが、生憎と視界が滲んでいたのでわからない。情けない顔をしていたなら見たかったが、生憎と見えない。
寄せては返す波。反射光が滲む視界に突き刺さるので、ぞんざいに目元を拭った。 デコピンが叶うんだか、叶わねえんだか、知らないが 俺は振り返らずようやく来た海辺を歩き出す。
むしゃくしゃしてぶん投げた石は、川辺でもあるまいし跳ねずに沈んでいく。無性にむずがゆい、と感じている背中を掻いた。
白いシャツにしっかり血が滲んでいると気づくのは――火傷痕に刻まれた歯形に気づくのは、ずいぶんと先のことだった。*]
(395) さねきち 2018/10/23(Tue) 23時頃
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[例えばハスのステッカーにしないかと、言われたなら、俺はこう返すだろう。 「俺はてめーの所有物じゃねえ」と。 そう言うくせに、言葉に切れ味はなく、それなりに可愛い犬猫の従順さを見せはするだろう。
例えば言葉が切れることがあるなら、進路どうする、と、暗い明日のことをきくのだろう。 俺は就職するだけだけど。お前もそのまんまなの。 そう問うことも、あるだろう。
そういう語ってもたりない会話の全ては、今ではなく地続きの未来にある。]
[少し離れたお前が新たに抱いた腹黒い感情を知らない。]
(407) さねきち 2018/10/24(Wed) 09時半頃
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[知ったとして。 思うのは、「俺でいいのか」って心配だけだ。 ほしいなら対価を寄越せ、とあざわらうだけだ。]
(408) さねきち 2018/10/24(Wed) 09時半頃
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[例えば、お前の命だとか。
満ちない9999と10000の境界。 足りない1つをお前が添えてくれるなら その時は、全部お前にくれてやるよ。
この恐怖も、この怒りも、喜びも悲しみも、愛も。 心の全てを傾けてやるよ。 今は、そうじゃないけれど。]
(409) さねきち 2018/10/24(Wed) 09時半頃
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[白い砂浜にいくつか足跡がつく。 銀に光る海を、眩しく見つめた。
蹴り飛ばした砂。靴に入り込んで、いたたまれない気持ちになる。 生温い風を吸い込み、吐き出して、――カシャリ、という音に振り向いた。
洋次郎が何を思ったのか、俺の後姿を取っている。 何撮ってるんだこ×すぞ、と、火傷痕のせいで写真をとられるのが嫌いな俺は思う。 それはそれとして、額が赤くなっている洋次郎の姿は愉快だとも、思う。]
撮ってんじゃねーよ。ばーか
[背後に海を。青くなりきれない白い空を。うざったい前髪が潮風に小さく揺れて、その中で多分、俺は笑っている。 きっと最近は誰にも見せたことがなかった穏やかな笑みを、お前に見せている。]
(410) さねきち 2018/10/24(Wed) 09時半頃
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[穏やかな世界に一時、2人でいることに安堵しながら どこか飢え乾いた俺は、 落ちる瞬間に、どんな顔をしてるんだろうな。
――願わくば、その瞬間が 夢で見たようなあっけないものではなくて 永劫に似た満ち足りたものでありますように。
人間の顔した腹の黒いお前を見ながら、そう思った。**]
(411) さねきち 2018/10/24(Wed) 09時半頃
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―― サッカーの話 ―― [後輩のサッカー練習に丸一日だけ付き合った。 それだけいうと随分と簡単なことのように思えるが 俺には随分と勇気のいる行動ではあった。>>429
久しぶりに触れるサッカーボールに慣れない感触を抱いたのも束の間、30分もすれば体の方が慣れてきて、目の前の有望なGKへの守備範囲外へボールを叩き込む余裕がでてくる。
ああ、けれど、やっぱり現役は違うな。 経験は未熟でも、体の捌き方は俺より随分といいし、磨けば光ると感じられる部分が多々あって――俺は口にはださないけれど、随分と青空が似合うそいつの姿を、羨望の眼差しでみていた。どこかから友村が見ていたなら、なんだよ、と首を傾げたことだろう。
刻々と時間が過ぎ行く中。 息があがった俺の頬にぴたりと押し当たるスポーツドリンクの気配を感じたなら>>430 俺はすこし拗ねた顔で、それを受け取る。]
(449) さねきち 2018/10/25(Thu) 00時頃
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や、……まだ。 もう一回だけ、やろうぜ
[こんな時間に何をいっているのだろうと思われただろうか。 俺はスポドリを一旦置き、後輩にシュートを防いでみせるよう、言う。 それが叶うならば――
俺のシュートが、 きっとその日何回も辰巳の守備を抜けたそれが、 後輩の手で防がれるのを見ることができたなら。
俺は、きっと、晴れやかに「負けた」と笑ったことだろう。]
(450) さねきち 2018/10/25(Thu) 00時頃
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[それがあったとしても、なかったとしても]
……は、誰が見にいくかよ。
[後輩からの誘いに俺は口を尖らせる。 意訳は「YES」だけど。 ふてぶてしいその表情に頷いてやるのは癪だったから]
――やれるもんなら、やってみやがれ 辰巳刀流
[ひねくれた先輩はそういって、全力のエールを後輩に送っただろう *]
(451) さねきち 2018/10/25(Thu) 00時頃
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